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BlueEarth 〜攻略=世界征服〜  作者: まとかな
地底都市ルガンダ/ケイヴ階層
52/507

52.【金の斧】のナメロー


「ドロシーが抜け殻になって帰ってきたんだけど」


「くそっ! クアドラも肉食獣かよ! 動物園かここは!」


「なんかムカつくわねアンタ。噛み付くわよ」


「うぅん猛犬チワワ」


「誰がよ!」




──◇──




【第20階層 地底都市ルガンダ】


ハヤテとの交戦によるペナルティも解除され、本日より改めてレベリング再開!

の、はずだったのだが。


──────

『昨晩のうちにコノカが【サテライトガンナー】になっちゃって、今宇宙にいるらしいわ。帰ってきてからの調整とかもあるから今日は参加できそうにないわ』


『いいわよ。人数くらい調整するわ。今日は【バレルロード】全員お休みしなさい』

──────


とメアリーが太っ腹ぶちかましたので、欠員4名。


「2人くらい残して貰っとけよ」


「だってあの人達すごく仲良しなんだもん。別々は可哀想よ」


「それを言われちゃぁ仕方ねぇ。流石だな」


「あたぼうよ」


それはもう仕方ない。仲良しを引き裂くほど【夜明けの月】は非道じゃない。


「顔合わせもまだだったし、行くか。【金の斧】」


そもそも傭兵業だしな。どうせどこかで顔出しはしておきたかったし。


「ルガンダの商業を取り仕切っているボスでしょ? 怖く無い?」


「こわくないよ。ほら支度しな」




──◇──




そこにあるのは、一件の酒場。

【飢餓】傘下ギルドの基本業務である、民間クエストの受付。それが酒場。

ここルガンダにおいては、酒場こそが本拠地。即ち【金の斧】のギルドハウス。

【祝福の花束】と構造は変わらないけど、空気の重さが違う。

薄暗いルガンダだから?

違う。

その元凶は、ギルドハウスの奥のソファに座る──傷だらけの顔を持つ男の、威圧感。


「──ライズさん。お早い出所で」


顔面からスキンヘッドを通して後頭部まで、夥しい数の傷が刻まれている。

最も目立つのは、右目を通り抜ける縦一文字の傷痕。

右目の色は翡翠──天知調(お姉ちゃん)開発の義眼だ。この世界では本物の眼球になっている、はず。


荒々しい顔面からは想像できない、丁寧な口調。

大仰なスーツもトレンチコートも綺麗に着こなしている。

でも、やっぱり。


こわいじゃないの!


「出所はやめてくれナメロー。一昨日説明した、うちのメンバーだ。そっちの本業に用があったんで面合わせにきた」


「ン──これはどうも、気を利かせちまって……」


ゆっくりと立ち上がる、巨漢。

威圧感が凄い。これまで出会った誰よりも、凄みがある。


「【金の斧】ギルドマスター張らせてもらってます。ナメローと、申します。

 お嬢さんを怖がらせちまうんで、ここからの挨拶で失礼します」


……は?

舐めてんじゃないわよ。


「余計なお世話よ。あたしがライズの今の飼い主。【夜明けの月】のギルドマスター。メアリーよ。ほら」


動けないのは動けないけど。精一杯、右手を差し出す。


()()()()()()()()()()()()()()()。友好の握手よ」


──言っちゃった。

なんであたしって単細胞なのかしら。でも仕方ないわ。動けないんだもん。向こうから来てもらうしかないわよ。


「──ハ。流石ライズさんのお気に入りだ!」


破顔一笑。威圧感が薄れ、重圧から解放される。


「無礼なマスターで悪いな」


「いやぁ素晴らしい! ライズさんを動かしたってのはどういう傑物かと思いましたが、これぁ納得の気の強さだ!

 改めまして、ナメローです。この挨拶はライズさんからの提案でしてね。怖がらせて本当に申し訳ない」


おい馬鹿。

ナメローさんと握手しながらライズを睨むが、こちらを見もしないぞコイツ。

あとナメローさん握手優しい。全然痛く無い。


……なんか後ろでアイコがジョージの口を塞いでるけど、どうしたのかしら。


「さぁさぁ、本日は如何されたか……などと眠たい事は言いません。ウチの人材が必要なのでしょう?

