31.アイコの記憶《幸せな出逢い》
──数日前。
【第13階層フォレスト:迷いの森】
アイコと共に撮影したビデオをカメヤマへ送信した。
ここらは時間との勝負だ。メアリーにメッセージを入れ、メアリーチームは徒歩でこちらに向かい始める。
俺は【翠緑の神殿】経由でドーランへ帰還し、メアリーとアイコが出会うギリギリまで身を隠す。
……まぁ、そういう計画なんだけども。
「なんかこう、いいのか?」
「いい、とは?」
キョトンとしているアイコ。
相当色々すっ飛ばして話したのに全て「わかりました」で答えるもんだから、どこまで本気なのかわからん。
「【鶴亀連合】の作戦の話、そっちのギルドマスターが裏切り者だった話、【夜明けの月】に参加する話。
あとさっき俺が口を滑らせた記憶の件な。おまえどこまで信じてるんだ?」
あまりにも本心が見えなさすぎてつい意地になって、【夜明けの月】の本当の目的まで言ってしまった。それでも尚「まぁ、そうなんですか」ときたもんだから大物だ。
……「信じてない」「本心が見えない」は俺の願望なのか?
本当は、本当に、一切裏の無い聖人なのか?
そんなことはあり得ないと思いたがっている俺が間違ってんのか?
「全て、信じています」
……なんか、もう、叶わない。
「世界一優しく強い格闘家」ってこういう意味なのかよ。
この期に及んでまだ俺は信じられていないが……
「ライズさんの言う通り、今すぐには返事する事は控えます。メアリーさんと会ったら、私の記憶を戻して下さるんですよね? ちゃんとした回答はその後に、と」
「ああ。今言質を取ってから記憶戻してってのは酷な話だ。まだアンタがどれだけ信じてるかもわからんしな」
「ライズさん」
──しまった。アイコに背を向けてしまった。
振り返るより早く、俺の両肩は身長190超えの筋肉聖母に抑え付けられ、身動きができなくなった。
──ころされる。
「……心の中で、わたしを見定めていますね」
「はい」
「それは素晴らしい事です。常に客観的で正確な判断ができるように人を見定める癖なのでしょう。
でも、それと同時に人を疑う自分が許せないとも思ってしまう。
葛藤しているのでは? 相手の発言の真意を探り傷付きたくない自分と、相手の発言通りに受け取って相手を傷付けたくない自分との間で」
……そうかも、しれないけども。
そんなキレイなもんじゃないだろ、とも思ってしまう。
「私はライズさんではありません。口当たりの良い言葉で励ます事はできない。私は本心からライズさんが優しい人だと思いますが、あなたはそれを受け取らないように努力してしまう」
……あぁ、見透かされている事に対する苛立ちと、理解してもらえる事に対する安堵というか。
なんともアイコと話していると変な感じだ。
これ以上は保たない。肩を掴む手を軽くタップすると、優しく離してくれた。
「アイコ。あんた本当に良い人なんだな。じゃあ記憶が戻ったらまた会おう」
「ええ、また。お待ちしています」
……まだまだガキだ。俺も。
振り向けば顔を見られるからってアイコの顔も見ずに、逃げ出してしまうのだった。
──◇──
「惚れてしまった、の部分は嘘だったのかどうか。
教え損なってしまいました」
──◇──
──数日後。
フォレスト裏拠点階層【第13階層裏 翠緑の聖域】
やってきたわ【エルフ防衛最前線】のアジト。
ドロシーは久しぶりにアジトに帰ったから、少し興奮気味ね。
「お嬢。そんでこれからはどうするんだ?」
【ダイナマイツ】の面々も、ボンバさんから指示を受けて事情は把握済み。全員「面白そう」の一言で着いてきてくれたわ。
「ボンバさんがライズと一緒にエルフ派宣言するから、【ダイナマイツ】は暫くここで待機ね。こっからは【夜明けの月】の仕事よ」
さて、ライズの言っていた《聖母》アイコさんを探さないとね……。
「ドロシーちゃん! 久しぶりです!」
背後から澄んだ声! いつの間にか後ろのドロシーが襲撃されていた。気配感じなかった。これが《聖母》ね? 振り向くと──
「あ、アイコさん! おろして、ください〜」
「あーん可愛いですー。高い高ーい」
身の丈2mはあろう怪異に吊り下げられるドロシー!
