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BlueEarth 〜攻略=世界征服〜  作者: まとかな
氷砂先陣ブルード/デザート階層

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400/507

400.氷の魔女を求めて

【停滞の極光 アル=フワラフ=ビルニ】


デザート階層のレイドボス。

()()()()()()()()()()を一夜にしてデザート階層へと変容させた、砂漠の魔女。

水を司る彼女は、全ての水分を奪い砂漠を創り上げ──その水分で氷の柱を創り上げた。

歪なるデザート階層の覇者。砂漠に聳え立つ氷の城の魔女。


氷の城はデザート階層の各地に出没する神出鬼没な存在であり、【ダーククラウド】の情報によるとトップランカー攻略の際は出現の記録は無し。ブルード滞在中は稀に目視で確認した記録はあり。


"フワフアント"は基本的にブルードから外に出ないが、高頻度の世代交代と人間並の知能により情報記録伝達機能が充実。大図書館には各所に氷の魔女の記述あり。

……トップランカーと【セカンド連合】は攻略に関係の無い図書館を探索していない様だが、かなりの情報が眠っている。もしかすると氷の城の位置を推定する事も可能かもしれない。


女王は2mを超える巨体で、ものぐさで引きこもりらしい。稀に地表に出てしまった"フワフアント"を助けて返したりもするらしいが、それが事実なのか伝説なのかはハッキリしていない。


また、"フワフアント"はブルードに適応した成長を果たしているため、この魔女が消えてデザート階層が元通りになると高温で絶滅するらしい(砂漠の緑化より絶滅の方が早い)。

そのため魔女の事は、"間違いなく悪い奴だが消えてほしくないし事実上恩人"として扱っているらしい。




──◇──




【第160階層 氷砂先陣ブルード】

冒険者用宿屋"ヒトヅカ"


──17:45

【夜明けの月】ブルード到着から5時間経過。


基本的には氷で固められた砂壁を削って部屋が作られているが……しっかり固められた上に通路はガラスで補強されていて、地下でありながら華美なガラス細工が散りばめられている。シャンデリアとか凄い綺麗だ。

洋風の高級ホテルと言っていい。ベットに使われている綿は……ドラマ階層の"アクロコットン"のものだろう。アドレ王国軍を通して、こんなところで物資が流通しているとはな。


「……以上が、この5時間でイツァムナ君とブックカバーさんと一緒に調べた氷の魔女"アル=フワラフ=ビルニ"の情報だ」


ジョージの報告は正確だ。"最強の人類"谷川譲二は情報収集もお手のもの。しかもサブに【象牙の塔】の二人もいるからなぁ。

上記の報告は、【夜明けの月】ほぼ全員でブルード中の"フワフアント"達に聞き込みをしてかき集めた情報もあるが、その殆どは図書館のものだ。あと数日は図書館で情報を洗った方が早いか。


「……うん。何処にいるかは分かったけど、その場所が何処にあるのかは分からないわね。

【ダーククラウド】の情報的に……いざ攻略ってブルードを出て行って、その途中に見つかるかどうかは賭けってとこかしら。あまりアテにはできないわね」


現状、魔女"アル=フワラフ=ビルニ"を見つけるためにはどこかにある氷の城を見つけなくてはならないのだが……それの記述が見当たらない。

効率が悪い、とクエストを破棄する事も可能ではあるのだが……。


「出来るだけ叶えてあげたいのよね。ここまでマトモで敵意を向けてこない階層ってこれまでそうそう無かったし……謎のバグとかイシュテルとか【セカンド連合】とかみたいな敵もいないからね」


そう。

我々【夜明けの月】は事あるごとに面倒事に絡まれていたが……今回は、本当に珍しく面倒事が絡んでいない()()()()階層攻略なのである。

ぶっちゃけ攻略自体は急がなくてもトップランカーは190階層で足踏みしてくれるから、多少の寄り道も目を瞑れる。どうせデスマーチで取り戻すし。

女王蟻"クイーンアント"からの誠意ある依頼。そして何より──


「報酬も気になる事だしなァ」


クエスト名:【砂漠の神秘を掘り当てよ】

報酬──"ちいさなせかい"×1


詳細は説明されていないが……"ちいさなせかい"と言えば、なぁ。


「推測に過ぎないが、この報酬"ちいさなせかい"は……多分隔離階層だ。

隔離階層そのものはセカンド階層の宝珠関係なく、アイテムとして存在している事は確認済み。【草の根】しかまだ見つけた事は無いが……」


【夜明けの月】のヒョウ爺の持っていた懐中時計……【時計塔の(ディタイム)十二の束縛(・オブ・ベン)】は、ほんの短時間だが隔離階層を展開するものだった。あの隔離階層内ではジョブ強化スキルは使えないみたいだが、ある事にはある。