 アゲハちゃん! 今日動けるのは?」


パンパンと手を叩くと、2階から飛び降りてきたのは雅溌剌(みやびはつらつ)なアゲハさん。


「あいよー! 来るのが遅いぞメアリっち! ……今日はねぇ、テッパチ空いてるね! あとミガピーとオフランスと……

 メアリっち! 欲しいポジは?」


「あっと、立ち回りはこっちでやるから、対単体性能の高い人がいいわ。広範囲系はちょっとね」


盛り上げ隊長を自称するだけあるけど、アゲハさんって結構いい立場の人なのね。てか盛り上げる意味がなんとなくわかったわ。アゲハさんいなかったら完全にマフィアよねここ。


「おけまる! ギルマス! アゲハちゃん出ていい?」


「だめ。君、今は昇格のための経理経営試験中でしょ。

 ライズさん。ウチは2〜3人が限度ですね」


「おお。不足分はこっちで集めるわ。アイアン8君は是非欲しいな」


「んじゃテッパチとオフランスとタタタン呼ぶね。ちょいまち〜」


全然名前から人となりがわからない……。

奥の部屋へ走っていったアゲハさん。


「では後はアゲハちゃんに任せます。私はイベントが近いので族長と擦り合わせに出掛けますね」


「ん。本当ありがとうな、ナメロー」


「いえいえ我々の仲じゃないですか」


そう言って私達を置いてナメローさんが出ていくと同時に、アイコがジョージの口から手を離す。


「で、何やってんのよジョージ」


「いや失礼。知った顔だったので、声を掛けそうになってしまってね」


知った顔……というと、ナメローさんが?


「警視庁組織犯罪対策第4課。所謂"マル暴"の滑川管理官。見間違うわけないからね、あの顔。懐かしくてつい声を掛けそうになってしまったよ」


「めちゃくちゃ警察関係者じゃないの。なんで【Blueearth】に?」


「管轄違いだから仕事じゃないだろう。多趣味なお方だったが、ゲームはともかく……経営までできたとは。器用なお方だ」


「なるほどな。俺もしかして殺される?」


「記憶戻ったとしても大丈夫だと思う。まぁ俺が外の警察の状況説明したらぶち殺されるかもしれないね。テロリストだからね、俺達」


「ひぇっ」




──◇──




「お待たせー! ご注文のイケメン3丁!」


アゲハさんが連れてきたのは3人。いつもの甲冑アイアン8さんと、和服のお兄さんと、中華服のお兄さん……?


「改めて、アイアン8だ。宜しく頼む」


「話はアゲハちゃんから聞きました。【アーチャー】のナシノツブテです。ナシしか聞いてないアゲハちゃんにオフランスと名付けられました」


大弓の似合う古武道おじ様ナシノツブテさん。ライズは槍が不人気、拳はほぼ皆無って言ってたけど、弓も大概見ないわよね。アイザックさんくらいしか見た事ないわ。


「はいはーい。タツタダさんだよぉ。【バトルシスター】やってるよぉ。そう。女だからね。イケメン呼びやめなぁアゲハちゃん」


チャイナ服のスレンダー美人はタツタダさん。言われないと男か女かわからなかったわ。イケメンである事は間違いないけど。

装備は……まさかの両手槌(ハンマー)


「とりあえずこれで3人。あと一人はどうするのライズ」


「ん。そのうち来るからちと待ってな」


「ごめんねライズっち。アゲハちゃん今お勉強中でさー」


申し訳なさそうにしてるアゲハさん。

経理運営試験って言ってたけど、確かアゲハさんはクリックに進むんじゃなかったっけ?


「んにゃ勿論ね、そのうち行くんだけど。ギルマスちゃんがさー、なんか必死に止めるんだよね。嫌な予感がするからクリックの傘下ギルド(マツキン)はまだやめとけ、しばらくここにいとけってさ。

 悪い気はしないけど、オベンキョーは苦手なんだよねー」


「そうは言うが姉御はリーダー気質だ。タツタダ師父の頃は傾きかけたぞ。金の看板が」


「金は錆びないんですがね。あの頃ばかりは終わりを覚悟しました。見た目も中華マフィアみたいでしたし」


「ナシの叔父貴ぃ、腕千切るよぉ。

 テッパチは師父呼びやめなぁ。タマ潰すよぉ」


「「イエス・マム!」」


仲良し3人組ね。

なんというか、【Blueearth】にいる女は強いわね。良い事だけども。




「あー、どうも。急いできたけど、待ったかな」




扉を開けて現れた男は、ライズの呼んだ協力者。

余裕の感じる武士装束に身を纏い、長い髪を後頭部で纏めている。腰に携えた鈴付きの刀【瑜伽振鈴(ゆがしんれい)】が、ちりんと一鳴り。

──その風貌は、まさに侍。


愕然とする【金の斧】のメンバーさん。ライズ、この人を呼び出した訳?




