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BlueEarth 〜攻略=世界征服〜  作者: まとかな
大樹都市ドーラン/フォレスト階層
32/507

32.【朝露連合】

フォレスト裏拠点階層【第13階層裏 翠緑の聖域】


アイコさんを加えた私とゴースト、即ち【夜明けの月】。

ヒイラギさん率いる【エルフ防衛最前線】。

そして【ダイナマイツ】。

攻略を中止して戻ってきたのは、美脚花妖怪にビビったわけではなく。ライズから連絡が入ったからだ。

今あたしたちは、あの二人が戻ってくるのを待っている。


転移ゲートの前で待つ。

ミズバケツさんとレンのおかげで情報共有は済んでいる。これでやっと、勝ち目のある勝負に持ち込めるはず。


「あ、来ました!」


ゲートが光り、数日ぶりに会うムカつくドヤ顔が見えてくる。いや、どっちかっていうとスッキリした感じ?


「ただいまー」

「久しいなァ【エルフ防衛最前線】の野郎ども! ボンバ様だぜェ!」


ライズとボンバ。放火及び器物損壊、恐喝に不当捕縛。立派な悪の組織の一員になったものね。


「アイコ! どうだ、思い出したか?」


「はい。改めまして今後とも宜しくお願いしますね、ライズ先輩」


全然以前と変わらない態度のアイコさんに、ぐぬぬと唸っているライズ。一泡吹かせようとして泡吐いてるわ。ざまぁないわね。


「さて、ここからが勝負よ。エルフによるドーラン襲撃……《拠点襲撃戦》は推定5日後!

 ()()()()()()()()()()()わ!

 ここまで来たからにはちゃんと説明しないとね。つまり、結局どうやって勝つのか!」


ここはまだ説明していない。ギリギリまで2択が残ってたから説明できなかったのよね。

無事ここまで来れたからやっと説明できる。


「今回の一件で問題になった点は、『どうすれば勝ちと言えるか』よ!

 真っ当に《拠点防衛戦》でエルフが勝ったとしてもカメヤマは今のポジションをキープする作戦を立てていた。ってかそうなるよう動いていたわ」


もしここであたし達が干渉しなければ完璧に遂行されていた、めちゃくちゃ用意周到な計画。


「その為にカメヤマはアイコを利用した。戦力差を数字以上に縮めるためにアイコの優しさを使ったわけね。

 ついでにヒイラギを通してエルフ側に物資を補給する言い訳にも使われていたわ。

 だからあたしはエルフ派の核であるアイコを誘拐したわ。これが成功しちゃうと諸々不都合なのよ。そしてカメヤマはあたし達の攻略を止める事は約束上できない。

 最後にライズとボンバでエルフへの献上品を全部ぶっ壊した。これでカメヤマは《拠点防衛戦》に負ける戦法が使えなくなった」


「んじゃ後は勝てばいいのか?」


「合ってるけど合ってない! そもそも《拠点防衛戦》なんてやらないわよアイツ。()()()()()()()()()()から。

 あの手の連中はね、より稼げる方を選ぶように、より勝てる方を選ぶのよ」


そう。あたしが最初から狙っていたプランAはここ。

無事全てが想定通りに進んでくれて助かるわ。


「あたしの想定ならそろそろ来てもいいと思うんだけど……」


「ん、すまんメアリー。……着信だ」


ニヤリ。

我ながら悪い顔をしてるわ。きっと。


「当てたげる。【鶴亀連合】からでしょ。繋げられる?」


「あー、映像に切り替える事もできるが……いいか?

 あぁ、こっちは皆いるよ。

 ……オッケーだって。写すぞ」


空中にウィンドウを拡大し、全員が見えるよう位置を調整。

写っているのはカメヤマ、他のはライズの言ってた人達かしら。


『あーあー、どうも。初めましての方も多いでしょう。改めまして【鶴亀連合】総店長のカメヤマです。

 相反する陣営です。普段はこうして連絡する事はありえない事ですが──今回は大目に見て頂ければ』


カメヤマは物色するようにあたし達を見定める。そして、一言。


『一つ、提案させて頂きたい。

 この長きに続く戦い、我々冒険者の【ギルド決闘】にて終幕とさせて頂きたい!』


──来たァ!


ライズも驚いてる。感心しなさい。このあたしの慧眼に!


