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BlueEarth 〜攻略=世界征服〜  作者: まとかな
竜星大河ピッド/ギャラクシー階層
444/507

444.紡ぐ星は縁のように

【ギルド決闘】"最果ての(ボイジャー・フォー)観測隊(・ヘリオロープ)"


最前線走破中

【飢餓の爪傭兵団】0名

【夜明けの月】11名(残機持ち3名)


177階層

"カーウィン・ガルニクス"対峙中

【飢餓の爪傭兵団】22名

【夜明けの月】5名




──◇──




──冒険を始めて間も無い頃。

今となっては大した事のない、ウィード階層の最奥部。

その狼に俺は立ち向かった。

サティスとベルと逸れたのもあるが……ここに()()あると、俺の勘が告げたから。


嵐夜の顕主。狼王"テンペストクロー"。


この階層では眠ってばかりのそいつは、何故か目を開けて──




『……まぁ、お前でいいか。喜べ人間。お前は最強になったぞ』




……は?




──◇──




【第177階層ギャラクシー:龍肩グルミウム】




「──"星辰獣(セーマ・シリオン)テンペストクロー"! 全てを引き裂き、新たなるレイドボスとして顕現しろ!」




"カーウィン・ガルニクス"により呼び出されるは、星の獣ではない。

銀の毛皮纏う、嵐の王。

ウィード階層のレイドボス、"テンペストクロー"……そのもの。


「アレが探し物かい、ウルフ」


「ああ。あのジジイ、俺からワンコの力を盗みやがった」


「人間が持っていいものではない! 私が有効活用しようと言っているのだ!」


──レイドボスは、大階層に一つ。

ジャングル階層の"グリンカー・ネルガル"と"グラングレイヴ・グリンカー"はバグった結果の例外だとして──サバンナ階層の"カースドアース"不在はシドとシギラが補って、フューチャー階層の"MotherSystem:END"撃破後は"エルダー・ワン"が"MonsterSystem:ELD"となって維持している。

つまり"カーウィン・ガルニクス"の狙いは──"テンペストクロー"をここのレイドボスに仕立て上げて逃げ出す事、かな。


「"テンペストクロー"の力を持つ人間が私の前に現れたのは運命だ。【Blueearth】において完全な同位体は同時に存在できぬ。

故に"テンペストクロー"を再現すればウィードの"テンペストクロー"がここへ顕現し、新たなるレイドボスとなる。

……中身がまだ伴っておらんが。故にウルフに押し付けたのだ。"星辰獣(セーマ・シリオン)フェンリル"を使えば使うほど、"テンペストクロー"のデータは補強されてゆく。

……何度何度と繰り返せども完全体には追いつかなんだが。やはり人間ではその程度か」


ウルフが"テンペストクロー"に認められていた……という話は知っている。

どういう経緯でそうなったのかは知らないけれど──ともかく、それに気付いて抜き取った訳だ。


「ワンコとは最初に話して切りの関係だけどよ。見ず知らずのテメェに盗まれる謂れは無ぇんだよ!」


「偶然拾っただけだろう! 人間如きが持っていいものではないわ!

第一、"テンペストクロー"の再現すら碌にできず"星辰獣(セーマ・シリオン)フェンリル"へと()()()させてしまっているような貴様が偉そうにレイドボスを語るな!」


好き勝手言うなぁ。どっちも。

しかし"カーウィン・ガルニクス"も気付いていないみたいだね。


「バグも人間も、纏めて消えよ!

この"テンペストクロー"こそ、私の力! 敵うものか、勝てるものか!」


「スペード。どうする?」


()()()()()()()()。サティスはいつでも抜けるように構えておいて」


「了承した。ベル、俺の()に」


「……分かったわよ」


後ろに、とか言ったら絶対聞かないもんね。サティスの最大の譲歩か。

"テンペストクロー"は吠え、僕達へと飛びかかる。


──仕方ないといえば仕方ない。"カーウィン・ガルニクス"は自我を得たばかり。

"アル=フワラフ=ビルニ"もそうだったけど、いくら自我を得たといってもセキュリティシステムとしての機能を全て完全に扱える知能を得る訳じゃない。"ディレクトール"とか正に、その辺に明るく無いから色々苦労していたけれど──


──その"テンペストクロー"が()()()()()()()()()()、解析できるだけの自力が無いんだ。




「そんなハリボテじゃ届かないよ」


「──は?」




"テンペストクロー"は──消滅する。

外見だけ真似たところで……そこには"テンペストクロー"は存在しないからね。


「間違いその1。アバターを真似ただけじゃ同位体認定にはならないよ。中身がスカスカすぎる」


"テンペストクロー"の残骸が星になって消える。

"カーウィン・ガルニクス"は動かず──動けず。

内部データ不足は理解していたけれど、ここまで使い物にならないとは思ってなかったみたいだね。


「……私は……間違いなく、そこの人間から"テンペストクロー"のデータを……!」


「間違いその2。ウルフが"テンペストクロー"から受け取ったデータは冒険者用に変換されたデータであって、"テンペストクロー"の存在を構築するためのものじゃないよ。抜き取ったところで"テンペストクロー"の再現なんか出来ない。

"星辰獣(セーマ・シリオン)フェンリル"で内部データを補強しようとしているけれど、それ結局はウルフの記憶経由で再現された別物だよ」


レイドボスが自衛のために自身のデータを分割したり、簡略化したり……色々と逃げ道はあるけれど。

"テンペストクロー"に限ってはそんな事はしてこなかった。……これまでは、だけれどね。


「そして間違いその3。フューチャー階層での【夜明けの月】と"MotherSystem:END"の戦闘をちゃんと確認しなかったね?

