358.暴露! 渦巻く陰謀
【第146階層リメイン:『帰ってきた蛇人間!蛇の巣は実在した!』】
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探検隊が辿り着いたのは、穴だらけで危険な大空洞だった。
そこで探検隊が目にしたのは、凶暴化した蛇人間達であった!
襲いくる魔の手。探検隊達は手を取り合い、蛇人間達を回避しつつ先へ進む。
この地を立ち去ろうとする途中、蛇人間に一目惚れをした探検隊が一人リタイアとなった。
探検隊は残り4名。どうなる探検隊!?
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「ツバキ。スペード。いるか?」
「いるよライズ。転移先は弄られてるけど、転移そのものには干渉されてないみたいだね」
143階層から2つ飛んで146階層。
一緒に転移したツバキとスペードとは離別しなかったあたり、入口出口がぐちゃぐちゃに繋ぎ直されているだけか。【月面飛行】とレイドボス相手に一人じゃキツイから助かる話だ。
さて。この146階層は……またも大空洞だが、最初の方にあった人造的なものじゃなくて本当にでけぇ洞窟って感じだな。あちらこちらに穴が空いてて、底が見えない。
「帰ってきた、ってことはここまでの階層にいたのかしら。蛇人間」
「……そうじゃん。そうだよマズいよライズ! 本来は144階層に居る蛇人間と会ってるのが前提なんだよこの階層は!」
ずるり。ずるり。
空洞の中を這う何か……いや、分かりきってるけどさ。
「まさか攻略の鍵が別の階層にあるなんて思いもしなかったから、ここの攻略は苦労したよ。……ここの蛇人間、強いからさ」
「ほーん。それはお前……俺達だけで通り抜けられるレベルか?」
「出来ると思う? これを見て」
出るわ出るわ、蛇人間の群。
剣とか槍とか持って原始的な感じだ。人の形してるけど話は通じなさそうだな。
……通る道が見えない。どうしたもんかなぁ。
「……範囲火力は……俺がやるしかないな。2人とも、俺の後ろを出るなよ。一気に【スターレイン・スラスト】で突き抜ける──」
「お待ちになっても……いいんじゃない?」
……また濃いキャラの匂いがするぞぉ。嫌な予感。
蛇人間の群れの中から一際輝く、宝石まみれのお妃様。
「あら、シャイニングさんじゃないの」
「お久しぶりなんじゃない? ツバキ。早速だけれど、対話か交戦か、選んでも……いいんじゃない?」
この何とも言えない成金女王は黎明期にそれなりに有名だった【大賢者】の傭兵、シャイニングおばさん。しっかり【需傭協会】に洗脳され吸収され解放された守銭奴……のように振る舞うが、その実体はブックカバーやらブラウザやら気難しいマジシャン連中にちょっかいをかける世話焼きおばさんである。基本的に絡みが面倒臭いだけで悪い人じゃあない。
「対話の余地があるのか? それならちょっとおしゃべりしようシャイニングさん」
「いいじゃない。……アカツキは居ない?」
「こっちのチームには不在だよ。そっちは把握できてないのかい?」
「そうなのよ。こっちも色々と不都合なんじゃない?」
好戦的な蛇人間達がシャイニングのために道を作ってくれるが、とても落ち着いて話ができる環境じゃないな。
……それでも、黎明期から最前線にいるシャイニングはマトモに話せる希少な相手だ。いよいよもって【月面飛行】が何を望んだのか、レイドボスが何者で何を狙っているのか……。
「Lesson.1。【月面飛行】に何があったか……教えても、いいんじゃない?」
「シャイニングさんのものしり教室だー。拍手拍手」
「ぱちぱちねぇ」
「え、何が始まるの? 何故ライズもツバキも順応してるの?」
蛇人間達だってスマートに拍手してるだろ。黙って聞いてろ。
目立たないだけで【Blueearth】の生き字引だ。色々と聞き得のネタもあるだろう。多分【月面飛行】の中では穏健派だろうしな。
「……まず、【月面飛行】は【夜明けの月】との最後の決戦をどこで迎えるか考えた。
アカツキは不意打ちを想定していたけど、そんな事すれば【Blueearth】全体から顰蹙を買うじゃない?
勝っても負けても【Blueearth】での攻略は続く。【月面飛行】が今のポジションにある事は変わらない。あまり敵を作る訳にはいかないじゃない」
「そりゃそうだ。で、仲間割れか?」
「アカツキの言う事は半分くらいしか聞かないっていうのが【月面飛行】のルールじゃない。だから決別はしなかった。
結局のところ、不意打ちであれどうであれリメイン階層で戦う事には変わりないという結論になったのよ。
ウチには攻略階層での戦闘が得意な子が……それなりにいるじゃない?」
「さっき会ったメルトがそれだな。野生の魔物がいる方が強くなる典型例だ」
「あら……もう会ってるなら話が早いじゃない。
ともかく、そういう訳でリメイン階層の研究を始めたのよ。相手は知識の狂人ライズなんだから、少しでも有利に働くためには……ね?」
だれが狂人だ。
……ツバキもスペードも庇ってくれないというか、頷いてるまである。ひどい。
「それで149階層……サブリーダーのアラカルトが、アレを見つけたんじゃない?」
「アレって言うと……レイドボスかしらぁ?」
「そう……そうね。そうじゃない?