「受ける理由は無いんじゃないかしら? だってこっちは今最高にノッてるのよ。

 エルフの数も戻ってきた、冒険者も一気に倍の人数になった。それにそんな慌てなくても5日もすればやるでしょ《ギルド防衛戦》」


横槍を入れるあたしを睨むカメヤマ。

ふん。怖くない。

あたしゲスには強く出れるみたいだわ。


『成程……ライズさんに入れ知恵をしたのはアナタですか。見かけに寄らず聡明なお方だ。

 おっしゃる通りです。これはこちらからの一方的な提案ですので。勿論相応の報酬を用意致します』


「なら今ここで提示してもらうわ。できる?」


『構いませんが、失礼ですがアナタは……?

 できればエルフ派の代表者と対面でお話したいのですが』


「残念でした。対策済みよ。アンタ達! あたしは誰!?」


【ダイナマイツ】が意気揚々と垂れ幕を広げる。


「「「エルフ派ギルド連合【朝露連合】総長(ヘッド) メアリー様です!!!」」」


そこまでしろとは言ってない。

真っ赤な垂れ幕やらのぼりやらに『打倒ドリアード』『得流府(エルフ)万歳』『黄金の双角』……。

族になったつもりはないんだけど。


「……まぁ、こういう事よ」

どういう事よ。


『……わかりました。アナタが代表という事ですね。いいでしょう』


「さっきから勘違いしてない?

 今アンタは、あたし達にお願いしている立場でしょ?

 対等な視線だなんて思わない事ね」


──まだ。

どこまで追い詰めても、カメヤマは【ギルド決闘】が出来るように話を進めようとすると思う。

そしてあたしは──あたしも、【ギルド決闘】がやりたいんだなぁ、コレが。

だがそれで通してはいけない。あくまで向こうが提案し、こっちが飲む。立場の重要性は前回の【ギルド決闘】で学んだのよ。


『これは、失礼しました。

 さて報酬についてですが、端的に申し上げてしまえば【鶴亀連合】の解散です。

 より正確に言えば現行の《ブラックリスト》の中からエルフ派弾圧のために入れていた人を撤廃し、今のようにエルフ派が不利にならないよう改革させて頂きます』


おお、とざわめくエルフ派。騙されとるなー。


「全然解体されてないじゃない。ドリアード有利になるように調整してるのを、五分五分になるように調整するだけじゃない」


『何か問題でも? エルフ派とドリアード派の抗争に外部による不当な干渉を加えないで欲しい、というのが願いでは?』


「建前を攻撃しようったって無駄よ。野郎共!【朝露連合】のポリシーはぁ!?」


「「「気に入らねぇ奴をぉ! ぶっ潰す!!」」」


『物騒すぎませんかねぇ!?』


古来よりこの手の輩は、自他共に建前を守るものだと信じて疑わない。

表向きに掲げている看板さえも利用すると言えば聞こえはいいが、そんなもんあたしに通用しないわ。

【朝露連合】はマジでこの瞬間のためだけの連合よ。建前と本音を分ける必要ないわ。

なんならエルフの事とかどうでもいいまであるわ。これ言うと人気落ちちゃうから言わないけど。


「そういう事で、アンタの【ギルド決闘】は受ける価値無し! こっちは正攻法でアンタをドーランから追い出してやるわ。

 もし受けて欲しいのなら、もっと単純にお願いしなさい?」


カメヤマが笑顔の裏で苦しんでるのがわかるわ。

あたしみたいなガキにいいようにされて悔しいわねぇ。

ほら、言いなさいよ。絶対言いたくなかったやつ。




『……では……勝った方が……総取りというのは、どうでしょうか』




絞り出すように出てきた言葉。

これがあたしの狙い。


「【ギルド決闘】に勝った方が、相手の連合ギルドの全権を得る! それでいいのね!?」


『ぐっ……ただし! 但し、です。ライズさん、ボンバさん!

