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BlueEarth 〜攻略=世界征服〜  作者: まとかな
風雅楼閣サカズキ/ヤマト階層
337/507

337.永年妖猫


【第130階層 風雅楼閣サカズキ】


──side:クローバー

サカズキ城内部


ヤバい。

今の放送で"猫又九番守"は八番と九番以外だと……あとはここの猫託(ネコタク)だけだ。


いやいや、これは作戦の内だぜ。

だってほら、最後に動くのはサカズキ城の万誑命(マダラメ)だ。そん時に一番近い所に俺がいる必要があるよなァ?


……言い訳だ。馬鹿らし。

"最強"たる者、さっさと仕留めろって話だよな。


戦況を確認。猫託(ネコタク)によるサカズキ城の変化は止まった……多分どっかの部屋からしか出来ねェんだな。

足場が疎らにある奈落。下の方にいるマックスと範囲爆撃かましてくるヒートのせいで足場が壊されまくる……。


「……何度でも壊すが良い……"カースドアース"侵食!」


バーナードはレイドボス"カースドアース"の力でツタやら木の根やら生やして足場を作ってくれてる。そんな事も出来たんだなァ。

……そういえば"カースドアース"と戦った49階層は平坦な土地だったが、"カースドアース"自体はめちゃくちゃ縦に長い。本来はこういう後付けの足場を作るタイプのレイドボスだったのか?

何にせよ、冒険者として自由に他所の階層に入り込めるレイドボスってケースがバーナードしかいねェから憶測に過ぎねェけど。


「死ねぇ"最強"!」


「危ねっ」


飛び出して来たのはアザリ。一番目を離せない、このメンバーでは単体最高火力の持ち主。

槍を銃で受けて──もう片方で、蜂の巣に!

アザリは()()()。──分身か。


「真っ向勝負はしないよな。近々で負けてる相手だ」


「そうでも無ぇぜぃ!」


──柱の向こうから。白の光が螺旋を描き──


「【エンチャント:ファイア】」


属性を付加するだけで、白の光が消滅。

【ジオマスター】の弱点だな。"純無属性"を剥がされたらただの突進だ。

柱を壊して突撃してきたアザリの槍を避けて、今度こそ銃弾をぶち込む──


「──失礼」


悪寒。

左手はエンチャントに使った。使えるのは右──アザリ狙いをやめて、反転。背後を撃つ!


「おお危ない危ない。素晴らしい判断力!」


──白黒猫、猫託(ネコタク)

薙刀で銃を受け切りやがった。軽やかに足場を転々と飛び移り距離を取られる。……ついでにアザリにも逃げられたな。


「今ので武器が壊れねェのは納得できん」


「人間さんのソレと比べて、サカズキ製は頑丈なもので」


──万誑命(マダラメ)が最近自我を得たあたり、"猫又九番守"は基本的にNPC……ミッドウェイ五大マフィアのトップ共みたいに、戦闘可能データこそあるが常時敵としては設定されていない。

