表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
BlueEarth 〜攻略=世界征服〜  作者: まとかな
地底都市ルガンダ/ケイヴ階層
55/507

55.巌窟大掃除

【第20階層 地底都市ルガンダ】


「ラ・イ・ズ・さァン! おはようございますゥ!」


朝一番。ロビーで朝食バイキング。

なんか隣にタルタルナンバン(マスコミ)。マジでどうやってここがバレたんだよ。


「いえルガンダにいるのはわかってますから。あのログハウスに近い生活水準をキープするなら最高級ホテルでしょう?」


単純に読まれてた。すごい恥ずかしい。


「で、用事は?」


「最早聞くまでもありませんが、ズバリ【至高帝国】最強の男、クローバーさんについて伺いたく。

 第一発見者と聞きました。クローバーさん本人はサティスさんが匿っていて見つからないんです。どうか情報をォ……」


フットワークが軽く、比較的賢くて、情報源に辿り着く運と勘を持っていて、けっこうグイグイ取材できるコミュ強。

ほんとに記者向けの人材だよ。これで新人記者とか凄いな。


「俺達だって突然現れたからびっくりして、そんで終わりだ。サティスがすぐに処理したからな。

 ただ、情報は間違い無くナメローから出てくるぞ。張るならそっちだ」


……どうやらホテルに入ったもののバイキング代は払っていないようで、タルタルナンバンの前には皿一つない。

朝っぱらからそれは可哀想だ。ロールパンを一つあげよう。


「あ、ありがとうございまふ。まふまふ。おいひい」


「ウェイター。こいつの分の朝食もいいか? 支払いは俺で」


「ふぁ、そこまでしなくても!」


「いやぁ俺達の仲だろう」


恩を売るとかそういう考えも無いことも無い。

が、それ以前にフォレストを共に攻略した仲間だ。贔屓したいのも当然だろう。

ただ友達と仲良くしたいだけなのに恩だなんだと喧しいなぁ俺……。


「イベントを運営してるのはドワーフとナメローだ。ナメローの一存ではイベントを中止にはできない。イベントそのものはやるはずだ。

 で、もうすぐルール発表の頃だ。サティス同行の上だろうが、クローバーが来るはずだ。取材は断られるだろうが外見は撮影できるだろう」


「ふむふむ! もぐもぐ!」


「どちらにせよ一度アタックした方がいいとは思う。向こうの目的が不明な以上は、何らかの目的を周知してもらうために【井戸端報道】の力を欲しがってるかもしれないしな」


「なるほど! もぐもぐ!」


「パンのおかわりをあげよう」


「もらってばかりですけど! 申し訳ないですゥ!」


「もうなんか素直で礼儀正しくて明るい若い子って甘やかしたくなる年頃なんだよ。甘えさせてくれ」


「流石に恥ずかしいですゥ!」


かわいい。

デューク……じゃなくてバロンが褒めてたが、これは有望な新人だなぁ。




──◇──



【第21階層ケイヴ:カミサマの通り道】


──────────

パーティ 10/10 ▼[レベル順]


【スイッチ:   ライズ:115】

【リベンジ:  ゴースト: 99】

【悪魔祓い: プリステラ: 80】

【ガンスリ:スカーレット: 79】

【スナイパ:   コノカ: 77】

【コマンダ:   フェイ: 77】

【バトシス:   アイコ: 50】

【ウィッチ:  メアリー: 50】

【ガンナー:  ドロシー: 48】

【ライダー:  ジョージ: 48】

──────────


【夜明けの月】【バレルロード】合同レベリング再開。

タルタルナンバンとは別れて【バレルロード】と合流した。


「わーたーしーもー! 会いたかったー!

