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BlueEarth 〜攻略=世界征服〜  作者: まとかな
忘却未来ジェイモン/フューチャー階層
389/507

389.夜明け:呉越同舟

【第110階層 不夜摩天ミッドウェイ】

【満月】本拠地兼【井戸端報道】第1編集部本拠地

"フルムーンタワー"

──応接室


「──映ってます? 先輩」


「映像ok.マイクok。いつでも行けるわよ」


タルタルナンバンとパンナコッタ。【井戸端報道】のトップ2。

今回は【Blueearth】全体への放送のために力を貸して貰ったわ。……大混乱は必死だけれど、これは必要な事だか、


「いくわよ後輩。3.2.1……」


「──はァイ! 皆様、緊急にて放送しております! 届いていますでしょうか!

現在、【Blueearth】中の【井戸端報道】放送機器の届く所全てに! 生配信させて頂いていまァス!

原住民の皆様方におきましては、ご迷惑をおかけしますが! 少々失礼しまァス!」


──出だしは、ここ暫くの問題について。

【井戸端報道】は元よりアドレ王家に認定されたギルド──【アルカトラズ】とも繋がりが深い。

最初に、お姉ちゃんが直々に出て説明をした。

【Blueearth】がお姉ちゃんの我儘のために作られたこと、皆を共犯者にしたこと。そして、それが間も無く成されようとしていること。


(アンタを助けるために【Blueearth】を作った、ってところは触れられないわねハヤテ)


(あくまで要因の一つであって本命じゃないよ)


──アクアラで"LostDate.ラブリ"と対峙したあたし達は知っている。

そもそも【Blueearth】計画が始まったのは、【NewWorld】計画でロストしてしまったハヤテ──黒木翔を助けるためである事。

【Blueearth】の運営が始まった頃には、もうお姉ちゃんの目的は果たされていた事。

……その結果としてお姉ちゃんは、自分が世界の悪役を担う事を決意した。ハヤテの問題が無ければ、もっと上手くやってたのよ。

だからこそ、お姉ちゃんの覚悟を認めているからハヤテの事は許すし──お姉ちゃんを悪役になんてさせないけど。


「──続きまして! トップランカーよりの緊急報告でェス! お三方、どうぞ!」


ハヤテとグレンとウルフが向かう。

──内容は、先日の取り決めの通り。

正義のトップランカーが──悪の【夜明けの月】を迎え討つ!

その行末を、【井戸端報道】によって放送する。


「──もう、ここまで来れば全ての冒険者は他人事では済まない。皆がどう考えていようと、結末を見届ける権利はあるはずだ!

だから俺達は全て隠さず、【夜明けの月】との戦いを届ける。誰を応援するのも皆の自由だ!

ただ、覚えておいて欲しい。この3年間は、我々がこの【Blueearth】で生きていた事は、罪ではない!無駄でもない!

我々は、明日を勝ち取るために戦う。叶うなら応援をして欲しい!」


演説はグレンが主体。人気の問題もあるけれど……【Blueearth】に巻き込まれた一般人代表は、グレンとウルフが相応しいわよね。

そして、最後にあたしの出番。




「……ふはははは! 長い間騙されちゃって滑稽ねぇ【Blueearth】の庶民諸君! あたしこそが【Blueearth】を混乱と混沌に陥れる悪の組織の総帥、【夜明けの月】のギルドマスター! メアリー様よぉ!」




──◇──




【第150階層 忘却未来ジェイモン】

──太陽の間直下、中央広場


放送が終わるまでは、一先ず全員がここに残っていた。この後にレベル上限解放の話が回ってくるため、わざわざ戻る事も無いだろう。


記憶が戻れば意外な関係性もある。特に、()()、天下のブックカバー様なぞは──


「──おい、()()


ふざけた格好こそしておるが。

【至高帝国】のハート──黒木隆起。

吾輩の教え子の声を忘れるわけがあるまいよ。


「大道寺先生。お久しぶりです」


「そのふざけた格好は何か。息子達に顔向けできるのか?」


「出来ないので顔を塞いでおります」


「外して服を着ろ……」


何故こうなったのか。

粗暴ではあったが裸族では無かったはず。罪状が変わってくるぞ。


「息子が娘になったり、息子が息子だったり、色々ありました」


「息子は息子であろう。で、殴り合ったか?」


「長男と一度だけ。次男とは剣を合わせる事もありませんでした。まぁ今時、暴力で対話など必要ないでしょう」


「ふむ……変わったな」


妻も娘もいる立場であるが、この黒木の事も……口には出さんが、息子のように思っておる。今は、な。

よもやあの暴の化身が、暴力無しで事を済ませるとは。成長したものである。

吾輩は取り残されるのみ、老いて孤独であるか。


「んぁ、ブックカバー先生だし! おひさ」


「……ブックカバーさん……今ならば声を掛けても良いですかね」


「む。ナギサ……でなくダイヤ嬢。それにクワイエットか。懐かしい面々である」


「……トップランカーの魔法系ジョブの連中は……大抵は【象牙の塔】か、それ以前に貴方の教えを受けていた者ばかりだ。立場上感謝申し上げるタイミングは無かったが……今なら丁度いいと、思って」


