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BlueEarth 〜攻略=世界征服〜  作者: まとかな
風雅楼閣サカズキ/ヤマト階層
328/507

328."猫又九番守"

【第130階層 風雅楼閣サカズキ】


──side:スペード

南町:賭場"駒狗(こまいぬ)"


スペードです。

1人で裏市に入って、1人で賭場に入ります。スペードです。

……ここまで誰も居なかったなぁ。猫又達も平常運転。争い事に慣れすぎじゃない?


「おお良く来たね人間さん。いやさジョーカーさん。

今日は変わったお客が多いねぇ」


三毛猫の狗五ヱ(イヌゴエ)が、からからと笑う。

その後ろでは──




「ぬぅ! 次こそは! 次こそは当たるぞ!」

「いけいけシャム様!やれやれシャム様!」

「……ええと、ええと……やれやれー!」




【喫茶シャム猫】。何してるの。

聞くまでも無いか。既に上裸のシャムと、後ろで応援するディザスターとスティング。

大会中に何してんの。


「……む! 貴様は【夜明けの月】のジョーカーとやら」


「はいどうも。随分と平常運転だね、どっちも」


「うん? ……もしかして、もう朝かい?」


はた、とお目目をかっ開く狗五ヱ(イヌゴエ)。もしかして……。


「もう始まってるよ、"爆裂花火二十七"。……そちら、"猫又九番守"で合ってる?」


「ええ、ええ。これは失礼。出遅れた……!」


ぬっと立ち上がり、部下猫に首で指示を出すと──猫又達が慌てて襖を開く。

狭い賭場だと思っていたが、道場の一部だったようだ。思ったより広い空間に繋がっている。


狗五ヱ(イヌゴエ)は身軽にその身を翻して距離を取る。脇には二振りの太刀。

大きな盃を笠にして、一振り抜いては地面に突き立てる。


「あっしは"猫又九番守"、華の切り込み隊長、(いち)之番! 南の賭場師 狗五ヱ(イヌゴエ)でござい。

丁にも半にも、出すもん出してもらいやしょうか!」


「痺れるねぇ。……シャム達、どうする?」


「ん。勝手にせよ。我らは猫又に危害を加えられんのだろう? 特等席で観せてもらおう」


敵にはならないけど、味方にもならないか。

……まぁ、この屋内でなら一騎討ちと考えて良い。だとすれば結構有利だ。

増援や横槍が入る前に──叩く!




──◇──




──side:ライズ

中央町 サカズキ城前


俺、カズハ、アイコ、クローバー、ツバキ。

5人掛かりでここまで来たが……恐ろしいほどに静かだな。


猫託(ネコタク)が城に居るんだな? じゃあ俺が突っ込むか?