だが、そういう類のものじゃないだろう。多分。


「宝珠と宝珠対応アイテムが流通した今、もしこのアイテムが新たな宝珠に相当するものなら相当なアドバンテージである。

……こういう時にレイドボスの視点が欲しいのであるが……」


ブックカバーがちらりとバーナードを見る。

"エルダー・ワン"が不在の今、この手の話をするには例外デパート男バーナードにかかっているのだが。


「……俺は……"カースドアース"ではあるが……レイドボスとしての情報は、あまり……」


「"スフィアーロッド"は?」


「……フューチャー階層での騒動で……少し思うところがあるらしく……ここ暫くは表に出ていない。

出たとして……そこまで身のある話は聞けんだろう……」


「うむ。"スフィアーロッド"には期待しておらん」


……まぁ、そうだな。レイドボスでもセキュリティシステムでも無いしなあいつ。

俺としてはアクアラでの"廃棄口"事件といい、あちらこちらで助けて貰っているから恩はあるが……アテにはしていない。


「うーん。161階層でレベル上げと情報収集は出来るが、それ以降を確認のためだけに進む訳にはいかねぇよな? するってーとブルード内にいる間に氷の城の探し方を見つけねーとならないのか?」


ジャッカルは特に原住民とのコミュニケーションを担当してもらっていた。……なんというか人格に難がある【夜明けの月】メンバーにとって、こいつのマトモさはかなり重宝する。アイコは逆に強過ぎて神聖視されるし。

というかエンブラエルとソニアとジャッカルのジャングル階層三人衆が安定し過ぎている。ギルドマスター経験者だから単独行動も集団行動もできるし、冗談以外で我を出し過ぎないし。

聞こえるかマックスとブックカバー。あと冗談が基本的にタチ悪いセリアン。あと俺。しっかりしろよなまったく。ごめんなさい。


「【朝露連合】からの追加物資は三日後の12時。17時に攻略を開始する予定よ。

とはいえ今回の報酬は魅力的で、それにレイドボス候補からの直々の依頼。出来るだけ叶えたいところだわ。

よって明日一日は調査日とします。クローバーとリンリンのレベル上げ最優先コンビを中心に10人は161階層でレベル上げ。残り16人は調査に回るわ。

明日の17時にここで集めた情報を再確認して、その後の事を決めるという事で。今日は全員眠る事を許可するわ」


ジェイモン出発から睡眠は取らずにゴリ押ししていたからな。4時間の休憩で仮眠するのを想定していたが、結局は睡眠デバフを割り切ってそのまま起きてる奴の方が多かった。とはいえ寝れるなら寝るのがいい。

ベルの言うように、まだ記憶が戻って間も無い連合軍組は睡眠の習慣が残っている……というか、睡眠に限って言えば俺たち【夜明けの月】組だって習慣にしている。


「よーし夜通し女子会するわよ」


「ちゃんと寝ないとダメだよメアリーちゃん」


「我が運命の部屋はどこですか?」


「haha.それ聞いてどうするつもりだいイツァムナ。ワタシにも教えたまえよライズ」


「吾輩とジョージとの相部屋であるが?」


「「素直に寝まーす」」


……修学旅行気分だな。大半が成人済みなんだが。




──◇──




──夜中。


睡眠は人間にとって必要なもの。

……現実の場合は、に限るけど。

【NewWorld】の人類電子化計画では、10年かけて全人類の睡眠時間を短くするという計画が立てられている。睡眠とは脳と身体の休息のためのものだけれど、電脳世界においては不要だからね。


とはいえ電脳側からすれば人間という超思考生命体を再現するのは負担が大きく、例えばゴーストはその上で"廃棄口"の管理も行っているため連続24時間の稼働が出来なかったりする。そのため最初の頃は突然数分フリーズして休息を取っていたりしたけど、それがメアリーにバレてからは一緒に睡眠するようになったそうで。