【月面飛行】全員がレイドボスと接触して、この力を得て……アカツキだけは私達を見捨てて逃げ出したんじゃない」
相変わらず最低だなアカツキ。
……それで、情報の漏洩を恐れてアカツキを狙っている訳か。
「理由はなんとなく分かるんだが、目的が見えない。まさかその力で【夜明けの月】に勝つだけが目的か?
レイドボスが何故手を貸してくれているのかも分からない」
「いい着眼点ねライズ。いいじゃない?
……実の所、真意はアラカルトしか分からないわ。レイドボスと契約したのはアラカルトだから」
アラカルト。【月面飛行】のサブギルドマスター。アカツキを上手い事扱える、実質の運営者らしいが……契約、か。
「レイドボスと個人が共謀するケースはこれまでも多々あった。今回もそうだというならそれはそれで構わないけれど……懸念すべき事があるよね、ライズ」
「……"ver.2"だな。空間作用スキルはレイドボスと組む事でレベルが上がる。ミッドウェイでもそうだったし、ミザンの"ディレクトール"とセリアンのコンビ、サカズキでの万誑命と玉乃条のコンビ……。どの例も強力だった」
空間作用スキルの正体は、【Blueearth】周辺に点在する隔離階層。
レイドボスの所持する階層データ……レイドボスの半身とも言える宝珠と、レイドボス。そして空間作用スキルの発動キーとなるアイテムを持つ冒険者。この三つが揃うと、空間作用スキルは"ver.2"へと進化する。
もしレイドボスと契約しているなら使えるだろう。
「アレをやられるとこっちの空間作用スキルが使えなくなる。切り札封じな上に、相手によっては無敵化する。アラカルトは……【スナイパー】だったな」
「【スナイパー】のジョブ強化スキルは未確認だね。後衛職は無敵化を配られやすい傾向にあるけれど……」
「アラカルトちゃんは149階層にいるのかしら?」
「そうよ。基本的に私達はアラカルトに手を貸しているんじゃない?」
また随分と盲信的というか……アカツキよりアラカルトに従うのか。
「ただ、私にも分かる事は……ここのレイドボスは、【Blueearth】を大切に思っている。そしてアラカルトは情に流されるような女じゃない。……じゃない?」
「それはつまり、【月面飛行】は【Blueearth】を大切に思ってないって事か?」
「……そうじゃない、じゃない?
ただ、アカツキにタダ乗りしてる寄生虫じゃない。個人的な情は差し置いて、利益を取るのが【月面飛行】じゃない?」
つまり。
149階層に行って直接聞かないことには分からないって事だ。
「良く分かった。ついでに……通してくれるか?」
「ここからは私の事情なんだけれど……三人とも、ここで止まって欲しいのよ。悪くないんじゃない?」
……蛇人間に囲まれてる時点で詰み、だな。
シャイニングはおおらかなおばさんだが、黎明期冒険者特有の殺伐さというか、殺る時は殺るタイプだ。
……ここまでだな。他のチームに任せよう。
「分かった。俺達はここで休憩するよ。
だから蛇人間達を引っ込めてくれないか? 物騒で気が休まらない」
「……そうねぇ。全くもってその通りじゃない。
じゃあ、ちょっとお茶でもしようじゃない?」
……まぁ、メアリーとかクローバーとかがちゃんと先に進むだろ。
ここで得られた情報からして、そこまで攻略を急ぐものでも無い。
──各階層に配置された【月面飛行】。無理矢理攻略階層に閉じ込めてきたこと。
レイドボスと手を組んだアラカルト。にも関わらず、ここまで向こうからの干渉が無い事。
【Blueearth】を壊すことが目的ではないレイドボス。そこに利用価値を見出したアラカルト……。
……アカツキは逃げたっていうか、複雑な話について行けそうにないから捨てられたまであるな。
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【第110階層 不夜摩天ミッドウェイ】
【井戸端報道】局長執務室
デスクの上にボールドローンさんが転がっています。
反応ナシ。オオサダさん経由で現地特派員になってもらったソニアさんからは情報を頂きましたから、【夜明けの月】がカフィーマに到着した事は間違い無いのですが。
「……んんんんんん、つまり、つまり放送出来ない事が起きていますねェン! 疎外感!」
もしもそのまま【夜明けの月】と【月面飛行】が戦うのなら、このドローンを利用してリアルタイムで全階層にお届けします。こちらが"宝珠争奪戦"に乗っかっている立場ですので、こっそり済ませられる事も考えられはしますが……メアリーさんやライズさんは少なくとも義理立てしてくれると思っています。あの人達は優しいので。
それでもリアクション無しというのは、何かが起こっていることの証左。それを伝えたところでリメイン攻略階層の入口は門番によって封鎖されているらしいですし……。
歯痒いです。またミッドウェイの時みたく【Blueearth】の危機になる可能性も、無くは無い。報道機関として、【夜明けの月】の友人として何か出来ることがあればいいのですが……。
「局長仕事。トップランカーの取材、行かないなら他の連中に向かわせるけど?」
「ああんパンナコッタ先輩待ってー! 行きます行きますゥー!」
取材を直接しなくなって久しいですが、トップランカーとの対談は別です。ここで得た情報が【夜明けの月】の皆さんの役に立つかもしれないので、ウチが直接聞いておきたい!
……何とかなるといいのですが。とにかく、ウチは今できる事をするしかないですね。