万誑命(マダラメ)に近い位置に俺がいた方が良いだろ」


「それはそうだが、出来れば"クローバーがここにいる"って目立たせたい。戦力が傾きやすいからな……。だがマックスほどのインパクトとなるとなぁ」


「──ライズさん、失礼します」


「え」


ひょい、と当たり前のようにアイコに持ち上げられる。

──瞬間、通り抜ける一筋の炎。


「お早い到着だなァ。いいモンが釣れたぜ、ライズ」


「そうだな。アレ相手なら1人でもクローバーと吊り合うか……。【スイッチ】【天国送り(エンジェル・バトン)】──【パワーショット】!」


茂みからの奇襲だったろうに、こっちの返し手はしっかりと避けて──曲者が現れる。


「……見事。トップランカーの名折れだな……」


──【飢餓の爪傭兵団】大幹部。"四枚舌"のクワイエット。


「まだクローバーが居るうちが華だ。アイコは東町へ。残り4人で先にクワイエットを潰す!」


「わかりました。ご武運を」


こっちの方が有利だから、ではない。今ならクワイエットが逃してくれるだろうから、アイコを逃した。

通りでは無く塀と屋根の上に跳び逃げるアイコを、クワイエットは見向きもしない。

──その代わり、両手の剣と、背中から生えた炎と氷の刃が、こちらを向いている。


「……五つでは……()()()()()()……」


「普通は1人2つなんだがな、腕はな!」


4本腕の化け物。寡黙な本人からは想像も付かない、あまりにも喧しい雄弁なる四刀流。

既に間合いだ。緊張が走る、その最中──




「──失礼致します」




突如間合いの中央に現れたのは、二匹の猫又。

看守帽を被った茶虎の猫又に、水晶を持った黒猫。

どちらも大太刀を携えていて──


「うむ。逮捕であります!」


「は?」

「あらぁ?」


──茶虎の看守猫が、クローバーとツバキと共に姿を消した。


「は?」


「──どうも御両人。お初にお目に掛かります。

決闘に水を差す事をお許し下さい。これも賢しい猫託(ネコタク)の策にございます」


黒猫の腰の刀は触れる事なく動き出し、抜刀し、黒猫の前の地に刺さる。


「わたくし、サカズキで占師を営んでおります。"猫又九番守"が(なな)之番。留丑ヰ(ルウシイ)と申します。

大変失礼ながら──その花火、頂く運命にて」


「ライズ君、行ける?」


「……そろそろトップランカーにビビってられる段階じゃないよな! 頼りにしてるぞ、カズハ!」


味方はカズハ1人。心強すぎる。

……それに、急がないとな。


「ツバキに何かあったら……ジョージに何されるか分かったもんじゃないぞ」


「……それは、言えてる!」


相手は猫又に加えて【飢餓の爪傭兵団】大幹部。さりとて、負ける訳にはいかない。

前哨戦だ。張り切っていこう!




──◇──




──side:クローバー


サカズキ城内部


「ツバキ! 警察(サツ)ネコォ! クソが。誰も居ねェ!」


城内は誰も居ねェ。そしてやけに狭ェ。

……誰も居ない事ァ無ェだろ。天守だぞ。


『どうも、【夜明けの月】がクローバー様。お待ちしておりました』


放送。……直接姿を現すつもりは無いってか。


「手荒い歓迎だなァ?」


『お許しを。人間様の"最強"と伺っております。

こちらも全力のおもてなしと行かせてもらいますよ』


ガコン。と後ろで音がすれば。

……壁が動いている。トゲつきの壁が、こっちに迫ってくる!


「オイオイオイオイ……!」


『放送にて失礼。手前"猫又九番守"サカズキ城が司書にして軍師。(よん)之番、猫託(ネコタク)と申します。

どうぞ、その命尽き果てるまで楽しんでもらえますよう』


「アスレチックか。ちゃんと楽しめるんだろうなァ!」


俺対策がしっかりしてやがる。無機質なロボットですら無ェ。

……HPのある相手だと瞬殺されるって知ってんのか。よく勉強してやがる!




──◇──




──side:ツバキ


サカズキ城地下監獄


「同行感謝であります」


茶虎の看守猫ちゃん。ビシッと敬礼してかっこいいわねぇ。かわいいわねぇ。

薄暗い地下で、あたしと向かい合う。その瞳は……油断も情けも無さそうねぇ。


「檻に入れる訳じゃ無いのね?」


「罪は犯していませんので。今回は"猫又九番守"としての責務を全うするであります!」


刀を抜いて、自分の目の前に差し立てて。

真っ黒なグローブを装備する猫ちゃん。


「暴は警の象徴なれば、折れぬ志はどこまでも!

地下よりサカズキを護りし座敷牢。()之番狗飼(イヌカイ)! 参ります!」


……近接格闘系かぁー。困るわねぇ?




──◇──




──side:アイコ


東町大通り


工業地帯と言いますか、煙突とノコギリ屋根の建物が並ぶ少し変わった街並みです。

もしこの町に"猫又九番守"さんが居るのなら、工場長とかでしょうか……?


