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BlueEarth 〜攻略=世界征服〜  作者: まとかな
竜星大河ピッド/ギャラクシー階層
436/507

436.それは捨ててはならない物で

【ギルド決闘】"最果ての(ボイジャー・フォー)観測隊(・ヘリオロープ)"


【飢餓の爪傭兵団】28名

【夜明けの月】22名(脱落4名、残機持ち10名)




──◇──




【第175階層ギャラクシー:龍上背ジヴァン】

隔離階層【森羅(ヴァン = )永栄(ジャダブ・)挽歌(マ・ジュリ)】ver.2──海底の森




【飢餓の爪傭兵団】三大幹部の一人

後衛支援部隊隊長"四枚舌"クワイエット。

マジシャン系第3職【マジックブレイド】の使い手──その界隈においては【Blueearth】黎明期から本日に至るまで実に三年間、一度の陥落も許さない"最強"の座に着いている。


ジョブ強化スキル【魔導煉鑽帝国(ガ・ストラ・ハーレ)】は【夜明けの月】とトップランカー合同でのジョブ強化スキル研鑽会にて披露済み。

その力は魔法剣と物理剣の混成。そして属性の統合。常に相手の防御力と魔法耐性の低い方の性質で攻撃し、最も耐性の弱い属性に切り替わる──常時弱点攻撃の強化スキル。

手数の多さがウリであるクワイエットには最適だ。


そして重ねて、"星辰獣(セーマ・シリオン)スパイダー"。

四刀流を超えた六刀流だけでも厄介この上ないが──"星辰獣(セーマ・シリオン)"が、クワイエットを()()()()()

一応さっきファルシュが"星辰獣(セーマ・シリオン)キャンサー"の殻に篭って防御したりしていたが、あれよりも……まるでクワイエットそのものを"星辰獣(セーマ・シリオン)"にしたかのような変化だ。


「ジョブ強化スキルと"星辰獣(セーマ・シリオン)"の混成って事? ……ふざけてるわね」


「しかもver.2だ。10人どころじゃなくて、丸ごと全員足止めするつもりみたいだな」


レイドボスの協力が必要な空間作用スキルver.2……【森羅(ヴァン = )永栄(ジャダブ・)挽歌(マ・ジュリ)】は175階層と融和し固定。こうなると隔離階層特効スキルでも破壊できない。

……とはいえ、やりようはあるが……。


先のデザート階層での騒動では、ver.2最中に他階層のレイドボスを無理矢理呼び出してジョブ強化スキルver.2を使ったりもした。が、アレは相当無理のあるやり方で……今回も成功するかどうかは分からないんだよな。


「"カーウィン・ガルニクス"! どうするつもりだ?」


「折角のチャンスだ。少し隔離階層を利用してギャラクシー階層を整備したい。

そう長くは拘束せんよ。ほほほ……」


……一応、多少は中立であろうとするつもりはあるみたいだな。

何にせよ──クワイエット一人で足止めされる事に変わりなし、か。


「……では。参る」


星蜘蛛は、ゆらりと揺れる。

──最初に応じるはジョージ。ドロシーに向かう致命の刃を受けるが──まだ五本の刃が余っている。

衝突音に反応したのは"無敵要塞"リンリン。思考は追い付かないが、接触音の方向から誰を狙ったかを推測して確認より早く【イージスフォース】をドロシーに対して発動。

第二の刃が防壁に弾かれる。第三の刃で壁を砕く。

第四の刃がドロシーを向く──前に、アイコが追い付く。既に展開していた赤の"仙力"で刃を弾く。

クローバーの攻撃が届く。第五の刃が弾かれるが──第六の刃が、ジョージを狙う。




「【チェンジ】!」




──クワイエットを後ろに跳ばす。クローバーの銃も、ジョージへの第六の刃も空振りに終わる。

俺はここでようやく、ここまで起きた事を理解した。

……速すぎるだろ。


「……ごめんジョージ。咄嗟だったのよ」


「大丈夫だよ。命があるに越した事はないからね」


ここで言っているのは……最後の【チェンジ】が無ければクローバーの攻撃が通った、という話だ。ジョージの命と引き換えに。

メアリーは……その辺の葛藤とかしてないだろうが。そんな判断ができる時間は無かったし。


「……ふむ。4、5人は潰したかったんだが。六刀流が聞いて呆れるね」


「──【キャノン:ファイアワークス】!」


問答無用。マックスの砲撃がクワイエットを襲う。


「止まるな! 今ので理解したぜ。クワイエットにペースを持ってかれたら確実に犠牲者が出る!」


「……流石、判断が早い。助太刀しよう──【ドロップアンカー】……!」


「なるほど、了解なのだ。【フルバースト】!」


バーナード、フェイの範囲火力組が動く。

──クワイエットの超高速戦闘、そして全ての攻撃を受け流す戦闘術。とはいえそこまで複雑な事をしている訳ではない……はず。

多分全ての行動において()()()を無意識に選んでいるんだ。選択肢が減れば、或いは増え過ぎれば動きは悪くなる。

──そして、範囲火力はもう一つの解決策にも繋がる。




「── 【不可視の死神(インビンシブル)】!」




【フェイカー】スペードによる、()()攻撃。全ての視界から外れた硝煙立ち込める中の星蜘蛛は、容易く背後を取られて──その六本脚の隙間から、背中に刃を突き立てられる。