みやれば、そこそこ見知った連中が声を掛けにきておる。

……やれやれ。記憶が戻ったというのに、このようなジジイに群がりおって。もう少し思う所があるべきであるが……。


「人気で結構ですね大道寺先生。貴方の周りにはいつも人が集まっていた」


「たわけ。貴様らのせいだ」


……うむ。ライズらが帰ってきたら……現実の妻と娘の処遇について聞いておこう。

この土産話は忘れたくないものである。




──◇──




──数分後。


放送組が戻ってきて、会議再開。


「──今、最前線は170階層までいる。レベル上げと攻略を合わせて、170階層・180階層・190階層で構える事としようか」


「190階層……? 随分とギリギリだな。俺たちに追い付かれるだろ」


「君達がたとえ先鋭を揃えていたからといって、たった二十数名で攻略できるほどこのフューチャー階層も次のデザート階層も楽じゃないよ。それに、【夜明けの月】を返り討ちにした後は容易くゴール出来る」


提案したのはグレン。次の160階層から始めたかったが……ああも啖呵を切った手前、"レベル上げで負けそうだから早く戦いたい"とは言えないよなぁ。


「……じゃ、それで行きましょう。それでレベル上限解放についてなんだけれど……ライズ!」


「おう。じゃあその辺の説明のついでに、宝珠とそれによる特殊スキルについての話もさせてもらう」


空間作用スキル。これが俺たち【夜明けの月】にとってトップランカーを討ち倒すための一手であるんだが……残念ながら独占は出来ない。

そこの報告もしなくちゃいけないんだよな。


「レベル上限解放手段の説明を先に端的に説明する。相当引き延ばしたからな……。

ズバリ、キーはロスト階層を彷徨うアザルゴン王だ。

レベル150に到達した冒険者が、王に宝珠を献上する。そんだけ」


「……そりゃ単純でけっこう。宝珠ってのはセカンド階層にしか無いんだっけか?」


「いや、今回の騒動で全ての階層に出現するようになった。個数制限も無い。

以前より格段に入手するのが容易になっている。一番早いのは多分、ミッドウェイだな。普通に金で買える」


「そりゃいい……いや、流石にこの人数全員分は買えねぇか……」


「【草の根】と共同で少し調査させてほしい。こっちも宝珠の獲得条件は調べておきたいんだ。ここにいる全員がレベル上限を解放するまでレベル上げは無し、でどうだ?」


「それは助かる。こっちは人数がいる分スタートが遅れると思っていたからね。ウルフもいいよな?」


「ああ。こればかりは"妖怪再起"様を全力でバックアップさせてもらうぜ。だからそっちの【マッドハット】と【朝露連合】も手ェ貸せよ。人海戦術にゃ金と物が必要になる」


「haha.どうする少年?」


「私は構わないわ。でも、決めるのは【夜明けの月】よ。ライズじゃなくてメアリーね」


「……うん、そうね。一時的に協力関係に当たるのは悪くないわ。それで行きましょう」


ここでスムーズに協力関係になれたのは大きい。

ただ宝珠を手に入れたらいいって話じゃないからな……。


「既にイツァムナがロスト階層の宝珠を手に入れているが、空間作用スキルというのは宝珠を持つだけでは発動出来ない。

空間作用スキルに対応するのは、その宝珠に対応したアイテムを所持している場合だ。

内部データ的な話になるが、【Blueearth】外部に漂う小さな階層を今いる階層に呼び出す形になる。だからその小さな階層が存在するかどうかが問題で、つまり……空間作用スキルが使える宝珠は、セカンド階層の7つなんだと思う。

もしかするとそれ以外の階層にも隔離階層が存在するのかもしれないが、空間作用スキルを使いたいならセカンド階層のものを使うのが一番確実だ」


──それはそれとして、独占はするが。

ミッドウェイみたいに金で解決されてしまう所もあるが……最優先は宝珠になるだろう。対応宝珠と対応アイテムが分かれている都合、アイテムをギルド内で回して使うのも難しい(そのアイテムに対応する宝珠を持っているかは別問題なので)。


尚、調査の結果対応宝珠は切り替える事が可能だが、使える空間作用スキルは一つまでと判明。

……調査の中心は宝珠の獲得に焦点を当て、出来る限り対応アイテムの入手方法についてはぼかす方針とする。それさえ無ければ隔離階層は使えないからな。


「今の私は【ダーククラウド】だが……【草の根】は私が連れて調査しよう。セカンド階層以前の79階層を中心に探させてもらう」


スワンが立ち上がってくれたのは助かる。【草の根】の協力ったって、実質的に【草の根】はここからあぶれているからな。俺やトップランカーに従う義理も無い立場だ。


「よし、【飢餓の爪傭兵団】! "妖怪再起"及び【草の根】を全面支援だ!手数が必要な作業は任せやがれ」


「頼もしいな【飢餓の爪傭兵団】。……よし。じゃあ体制とか整えたら改めて調査再開だ!

また、今回の戦い……そうだな、"【Blueearth】争奪戦"は、【井戸端報道】によって【Blueearth】中に放送される! そこんとこよろしく」


話は纏まったが──

この時なんとなく言った"【Blueearth】争奪戦"は、きっちり正式名称として使われてしまうのだった。

じゃあもう少しマシな名前にしたのによー。




──◇──




「ライズ。メアリー。【夜明けの月】の財布、寂しいんじゃない?」


「それはまぁその通りだけど……え、ベル。何この大金」


「……【満月】連合名乗ってたのは【セカンド連合】とも【夜明けの月】とも関係ない立場にするためだからね。ここからは【夜明けの月】連合として協力するわよ」


「流石ベルだ! じゃあこれは……」


「そう。利子無しで貸してあげる」


「あ、くれないんだ」


「そりゃそうよ。商売舐めんな」

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