 この戦いは最早エルフドリアード関係の無い、冒険者としての喧嘩に他ならない! ならば貴方達は私の味方をしなくてはならない筈では!?』


そこが危なかったのよね。なんとかしたけどね。


「悪ィなカメヤマ。もう【飢餓の爪傭兵団】本部に署名貰ったからよォ。無理だ。

『今回の一件は、エルフ派』って奴な。別に《拠点防衛戦》とは言ってないしなァ! これがエルフドリアード関係ない喧嘩だって言ったってこいつらがエルフ派なのは客観的事実だしなァ」


「【首無し】からタレコミあったけどメアリー襲う依頼したらしいな。お前が約束一つ破ったから俺も一つだけ破るってことでヨロシクぅ!」


……この違反をダシにするには非公式すぎるから、この辺で消費できてよかったわ。

 狙われてるのはゴーストから教えてもらってたけどね。未遂で済んでよかったわ。


『ぐぬぅ……ぬぬぬ……しかし、戦力に差があり過ぎます。

 当然こちらから提案する立場で言えた事ではありませんが、あまりに一方的過ぎれば【ギルド決闘】そのものが成立しません。どうか慈悲を……』


「人数差は? 数ならそっちは負けないでしょ」


「それでもレベル100オーバーじゃ力量差があるわな。どうする?」


「じゃあ単純に1人だけ100オーバーの助っ人を入れるンはどうよ。レベル制限は各1名を除き99以下。これならマシじゃね?」


「……そっちはアテがあるの?」


『ここまで折れて頂ければ、必ずや最高の一人を用意しますとも。ご心配なさらず』


合意。少しこっち不利だけどね。


──それから暫く、条件の設定が続いた。




──────

・報酬は《相手連合の構成員の吸収・実権の獲得》


・各連合のレベル制限は99以下。但し例外として1名のみ制限無しとする。


・【鶴亀連合】側のレベル制限例外枠は24時間以内に公表する。

 また、【朝露連合】のレベル制限例外枠はライズとする。


・平均戦力差から、人数差は3倍まで。

 【朝露連合】は最低40名参加メンバーを用意し、24時間以内に参加人数を公表する。

 公表後24時間以内に【鶴亀連合】は参加人数を公表する。


・決行日は三日後。集合場所は【土落】倉庫跡地。

 参加人数の最終決定は【ギルド決闘】開始前とし、集合場所までの道のりは双方《拿捕》の輩に護衛を依頼する。


・【ギルド決闘】そのものの詳細なルールの制定は当日《審理》の輩による決定に従う。

 ただし両者合意として、《レベル制限例外枠の撃破》《敵の全数撃破》を勝利条件にはしないようにする。


・物資調達の観点から、決闘開始までの3日間【朝露連合】のブラックリストを解除する。


・人員補給の観点から、【朝露連合】の同行時に限り、ブラックリスト入りしている冒険者のドーラン入りを許可する。


・エルフ派の増援が【翠緑の聖域】に集まる事ができない場合があるので、【土落】の土地の一部を【朝露連合】の派出所として認める。


──────




『……では、楽しみにしていますよ』


通話が切られ、やっと一息。


「きっっっつ……疲れたぁ」


「お疲れメアリーさん。よしよし」


ドロシーと一緒にアイコさんに抱き抱えられる。抵抗できない。ぐえー。


「流石だぜお嬢。ウチの連中を一夜で取り仕切っただけはあンな」


「とはいえ問題はあるぞ。押し切られた例外枠に誰が来るかわからないからな」


あっさり決めたように見えるが、そこがかなりキツい。

人数差があるあたし達にライズがいてトントンってつもりだったんだけど……どうしたってこっちが不利になっておかないと、《審理》の輩にライズの参加を取り消される可能性がある。必要経費ね。