……違うわ。人間だわ。
ドロシーを軽々持ち上げるは筋骨隆々なシスター。
でも顔つきは可愛らしいというか、不自然じゃない肉体美というか、なんかこう凄い……素敵な女性ね。
「お待ちしていました。私はアイコ。可愛らしい貴女がメアリーさんですね?」
にっこり笑顔のアイコさん。
しかしその眼は、ドロシーを見るのと同様で。
──喰われる。
「question:ライズからはどこまで意思伝達されましたか」
間に割って入るゴースト。助かる。
でも170以上はあるゴーストでさえ見上げるアイコの存在感。これは……勝てない!
「ライズさんからは全部聞きました。メアリーさんには……そうですね。かつての記憶を返して頂けると」
あいつ言い過ぎでは?
本当はここであたしの面接が入り、記憶についての説明が入り、記憶を思い出させてギルド入りなのでは?
あとで問い詰めたる。
「アイコさん、記憶って何ですか?」
「あぁそうでした。ドロシーちゃん。私はメアリーさんとお話があります。先に他の人達を案内して下さい」
「わ、わかりました」
アイコさんから解放され、小さく頭を下げて【ダイナマイツ】の後を追うドロシー。
「私の借部屋に行きましょう。万一にも誰かに見られては困りますよね」
「そりゃそうだけど……なんか、凄い素直に聞いてくれるわね。どこまで信じてるの?」
「ふふっ。ライズさんとメアリーさんって仲良しなんですね。同じ事聞いてますよ」
えっやだ。不本意。
──◇──
アイコさんの小さな部屋(アイコがデカすぎるから小さく見えるのかも)には、フリフリの可愛い衣装が沢山あった。
──サイズが小さい。アイコさんどころかあたしさえ着れないけど、これは?
「ドロシーちゃんの服です。私はこんな外見なので、可愛い服はサイズもそうですけど、根本的に似合わないというか。
だからドロシーちゃんにはあの手この手で言いくるめて可愛い服を来てもらうんです」
「《聖母》の自覚は?」
「そんなものないですよ。周りに持て囃されているだけで、私は私のエゴで人助けをしているただの人間です」
ちょっとだけ人間味を感じた。でも人助けをエゴって呼ぶ人は悪人じゃないわよね。
ゴーストがあたしの手にリモコンを手渡す。
……そうね。覚悟決めてやらなくちゃ。
大丈夫。成功する。ライズには成功したもん。
お姉ちゃんは記憶を改造してるんじゃなくて、一部の記憶の出口に鍵をかけてるだけ。だから鍵さえ壊せばバグらず記憶だけ復活する。
大丈夫。
ライズの時も実は震えながらやったけど、大丈夫。あたしの問題だから。
それよりも覚悟しなくちゃ。
あたしは、この優しいアイコさんに、場合によっては辛い記憶を戻してしまうかもしれない。
【夜明けの月】に入らない場合は、そのまま【Blueearth】が終わるまで辛い記憶を抱えなくちゃならない。
テレビで人気の「世界一優しくて強い格闘家」だって?
