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BlueEarth 〜攻略=世界征服〜  作者: まとかな
忘却未来ジェイモン/フューチャー階層
386/507

386.夜明け:黒幕会合

【第0階層 城下町アドレ】

レストラン&冒険者ギルド【祝福の花束】


──あの日から、【Blueearth】全体がざわついているわ。

この【祝福の花束】も、今は全員にギルド活動を中断させてるわ。

ギルドマスターとして、このグレッグ── 暮石 礼司。大切な我が子達は守らなくちゃね?


突然冒険者全員に現実世界の記憶が戻って、混乱が起きた……けれど、ちゃんと【Blueearth】での3年間の記憶もあるからかしら。割とみんな落ち着いているわ。


「【Blueearth】──【TOINDO】開発の電子フルダイブMMORPG。30年後の【NewWorld】計画に先立ち、電子世界【NewWorld】のエンジンを流用した……まぁ、新技術のお披露目という名目であろうな」


すっかり【祝福の花束】の屋台骨になっているチーム"草原の牙"のリーダー、ベルグリン。

──数奇な運命よね。彼はアタシの古巣、暮石土建の経理、泰平チャンだったのだから。


「問題はやはり、何故我々の記憶を奪ったか。ゲームシステムの異常か、それとも意図があっての事か……」


「この手の不具合は、やっぱり公式の発表を待つしかないね〜。

【祝福の花束】には今の所塞ぎ込むような子はいなかったけど……色々と、思い出したくない過去もあっただろうから。ちょっと混乱が長引いてるね〜」


モーリンはいつもの調子で笑ってる。平常運転が出来るのはこの子の利点よね。

……結局は自称の範囲だから信じるかどうかはこっちの判断になるけど……モーリンが国際捜査官って言ってたけれど、本当なのかしら。個人的には、そういう責任のある仕事なんて出来なさそうに見えるのだけれど。


「こんにちわー!」


元気に扉から現れるは──定期契約を結んだパン屋【玉兎庵】の看板娘、ラビちゃん。

随分と元気……が、なさそうね。声を無理に張り上げているように聞こえるわ。


「ラビちゃん。大丈夫? 無理してないかしら」


「大丈夫です!店長が不在ですから、【玉兎庵】は私とブランカさんでちゃんと回さないと!

ブランカさんも最近は本業のハウスキーパーで忙しいですし……」


あら。

【玉兎庵】の店長と言えば、大きな大きな兎の獣人ジョウガさんだったわね。

アドレの獣人達の取り纏め役。つまりはNPCのはずだけれど……ラビちゃんを拾ったりなんだったりと不思議な行動が多いのよねぇ。

……ま、NPCだからって全然ちゃんとした生き物だって事は理解できてるけど。アドレで三年過ごしているアタシ達がこれまでも今も微塵も違和感を感じず過ごしてきたのだから、あまりNPCだからとか言っちゃいけないけれど。

……でも、話は聞いておきたかったわね。何か今回の騒動の事、知っていそうだし。




──◇──




──天知調の隠れ家


"LostDate.ラブリ"です。

こちらは10cm四方に圧縮されたデューク。


「どうも、箱BOYでして」


喋んな。


……このアホによる独断で【Blueearth】は凍結され、その後勝手に解凍されましたが……無理な解凍によって全冒険者の記憶が復活してしまうという致命的なミスを犯しやがりました(しかも多分故意)。


そんなこんなで、ここ最近の諸々の問題とかその辺の説明をしろ! と()()()()()からの要望もあり──


──あの人達が、揃ったのでした。




「どうしてくれんだい調ェ。どう責任取るんだい?」


妖怪婆さん──【真紅道(レッドロード)】サブリーダー アピー。又の名を小峠ヨネ。


「あっ……ヨネさん、調ちゃんに喧嘩売りました? 殺します?」


今も昔も殺し屋の人格破綻者──【ダーククラウド】ツララ、或いは霧切うらら。


「いけませんわ うららちゃん様。ヨネお婆様のいつものプロレスですわ」


お嬢様ofお嬢様。出資担当、【神気楼】ソニア……もとい、鳳凰院ソニア。


「YES! まさかMs.ヨネがずっと記憶持ちだとは思いませんでしタ。流石老獪。義理堅いですネー」


元【月面飛行(ムーンサルト)】構成員、筋肉博士ナイス……アルス・グッドマン。


「あと2人だけれど……来れるのかな」


騒がしい面々に対して落ち着き過ぎているのは、調様と並々ならぬ関係……なのかどうか怪しいけれども。

【ダーククラウド】ギルドマスター、ハヤテこと黒木翔。


「Mr.ショウ。随分と様変わりしましたネー。今なら元のBODYに戻して貰えるのでハ?」


「そうだよ。さっさと男に戻らなきゃ調とアレとかコレとか出来ないじゃないか。覚悟決めな。男だろ」


「そ、そうですよハヤテさん。調ちゃんに手ェ出したら殺しますけど、調ちゃんを待たせても殺します」


「どうしても死ぬなぁ」


()()()のように無理矢理結婚式場まで拉致致しましょうか?」


「やめろ鳳凰院。それで一回暗殺されかけただろ……」


ずるり、と壁が揺らぐ。

──壁ではない。ヒガルのレイドボス"焔鬼大王"。

或いは、それに成った協力者 那桐(なとう)傘座(さんざ)


