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BlueEarth 〜攻略=世界征服〜  作者: まとかな
飛翔遺跡カフィーマ/リメイン階層
360/507

360.秘境横転

【第149階層リメイン:『遺跡の起源!その髑髏が伝説の真実だ!』】


──────

探検隊が辿り着いたのは、人の手の届かない聖域だった!

そこで探検隊が目にしたのは、外敵に脅かされる事なく平和に過ごす獣たち。

先ほど入口で一人、通路に腹が挟まったために探検隊が一人リタイアとなった。

最後の探検隊は、この神秘的な光景を胸にしまう。

この地を晒せばこの平穏が崩れてしまう。ならば、これ以上の探求はやめるべきだ。

最後の探検隊は、これまでの出来事を遺跡の入口でリタイアした隊長へ報告すべく帰るのだった。

──────




壁を横一文字に切り裂く大きな亀裂からは、外の天空が見える。

苔が外光を受けて輝く、緑の大広間。


誰も。フロアボスの【災禍の秘宝 コロネル・マリッジ】もいねぇ。

ただ一人、俺の相棒だと信じていた女が立っていた。


「アラカルト。説明してもらうぜ」


「アカツキ。ここまで戻ってきたの?」


本当に驚いたような顔だが、女の表情は信用するなってネットで言われてるからな。信じねぇぞ。

とにかくケジメだ。俺様は【月面飛行(ムーンサルト)】のギルドマスターとして、こいつらを止めなくちゃならねぇ。


「……一人では、来なかったのね」


「め、メアリーちゃんからの指示なので。ここまでアカツキさんを、送り届けると」


うん。

堂々と俺の前で大盾を出すは【夜明けの月】の"無敵要塞"リンリン。

結局振り切れなかった。全然捕まった。

思ったより速いなリンリン。ぜったい置き去りにできると踏んでいたんだが。


「……まぁ、どんだけ情けなくてもいいんだよ。それより裏切り者共の処遇だ!

覚悟はできてんだろうな、アラカルト!」


「強さだけがウリだったアカツキ。今となってはその利点も無いわね」


……いつもならすぐに反論するが。

今はそうじゃねぇ。だって、アラカルト……なんて言えばいいんだ。

あれだ。俺を馬鹿にしてねぇ。喋り方とかが……。


「なぁ、今更だけどよ。何か説明とか……あるだろ! 何が狙いで、何で俺を殺そうとした!

何で俺をのけ者にしたんだよ!」


「相談されるだけの人徳は無いでしょ。妥当な末路よ」


「ぐっ……。確かに、それはそうだ」


今、俺が……すこしマトモなのは、多分同じ現実記憶持ちの【夜明けの月】と関わって……アイコが俺と話してくれて、それで一時的に"マトモな俺"に酔ってるんだ。

根本が変わる訳がねぇ。俺は俺、ダメ人間のカスなのは変わらねぇ。

だけれど、この一瞬だけは、マトモでありてぇ。

これまで微塵も気にならなかったが、今はアラカルトの表情が見えるんだよ。知りてぇんだよ!


……だが、上手い事言葉にできねぇ。これまでやったことねぇから。

何を言えばいい。何を聞けばいい……!


「……まぁ、そんなに焦らすほど大層な事はしてないわ。説明くらいしてあげる。

話をして、耳に入る程度には聞く姿勢してるみたいだしね」


アラカルトが、大きなため息を吐いた。

これまでそんな所は見たことない。いや、失望はさんざんさせられて来たが。

……アラカルトにとって俺が予想外な行動に出ているってことか?


「ここのレイドボスは()()つもりなの。アカツキは分からないだろうけど」


「わからん。だが話してくれ。聞いて、覚えて、考える」


「……セリアンさんの"ver.2"を見て、私たちにはコレが必要だと感じた。

でも"ver.2"は条件が厳しい。こっちの宝珠は紫一つだからここのレイドボスと協力しないと使えないし、このリメイン階層以外では使えないみたいだから」


「それで、レイドボスと取引した。俺の首を差し出す事が条件か?」


「アカツキの首に何の価値があるのよ。単純に、ここで切り捨てた方が利益になるからよ」


……まずい。泣きそうだ。

普段ならキレ散らかしていたかもだ。


「そこが分からないんだよ! レイドボスと協力したとして、お前らはレイドボスに何を差し出した!

取引ってんなら平等なはずじゃねぇのかよ!」


「それが、特になにも。

……そうね。言うなれば……"ver.2"を発動する事自体が目的かしら」


──地響き。

リメイン階層では定期的に起こる謎の振動。またか……!


「レイドボスの狙いには幾つかの障害がある。レイドボスに危害を加えてくる組織──【夜明けの月】。

ここまで分散するのなら、もう充分でしょう。防御主義の"無敵要塞"相手なら、さほど脅威でも無い。

じゃあねアカツキ。改心するのが遅かったわね」


「──待て、アラカルト!」


宙に浮くアラカルト。なんでだ。

……そうじゃねぇ。だったらやらねぇと!

"ver.2"が空間作用スキルの延長だってんなら、先に使えば──!


「くそっ──【朱盗(あけと)りの紫界(しかい)】!」


「無駄よ。最初から既に発動していたんだから」


何も起こらない。奥の手、空間作用スキル【朱盗(あけと)りの紫界(しかい)】は発動しない。

発動しているってどういう事だよ。何がどうなって──


「リメイン階層は……いえ、()()()()()は、唯一無二の階層。

あなたが死んでカフィーマに戻ってくれていれば万端だったのだけれど、仕方ないわ。

【夜明けの月】の分断は終わった。もうカフィーマを止められる者はいない──!」


地響き……じゃ済まされない、地震!?