 最強の銃使い! クアドラさんすら勝てない怪物! 二丁拳銃だったんでしょ? 絶対【ガンスリンガー】じゃないの!」


駄々こねプリンセス。

スカーレットは【真紅道(レッドロード)】の姫。【至高帝国】とは敵対関係であろうけど、それでも自分と同じ銃使いには憧れるのか。


「片手銃二刀流なら【スイッチヒッター】もできるぞ。【ガンスリンガー】とは限らんだろ」


「レンジャー系列である事は公表済みでしょー。やっぱ最強なら【ガンスリンガー】よ」


まぁ自分のジョブが最強だったら嬉しいよな。

……実際、こうして現段階でもジョブがわからない程度には秘匿されてるんだよな。【至高帝国】のメンバー。

サティスを黙らせた方が良かったのか? あいつがいたからクローバーの本人証明できちゃった訳だし。

いやまぁ結局はナメローが本隊に確認取っておしまいだわな。どうしたって騒ぎにはなるか。


問題はなんでこんな事をしたのか、だな。

最前線が硬直している今、少数先鋭の【至高帝国】がこんな事すれば襲撃される事は間違いない。せめて名前は隠すべきだろう。混乱そのものが目的か?


──『ゲームは楽しむものだ』──


クローバー……或いはNN(ニックネーム)"アシュラ"、檜佐木宗一。彼の言葉だ。


楽しむ。この状況、あるいはこれによって起こる事象を、楽しむつもりか?


考えすぎならいいが。レベルもゲームセンスも完全に格上の相手だ。変に敵対したくはないな。


「……ま、夕方にはルール発表がある。会うだけならそこで会えるだろ」


「レベリングは夕方までなの?」


「今日は昼過ぎには終わりの予定だ。ジョージとドロシーのレベル50行ったら終わり。一緒に飯食ってルール発表に行けたらと思ってるんだが?」


「最高のプランじゃないの。素敵ね」


話が分かる優秀なリーダー。

スカーレットもまた、俺が事前に目星を付けていた引き抜き候補の1人だ。

ぶっちゃけ【バレルロード】そのまま吸収できたらなぁ、とも思っている。

だがまぁ、無理だろうなぁ。味方にしたとして【真紅道(レッドロード)】と敵対はしないだろうからな。

まぁ仲良くさせてもらおう。味方は多い方がいい。


「──それとコノカ君はどうだ?」


「ええ。【サテライトガンナー】になって帰って来たけど、まだ調整は終わってないわ。時間が勿体ないから今日はノルマ終わるまでは普通のガンナーとして戦わせるわ」


「早めに終わったら調整に参加させてくれ。うちのドロシーも【サテライトガンナー】にするから」


「てかドロシーくれない? 銃使いで可愛いとか絶対【バレルロード】の為に生まれてきてるわよね。むしろ返しなさい」


「あげない。何故なら【夜明けの月】は脱退時切腹の契約だから」


「物騒すぎるでしょアンタら」




──◇──




メアリーです。

早速なってきました【エリアルーラー】。

マジシャン系第3職、あたし向きとブックカバーさんが太鼓判を押してくれた……未知のジョブ。


「ちょっとだけ練習するわよ。まずは空間設定ね……」


あたしの正面に、光八点で作られた立方体がうっすらと現れる。

ドロシーが首を振ってる。この段階ではあたししか見えてないみたいね。


──【セット】。この座標を記録する魔法。

同様に、同じ大きさの光八点をあたしを内包する形で作成。


「──【チェンジ】」


視界が揺らぐ。違う。揺らいでいない。

あたしが目の前にあった光八点に一瞬で移動して、視界が変わったんだ。もう光八点は消えてる。使い捨てなのね。


「一瞬、光の箱みたいなのが二つ見えました。その後にメアリーさんが一つ前の箱に移ってました」


「周りには発動時しか見えないのね。ってことは【セット】は見えない罠として使えるわね。

 有効射程は……100m。自分から遠く、そして範囲が広い程消費MPが増えて……時間もかかる」


「それでも100m徒歩で移動するよりは早いですよね」


「分類が魔法なのも問題ね。【セット】と【チェンジ】は同じ枠として扱われてるけど。

 複数の魔法を同時に詠唱するアビリティ《並行詠唱》のスロットを削られるわ。ブックカバーさんみたいに複数の上級魔法を連打する戦い方はできないわね」


座標登録(詠唱)中は身動きが取れない事。

八点の境界線に物質が挟まっている間は【チェンジ】できない事。

能力はかなり優秀だけど、確かにこれは考える事が多すぎるわね。特に座標。自分を0として常に変動する値を見て、完全一致の二つの立方体をキープしないと【チェンジ】できないのはキツいわね。


「これ自体で攻撃する事は出来ない……いや、落としたらダメージになるかな」


と、あたし自身を上方2m──【Blueearth】における落下ダメージ計算開始基準高度──の空間と【チェンジ】してみる。

──なんか普通に着地した。全然痛く無い。失敗?