「──見つけたぞ、アイコ」


空から飛来する隕石──元より私を狙ってはいない様子なので、動かず構える。


隕石は──サイボーグでした。


「覚えていまい。アクアラでのバイクレースを」


「【飢餓の爪傭兵団】のドットさんですよね? 良く覚えていますよ」


アクアラの7番勝負にて、下山レースにて競った相手──それまでの優勝常連者。あまりにも奇抜な格好ですから。忘れられる筈もなく。


「ほう。ではリベンジと行こう。最早弱いもの虐めとはならんだろう?」


ドットさん……【飢餓の爪傭兵団】前線戦闘員、【エンジニア】のサイボーグ、ドットさん。

【エンジニア】さんは出来る事がとても多いです。【コントレイル】のマスタングさんのように空中要塞を作る人もいれば……ドットさんのように装備を纏う人もいる様子ですね。


「素手ですか?」


「全身が武器だ。……君も同じだろう」


構えは、ボクシングの様ですね。

【Blueearth】における拳装備は指の動きが制限されます。グローブ系ですね。

必然、素手戦闘ではボクシングスタイルが主流となります。ドットさんは最前線を走るトップランカー、その前衛部隊。恐らくは【Blueearth】最高峰の徒手空拳使いとなっているはず……。


「ちょいとそこなお二人さん! ちょっと待っておくんなよ!」


──灰色の、しましま猫さんが降ってきました。

手拭いをねじり鉢巻にして、大きな前掛けには温泉マーク。

背中には……大きな出刃包丁を背負っています。


「そちらさん、花火持ちよね? ウチもウチも!」


「……"猫又九番守"か。堂々と出てきたものだな」


「いやさ、遅れちゃいけないってなもんでね!

探そうにも北で騒ぎが起きてるもんだから、置いてかれないかと心配でねぇ!」


よっこらしょい、と出刃包丁を抜いて、目の前の地面に突き立てる。にっこり笑顔の明るい猫さん。


「改めまして、手前、東町の銭湯街で番頭張らせてもらってます。"猫又九番守"(ろく)之番、猫番(ネコバン)だねぇ!

なんたって銭湯の番頭。戦闘だってお手のものさね! にゃはははは!」


「……アイコよ。不利になっただろうが、手加減はしないぞ」


「勿論です。気兼ねなくどうぞ」


猫番(ネコバン)さんがどう動くのか分かりませんが……まだ、近接戦に持ち込められそうです。


「お相手します。──【瞑想】」


赫の"仙力"を身に纏い、構える。

東町は主戦場から離れています。ここで花火を失えば、猫番(ネコバン)さんにせよドットさんにせよ再度見つけるのは困難でしょう。

……【夜明けの月】のため、ここで頑張らせて貰います。




──◇──




──サカズキ城


「おお。派手にやってんなぁ」


マックスが打ち上がってというもの、あちらこちらで喧騒が絶えない。普段は牙を潜めている"猫又九番守"が積極的に動いているのも大きいだろうな。


「お前さんも好きに暴れていいんだぞ、猫託(ネコタク)


「これが私なりの暴れ方ですので。領主様は準備しておいて下さいね」


城を遠隔操作で自由に変形させている猫託(ネコタク)は、かつて──【Blueearth】により造られた過去だろうが、()はそれを覚えている──槍の名手と畏怖された。

だが、そもそも戦場に出て戦う事自体が好かないらしい。変わり猫だ。


「……準備? お前達が居るのにか?」


「それは勿論。運動不足でしょう? きっとマックス達なら貴方を引き摺り出してくれますよ。

……おっと、また突破。流石は"最強"……では私はこれで」


階段を降りていく猫託(ネコタク)

俺が運動不足なのはお前が逃がさないからだろう。事あるごとに外に出ようとしていたんだが。


「……さて。どこがどう勝つかねぇ?」


サカズキは……ヤマト階層は、何も無い。

古代文明の自滅まで耐え切ったここは、勝利の証。

なもんで、みーんな暇なんだ。

楽しませて貰おうか、人間諸君。

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