知らないわよそんなの。中身がなんなのかテレビじゃ伝わってこないわよ。
踏み込め。背負え。恐怖を顔に出すな。
アイコさんに心配させるな。
「……本当に優しい人ですね、メアリーさん」
まだ何も言ってないのに、あたしの震える手を大きな両手で包み込むアイコさん。
「大丈夫ですよ。メアリーさんの心が決まるまで。幾らでも待ちます。急かしませんから、ゆっくり落ち着いて……」
硬い岩のような手、指。でも暖かくて優しいと感じて。
「ごめんなさい。ありがとう」
震えは止まらない。でもやらなきゃならない。
「アイコさん。あなたには今から全てを思い出してもらうわ。
乗っても降りても、もう後戻りは出来ない。そして思い出す事に拒否権は無いわ。
覚悟しなさい。……あたしも覚悟するから」
「ええ。全て、貴女の思うままに」
シスターさもあらんと、両手を胸の前で組み祈るアイコさん。
その額に、あたしは──
──◇──
わたしのまわりには、優しさがいっぱいでした。
辛いこともいっぱいあったけど、いつもみんなが助けてくれました。
小学生の頃。おっきなわたしをいじめてきた男の子たちを、ピアスだらけのこわいおねーさんが助けてくれました。
「あたしはチビでバカだからこういうのでビビらせなきゃ生きていけないんよ。
ピアス空けて、タバコふかして、髪剃ってさぁ。女やめてるって言われるけど、女だからこうしなくちゃいけなかったのにさぁ。
アンタはいい体してんじゃん。見た目変えるったってこうはならなくても良さそうじゃん! ギャハッ」
家族と同僚に騙されて家も地位も失った格闘家のおじさんに基礎を習い、圧倒的な肉体を得ました。いじめられる事は無くなりました。
おじさんは喉を焼かれたので喋れませんでしたが、何もしてあげられなかった私に手紙を書いてくれました。
『君は私を助けてくれた
ただ君が私に声を掛けただけで、私は生き返った
君は気付いていないかもしれないが、
君が君でいるだけで救われる人はいる
どうか、そのままでいてほしい
ありがとう』
おじさんが社会復帰して小さなジムが建ち、私は高校生になりました。
空手家として少しだけ有名になった私を「怖い」と、初めて会う同級生に言われました。
ジムに来ていたスポンサーのTVディレクターさんが話を聞いてくれました。
「第一印象は大事だよ。出会って喋るまでの間に人は人を決めつけられる。
だから会う前に印象を植え付けてやろうぜ!
『強く優しい美少女格闘家』で大々的にアピールするのさ!言っとくけど、その後はキミ次第だぜ?
だから、周りに合わせるのはやめておこうぜ。いい事ないからさ」
学校で友達ができるようになりました。
高校を卒業して、プロの格闘家と大学生とTVタレントを兼任していた頃。貧しい地域へのボランティアのCMが流れていました。
私は誰かを傷付ける事しかできない格闘家。誰かを助けるなんて烏滸がましい。そう思って、三足の草鞋に勤しんでいました。
ついうっかりこの話をしてしまったのは、高名な汚職議員の息子さん、所謂2世タレントさん。
「『格闘家が傷付ける事しかできない』なら、『汚職議員の息子は汚職議員』か? ちゃうやろ。
『息子は議員にすらなれませんでした』や。
セオリーだ通説だなんてのはすぐ覆るで。
オレの名前な、親父の汚職がバレる前は『次代の政治を背負う負政』やったんが今や『不正の負政』やで。
みんな看板しか見えん。せやけどアンタにゃ関係ない。
アンタは看板よりデカい。看板がアンタを動かすんやなくて、アンタの行動が看板になるんやで」
四足目に足を伸ばしました。
世界中には、もっと、説明しきれない程の出逢いがありました。
本当に、本当に幸せな世界に包まれて私は育ちました。
人に。運命に。全てに。
ただ感謝して、返したいのです。
私の世界が美しいものでいっぱいだったように、
私と出逢ったあなたも、美しい思い出を手に入れてほしい。
どうか、この願いが、少しでも多くの人に届きますように──。
──◇──
「……アイコさん? 大丈夫?」
私を覗き込むのは不安気なメアリーさん。それと、隣に立つゴーストさん。
ああ、思い出しました。ええ。
しかし、あまり変わりませんね。
もっと劇的な過去があるのかと思っていましたが。結局は変わらない。
誰かを助けて、努力していた。これだけなら思い出す必要もありませんでしたね。
……いや、出逢いを思い出せた事は間違い無く喜ばしい事です。