つまり、僕には睡眠の必要は無いわけで。

同室のジャッカルとクローバーが起きないよう、毛布から抜け出して部屋を出る。

働き蟻に夜は無い。"フワフアント"は交代制で24時間労働しているから、昼間と変わらない交通量だ。

……頭上、地表の割れ目から見える夜空にはおおきな月。あれはテクスチャだから、あの位置に【NewWorld】の月は無いけど……そういえば【コントレイル】のマスタングは月に届いただろうか。


「やぁスペード。良い夜だね」


……実は、彼と夜に逢うのは一度では無い。

宿から抜け出す僕を諌めるのは分かるけれど、先回りできる理由はわからないなぁ。


「こんばんはジョージ。君さぁ、人間だよね? 僕、君が寝たところを見た事ないんだけれど」


「せっかくゲーム世界に来たのだから、不眠訓練の継続挑戦中なんだ。とはいえ日中数分仮眠しているから不眠デバフはそこまで課されていないけどね。

【Blueearth】突入して以来、寝てはないね」


笑える。ゴーストが人間らしく睡眠するようになったのに、人間がゴーストみたいな生活してるよ。

このジョージが、それはもう……それはもう僕の事を警戒してくるんだよなぁ!


「悪い事しないよー?」


「スペード君を一人にしない、というのは【夜明けの月】の決定事項だろう? また夜の散歩と行こうじゃないか」


うーん逃げられない。仕方ないか。

ジョージだって別に疑ってはないだろうし。それにジョージなら都合がいい。

何処へ行くかは、聞いてこない。僕の行き先に合わせてくれるみたいだ。二人して並んで歩く様は側から見れば微笑ましい少年幼女だろうが、僕は本来成人男性の肉体だったし、隣の女児は40代のゴリラなのだ。諸行無常。


「時にスペード君。俺は一つ気になるんだが」


「多分、僕も同じ事考えてるよ」


「ほう。では聞くけれど……。

デザート階層のレイドボス"アル=フワラフ=ビルニ"が消えかけてしまう要因って、今となってはそう多く無いと思うんだ」


「そうだね。セキュリティシステムに干渉できる存在なんて限られている。レイドボス仲間だとしても"MotherSystem:END"以前の子達とは全員出会っているから、ここに来てそんな事をするとも思えない。

天知調がやらかすとも思えない。

天知調の近くにいるデュークならやりかねないけど、ライズの利益にならない限りやらないと思う。

あとは唯一顕現している170階層のレイドボス。でもアレが何かするならわざわざ別の階層にちょっかいかけるより、今自分の階層にいるトップランカーに触れるだろうね」


となると、もう要因は一つしか残されていない。

ジョージは最初から口には出していないけれど。きっと、それを気にしていた。


「……バグ()だよね。

多分"アル=フワラフ=ビルニ"は何かしらの不具合、致命的挙動……バグに侵されている。

一応言っておくけど、ここにいる僕が何かしている訳じゃないよ」


「そこは疑ってないよ。だが、スペード君自身が思い詰めている事が疑問だ」


「……僕が? そうか。ジョージの観察眼でそう視られているならそうなんだろうなぁ」


僕は、何もしていない。

……【夜明けの月】は居心地がいい。今の僕は、【至高帝国】をやってた頃の……人間との共生を楽しむ僕の、延長線上にある。

それでも、バグである事は事実。

【Blueearth】で発生する全てのバグは、僕に責任がある。


「"アル=フワラフ=ビルニ"の現状は、正規の挙動ではない。間違いなくバグっている。

"カースドアース"がサバンナの台地に封じられていたように、恐らくは氷の城の出現条件が満たされなくなっているんだろうね。

だから【夜明けの月】があと2日調査を続けたところで意味は無いし、ブルードを発ったとしても"アル=フワラフ=ビルニ"を見つける事はできない」


ジョージは、愛剣【ヴィオ・ラ・カメリア】を鞘から抜く。

……簡単には行かせてもらえないか。


「一度だけ聞くよ。……通してくれる?」


「単独行動は規則違反だよスペード君。夜明けまでに済む問題ならご一緒したいが」


「それは無理だ。メアリーに言っておいてくれ。

──スペードは、【夜明けの月】を脱退すると」


「知らない訳が無いだろう?

【夜明けの月】は、来るもの選んで去るものは徹底的に追いかけ回す」


「いやーなギルドだなぁ!」


相手は"人類最強"谷川譲二。

でも、まぁ。僕は人類じゃあないのでね!



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