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BlueEarth 〜攻略=世界征服〜  作者: まとかな
風雅楼閣サカズキ/ヤマト階層
324/507

324."爆裂花火二十七"

【第90階層 水鏡基地ミラクリース】


「凛。元気かい?」


「お前は本当に舌の根も乾かぬ内に。帰れなのです」


中央広場にて休憩中、真っ白な制服のレインが現れたのです。

こちら出稼ぎ中のミカンさんとリンリンちゃんなのです。高確率でこのレインが()()()()()ので疲れるのです。


「兄さん、仕事は……?」


「巡回中だよ。"ディセット・ブラゴーヴァ"の様子を見る目的もあるし、ちゃんと建前作って来ているよ」


「いやだからと言って好き勝手暴れたホライズン階層に週一で現れないで欲しいのでおじゃる」


ここ数日の仕事仲間、【水平(ホライズン・)戦線(フロントライン)】のバルバチョフ。後ろにはアルバレストとゴーギャンも。

"拠点防衛戦"もじわじわと再開し始めて、()()()の指南をしているのです。元はと言えばこのホライズン階層から始まった伝説。手慣れたものなのです。


「……おい。大統領……客人だ」


今日も渋いタイカイの爺さん、引き連れるは知った顔。……ジョージと、ドロシー?


「ありゃ。二人とも出稼ぎはどうしたのです?」


「おやミカン君にリンリン君。

いやなに、昨晩で想定外にお客さんが来てね。早くも店仕舞いだ。

戻る途中でドロシー君と合流してね。別件に寄ったんだ」


タイカイの爺さんは、大統領……バルバチョフに声を掛けた。つまりは、ミカンさん達が目的では無いのです?

ドロシーがキョロキョロと人を探すようにあっちこっち見て……こっち、いやミカンさんの後ろの方に誰かを見つけたみたいなのです。


「あ、いらっしゃいました。ゴーギャンさん、少しお話よろしいでしょうか」


選ばれたのは……小柄な大筆使い、"勝利の女神"ゴーギャンちゃん。


「私ですぞー!?」


ちっちゃいの3人組が、何故か揃っているのです。


「ミカンちゃんも含めて4人組、だよね……?」


ミカンさんは大人のれでぃなのです。




──◇──




──翌日

【第130階層 風雅楼閣サカズキ】

冒険者用宿屋敷"又旅亭"

【バッドマックス】仮拠点


「……で、何の用だよ」


しなしなマックスおじさん。

メアリーに呼ばれて殴り込みに来たが、相変わらず元気が無さそうだ。


万誑命(マダラメ)と"エルダー・ワン"を合わせるため、カズハに戻ってきてもらってスペードと一瞬にサカズキ城に行かせた。ここに来たのは俺とメアリーと、ドロシーとジョージ。

メアリーの指示で動いていた二人。ここからはメアリーに全部任せるというか、俺は何も聞かされていないんだが。


子丑(ねうし)美卯(みう)さん。一度離婚した後、娘を連れて再婚。【Blueearth】には来ていないわ。現実世界で新しい旦那さんと平和に過ごしているわね」


「……! そうか。旦那の事は……」


「名前は言わないけれど、特筆する事も無い立派な社会人よ。アンタより少し若いけれどね」


「……そうか、そうか……!」


話の感じからして……恐らく、マックスの元奥さんの話か。天知調さんに頼んで現実世界の方を調べていたんだな。

マックスは顔を手で覆って俯く。

自分では言い出せないよな。自分が原因で離婚したんだから。


「それで、娘さんね。子丑(ねうし) 泰子(たいこ)さん。こっちは【Blueearth】の開発側にいて……今も【Blueearth】に来ているわ。ジョージ」


「うん。これだよ」


ジョージがマックスに手渡したのは、笑顔の……ゴーギャン。

あいつかよ。……ゴーギャンはマックスより後に攻略を始めて、ミラクリースで攻略を止めた。会う機会は無かったか。


「ドロシー経由で確認したわ。この子は、完全にアンタを覚えてない。アンタが何したのかは知らないけれど、トラウマとかも現状外に出ては無いわ」


「……他ならぬ僕自身が()()()()ものを経験していますから。間違いはありません。保証します」


「……そうか。泰子は、うん、そうだな。

何も知らないなら最高じゃねぇか。本当に良かった……!」


マックスにとってはそっちの方が救いになるか。

……求めていたのは再開ではなく、ただ愛した人達の安否、か。メアリーはそこまで理解して動いていたわけだ。


「……どう? もう気になる事、無いんじゃない?」


「そうだな。……よし! 沸々と燃えてきたぜ!」


バン!と膝を叩き、勢い良く立ち上がるマックス。

……さて、ここからが厄介だぞ。


「よぉし! 戦るか【夜明けの月】! 悪いが感謝はすれどタダで宝珠をやる気は無ぇ!」


「まぁ落ち着け。そっちの準備は今やっている所だから」


一枚の半紙を手渡す。今朝万誑命(マダラメ)により流布された、一つの宣伝書。


「……"猫又試合九ツ番付"。なるほどな! 丁度良いイベントじゃねぇかよ!」


──"猫又試合九ツ番付"。

サカズキに九匹存在する"番守"を順に倒していく力比べ。今回は基本ルールが多少異なる。


「【夜明けの月】と【バッドマックス】、それぞれ代表者で挑むのはどうだ。合計の勝ち数で競おう」


「およそミザンのやつと同じだな! だがそんなチマチマした事ぁしてられねぇ!

