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BlueEarth 〜攻略=世界征服〜  作者: まとかな
終末宣言アルトン/エンド階層
498/507

498.二者を追う者は

"廃棄口"からサルベージされ、肉体を再構築されて。

"自由にしてくれて構わない"と調さんには言われたけれど、自由になんて出来る訳がなくて。

調さんの助けになれるよう、冒険者としてアシストすると志願したのはボクだ。

(その枠は既にヨネさんがやってたし、結局ヨネさんの居る【真紅道(レッドロード)】は終始最前線を攻略していたから……本当に、ヨネさんだけで良かったのだけれど)


ヨネさんと出会って、事情を伝えた。ヨネさんは賢いから、この【Blueearth】における階層攻略がやがて攻略()()に偏重する事を見抜いていた。

必要なのは、後ろからしっかりどっぷりと階層を研究する人員。ヨネさんはボクに、まずそこから始めろと命令した。


さて、そうは言っても既に【Blueearth】稼働から暫く。もうアドレに残った冒険者なんて、あまり積極性のある人は居ない……と、思っていたけれど。




樽に頭から突っ込む変態がいた。




おいおいマジか。この世界がゲームだと気付いているタイプかな? でもないと、こんな変な事しないよね。

だとするとちょっと話が変わってくる。何かの不手際だとするなら調さんに報告しないとだし、不手際でないとするのなら──この変態は、調さんに牙を剥く可能性がある。

慎重に対処しなくては。とりあえず、樽から引っこ抜いて……。




……変態が弟だった時、どう対処すればいいんだろう。




──◇──


"【Blueearth】争奪戦" 最終戦

【ダーククラウド】vs【夜明けの月】

【ギルド決闘】"東雲曉暒(しののめみょうじょう)"


──◇──




【第199階層エンド:終焉帰郷アドレ】

複合隔離階層




【ダークロード】

基本的に【聖騎士】と同じような武器編成となるため、推奨装備は片手剣片手盾。

攻防一体にして遠距離や魔法も多少は対応出来る、比較的万能なジョブ。

とはいえ、大抵の人は突き詰めた完成形である【聖騎士】を選ぶ。ハヤテがこの道を選んだのは競合の少なさからだったしな……。


「【スイッチ】──【封魔匣の鍵(パンドラ・カリギラス)】【月詠神樂(ツクヨミカグラ)】!」


「行くよライズ! 【アビスチャージ】!」


出が速くて、すぐに終わる突進技。接近してのインファイトに繋げる気か!

セオリーを無視した軽装の二刀流。それの意味する事は──超攻撃的な耐久戦!

【ダークロード】アビリティ"インビジブル・メア"で、俺はハヤテの近くに居るだけで継続ダメージを受け続ける。接近戦なんてやってられないんだがな!


「【ソードバッシュ】!」

「ノックバックか! でも、()()()!」


剣の面を振るう押し出しスキルを、ハヤテは避けるでもなくバックジャンプで回避。

が、ハヤテの黒い影が俺の腕に絡みつく。


──継続ダメージか!

封魔匣の鍵(パンドラ・カリギラス)】を影に向けて、一気に暴発!


「【ゼロファイア】!──クソ。面倒な方向に伸びたな、【ダークロード】!」


超至近距離で銃を暴発させることで範囲火力の吹き飛ばしを成立させる自傷スキル。ダメージは武器が肩代わりしてくれるが……影は吹き飛んだ。


【ダークロード】ジョブ強化スキル【最終幻想(ハーヴィ・ザイド)】。その能力は……"滞留する継続ダメージ"か。

確かに【ダークロード】は"インビジブル・メア"を筆頭に、割合や定数ダメージで削ってくるものが多い。悠長すぎてとても使えないってのが世間の評判だったが。ハヤテなら使いこなせるだろうよ。


そして何より、一番の問題は──


「【パラレル】のダメージ肩代わりは、定数ダメージや割合ダメージには通用しない。毒とか、呪いとかを無効化してる訳じゃないからね。

【Blueearth】において定数ダメージや割合ダメージは極端に少ないけれど……知ってるよね、僕の──」


「当たらない、で有名な必殺技。【アポカリプス】──()()1()0()()ダメージか」


「正解。偉い偉い」


舐めてんな。

……【パラレル】貫通の手段を、ハヤテは都合よく揃えているってか。

"インビジブル・メア"やら【最終幻想(ハーヴィ・ザイド)】やらで削られなくとも、【アポカリプス】を喰らったら終わり。

あとついでに、さっきから交戦してる間にチクチク刺してくる白い劔も問題アリだ。あれも【パラレル】貫通してるな。

というか、この戦法は……。


「俺の武器を壊さずに削る気かよ」


「【朧朔夜】は抜かせないよ。それ以外でライズに警戒するような物も無いし!」


「言ってくれるな……!」


そりゃ対策はするだろう。

俺にとって、トップランカーに肩を並べられる唯一の火力だからな。

とはいえガンメタすぎるだろ。嫌な運命だな……!


「【スイッチ】【天国送り(エンジェル・バトン)】──【パワーショット】!」


「遠距離は許さない。【ゴシックバイス】!」


16の幽霊が影を纏って飛んでくる。MP吸収の遠距離魔法! しかも影のオマケ付きか!


