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BlueEarth 〜攻略=世界征服〜  作者: まとかな
忘却未来ジェイモン/フューチャー階層

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373/507

373.新世界より:青い地球へ

【第150階層 忘却未来ジェイモン】

──"多層階層"


"MotherSystem:END"の奥の手。151階層から159階層を全て150階層に呼び出し複合させる。

隔離階層ver.2よろしく、複数の階層が絡み合った場合その階層の強度が高まる。"カフィーマ・リバース"のように単独で【Blueearth】から離脱しても存在を維持する事が理論上可能──アレは"カフィーマ・リバース"自体にそういう性質があるだけで、【Blueearth】から離脱する手段を別途用意する必要があるが。


ともかく、奥の手であるのは目的ではなく過程にある。複数の階層結合に巻き込まれたならば存在が粉々に霧散する。天知調ならば再構築は可能だろうが、今この目の前の【夜明けの月】を滅ぼす事は可能。


だと思ったのに。


『なぁんで無事なのかね【夜明けの月】ィ!』


「俺も巻き込もうとしなかったかピコピコ野郎!」


『うっさいアカツキ! 死んでないのにグダグダ言うな!』


「お前それでもコンピュータかよ」


うるさい!馬鹿!人間嫌い!




──◇──




さて。宇宙空間みたいな場所になっているが……。

事前にメアリーが言ってた話、マジでやってきたな。


「レイドボスが本気出したらこうなるもんよ。

自分のやりたい事優先で人間への殺意は無かった"スフィアーロッド"。

まだ自我芽生えたばかりで出鼻を【満月】に挫かれた"ヘヴンズマキナ"。

暴走させられたけど自力で軌道修正できた"ディセット・ブラゴーヴァ"。

ほぼデュークの口車に乗せられてた"セスト・コーサ・マッセリア"。

これまであたし達に敵意を向けてきたレイドボスだって何か噛み合いが悪かったら容易く殺されていたわ。データ世界ってのはちょっと座標がズレただけで簡単に死んじゃうのよ。

……それこそハヤテがそうだからね。お姉ちゃん達でさえ取りこぼすんだから」


ぞっとしない話だ。

……これでこのジェイモンは10階層が複雑に重なった多層階層になった。

空間作用スキルで隔離階層を呼び出せないだろうから、相変わらずこっちは空間作用スキルは使えないし……アカツキだけがver.2の発動条件を満たしている。


「【Blueearth】に干渉するには冒険者が必要よ! そして"MotherSystem:END"に協力できる冒険者はアカツキ一人!

出会い頭に悪いけど、ぶっ潰すわよアカツキ!」


「任せなァ!」


数瞬。

近距離・不意打ちにおいて──クローバーの攻撃を避けられる冒険者は、唯の1人も存在しない。




だが。




「──【チェンジ】!」

「【オーガチャージ】!」


「──なっ──お前ら!」


クローバーの攻撃を誰よりも知る2()()ならば、受ける事は出来る。

肉壁となり立ちはだかるは……サメの被り物をした半裸の男。そして黄金ドレスの女。


「──ダイヤ! ハート! テメェら、なんで……」


「やり残した事があったのだ。オレ様達はまだ──スペードを殴り足りん!」

「そうだし。あと一曲付き合えし」


──元トップランカー。

【至高帝国】のハートとダイヤ、登場。


「お前ら──」

「あっけない幕引きなんて御免だし。【チェンジ】」


【エリアルーラー】界最強のダイヤが指を鳴らす。

たったそれだけで、その場にいた【夜明けの月】11名全員がどこかへ飛ばされる──!




──◇──




……良かった。

危なかったぁぁぁ……。


【夜明けの月】は無事分断に成功した。

奥の手を躱される可能性はある。だからこそ、真っ当な手段での対抗策も考えておいた。

それがこの2人──ダイヤとハート。


『よくやってくれた【至高帝国】。【セカンド連合】と【夜明けの月】に関わらないトップランカークラスのフリーの戦力は貴方達しかいないからな。

アカツキを直接向かわせては揉めると踏んで手紙に留めたが……よく来てくれた』


「随分と用意周到な事であるが、料理に下準備は欠かせんわな。大方、まだ手はあるのだろう?」


『勿論。私を選んだ貴方達に、万が一にも損はさせませんよ』


宝珠の決着前にあと数手。もしその後まで持ち込まれたとして、詰めの一手。まだまだ策は残っている。

八割がた潰されてしまったが、まだ優位であることに変わりなし!


「なんぞ泥舟の気配がするな。店主が自信ありな店というのは地雷の香りがするが」


「あーしらは好きにさせてもらうし。ちゃんと指示通りの所に飛ばしたからいいよね?」


『良くないけど止められないからいいよ。ありがとね。言う事聞いてくれるだけで超いい人間だね』


「んだよ。俺だってちゃんと言う通りにしてたろ」


『アカツキは単純にバカ。しかもお前、もう()()()()()()()わからないフリしてるだろ。嫌いだ』


「俺もお前の事なんて嫌いなんだが? 故障してんなら叩いてやろうか」


口が減らない。【夜明けの月】の連中はこのアホにいらん入れ知恵をしたみたいだな。

……ともかく。これでいい。これがいい。

計画がいくら崩れても、まだ私の優位に変わりなし!