違う、これは──回転!


「リンリン! 床が回転して……違う! 階層そのものが回転してる!」


「アカツキさん、離れないで! リンリンが命に代えても守ります……!」


アラカルトを追える状況じゃない。アラカルトは空中で静止し──高らかに宣言する。


「約束通り、一階層に一人配置したわ。動きなさいカフィーマ! 【朱盗(あけと)りの紫界(しかい)】"ver.2"!」


さらに、一際大きな振動の後──耳をつんざく轟音!

……雄叫びかよ!?




──◇──




【第140階層 飛翔遺跡カフィーマ】


「お客さん!お客さん! 屋内においで、危ないよぉ!」


「hi.ブックカバー。それにマックス。今は停戦でいいよネ?」


カフィーマでは散々地震が起きるが、浮遊都市が傾くほどの事はなかった。

と言うのにこの慌てよう。ハニーマッド達が誘導してくれたが、もし排他的な原住民であれば大変でだったのである。


案内された先に【夜明けの月】連合軍共がいるが、これは仕方ないのである。


「……ねぇ、カフィーマじゃこんな事が頻繁に起こるの?」


「そんなこっちゃないよぉ! こんな事初めてだよぉ!

揺れが収まるまで外に出ちゃダメだよぉ!? ボスの溜め込んだ非常食だってあるんだからぁ!」


……ベルが積極的に原住民を取り込んでいたからな。ハニーマッドに不要な食物まで揃っているとは。

しかし長い、長い地震だ……。


「……随分とデケェ音がすんな。魔物とか近くにいんのか?」


「えぇ? 魔物は遺跡の中にしか出ないよぉ! 確かに大きな音だけど……」


原住民が言うならばそうなのだろうが、あまりにも大きな音……声。

ううむ。吾輩、何となく分かってしまったのである。


「……地震、収まったね。ちょっと外見てこようか」


「サティスが行くなら私も行くわ。置いてくな」


サティスとベルのコンビが外に。マックスも飛び出した。

……予想が当たっているのならば、外は──




「ブックカバー! 変だ!」




うむ。マックスが端的に説明したのである。

吾輩も外に出てみやれば……全体的に暗い。

そして、頭上に広がるは──青空ではなく、深緑の大地。


「……逆転したのであろう。つまるところここは──」


何故この遺跡だけが空を飛んでおるのか。

何故誰もレイドボスを見つけられなんだか。

その正体こそ、即ち──




──◇──




──それは天高く飛ぶ巨大亀。

古代文明が栄えるより昔から存在した、天空の覇者。

或いは文明の拠り所。永く続いた命は、やがて微睡み眠りにつく。

……寝返りを打ったのは、果たして何千年昔の事か。


今目覚め、亀はその身を反転させる。

超重力を操る太古最古の魔物。或いは、まだ魔物と呼ばれていない時代の遺物。




──【秘境横転 カフィーマ・リバース】LV200




──◇──




リメイン階層の正体は、そのまま全てがレイドボス"カフィーマ・リバース"であった。

即ち、セキュリティシステムがそのままウィルスバスター。【Blueearth】全階層で唯一、丸ごと10階層全てを同時に運用可能なレイドボス。


故に。


本来は一つの階層に固着融合する隔離階層ver.2は、全ての階層と融着する。

しかし一つの階層につき1人の()()()は必要。だからこその契約である。

唯一の懸念である外敵【夜明けの月】は体内にてバラバラに分断。全員がver.2となった【月面飛行(ムーンサルト)】ならば負ける事は無いし──勝つ必要も無い。

"カフィーマ・リバース"の狙いは、【夜明けの月】を腹の中に飼う事である。

そして、もう一つの狙い。"カフィーマ・リバース"の目的は──




──◇──




【天知調の隠れ家】


「……こりゃびっくりでして。リメイン階層が丸ごと、【Blueearth】から離脱を始めやした!」


縦並びの階層は、ドラマ階層でぐちゃぐちゃになっているものの──基本的には一列に積まれている。

その中で、だるま落としのように140階層から149階層が横へとスライドして行く。


ラブリ先輩は慌てふためいてやすが、天知調は無表情。なんかムカつく。


「……ちなみにこれ、そのまま落ちてガシャーン!みたいには……?」


「なりませんね。重力で制御されていませんから。

ですから、139階層までと150階層以降が繋がらなくなるだけです。

つまりは最前線のトップランカーだけで残る階層を攻略すればいいのですけれど、そんなの無理ですからねぇ。こう来ましたか……」


「落ち着いてまして。案外余裕でして?」


「いえ。()()()からのアプローチもここぞとばかりに来ていますので……やはり真理恵ちゃんに任せるしかありませんね」


……かの大天才がそう言うのであれば、そうなのでしょうがねぇ。

セキュリティシステムがそのままレイドボス。つまりは丸々10階層の人質。

なるほど、【夜明けの月】を腹に招き入れたのは外部からの干渉を恐れたからか。


「【夜明けの月】は、基本的にレイドボスと対立する必要がありません。私はレイドボスにとって大敵の怨敵ですが、その私を止めようとしている組織ですからね。"エルダー・ワン"もいますし」


「説得にて解決が出来ると? 相手は生まれたてのようなものでして」


「説得の力はあなたが身に染みているんではないですか?」


「……んん。それはそう。しかしカフィーマがそうとは限らないんでして」


「真理恵ちゃんたちなら大丈夫です。ほらこっち手伝ってください」


「おや、天下の大天才が困りごとでして?」


「右耳の裏がかゆいので掻いてください」


……余裕すぎる。

本当に、解決しようと思えば片手間にできてしまうんだろうなぁ。

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