君が探すべき相手はウルフじゃなかったよ」


「……は?」


──空間が揺れる。

そっか、ウルフとの縁を辿ってきたのかな?

()()()なら近道を作れるし、無理な話じゃないか。


「"テンペストクロー"の存在データは──ここにある」


虚空にヒビが入る。

割れた──と知覚するより早く。

銀の嵐が老人に襲いかかる。


「──"テンペストクロー"……だと!」


「そっちが本物のデータだよ。ゴーストが本人から受け取ったんだよね」


"廃棄口"を通して階層同士を繋げられる……とは言っても冒険者を移動させるほどのものは簡単には作れないけれど。

向こうも満身創痍だろうに、よくやってくれる。


"テンペストクロー"は無慈悲に"カーウィン・ガルニクス"を噛み砕く──が。

星河が輝き、溢れ、"テンペストクロー"を散らす。


「──舐めるな! 私は"カーウィン・ガルニクス"。この星河の全てが私の力!」


「無理な使役は"カーウィン・ガルニクス"の範疇外だ。仕様外の無茶はバグを生むよ?」


「うるさい! こうなれば全て壊してしまえ!」


次々と星竜が生まれる。

……が、その裏で。

"カーウィン・ガルニクス"は退路を確保していた。

ゲーム化処理が施される【Blueearth】でも、レイドボスはセキュリティシステムとなればその被害から多少免れる事ができる。レイドボスとしてわざと敗北してそっちに逃げるつもりみたいだけれど──


「──今、何を噛み砕かれたと思う?」


「……おのれ……畜生風情が!」


"テンペストクロー"の幻影は、"カーウィン・ガルニクス"に砕かれる直前にそのセキュリティシステムとのパスルートを噛み砕いた。

これで"カーウィン・ガルニクス"は一時的にセキュリティシステムとしての道を失い──ただのレイドボスとなる。


さあ、大詰めだ。

そうは言っても"星辰獣(セーマ・シリオン)オメガ"を全力稼働してギャラクシー階層を壊されたら敵わないからね。


──始めよう。


「サティス、ウルフ。勝負は一瞬だ。任せたよ」


「うん。存分にやっちゃって」

「……ワンコの敵は取ってもいいんだよな?」


「うん。じゃあ始めようか。【氷砂世海(イェライスン・ティル)旅行記(・エィスロッタ)】──ver.2!」




──◇──




──星河と雲海が凍結する。

氷の城が生み出され──その中へと巻き込まれる。

177階層と【氷砂世海(イェライスン・ティル)旅行記(・エィスロッタ)】が連結された?

何故だ。レイドボス()は許可していない!


「この【氷砂世海(イェライスン・ティル)旅行記(・エィスロッタ)】は、特別な隔離階層だ。

まず【夜明けの月】しか持っていないという事だけれど、一番大きなところは──」


星竜が次々と凍っていく。

玉座には──見覚えのある、褐色の魔女。


──"アル=フワラフ=ビルニ"が鎮座していた。


「レイドボスである私が付属しているという事、です。

隔離階層を持たない大階層ならば、このように──勝手にver.2が可能なんですよねー。

お久しぶりです"カーウィン・ガルニクス"。とても元気そうで何より」


「……この……裏切り者!」


177階層は、ギャラクシー階層は私のものだ。

私が対抗できなくて、誰が──!




「余所見厳禁、だね。【虚空一閃】」

「じゃあなクソジジイ。【王の簒奪(キングスティール)】」




──人間が。

私の、身体を。

私を倒したのか。

人間、風情が──




──◇──




氷の城が崩れる。

やっぱり無理があったかー。かなり無茶したからね。

僅か30秒でver.2は解除、冒険者はすぐさま外に投げ出されたわけで。これはとても実用的とは言えないなぁ。


「……おい。ジジイはどうなった」


ウルフがベルを背負ってやってきた。いやどっちかって言うとベルが勝手にしがみついているというか。


「レイドボスとして負けたと言ってもそのうち復活はするよ。……まぁ暫くは無理だろうけれどね。

これで気兼ねなくレース出来るね」


「"星辰獣(セーマ・シリオン)"はどうなる」


「どうかな? 部下に使わせてみなよ。

僕の予想だと使えると思うけれどね。独立したアイテムスキルとして確立されていると思うよ。

そもそも見当違いのデータ収集研鑽が目的だったから、使ったところでこれといったデメリットは無いはずだし。

ギャラクシー階層の外で使えるかは知らないけれどね」


「……そうかよ」


「おや。戦ってかないの?」


「お前らどうせ追い付けねぇだろ。何もしないなら戦わねぇよ」


「そっか」


マックスと、セリアンは。

……やる気満々だねぇ。そりゃそっか。


「じゃあ、やるかー。やだなぁ」


「嫌ならやめろって……」


仕方ないじゃん。今の僕は【夜明けの月】なんだし。

……【飢餓の爪傭兵団】側にサティスとベルが居る事については、誰も触れないみたいだけれど。


「さて。もう少しくらい時間稼ぎしようか」


「んなケチ臭ぇ事言うなよスペード。全員ぶっ潰そうぜ!」


「hahaha! 程よく疲弊しているようだしネ! 商機(勝機)は逃すな!だよ、スペード!」


やる気あるなぁ元セカンドランカー組は。

あーあ。穏便に済ませる事もできたろうになぁ!

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