早い者勝ちだ! このサカズキ全部巻き込んで大喧嘩といこうぜ!」


着火しちゃった。

……また派手に燃えてるなぁ。ここまでやる気出されんのは想定外なんだが。


「じゃあ細かいルール決めるわよ。座りなさい」


「おう」


意外と冷静。




──◇──




──【井戸端報道】速報!

宝珠も残すところ後二つとなった【夜明けの月】!

【第130階層 風雅楼閣サカズキ】にて待ち構えますは【セカンド連合】第三席【バッドマックス】!

昨日、遂に両雄衝突の報を受け取りました!


曰く、今回の決闘にはサカズキのイベント"猫又試合九ツ番付"を利用するとの事。

その名もズバリ、"爆裂花火二十七"!

果たしてどのようなルールとなるのか、明日の夕方より【第130階層 風雅楼閣サカズキ】からルール説明です!




──◇──




──翌日夕刻。

【第130階層 風雅楼閣サカズキ】

大通り・サカズキ城門前


「お待たせしたのです」


ミカンとリンリンが合流。これで【夜明けの月】は全員揃った。

……万誑命(マダラメ)に、【バッドマックス】。主役は揃っている。撮影の準備に奔走している【井戸端報道】の……【神気楼】オオサダ。【神気楼】の最高攻略階層はここまでらしい。


「……はぁい!!! 準備オッケーでぇす!!!」


今日も元気な幽霊美人。

城門前には、万誑命(マダラメ)とマックス、そしてメアリー。オオサダは3人の隣に立つ。


『──急な放送を謝罪するぜ! 俺ぁ天下に轟く【バッドマックス】大頭! "大玉花火"マックス様だァ!』


ドカンと昼空に大花火。子猫達がきゃっきゃと喜んでいる。騒音被害ごめんね。


『さて、早速ルール説明だ! 即ち"爆裂花火二十七"!

協力は万誑命(マダラメ)に頂いた!』


『ああ。……これに映っているんだな? どうも、サカズキの領主 万誑命(マダラメ)だ。

サカズキにて行われる力試しのイベント、"猫又試合九ツ番付"。これとそちら冒険者さん達の"宝珠争奪戦"を融和させようという提案を呑ませて頂いた』


『協力感謝するぜぇ! んじゃ、早速だが! メアリーにも華ぁ持たせないとな!』


派手でうるさいが、マイクを手渡す手は優しい。

メアリーもマックスの言動不一致に怪訝な顔をしている。

……元通りとはいかないみたいだ。どうしても気遣いが生まれてるな。かつてのマックスなら老若男女問わない馬鹿だ。マイクだって投げつけていたかもしれないし、そもそも渡しもしなかったかも。


『……ええ、貰うわ。

本来の"猫又試合九ツ番付"は九つの"番守"を撃破するものだけれど、ここで少しだけルールをいじらせて貰ったわ。なんたって"宝珠争奪戦"だからね』


メアリー、万誑命(マダラメ)、マックス。

全員が懐から取り出すは、手のひら程の大きさの……花火?


『要するに争奪戦よ。"番守"九つ、【夜明けの月】九つ、【バッドマックス】九つ。これを全部獲得した陣営の勝ち。……それでいいのね?』


『応よ! 単純明快! 強い奴が勝つ!

花火の受け渡し方法は二つ! 譲渡か勝利だ! 戦闘し負けたのなら問答無用で移るからな!』


『それと……まだ何かあるんだっけ? ヒミツって言ってたけど』


『おうおうそうだったぜ! この花火の受け渡しだが、唯一猫又の"番守"が持つ花火だけは!

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()移らないぜ!』


……ん?

どういう事だ。

猫又同士では宝珠を譲渡できない、って事か?


「……ライズさん」


裾を引くのはドロシー。

……げんなりとした顔で、察しがつく。


「……ヤバいか?」


「ヤバいです。ここから"神の奇跡"でスタン投げたくなるほどに」


マジか。

振り返り見やれば、マックスは満面の笑みで。




「──そう、今回の大会は! ()()()()()()()

ここまで来れる奴ら! トップランカー? 【月面飛行(ムーンサルト)】? 【象牙の塔】?

かかってきやがれ馬鹿野郎共! 誰が相手でも! 俺様が勝ぁつ!」




やりやがった。

……やりやがったあのアホ!


「……ミッドウェイからずっと、どうにも平等な戦いにならないわねぇ」


「【首無し】はトップランカーすら混ざってたし、ミザンではゲストがいたからね。やってくれるねマックス君……」


それらとは比べ物にならん。トップランカーが合法的に襲撃して来るんだぞ。

……ここでドンパチするつもりは無いんだけどなぁ!


『ちょっとマックス、どういう事よ!』


『面白ぇだろ。サプラ〜イズ』


『ばっ、ちょ、アンタねぇ……!』


『おらー! どいつもこいつもお高くとまりやがってよぉ! 正々堂々喧嘩しに来やがれ! 聞こえてるかハヤテこの野郎! 俺はまだ負けてねぇぞ!

あとアカツキ! 偉そうに引き篭もってんじゃねぇよ! 次はテメェなんだから身体慣らしとけ!

あとブックカバー! なにシケてんだよ!らしく無ぇ! 派手に行こうぜテメェら!』


『煽るなー! オオサダさん、カメラ切って!』


『あっ、はい!!! 続報はまた後ほど、です!!!』


マックス大暴れ。もうめちゃくちゃだ。

……本人が楽しそうならいいか、ってのは蚊帳の外だから言えるわけで。当事者になるとたまったもんじゃないな。


「ライズさん、嬉しそうですね」


「まぁな。やっぱマックスはああじゃないと」


隣で着火してるのは怖いが……やっぱ花火は見て楽しむものだよなぁ。

……現実逃避か?

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