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BlueEarth 〜攻略=世界征服〜  作者: まとかな
氷砂先陣ブルード/デザート階層
410/507

410.過去が足を掴む

隔離階層【氷砂世海(イェライスン・ティル)旅行記(・エィスロッタ)


上位層頂点最下層──16:25/???


水晶髑髏は天を仰ぐ。

"スプレマシー・スペード"は空の底を覗く。


今の【氷砂世海(イェライスン・ティル)旅行記(・エィスロッタ)】は言わば弾丸だ。

【NewWorld】という広大な世界に撃ち込まれた【Blueearth】という毒の弾丸と同じように、【Blueearth】の外側に居る天知調に撃ち込む弾丸となる。

そのため、あくまで隔離階層。【Blueearth】の外側に存在する隔離階層はそれに最適だ。


"拠点防衛戦"でのみ、そこ氷の城は【Blueearth】に()()する。ただ、近付きすぎるとすぐに天知調に捕捉されてしまうので……"黒の檻"の強制収監能力を"灰の槌"で概念他して、無理矢理【夜明けの月】を転移させた。

天知調撃墜のためのデータが欲しかったんだよね。灰の槌でルールを補強して、倒した【夜明けの月】を灰の傀儡にする。そのデータを集めてこの隔離階層を補強する。それが目的。


……そう。僕の敵は天知調。【Blueearth】も【NewWorld】もどうでもいい。もちろん天知調を倒すために必要であれば【NewWorld】ごと壊すつもりではあるけれど。