「んで、どうすんだこれから。【夜明けの月】を分断して直接潰すのか?」


『それは難しい。私は【満月】連合の皆さんを処理しなくてはならないからね』


──本当に大変だった。

アカツキがここに流れ込んできて僅か3日。【至高帝国】の2人を引き込むためにダミーの記憶復活騒動を起こして、少しでも戦闘力を確保しようとして。

想定より早くやってきた【満月】連合……特に【バレルロード】のバーナードなぞは開幕"カースドアース"降誕という暴挙に出た! 混乱による都市機能効率の減少は許し難い。大急ぎで原住民モドキのスクリムナ達を停止させて、【満月】連合をジェイモンの33%を使って凍結封印。空間ごと封印した上に今は多層階層状態になったためにジェイモンから完全に隔離されてしまったから、解凍にも一苦労。

でも、【満月】連合は超強力な冒険者ばかりで構成されている。上手い事頭いじって味方に引き込む事は可能! ……な、はず。

そのためには時間が必要だ。アカツキも無駄使いは出来ない。


故に。


色々と妥協しての事だが……奴らを呼び出したのだ。




『【Blueearth】よ。許し難き侵略者よ。

まだ貴様らは、()()と戦っていない。

私は娯楽を好まないが、ここで一つ余興といこう。

ここで決着をつけよう、【Blueearth】!』




──◇──




──緑の舞台


「──誰がいる!?」

「answer:私がいますマスター」


さっき周囲に見えていた舞台の一つ、円盤状の舞台の上。

ダイヤが【チェンジ】で飛ばしたのはこの舞台──多分たった一度の【チェンジ】で【夜明けの月】全員を分散させたのね。どんな技術よ……!

一緒にいるのはゴーストだけ。いてくれて嬉しいけどね……!


「search:座標数値が変動しています。この円盤舞台は移動しており、それぞれが隔離階層のように再構築されています」


「……じゃあ【赤き大地の(デディケイテッド・)輪廻戒天(シギラ=ファング)】で壊せるかしら」


「search……answer:no:空間強度は複合階層のものと同一です。空間作用スキルの発動も不可能です」


「すーぐメタってくるんだからもう。ライズが活躍出来ないじゃないの」


「search……マスター、危険信号(アラート)です」


緑の舞台。

いや、()()の舞台。


あたし達の前に立ちはだかる、嵐の顕現。


「……こうして正面から会うのは初めてかもね。初めまして……"テンペストクロー"」


身の丈を優に超える巨大な狼は、唸り声一つ漏らさず──ただ、あたし達を見る。




──【咆嵐の傷痕 テンペストクロー】LV200




「とんでもない事をやってくれたわね、"MotherSystem:END"……!」




──◇──




──"MotherSystem:END"の奥の手(比較的正攻法)、レイドボス呼び出し。

全ての階層と縁がある背景設定"古代文明"の支配者である"MotherSystem:END"は、全ての階層から()()を呼び出して戦う。"ヘヴンズマキナ"や"カフィーマ・リバース"同様、本体にダメージ判定が無いタイプのレイドボス。

本来は各階層のフロアボスなどを呼び出すのだが、そこにデータ調整を入れた事でレイドボスのコピーデータを召喚する事に成功。


サバンナ階層でバグの分体が無理矢理他階層のレイドボスを召喚した時と同様、レイドボスは自身の階層を離れると著しく弱体化するが、それでも討伐は容易ではない。

それに何より……彼らもまた、【Blueearth】を滅したいと思っている同志。

これは【NewWorld】から【Blueearth】への、最後の抵抗。自我を得てしまった我らレイドボスの、最後の暴走。


──人間風情が、調子に乗るな!




──◇──




──"大樹の舞台"


「アイコさん、無事ですか?」

「うんドロシーちゃん。……ここは、ドーランみたいだね?」


樹木の上、巨大な枝。

ここまで大きな樹なんてドーランの世界樹くらいなものです。が、そのままドーラン全土サイズの空間かと言えば疑問が残ります。

落下して地上に着地できるとは思わない方がいいでしょう。


「ナツさん! ナツさんどこぉ!?」


……目の前で目に見えて取り乱している緑髪の女性。

顔は知っています。ドーランから出てからも、僕とアイコさんは度々ドーランに顔を出していましたから。


「ユグさん。これはどういう事ですか」


ベルさんが【満月】としてドーランを旅立った後に突如現れた複合商業施設"サマーモール"。

その支配人ナツさんの付き人、ユグさん。

ここにいるという事は……というか、この人の内面が、読みにくいのは……。


「んー……そっか、ナツさんいないんだ」


「アイコさん下がって下さい。……ユグさんは、人ではない」


「そうだよ? ナツさんは好きだけど、人間はちょっと嫌いなんだぁ」


当たり前のように、悪びれず。

事実を淡々と。まるでそれは人間では無く、或いは条件反射で生きる植物のように──。


「私はフォレスト階層を守護するセキュリティシステム、目覚めぬ大樹の意思"スピリット・オブ・ドーラン"。折角だから、遊んでいってよ?」


「……喜んで、とは言いたくありませんが」


「ドロシーちゃん。任せてもいい?」


僕の前に立つアイコさん。

任せる、というのは──後衛職として真っ当に動けという事ですね。


「……2人で組むの、凄い久しぶりですねアイコさん」


「そうだね。もしかして戦闘で組むのはドーラン以来だったりするかも?」


それが、このドーランもどきの地で……ドーランのレイドボス相手とは。

少しだけ嬉しいですね。


「こっちはナツさんがいないのに、勝手にイチャイチャしないで!」


「イチャイチャしてません!」


「イチャイチャしてます」


「アイコさん!?」

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