「落下ダメージはナシなのね。ブックカバーさんは岩落とすとか言ってたから、そっちは可能……ぐえっ」


「メアリーさん! 自分で実験しないで!」


ドロシーに飛び付かれる。小柄なドロシーでも、あたしも小柄だからそのまま押し倒される。

……あれ、今あたし自分で試した?


「次やったら怒っちゃいますよ。返事するまで動きませんから」


「ごめんごめん、手短に実験できる素材があたし本人しか無かったから」


本心から悪いと思っている。とあたしが思っている事を理解しているドロシーは、しぶしぶ退いてあたしの手を取って起こしてくれた。

こういう時に本心を理解してもらえるの、ドロシーの"理解癖"も悪いものじゃないわね。


「……というか、【セット】凄い早かったですね今。

 僕、これでもメアリーさんの事だいぶ"理解"してると思ったから止めようとしたんですけど」


「そうね。自身1人分の座標登録は0地点だから一瞬だし、垂直に2m真上ってだけだから【セット】はほぼノータイムだったわね。

 ……もしかして脳内座標登録もマニュアルでいけるかしら。座標さえわかれば一瞬で【チェンジ】できるかも」


「自分で実験するなら危ないやり方はダメですよ」


「はーい。ごめんごめん」


暫くは【セット】【チェンジ】しか使えないだろうけど、これをどうやって活用させるかが肝になってくるわね。

……【象牙の塔】の元担当の人はどうやって使ってたのかしら。




──◇──




──15:45

【第20階層 地底都市ルガンダ】

中央広場(イベント発表会場)