「──本当に、毒でしかないな。僕は」


【夜明けの月】は強者揃いだが……その内部事情を僕は把握している。ピンポイントにメタ張って、じわりじわりと味方も増えた。

後は"道"となる可能性を断てば……。"アル=フワラフ=ビルニ"が玉座の間で大人しくしてくれていれば、サティスとスカーレットが何とかしてくれるだろうか。




「【チェンジ】」




──雲に()()はドレスの少女。

黄金のそれには劣るけれど、随分と似合うようになったじゃないか。


「やぁ、ギルドマスター。強気な訪問だね」


「久しぶりねスペード。それで、釈明はある?」


さっき一瞬だけ出会ったけれど。あの時はブックカバーと一緒に不意打ちしてから逃げたよね。

……そこには、メアリー。ブックカバーにマックス、プリステラか。


「随分とデカくなったわね。【夜明けの月】のレイドボス担当、"エルダー・ワン"から譲ってもいいわよ」


「……この期に及んでまだ味方面かい? 僕はハッキリと【夜明けの月】を裏切ったのだけど」


「知ってんでしょ。【夜明けの月】は来るもの選んで、去るものは死ぬまで追いかけ回すわ。

……ちゃんと選んでんのよ。アンタが今更裏切ったりしないでしょ」


……ただの小娘だったのに。

いや、そんな事はないか。

ただ姉へのコンプレックスだけで、人類未到の【Blueearth】潜入を成功させた人間だ。最初っから大層な子だった。

全て見ていたから、分かる。彼女は立派だ。


「事実、裏切っているよ。もうそちらには戻らない」


「戻れるわよ。フューチャー階層みたいに事前の手回しなんて何もしてないけれど、あたしは既にルートを作ったわ」


「……本当に、君とライズのどっちがリーダーでどっちが参謀なのやら」


「どうだっていいわよそんなの。戻ってこいとは言わないわスペード。引き摺って持ち帰るから」


会話は終わる。これ以上会話で得られるものはない。

──マックスでさえ大人しく黙っていたのは驚いたな。


「── 【全知全能(マグス・マギヌス)】!」

「出番だなぁ!【DEAD MAN’s SEA ROVER】!」

「派手に頼むわよ。【祓魔審判(セイラム・コール)】!」


三種三様。ここに来て散々見てきた、ジョブ強化スキルの乱用だ。

見事なものだよねぇ。壮観だ。

あまりに理不尽だけど、なんとか倒せればこっちの駒になる。頑張ろうねぇ。


「ミカン嬢がおらぬ以上、足場の問題がある。メアリー嬢!」


「ええ。【召喚サモン】──"浮雲童子"!」


メアリーのサブジョブ【ハイサモナー】は……選択肢がウリのサモナー系。雲のような魔物が次々現れて空に浮かぶ。

僕もここで戦うつもりは無かったから足場なんて無いのに、急拵えで用意するとは立派なものだね。


「行くぞスペード! 【テンペスト】【ブラックホール】!」

「全軍砲門構え!【ドロップアンカー】ぶち込めぇ!」


容赦ない高火力の魔法と砲撃。

全ての魔法を同時に使える 【全知全能(マグス・マギヌス)】に、骸骨兵を無尽蔵に利用できる【DEAD MAN’s SEA ROVER】。魔法と物理の物量勝負は対レイドボスに有効だね……!


レイドボスとなった僕は【ブラックホール】の影響なくともあまり動けない。が、この程度では倒れないよ……!


「こっちからも行くよ。【スペードレイン】!」


降り注ぐは黒き死のひとひら、その雨。

正式なレイドボスではないので、バグなので。インチキ多めに失礼するよ!


「──痛ぇ! え、()()()!?」


「範囲はそこまでではないのである! 吾輩は無敵ゆえ、嬢よ!」


「ダメージ判定の話じゃないわよ! 【チェンジ】!」


雨の有効範囲は比較的狭い。メアリーの【チェンジ】で城の裏側に逃げられたか……。

だけど、範囲はいくらでも広げられるんだよね。


「さあ降り注げ、死の雨よ!

忘却を許すな。これは人間への罰である!」


死の葉が降り注ぐ。

これにそこまでの()()()()は無い。

だから回復に意味はない。さぁ、かかっておいで【夜明けの月】!




──◇──




──side:メアリー


転移によってスペードの後ろ──城を挟んで逆側に逃げたけれど、黒葉の雨は広がっている。


あたしの腕にも刺さって通り抜けた。プリステラが診たところ……ダメージは無い。


()()への干渉か。思えばこの3年間、痛みなぞすっかり忘れておったな」


「頭カチ割られても死にはしなかったからなぁ。新鮮な痛みだぜ」


「バグの本領発揮ってところかしら? どうする、メアリーちゃん?」


「随分と非道な真似をしてくれるわねスペード。……自分は【Blueearth】での痛みしか知らないくせに」


予想外の切り口だったけれど……これはまた、困ったものね。

つまりスペードは、人類が脱却したものを取り戻させる事ができる。意図的に封印したステータスを無理矢理元に戻す事が出来るという事ね。


……とはいえ、不完全。


テクスチャバグもそうだけれど、今のスペードは表面的なものしか書き換えられてない。だとしたら……。




「ライズ式で行くわ。あんた達、行ける?」


「おうよ。ジジイはやめとくか? ショック死するぞ」


「吾輩、【Blueearth】突入前はジムとサウナが日課であった。舐めるなよ餓鬼共」


「……そういえば、お年の割に凄いムキムキよねぇブックカバーさん。惚れるわぁ」


「んむ、むぅ。プリステラこそ、婦女に耐えられるような戦法ではないのだが」


「甘く見ないでよ。私、これでも元軍人なのよ?」


「えっ」


……何か予想外な話が出てるけれど、それよりナチュラルにあたしを婦女から外してなかったかしらブックカバーさん。


ともあれ。やる事は単純ね。


「満場一致ね。ジョブ強化スキルの時間が惜しいわ──【チェンジ】!」


またしても。死の雨の中、スペードの前へ飛ぶ。


「【キャノン:ファイアワークス】! 弾丸のついでに骸骨も飛べ!」


「【ホーリーブラスター】【アイシクルエッジ】! 大盤振る舞いである!」


「──"認定"! "スプレマシー・スペード"を悪魔に!」


スペードがリアクションするより早く。

魔法と爆撃で視界を遮り、プリステラの【祓魔審判(セイラム・コール)】を通す。

祓魔審判(セイラム・コール)】は一方的な悪魔認定──要するに、相手を強制的に特効対象にして弱点を突き、こっちへは全ての攻撃を反撃させるという単純に酷いスキル。"認定"にはすこし条件があるけれど……通った!