「【スイッチ】【双頭の狂犬(オルトロス)】【封魔匣の鍵(パンドラ・カリギラス)】──二丁拳銃!【赤熱牡丹】!」


全方位発砲スキルで幽霊を撃ち落とす。アレに接触して弾いたら影が移るだろうからな。

……そんでこっちの【パワーショット】もまた、影で受け止めていると。


分かってきたぞ【最終幻想(ハーヴィ・ザイド)】。

何か地味だと思ったが、定数ダメージの攻撃判定を浮かせて移らせるスキルか。壁にもなるし、遠距離攻撃にも付けられるし、多分自分にだけは反転して回復になってる。嫌なスキルだなぁ!


「【スイッチ】【壊嵐の螺旋槍(タービュランス)】──【スターレイン・スラスト】!」


「来るか。接近戦ならこっちの土俵だ! 【アビスチャージ】!」


突進スキルの衝突、相殺。

──影が一つ、俺に移る。


「【スイッチ】【影縫(かげぬい):猿飛(さるとび)】【簒奪者の愛(ゲットバッカー)】」


短剣二刀流──俺の技量だと、同じ片手剣二刀流じゃハヤテの攻撃速度に追い付けない。

ハヤテからすれば、武器同士の打ち合いは望む所だろう。重量では劣るが……とにかく手数で、競り合う!

──影が10くらい?俺に移る。

ちゃんと重なれば重なるほど定数ダメージは増えてるな。だがぶつかり合ってるうちに勝手に剥がれていく。そこまで大きなダメージじゃない!

そして、こんだけぶつかり合えば──


「──1()2()()だ! "ミステリータイム"!」


懐中時計の針が一周する。時間停止アイテム"ミステリータイム"で、一瞬でも──




()()()()──"ミステリータイム"!」




──お前も、持ってるんかい!

いやそうか。【草の根】終身栄誉会長! スワンがいるもんな【ダーククラウド】!

だが、まずい。お互いに時間が止まった。

止まっている間も、影でHPが削れて──




「──【スイッチ】【灰は灰に(アッシュ・マッシュ)】!」

「【ブラックアウト】!」


俺は煙で、ハヤテは霧で。

同じ事考えてんな。時間停止が解除されると同時に距離を取る。


「ぞっとしない話だ。キミに時間停止は相性良すぎる」


「お前にも、だろ。随分削られた」


「そしてボクは全回復。ふはは、勝っちゃうよ?」


「うるせー。お前の戦法は大体分かった。こっからだ」


ハヤテのやり口は、俺の武器が壊れない事を前提としている。

……が、その欠点についてはとうの昔に克服済みなんだよ。


「【スイッチ】──【雪月花】【宙より深き蒼(ディープ・ブルー)】」




──◇──




【三日月】を結成して。

弟と一緒に冒険を始めて、暫く経った。

数年会ってない……どころか性別から違うし、ボク自身ボクがボクである自信が無いし。心配していたより、昇はボクに興味が無いみたいで。微塵もバレる気配が無かった。そりゃそうだけれど、ちょっと寂しい。


ボクも昇も、何処にでもいる一般人だ。……ボクに限っては、調さんと出会ってからあまりそう言えない程度には色々とあったけれど。

昇は、調さんと出会わなかったボクだ。このまま何事も無く終わってほしい。




「攻略はあたいに任せなぁ坊主。そのまま適度な所で引退してもいいんだよ」


「ライズの好奇心が尽きそうにないから……。このまま出来る所まではサポートさせて下さいよヨネさん」


「ハン。そりゃ結構なことで。あんまり出しゃばるようなら奪っちまうよ。ブレーキの踏みどころ、間違えんじゃないよ」


「分かってます。ありがとうございます、ヨネさん」


ヨネさんは【真紅道(レッドロード)】をやりながらあちらこちらに根回しをしていて大変そうだ。

そっちの手伝いもしつつ、攻略もしつつ。

その上でヨネさんは……ボクに何かあった場合は、ツバキとライズを拾ってくれると言っている訳で。本当に頭が上がらない。


ボクに出来る事なんて、そんなに無い。

でも、せめて。愛する弟が、楽しく遊んでられるなら。

その環境を守るだけでも──




「……バグ?」


「そうさね。調は黙ってたけど……あたいの目ぁ誤魔化せないよ。

バグが自我を得て動き出している。正体はとんと不明だが、恐らくは冒険者に擬態しているさね。

……アンタだけは、後天的に冒険者になった運営側だ。今から改造すりゃ対冒険者用のシステムを組み込める。

嫌ならいいよぉ。那桐のガキがレイドボスやってるから、そこに辿り着いた時点で捻り潰してもらうからねぇ」


「レイドボスって事は、万が一にもそこを通り過ぎたら終わり、という事ですよね。

ボクがやります、ヨネさん。どうか調さんに口添えを」


──すっかり昇と遊んで忘れていた。

ボクの命は、調さんのためにあるという事を。

ヨネさんは、少しだけ悲しそうな顔をしてから笑った。


「そうかい。【三日月】はどうするんだい。両立できそうに無いなら、受け取るよ」


「出来ます。両立……させて下さい」


ここが、選択ミスだった。

運営側に回ると決まった時点でスッパリ縁を切るべきだったんだ。

惨めにも、浅ましくも、ボクはまだツバキとライズとの縁を、捨てられなくて。


そして、全てを欲しがった欲張りは。

哀れ、全てを失ったんだ。

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