「おおー。凄い数だな」


レベリングを終え【バレルロード】との昼食を終えた俺たちは、中央広場へと向かった。

まだ発表までは時間があるが、随分と人数が多い。


「ああ【夜明けの月】の皆さん。お疲れ様です」


「ナシノツブテ君。なんか大変そうだな」


イベント企画側の【金の斧】として人員整理をしていたのであろうナシノツブテ君が声を掛けてきた。

参加者を記録しているであろうウィンドウが4つくらい同時に開かれている。マルチタスクだな。偉い。


「正式な参加登録は説明の後です。街の外れに運営会館がありますので、そちらにお願いします」


「わかった。しかし凄い人数だな。こんなに盛り上がってたっけか」


「今回は特別ですよ。やはりクローバーさんの参戦が広まっていますから」


……やっぱり広まってるか。昨日の今日で。

しかし俺達の今回の目的はクローバーへのアピール。目立つ活躍……出来れば優勝しておきたいところだ。


「──皆さん。お集まり頂きありがとうございます」


壇上に上がった強面のナメローが、重く強い声を発する。ざわめきが止み、静寂。


「今回のイベント……ルールを説明するより前に、一つ。

 皆さんご存知かと思いますが、今回はあのトップランカー【至高帝国】の一員、【Blueearth】最強の男、クローバーが参加します。どうぞ壇上に」


「はいよどーも」


軽く。熱狂を意にも介さず。クローバーは壇上にひょっこり上がった。

ざわめく一同。彼が本物かどうか、わかる人がそもそも少ない。


「──とはいえお祭りです。クローバーさんと言えど一人の参加者。今回は皆さんが気になっていたので言及しましたが、まぁお気になさらず」


「そうそう。せっかくの祭りだ! 楽しくやろう」


楽しく。

クローバー──"アシュラ"檜佐木宗一の理念。


「さて、ではルール説明といきましょう。族長、お願いします」


「はいはい、お任せくださいな」


ひょこっと壇上の机の上に立つ毛むくじゃら──ドワーフの族長。ルガンダのイベントはいつも、族長の説明から始まる。


「ここ暫く、ケイヴ階層の魔物が増えておりますな。

 21階層は遮るものの無い大空洞ゆえ、皆さん冒険者さんがいなければルガンダはあっという間に攻められてしまいます。

 故に、ここでいっちょ、丸ごと大掃除といきましょうな。

 ──即ち《巌窟大掃除》!」


ルガンダのイベントは幾つかのパターンがあるが、今回は俺がかつて優勝したのと同じ名前。景品とルールは紐づいているのかね。


「冒険者のみなさんにはケイヴ階層でひたすらに魔物を討伐して頂きます。期間は4日! 終了段階で最も多くのポイントを持っていた()()()が優勝です」


「そう──今回はチーム戦です。最大4人でポイントを累計する事が可能です。チームはイベント中ならいつでも組む事が可能ですが、脱退はできませんのでご注意を」


「例によって期間中にHPが0になった冒険者さんは失格! チームの累計ポイントからもその人分のポイントは消滅しますのですな」


「こちらも事前の注意喚起ですが、ケイヴワームは0ポイントです。誤って討伐する事のないようお願いします」


「期間中はこれまた例によって、イベント参加者以外の方はケイヴ階層に入れませんぞ。失格となった方はその瞬間ルガンダに転送されますので」


ルールが一通り提示された。確かにいつもの《巌窟大掃除》と基本ルールは変わらない、が……。

ざわめく冒険者達の相談する声が耳に入る。


「チーム戦、4人チームか」

「こんなのクローバーさんと組んだ奴の勝ちじゃん」

「馬鹿、【飢餓】主催のイベントだぞ! 組んだら一生追われるぞ……」

「んじゃクローバーさんが誰も組まなかったとして、こっちは4倍ポイントを稼ぎやすくなるわけか。それなら……」


……そうだよな。クローバーと組むって事はある種【飢餓の爪傭兵団】に喧嘩を売るようなもんだ。

あからさまにガラの悪い連中もいる。【飢餓の爪傭兵団】としても睨みを効かせているつもりだな。


「ルール説明は以上! イベント開催は明後日12時より4日間といたします。奮ってご参加下さいな!

 では本日はこれにて解散!」


「ん、終わりか? んじゃ……よっと」


説明会が終了すると、ざわめく人の前にクローバーが飛び降りる。




「誰か俺を仲間にしてくれー」




こいつやりやがった。

この状況でなんて事言うんだ。これも戦略か?

大体の冒険者は静まり返ってる。そりゃ戦力的に欲しいけど、【飢餓の爪傭兵団】と敵対したくはないよな。ガラの悪い連中の目が血走ってるもん。

こんな中で迎え入れる奴なんて──




「「入れてあげてもいいわよ!」」




──まぁ、こいつらだよな。


クローバーの前に現れるのは、我らがリーダー、メアリー。そして【バレルロード】の長、スカーレット。


あー、楽しめるかなぁ、俺。


~ジョブ紹介【コマンダー】~

《寄稿:【バレルロード】フェイ》


こんちわ!【バレルロード】爆撃担当のフェイだ!

【コマンダー】は片手銃と重火器を使うジョブだぞ!

脳筋に見えて意外とできる事が多いジョブだ! 俺の紹介は俺の得意なのばっかりだけど、やり方は人それぞれだからよろしくね!


・アビリティ

《迷彩透過》

周囲が自然物だと魔物に見つかりにくくなる! 隠密系だ! ローグ系以外が隠密系アビリティを持ってるのは希少だぞ!


《兵器操縦技術皆伝》

重火器の使用・生成ができる! 一部アイテムの生成もできる! こっちもクリエイター系じゃないのにできるのは希少だ!

地雷や手榴弾・閃光弾は使いやすいアイテムだからいっぱい確保しておきたいな!


・スキル

【ノーバック・フルバースト】

退路を捨てた全力攻撃! 手持ちの銃弾と攻撃アイテムを時間いっぱい使いまくる! 必殺奥義だ!

アイテム系は投擲範囲にしか届かないから、できるだけ相手と距離を詰めて使いたいな!


【マインシュート】

地雷を投げて設置し、好きなタイミングで起爆できる!

地雷をトラップではなく戦闘手段として使う事ができる!


……ちなみに、地雷は味方が踏んでも爆発するし、ちゃんと味方にもダメージが行くぞ!注意しないと怒られるぞ!

俺も昨日、怒られたから!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