手っ取り早い話が、連中の武器に耐久値の概念が無いのかもしれねェな。

とはいえ受けきられるのはなァ。情け無ェ限りだ。


「隙ありであります!」


「いやァ無ェよ!」


ヒートの爆撃。全部銃で撃ち落とす。

──爆風がまた足場を壊していく。


対応に集中力割いてたらキリが無ェな。

ほぼ空中戦になってるここだと"スメラギ"も呼び出せ無ェ……。




「──よし。分かった!」




現状のポイント。

──ここに居る全員が、俺を警戒しているという事。


「……何をするつもりだ、クローバー」


「そりゃあお前ら次第だ。……じゃあな!」


「は?……は?」


誰もが俺を見る中で。

俺は──奈落に飛び降りた。


「先ずはマックス! お前から潰してやるよ!」

「……来いや"最強"! 受けて立ってやるぜ!」


奈落からコソコソ攻撃してくる遠距離火力。ここを潰す。……誰も動かないなら、だが。


「おいおい。猫さんよ、アレ何とかできるのかぃ?」


「……そうですね。多少のギミックは残っていますよ!」


大慌てで動く猫託(ネコタク)。そうだよな。

この場で花火を持ってるのは猫託(ネコタク)と俺とマックス。"猫又九番守"の花火は特別だが──俺という"最強"に花火が集中する事だけは避けたいはずだ。


奈落から──足場が沸いてきた。下から上昇する足場に着地。マックスの元には行けないが……切り替えだ。

銃口は上に向ける。


「……げっ。読まれてんよぃ」


上から奇襲してくるはアザリ。こっちは身代わりだろうがよ。

せり上がる足場。──下からの視界は悪く、マックスは俺たちを認識出来ない。


スキル【乱撃錯乱】

──ヒット数3倍。

スキル【速射準備】

──通常攻撃速度2倍。


準備を整える。勝負は一瞬だ。


連中と同じ高さになる頃には──アザリと猫託(ネコタク)が同時に襲ってくる。

ミラクリースみてェなギリギリの戦法は使わねェぞ。

来ると分かってりゃあ、何とでもなる!




──◇──

──


ジョージはともかく。アイコも超人的な身体能力を持っている。リミッター解除はジョージくらいの人外技だとして、アイコはよくそんなジョージに追い付けるな。


「私やジョージさんのそれは、反射神経と戦闘経験です。クローバーさんなら分かるのでは無いでしょうか? 手癖というか、パターンと言うか」


確かにそうだ。戦闘における"お約束"……メタ読みの先読み。それが実戦でも使われてるって事か。

……だが、いくらゲーマーとは言え現実でボコボコに殴り合った訳じゃ無ェからな。経験ってのは簡単には付かない。


「むしろ、私達格闘家からしたらクローバーさんが凄いなぁと思いますよ?

根本的に()()()において違うんですよ、私達とクローバーさんは」


……根本的?

格闘とゲーマーにゃ、むしろ根本が似ていると思ってたんだが。


「我々格闘家は、鍛え学んできた経験から"初手の前"を封じます。戦闘が始まったとしても、"相手の次の手"を読んでその前を封じます。一般的に格闘において、相手の攻撃を通してしまえばそのままノックアウトもあり得ますので」


……あー。そういう事か。確かに根本の根本は違うな。


──

──◇──




──アザリと猫託(ネコタク)

どちらが先に動くか? 或いは同時か?

せり上がる足場にいる段階では判断出来ない。……しない。


「ここだぁ!」

「ここで仕留める!」


同時。全くの同時。


──ゲーマーの真髄は、読みに在らず。


銃を槍の間に挟み──回転!

猫託(ネコタク)とアザリの攻撃を捻り、避ける!


()()()()回避、余裕だぜ!」


──"初手の()"への対応力!

ゲームからお出しされるどんな理不尽も、見てから動けるのがゲーマーよォ!


「マズ──」


猫託(ネコタク)の腹に──光の連射。

1秒もいらねぇ。秒間1008発、死ぬまで浴びろ!


「本当に……火力おかしいですね……!」


返す()で、アザリに集中砲火!