「そこはレベル制限を取り付けられたって事でプラスと見るわ。最悪無視すればいいし、ライズならなんとかなるでしょ?」


「ん……まぁやってやるよ。ブックカバーとか来ないでくれよ……」


「来ないわよ、前線の連中ほど。

 だって前線の道具屋は【マッドハット】ってギルドが牛耳ってるんでしょ? 商売敵の【鶴亀連合】に手伝う奴いないわよ。

 唯一ちゃんと傭兵稼業を公表してる【飢餓の爪傭兵団】を抑えてるんだから大した奴は来ないわよ」


だからアテがあるのか聞いたんだし。

……なんかライズに撫でられた。てかみんな順番に撫でてくる。なんなのよ。


「よし、じゃあ俺は急いで手伝ってくれるメンバーを集めてくる。どんだけ必要だ?」


「3倍差を埋められるには……60……は、多すぎるわね。合計50目標にしましょう。30人連れて来なさい」


「了解だボス。集合場所は?」


「ボンバさんの権利で土地固めて、そのど真ん中にするわよ。できるだけ何もない場所がいいわね。

 どこから侵入しようとも目立つようにしたいわ。敵の監視範囲だったら尚更。

 向こうだって勝手な事する部下は止めたいと思ってるだろうし、そのくらいしてあげましょう」


「任せなァ! メンバー配置は?」


「あたし、ゴースト、ボンバさん、アイコさん、あとドロシーは【土落】行くわよ。他のメンバーはここでアイテム整理と修行。

 相手の妨害が無いとも言い切れないわ。ここから出るのは出来る限り止めたほうがいいわね」


突然白羽の矢が立ったドロシーがびっくりしてる。可愛いわね。


「あ、あの、僕ですか? どうしてですか?」


「んなもん決まってるじゃないの」




「アンタが今回の鍵だからよ」




──◇──




【第10階層 大樹都市ドーラン】

【葉光】ドリアード王家《向天神殿》

──1F 会議室


「カメヤマさん。アテはあるんですか?」


シラサギが心配そうにしている。それもそうだ。

我々は商人だ。ドーラン内の冒険者をコントロールはするが、突出した暴までは確保できていない。

そもそもドーランの統制方法は数の暴力による同調圧力だ。突出した個を押さえ込む事に特化している。

それは建前では平等にみせる為だ。

そしてこういう暴が必要になった時、カメヤマは闇ギルドに依頼してきた訳だが……先日、影の王から直々に脅されたばかりだ。


「【マッドハット】の息がかかる第30階層(クリック)以降の冒険者は難しいでしょう。何も考えていない輩ぐらいしか確保できません」


カメヤマが大きく、大きく溜息を吐いて。

天を仰いで、一言。




「【飢餓の爪傭兵団】に依頼します」




ん。だが【飢餓の爪傭兵団】はボンバによって抑えられている筈。それがわからないカメヤマではない……


「唯一あの証書だけは、ボンバの解釈によって内容以上の効果を発揮しています。同様に解釈次第で無効にできる可能性もある。

 無効にできれば儲け物です。【飢餓の爪傭兵団】謹製のレベル99軍団で固めてやりましょう。何人来ても問題ありません」


「ですが【飢餓の爪傭兵団】は聞き入れてもらえますかね?」


「……私がこのドーランを取り仕切ったきっかけは、現【飢餓の爪傭兵団】のギルドマスターと大幹部の提案でした。

 公言した事はありませんがね。直接頭に話を通す事は可能です。

 向こうがどういう意図だったのかは今も不明ですが、私がドーランを支配する事が向こうにとって得ならば、聞き入れてもらえる筈……」


初耳の情報だ。ダミーは誰も聞いていないか、会議室の外を確認していた。

【飢餓の爪傭兵団】は対等な商売相手。だがまさかその頭と繋がりがあるとは思わなかったな。


縋るカメヤマのメッセージ。それが通じるかはカメヤマすら、確実とは言い切れない。


──が。




《メッセージの返信が届きました》




──蜘蛛の糸が垂れてきた。


〜アイコの恩人達〜


・古和井 恐子(ぎゃるこ)

アイコ小学生時代の恩人。

ばっちばちにピアス空けてるコワモテのお姉さん。

女だからって舐められないよう、自衛のために外見を派手にして周囲に威嚇していた。

やたらデカい小学生(アイコ)が虐められているのを見て、男の幼体にトラウマ刻んでやらぁ! とビビらせにかかる。

その後アイコに、外見で舐められると碌な目に合わない事を教え、そのデカさが活用できるかもしれない、とアドバイスする。

その後、アイコ経由で知り合った寡黙な男性と結婚し、現在二児の母。禁煙にも成功した。

もう威嚇する必要は無くなったので、ピアスはアイコが誕生日プレゼントにくれた小物入れに大切に仕舞っている。

「ビビらせろとは言ったけどさ。ムキムキになって帰ってくるとは思わないじゃん」


筒望(つつもち) 干貝(ひがい)

かつて高名な格闘家だったが、妬んだ同僚の悪辣な計画により美人局に騙される。結婚した相手は結婚詐欺師だった。スキャンダルを弁明する間も無く同僚に喉を薬品で焼かれ入院。意識を取り戻す頃には同僚も妻だった人も投獄され二度と会えなくなり、地位も家も残されなかった。