「傘座様。お久しぶりですわ」


「OH.まさか本当にあの"焔鬼大王"がMr.那桐だったとはびっくりデース。その巨体は自重を支える事も困難なはずデース。仰向けになりなサイ」


「いや、ちゃんと調から論理補強貰ってるからよ。非現実非論理的な存在でも"そういうもの"として存在できるシステム、発案はお前だろアルス。お陰で俺も死なずに済んでいる」


あまりに当然のように会話が出来ているのは、彼らの信頼関係が成せる技か。

……その"焔鬼大王"の股の下から、一尾の大兎が現れる。


「……なんじゃなんじゃ。もう全員揃っておるのか」


那桐傘座と比較するとかなり小さく見えるが──大柄なアルスすら見上げる巨大な兎獣人。

アドレの守護者、【玉兎庵】店主ジョウガ──月浦美都。


「お姉様! やっと会えましたわー!」


「ちょっと、離れなさいソニア。今の私、毛深いから」


「最高ですわー!」


爆速で飛びつくソニア。そしてうらら。

……開発チームの女性組はアピーを除けば年齢層が低いから、まだまだ若い美都でさえ頼れる姉御肌である。


ともかく、これで全員揃った。

このキャラの濃い連中から生み出されたのが私、"LostDate.ラブリ"なのだが……これらと同じものであると認めたくはない。


「揃いましたね、みなさん」


……厳かに、しめやかに。

奥から現れるは、我らが天才──天知調。


「まことに申し訳ありませんでした」


出土下座。

世界一の極悪人による土下座。

さっきからカーテンの裏で出るタイミング窺っていたの見えてましたよ調様。


「頭を上げさせな うらら。んな無駄な事する暇ぁ無いだろう」


「わぁい久しぶりの調様だぁ。起こしますね」


「あぁんうららちゃん強引。そっちには曲がりませんよ私の腕は」


「多分人類なら誰だってそっちには曲がらないのでOKデース!」


「なにも問題なくなくないか?」


「傘座よ。お前縮めぬのか」


「……あっお前美都か。なんだその口調」


「クソデカ恵体もふもふもっちりのじゃ口調兎獣人は最高に決まってるじゃない」


「……なんて?」


ああ収拾がつかない。

なんとかしなさい黒木翔。




──◇──

数分後

──◇──




「……では、今後の対応についてですがっ!」


「調。妾の腹から離れよ」


「さすが獣人とガルフ族と猫又のデザイナー。もっふもふですね!」


「そりゃあもう無駄なデータそこに注ぎ込んだからな……。ようやるわ」


月浦美都と那桐傘座、アルス・グッドマンは【NewWorld】の開発だけでなく【Blueearth】開発にも携わっている。世界最大のゲームの開発という事で天下の【TOINDO】での開発だったので人数も凄まじく、開発中に調様を1人にしないためのものでした(ゲーム関係者以外は【TOINDO】本社は立ち入り禁止だったので一般警備員の翔は入れないし、ド犯罪者のうららは表を歩けない)。

……しかし開発者気質である美都と傘座が最高峰のクリエイター設備が整った環境に没頭。肉体データ提供役のアルスに調様の護衛を全て丸投げし、後にスポンサーとして挨拶に来たソニアとヨネにばちぼこに叱られました。


「……ぷはっ。では、改めて。

今後の展開について、説明します」


美都の膝に座る調様。そこ定位置なんですね。


──"MotherSystem:END"の暴走による(主な原因はデュークですが)全世界への影響は大きい。


「まずはボクから流れを説明するね。

最初に"MotherSystem:END"からのデータ攻撃で一部の冒険者へ記憶復活ウィルスを流された。これは元々"MotherSystem:END"が考えていた【Blueearth】破壊作戦の一つで、"カフィーマ・リバース"が【Blueearth】を離脱したとしても冒険者同士で自滅してもらうための一手だったらしい」


「クソ性格悪いな。"スフィアーロッド"みてぇだ」


「"MotherSystem:END"は古代文明を滅ぼした存在だからね。本質的に人間と敵対しやすかったのかもしれない。"スフィアーロッド"はよくわからないけど。

……それで、直後にデュークの独断で130階層までの全階層を凍結。

その後に"MotherSystem:END"は追い詰められ、目的を【Blueearth】の破壊から【Blueearth】の攻略不可能化へとシフト。レベル上限解放クエストを自分で攻略して、攻略手段を誰にも伝えずに消滅しようとした。