格ゲーにおいて、一手のミスは致命傷。

だが……起きてからのケアも仕事の内だぜ。




──◇──




"猫又九番守"猫託(ネコタク) 撃破

【夜明けの月】クローバー 花火獲得+1




──◇──




──中央町

サカズキ城正門前


「これで七人抜きだな」


放送の通りなら、"猫又九番守"はあと二人。

万誑命(マダラメ)の前に、誰かがいる。


「ご心配無く。あの子は、こちらに向かっていますよ」


黒猫の留丑ヰ(ルウシイ)が、落とした水晶玉を拾う。元より非戦闘要員だが、もう戦うつもりは無さそうだ。


「そっか。留丑ヰ(ルウシイ)ちゃんは(なな)之番。次が八番目だから、知ってるんだね」


「本来は私がヒントを出す立場ですから。しかし彼女も待ちきれない様子……」


「ここに向かって来ているのかい? 【夜明けの月】が集まってからの方が良さそうだね。離れるのもアリだよ、ライズさん」


「いや、"猫又九番守"だけなら対等な戦いになるだろ。このまま迎え討つ」


ここまでの厄介な事は、大抵が"猫又九番守"に加えて第三者やら【バッドマックス】やらの妨害が挟まったからだしな。

ちゃんと実力勝負だってんなら逃げる理由にはならないよな。


「……では、私はこれで。ご健闘を祈っています」


「うん、教えてくれてありがとうね留丑ヰ(ルウシイ)ちゃん。撫でていい?」


「む。私もいいかな」


「少しだけですよ?」


「わぁい」「わぁい」


……女性陣、気を抜かないでくれ。




「……お待たせしました、御客人」




軽快に跳ぶでも無く。

純白の猫が──猫又の見慣れた二足歩行では無く、正に妖怪猫又然と。大通りを四足で歩いてくる。

二又の尾の先は──黄金の炎。これまでの侍らしい"猫又九番守"とは違う、正に猫の怪物。

尾の揺らめきと同じ色の、黄金の瞳がこちらを射抜く……。


「……あれ? 大きさとか違うけど……もしかして、女将さん?」


「え? ……あ、色とかはそうだな」


カズハの言葉に気付く。【夜明けの月】が世話になっている猫又経営宿"たまゆら"の若女将。こんな大きくは無かった筈だが。


「ええ、ええ。皆様本当にお優しい客人で、私は感謝しています。サカズキは楽しんで貰えていますか?」


「……ああ。最高だよ。特に最近はあれやこれやと陰謀が面倒な事ばかりで、真っ当に戦えるのが楽しくてたまらない」


「ええ、ええ。それは結構。"猫又九番守"も楽しくやっているようで何よりです。遊んで下さってありがとうございます。

お手数ですが──この私とも、おひとつ遊んで下さいますか?」


黄金の人魂──浮かぶ焔。

かと思えば、広場を埋め尽くす刀となった。


白猫は、四足で深く頭を下げる。旅館の女将のおもてなしを想起させるが──或いは、猫だと思うと臨戦態勢にも見える。




「"猫又九番守"最後の番猫。万誑命(マダラメ)の懐刀、(はち)之番。永年妖猫、玉乃条(タマノジョウ)と名乗らせて頂きます。

どうか、最期の時まで。ごゆるりと──」




──景色が変わる。サカズキ城はあるが、随分と廃れている。小高い位置にある平原に、無数の刀。

これは──やられたか?


「──【曙光海棠(あかきかいどうの)花幷(はなあわせ)】!」


空間作用スキル。……発動しない。つまり、ここは──


「隔離階層か。セカンド階層の宝珠以外でもある事にはあるって分かっていたが……なら!【スイッチ】──【焔鬼の烙印】!」


隔離階層を壊せるこの槌なら、まだ何とかなる筈!

玉乃条(タマノジョウ)はまだ俺達を見ているが──それは余裕なのか、この槌を知らないのか。


「──【鬼冥鏖胤(きめいおういん)】!」


大槌を振り下ろし、空間を──割れ、ないか。


「どうなの、ライズ君」


「……レイドボスとの関係。ここがサカズキである事。諸々考えて……恐ろしい事だが。

どうやら玉乃条(タマノジョウ)は……空間作用スキルの、ver.2を発動できるらしい」


階層そのものと融合する、空間作用スキルver.2。

宝珠に対応するレイドボスの協力があれば発動できる……が、このサカズキの隔離階層は【曙光海棠(あかきかいどうの)花幷(はなあわせ)】だ。こんな殺風景な刀の墓場じゃない。


「これ、ばーじょんつー? って言うのですね。

万誑命(マダラメ)ったらもう。素敵な旦那様なんだから」


……旦那。

永年妖猫。


ちょっと詳しく聞きたいが、そんな暇は無い。

無いぞ。そこ、レディース二名。目を輝かせるな。

玉乃条(タマノジョウ)だけが使える隔離階層を、レイドボスを自覚した万誑命(マダラメ)が補強した……って所か?


玉乃条(タマノジョウ)ちゃん! プロポーズはどちらから!?」

「歳の差婚!? 歳の差婚なのかい!?」

「女性陣!!!!」


このメンバーで戦わないといけないのかよ!

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