「どうも、【朝露連合】用心棒のサティスです。ルガンダは不慣れなもので、どうぞ宜しく」




──元【飢餓の爪傭兵団】大幹部が1人、《餓狼の侍》サティスが、まるで下っ端のようにやってきた。




──◇──


──────────

パーティ 10/10 ▼[レベル順]


【サムライ:  サティス:130】

【スイッチ:   ライズ:115】

【リベンジ:  ゴースト: 99】

【ナイト : アイアン8: 48】

【バトシス:   アイコ: 48】

【ウィッチ:  メアリー: 48】

【ガンナー:  ドロシー: 47】

【ライダー:  ジョージ: 46】

【アーチャ:ナシノツブテ: 45】

【バトシス:  タツタダ: 44】

──────────


「んぎゃー! いいなぁサティス大先生とデート! 行きたすぎぃ〜!」


「嬉しいなお嬢さん。でも知らない女性の匂い付けて戻るとベルに半殺しにされちゃうからそれ以上近くにきてはいけない」


凄い必死な顔でアゲハさんを静止するサティスさん。

相当ベルの尻に敷かれているようね。

ベル、独占欲凄いわね。


仲良しを引き裂くほど【夜明けの月】は非道じゃないが、ラブラブカップルは余裕で引き裂くぞ。


「ケイヴワームを回避しながらの戦闘はかなり面倒だ。クソ範囲攻撃の【虚空一閃】はやめてくれよサティス」


「オーケーオーケー。レアエネミーのタゲ取りをすればいいのかな?」


一度は本気で殺り合ったライズとサティスは、特段気にしていないように仲良く話してる。

……で、【金の斧】メンバーは唖然としてる。元上司と言ってもいいわけで、そりゃそうなるわね。


「聞いてはいたけど、交友関係ヤバいねぇ【夜明けの月】」


「というかサティスさんは【飢餓の爪傭兵団】出禁ではありませんでしたかね」


「まぁ……【金の斧(うち)】に用事があったわけでも無し。あくまで単なる集合場所だろう。俺はそう思う事にした」


【金の斧】も納得(?)してくれたところで、早速レベリングを開始する。

ライズ曰く、目標はイベントまでにレベル50(第3職)。かなり甘い設定らしいから楽しんでいきたいわね。




──◇──




【第10階層 大樹都市ドーラン】


「ベル社長、めちゃくちゃ怖い顔してるっス」


「旦那を野郎(ライズ)に盗られたからなァ……。

 でも怒ったりするとなんか嫉妬してるみたいだから頑張って平静であろうとしてンだよあれァ。逃げるぜレン」


「あいさ」


「聞こえてるわよ馬鹿2人。減給ね」


「ひぇっ」

「うげッ」




「……別に、2年間ほっとかれてんだから。今更1日くらいで騒がないわよ。ばか」




~ジョブ紹介【ニンジャ】~

《著者:【井戸端報道】記者T》


本日はジョブ【ニンジャ】の紹介です!

ローグ系第3職、隠密と奇襲のスペシャリスト!

……と言うと同じ第3職の【アサシン】が挙がりますね。このあたり詳しく説明します。

【アサシン】【ニンジャ】共に隠密性能が高い斥候向きですが、【アサシン】は武器を使用した物理特化、

【ニンジャ】は専用の魔法【忍法】が使用できる物理と魔法の二刀流ジョブです。

属性攻撃や分身・身代わりなど幅広くカバーできる器用さが売りですが、単純な戦闘能力は物理特化の【アサシン】には一歩劣る感じです。

幅広いとは器用貧乏とも言えますが。ちゃんと鍛錬を積まないと属性適正が上がらず威力が下がってしまう事にはご注意を。




・アビリティ

《忍術皆伝》

特殊アイテム《巻物》を使用する事で、魔法【忍法】を使用できるようになります。

【ニンジャ】自体の魔法攻撃力は高くないので、【忍法】そのものの威力は高めです。

使用できる忍法の種類は魔法ほど多くはない上に入手が困難なので、器用な立ち回りをするには資金が必要になります。




・スキル

ほとんどはジョブスキルではなく【忍法】などのアイテムスキルです。


【畳返し】

ジャストガードの有効範囲を広げ、防御性能を上昇させます。盾を装備する事ができないので、貴重な防御手段です。


【朧隠れ】

透明化のスキルです。気配遮断、背景透過の能力で周囲に溶け込みます。動いたり人に当たればバレてしまいますのでご注意を。




・忍法

正確には【ニンジャ】の能力ではありませんが、【ニンジャ】専用技なのでご紹介します。


忍法【火遁:鳶雲雀(トビヒバリ)

火の鳥を飛ばす遠距離炎魔法です。


忍法【氷遁:烏砕工(カラスサイク)

氷の壁を作ります。壁は砕けて、破片で攻撃する二段構えです。攻防一体の便利な忍法です。


忍法【風遁:嵩崩躯(タカホウク)

風で敵か岩を持ち上げて、地上に落下させます。一応風属性魔法ですが、ダメージ元は落下ダメージですね。

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