「──すごいねメアリー! もう雨の対策を?」


「ええ。あたし達は【夜明けの月】だもの。

──所詮データはデータ。痛みもデータ。()()()()()!」


「それ対策じゃないなぁ! 痩せ我慢ゴリ押し作戦よくない!」


「ふはは! ライズはそういうものであろう! 【フレイムランス】!」


クローバーじゃないけど、超火力でゴリ押しできれば単なるレイドボスでも倒せるはず。

あとは、なんとか避け続けるだけ。雨は無視して、痛みに耐えて!

……雨といえば、ライズと初めて出会ったのもそうだったわね。だから何だって話だけど!




──◇──




上位層氷の城──16:30

──side:ソニア


サティス様とスカーレット様。2人の猛攻はバーナード様が受けています。

……いえ、受けているのはリンリン様。

肥大化した大盾を持ち、そのまま戦場を駆け回る戦女神。

ジョブ強化スキル【矛盾崩御(コンブリード)】は、範囲内全ての攻撃()()をその身に受ける……ハズレスキル。

いくら防御に優れた【フォートレス】といえど、全ての攻撃を距離関係なく受け続けるのは不利ですわ。わたくしのようなヒーラーが付いていなくては使い物になりませんことよ。

……真っ当な【フォートレス】であれば、ですが。


「──【虚空一閃】」

「【デスペラード】」


「……【ドロップアンカー】!」


サティス様とスカーレット様、2人の猛攻を防御すらせず殴り返すバーナード様。その身体には傷一つありません。

その全てを、リンリン様が受け続けています。


『む、無茶な……!』


「無茶も通せば覇道ですわ」


わたくしの前でドン引きしてあそばれているは氷の魔女"アル=フワラフ=ビルニ"。

──わたくしを唯のサポート要員として見ていたのか、余所見とは感心しませんわ。わたくし、もう貴女の頭上にいますのに。


『……え、どうしてそこに──』


「この世はなべて、"弱肉強食"ですわ! 【ブレイブスラッシュ】!」


大剣による一閃。人より一回り大きい魔女を両断──とまでは叶わず。

"アル=フワラフ=ビルニ"の周囲の氷から放たれたレーザーがわたくしを貫きます。ですが、無傷。


──わたくしは知っています。

調様の努力を。調様の愛を。

泥を啜る覚悟で財閥の階段を駆け上がったわたくしにとって唯一輝く、無垢な愛を。


わたくしは知っています。

生存本能すら凌駕する、一見して不要な行動の原動力──"覚悟"を。


「【聖なる十字架】を、リンリン様へ!」


着地と同時にバフをリンリン様へ。

【神気楼】は"弱肉強食"──戦えぬ補助要員に生き残る道無し。

それでも、剣を取らずにここに在るというのならば。

その"覚悟"、見届けましょう。


「──ここは"拠点防衛戦"! 正規のレイドボスである"アル=フワラフ=ビルニ"を倒せば"拠点防衛戦"は解除されます!

"覚悟"ぶちかましあそばせ、リンリン様!」


鉄塊が。

蒼き大盾が、跳ぶ。


「──はい、お任せ下さい!」


"無敵要塞"が空を駆ける。

矛盾崩御(コンブリード)】の隠された仕様。

それは、()()()()()()()の判定を保存する事。


蒼き大盾が──赫く輝く。




1()0()0()()()()です──【リアクティブ・カウンター】!」




──赫の光が、氷の魔女を撃ち砕く!

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