──が。




「──【マギア・クロス】」




背後に現れたスペードを、二本の鎌が交差して捕える。

背中に刃を刺したまま──クワイエットは立っていた。


「スペード! 逃げろ!」

「──【ミスリーディング──」

「っ、【チェンジ──」


転移系スキル。そのどちらが通るよりも早く。

クローバーの身体は四散した。




「──びっくりした。僕、クワイエットには初めて負けたよ」


瞬時にドロシーの近くにリスポーンしたスペード。

……残機があってよかったよほんと。

しかし、スペードの【不可視の死神(インビンシブル)】を受けて倒れていないとは…… 【魔導煉鑽帝国(ガ・ストラ・ハーレ)】に無敵化は無かったはずだが。


「……恐らく"星辰獣(セーマ・シリオン)"のダメージ判定を()()()います。アイコの"仙力"のように、薄く薄く魔物の判定を羽織っているのでしょう。

……我が運命。相手をするのはクワイエット()()()()()()事は、理解していますね?」


イツァムナは終始考察に回ってもらっている。膨大な知識と判断力は、未知を相手した時に有利に働く。

……イツァムナの言う事も尤もだ。クワイエットをどうにかする必要はあるが、それ以上に──この隔離階層をどうにかしないといけない。あの"星辰獣(セーマ・シリオン)スパイダー"はジョブ強化スキル発動中のクワイエットの上に纏っているから、多分隔離階層さえなんとかなれば……。


「分かってる。そこを何とかするのが参謀の仕事だろ」


とは言ってみるが。もし隙が生まれればまたクワイエットが飛んできて、俺はそれに対応できない。

……うん。それはもう仕方ない。


「ドロシー」


声だけ掛ける。ドロシーは俺の考えを見抜いてくれる……はず。

だから、まぁ。申し訳ないんだが、頼む。

現状、クワイエットの動きを止めるために攻撃の手を止められない状況だ。いつリタイア者が出るか分からないからな。さっさとやるか……。


「……()()()()()()。どうぞ」


ドロシーから()()を受け取る。

さて、頑張るか。




「全員、攻撃を止めろ!」




堂々と。出来る限り大きな声で。

──クワイエットにも、"カーウィン・ガルニクス"にも聞こえる声で。

クワイエットへの警戒はそのまま、全員の手が止まる。

俺の方を振り返った連中は驚いている。そりゃあそうだよな。

俺の手元には──黄金の円盤。




「クワイエット! "ゴールドディスク"は俺が持ってるぞ!」




──一瞬。

クワイエットに思考時間はいらない。()()()が目の前にぶら下げられていたら、攻撃の手が止まっていたら。考える間も無く──俺を狙うだろう。


「【スイッチ】──【煉獄の闔(ケイオス・エイギス)】!」


「守り切れるか……【連牙壊刃】!」


六刀流の鎌が三つ、俺の【煉獄の闔(ケイオス・エイギス)】を弾き壊す。

ノータイムで残る三つ。こんなもん対応できる訳がない。




──()()、な。




「【チェンジ】!」


さっき対応できたメアリーは──俺と、()()()を入れ替える。

この作戦の怖いところといえば……後が怖いが。言ってられないんだよな。


「……ライズ……お前……マジか」


「……ふふ。()()()()()()。後で覚えておきなさいよね」


致命の刃三つに喰われるは──ツバキ。

一つでも致命傷だ。どうあっても耐え切れる筈は無い。

ツバキは憎らしげに──嗤う。

【呪術師】でもごく僅かにしか流通していない希少にして最上級の呪い。()()()()()──




「…… 【焔鬼の葬賊(エンド・ノート)】!」




──◇──




──その呪いは"焔鬼大王"の戯れ。その呪いは挑戦。

【Blueearth】が擺脱(はいだつ)した"死"の概念の再現。


天知調の計画に異を唱えるはずも無し。

世論なぞ興味も無し。

ただ、"焔鬼大王"── 那桐(なとう)傘座(さんざ)というプログラマーは、至極単純な理由でそれを生み出した。


「俺だけそれ(死の恐怖)を覚えてんのは気分悪ぃじゃん」


── 那桐(なとう)傘座(さんざ)は、ただ性格の悪さだけで人生を転落した男だった。




──◇──




──見えない。

──聞こえない。

──分からない。

思考が纏まらない。

これは知っているぞ。車に撥ねられた時とか、ちょっと躓いて階段転げ落ちた時の……何と言うか、一瞬だけ確実に思考も視界もぐちゃぐちゃになって覚えてない時のアレ。

というのを冷静に思考できるのは、きっと俺の特異性なのだろうが。どうすれば身体が動いてくれるのか見当もつかない。

うーむ、やるな【夜明けの月】。俺では誰も脱落させられなかったか……。

まぁ、それはそれだ。なっちゃったものは仕方ない。


──視界が一瞬だけ、何かにピントが合った。

──炎の円。それは──




「── 【炎月輪(レッドムーン)】!」




谷川譲二。娘を斬られてご立腹か。

悪いのはメアリーだよ。いや発案はライズか。

……うん。連携するにも利用するにも、仲間は必要だよなぁ。




──◇──




──【飢餓の爪傭兵団】クワイエット 脱落




「……被害は? ツバキとジョージと……」

「こんな感じね」




──【夜明けの月】

ジョージ

スペード

ソニア

プリステラ

サティス

ツバキ

──残機喪失。

残り22名、残機持ち5名。




「……化け物かよ。クワイエット」


「な? 二度と戦いたくねェだろ」


「対【夜明けの月】キルレート堂々の一位だな、これは」


「あたしを殺したのはクワイエット計算でいいのかしら? ライズ」


「んぐっ。とりあえず土下座から入らせて貰えないだろうか」


「一度下げた首をそのまま斬り落とすけど、いいかな?」


「許してくださいお父さん、被害が増える!」

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