徹底的に打ちのめされ、どうやって自殺しようか考えていた頃。

あまりにも将来性のある肉体を持つアイコに話しかけられた。

彼女を鍛える事こそが生きる意味と捉えて猛特訓する。

僅か数年でアイコは同年代の空手チャンピオンとなり、ひたむきに特訓に向き合い言葉を発せない自分にも優しく触れ合ってくれるアイコに感化され、現役復帰を決意。

かつての友であるTVディレクターにスポンサーになってもらい、ジムを立ち上げる。

後に空手大会の全階級不問デモンストレーションにてアイコと直接対決し、見事敗北。アイコを追う立場となって日々精進している。

アイコのツテで出会った元気な女性と交際し、過去のトラウマを乗り越えて結婚する。

『ところでアイコ君。

 君、元々体格が良いのは当然なんだけど、

 全体的に骨格から変化してないかい君?

 もしや人類ではないのでは?』


・枕木 (ねむる)

軽薄そうな見た目のTVディレクター。

かつての知人に頼まれてジムのスポンサーをしている時にアイコと出会い相談を受ける。

元より注目されていたアイコを『強く優しい美少女格闘家』として宣伝し、世間のアイコに対する印象の変化に大きく貢献した。

かつて上司や先輩に気に入ってもらうため、「それっぽい」というだけで指示されたチャラ男キャラを演じて軽薄なお調子者として身内で人気になるが、その結果として自分の受け持つ番組の楽屋を、喉を焼く重体事件の舞台に選ばれたしまう。しかも被害者は知人だった。

その知人が立ち直ったと聞いて全面協力を決意。知人の大切にしている秘蔵っ子の悩みを聞いて、周りに合わせて行動し後悔した自分を重ねてアドバイスする。

その後アイコとの付き合いは長く、色々と黒い所もあるテレビ業界でもアイコを守るため陰ながら働いている。

政治家も芸人もアイコを不幸にする可能性のあるものは全権使って排除する。

もはやアイコは自分の娘のように溺愛しているが、生涯独身を志している。

「アイコちゃん年々縦横に伸びてない?

 画角に収めるの大変になってきちゃったよ」


押欲(おしよく) 負政(ふせい)

汚職議員として有名になった押欲負楼(ふろう)の一人息子。

かつてはその立場に相応しい人物となるべくエリートとして議員の道を突き進み『次代の政治を背負う負政』として持て囃されていたが、父親の汚職が判明すると一転。議員の道を断念せざるを得なくなり、『不正の負政』と揶揄われ人気も地の底へ落ちる。

その際にある番組で自暴自棄になって芸人に噛み付いた結果、キレ芸と毒舌キャラが人気を博し2世タレントとして活躍する。後々自虐ネタも取り入れた。

アイコの事は最初は気に入らなかった。何を言っても悪く取られ馬鹿にされた自分と比べて、みんなの人気者で何を言っても良く取られ評価されていたアイコは真逆の存在だったからだ。

(枕木ディレクターの妨害もあり)ほぼアイコとの接点がないまま偶然休憩所で出会い、悩み疲れたアイコの話を聞いて内心ブチ切れる。

何言ってもお前のやる事を悪く言う奴なんておるわけないやん。ざけんなや。

アイコを後押しして以降は持ち前の教養の高さからニュース番組、教育番組、政治経済系の番組など次々レギュラーを獲得し、ついに今年は2世議員として出馬を表明した。

なお、最初に噛み付いた芸人も当時落ち目だったがその一見以来有名になり、地方ながら冠番組を幾つかもらえるようになった。この伝説から、芸人界隈では「噛み付かれたら仕事がくる」事から『獅子舞』と崇められていたりする。

ちなみにSNSが普及してからは度々、ボランティアを偽善だと言う奴にくってかかって炎上し定期的にアカウントが凍結したりしている。そこもある種人気の要因らしい。

「てか悩みが小さいねんアイコ。

 文句言う奴なんて小指一本で吹っ飛ばせるやん。なんであない優しいねん。

 あれか。逆に力加減できひんタイプか。アンチは気ぃつけやー。下手な事SNSに呟いたらその指ぐしゃぐしゃに折り畳まれるでぇ」

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