しかしそこをボクの最高最強超優秀究極秀才ハイパーウルトラギャラクシー弟であるライズが解決」


「自我が出すぎだぞお兄ちゃん。ライズそんなに凄くねぇだろ。なんなら割と賭けだし」


「なんだと馬鹿傘座あとで殺すぞうららさんがいるんだぞこっちは」


「雄同士のイチャイチャに巻き込まないでほしい……」


「ごめん。……で、解決に際して凍結したままだとライズも困ったから……デュークを利用して、階層凍結を解凍。その時に元の通り……部分的に記憶があったりなかったりで戻すのは非常に困難だったので、或いはまだデュークにそれほどの技術が無かったのかな?

ともかく、オマケとして全冒険者の記憶が戻ってしまった」


……オマケがデカすぎますね。


「その是非は今回の会議で問うべきではありまセーン。起きた事は過ぎた事。今の議題はここからデスネ?」


「その通りです、アルスさん。

……具体的には多少の差異が生じています。150階層以降のトップランカーはこれらの影響を受けられていません。この問題は、真理恵ちゃんに任せました。

今正に攻略の最前線にいるトップランカーに、元凶である私が直接顔を出すのは少々話が拗れてしまいますから」


「記憶復活はどうしたもんかね。これまでは全く同じ生命であった隣人が、今日からは非人間だ。無用な差別や非道な行いが勃発する……と、思ってたんだがなぁ」


「うむ。うむ」


……美都の兎耳が跳ねています。

殆ど話していないのに、あの自信満々な笑み。


「妾は記憶こそ無かったが、アドレのNPCの纏め役としてアドレを守っておった。

アドレはそりゃあもう沢山冒険者がおったからのぅ。三年もあれば小競り合いも多かった。

じゃが、妾の……妾の!ラビを筆頭とする一部冒険者の計らいによって、ここ暫くで冒険者同士の結束、そして冒険者とNPCとの交流が深まっておる。

三年。たとえ現実の記憶があろうとなかろうと、過ごした月日は無視できんよ」


「……暗躍していた【首無し】も"影の帝王"も【アルカトラズ】のお縄について、大した規模の闇組織がいないってのもある。レイドボス側も基本的に【夜明けの月】の味方に回ってくれてるからな。特に"セスト・コーサ・マッセリア"の不在はデカい」


「とはいえ、問題が起きないって事ぁ無いんだろう? 暫くは【アルカトラズ】の"拿捕"の輩は大忙しだねぇ」


実際問題、そこまで大きな問題には繋がっていないというのが現状です。

アドレの"厚労祭"によってアドレ全体が仲良く出来ているこのタイミングだから何とかなったのかもしれません。

アドレの次に冒険者の多いドーランでも、ナツのカリスマに皆惹かれている状況で騒動も特に起きていません。


……アドレで言えば"非暴力派"と"影の帝王"。

ドーランで言えば【鶴亀連合】。

冒険者全体を巻き込んだ苦い歴史があるからこそ、全冒険者がそれを教訓として受け入れていた事が利点となっていますね。


「……ってなると、後は……天知調がちゃんとゲームの運営として動けるかどうか、だな。いけんのか?」


「妾がここに来たのは……【Blueearth】での生活を捨てる事となっても構わんからだ。他の連中もそうであろう?」


合意は……しませんが、皆同じ気持ちのようです。

これまでは運営と冒険者に繋がりは無かったのですが、記憶を取り戻した以上は説明の必要もあります。

【NewWorld】から……調様を大切に思ってくれている協力者達が、立ち上がらない訳がないのです。


「……ありがとう、みんな。

でも、私は大丈夫です。傘座君と翔君には、まだ手伝ってもらいますけどね?」


……覚悟を決めた調様の目。アピー命名、"我儘モード"の調様。

こうなったら聞きはしない。全員、小さく息を吐いて席を立つ。

とはいえ、彼らが目を覚ました以上は絶対に助けにはなってくれます。……彼らの善性によって生まれた私なのだから、よく分かります。


「……それで、翔様と調様はいつくっつきますの?」


「ソニアちゃん!?」


「あ、くっつくと言っても交際的な話ではなく物理的に」


「ソニアちゃん!?!?」


「今やりな翔。デュークに取られるよ」


「ぬっっっっ!!!! NTRは許されんのじゃ!!!」


「寝てから言え」


「ボクまだ何も言ってないけど!?」


「いや言いなサーイ。Ms.うらら! Ms.調を抑えなサーイ!」


「了承……!」


ああ、またしても収拾がつかない……!

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