「ありがとうございます、メアリーさん。ちゃんと成功しましたよ」
私の掌ではメアリーさんの肌を傷つけてしまうかもしれないので、撫でるではなく抱きしめる。力加減に気をつけて。
「んぐっ……あの、それで……」
「ええもちろん、参加させて下さい。【夜明けの月】に」
誰が悪かどうかではなく、全て私のやりたい事のために。
助けたい人を助けるために。また動き出しましょう。
「あのね、アイコさん。一応言っておくけど、【夜明けの月】ってぶっちゃけ悪の組織っていうか……」
「誰かを殺すのですか?」
「いやそんな物騒な事はしないわよ。例えこの世界で死の価値が軽くても、進んでやりたくないわ」
「誰かを不当に追い立てたりしますか?」
「今回の一件はカメヤマが気に入らないからだけど、その起源はカメヤマに虐められた人達の話を聞いたからよ。流石に理由も無しにはやらないわ」
「では健全な組織じゃないですか。是非参加させて下さい」
「えぇー……まぁわかったけど。これから宜しくね、アイコさん」
「あ、待って下さい。ギルド加入は表で大々的にやらなくては」
「あ、そういえばそうね」
メアリーさんとゴーストさんを引き連れて家を出る。
色んな出逢いがあったけど、今回は悪の組織ですか。
どんなきれいな中身をしているのでしょうか。今回も楽しみです。
……そういえば負政さんはゲーム苦手って言ってたから【Blueearth】には来てないですよね多分。またネットで炎上してないでしょうか。少し心配です。
──◇──
【第13階層裏 翠緑の聖域】
青空食堂
【エルフ防衛最前線】の全員、ついでにうろついてた【ダイナマイツ】も集めた。
ここからがスピード勝負になるわ。
「初めましての人もいるわよね。ライズが数日間お世話になったわ。【夜明けの月】ギルドマスターのメアリーよ。
諸々の事情があって次の襲撃でエルフを勝たせに来たわ」
ざわめき、だけどライズの評判が高いのか、不満は少なそう。これは進めやすいわね。
「諸々説明は今は省略するわ。【ダイナマイツ】のミズバケツさんとレンは一通り知ってるから、後で詳細は2人に聞いて。それ以外の【ダイナマイツ】は理解してないからほっときなさい。
まず何よりも、アイコを【夜明けの月】に引き取るわ。悪いけど決定事項よ」
さすがに悪い感じにどよめいてるわね。少し胸が苦しくなってきたわ。
「詳細は聞いてる時間が無いんですよね? では一つだけ。アイコさんは戻ってきますか?」
最前列の人が、かなり配慮した言い方で核心を突いてくる。
大人のみんなが、あたしに答えやすいように言葉を選んでくれている。
ちゃんと答えないと。
「……この後【夜明けの月】に加入して、みんなでドーランに突撃して、それからは……」
──アイコに一任するわ。
ちがう。言葉が出かけたところで口をつぐむ。
アイコさんに責任を押し付けるな!
「いや、アイコは【夜明けの月】が貰っていくわ! 返すつもりはない。そして文句も言わせないわ!」
静まり返る。
やばい。なんの汗? 視界も滲むし涙出てるんじゃないのコレ。頑張れよ。ちゃんと悪のリーダーやれよあたし。
誰もが納得しない、誰もが従わざるを得ない理不尽であれよ!
「ごめんなさい、みんな。
私、もっと色んな人と出逢ってみたいの」
アイコさんがいつの間にか隣にいた。
震える肩を、力尽くで抑えてくれる。
痛いって。もう。
力技だけど、震えは止まった。進行。
「【エルフ防衛最前線】ギルドマスター ヒイラギ。いいわね?」
ヒイラギさんは、穏やかな笑みで──私の前まで来て、振り返り一同に顔を向ける。
「みなさん。私は内通者です。
ギルドの構成人数も、エルフさん達の人数も健康状態も、全部ドリアード派に流していたのは、私です」
え。そうなの?
誰かしらスパイはいる可能性はあったけど、ヒイラギさんなの?
「ドリアード派に勝てぬと諦め、束の間の平穏を望みました。こんな私がギルドマスターとして決断する事などできません。
アイコさんの異動と私の処分は、【エルフ防衛最前線】の多数決により決めてもらいます。私を抜けば9人ですし」
その言葉に【エルフ防衛最前線】は──
──◇──
【第13階層フォレスト:迷いの森】
「じゃ、始めましょうか。ライズから連絡が来るまで階層攻略のフリをするわよ」
「はい、メアリーさん」
──結果は、なんて事ない。多数決なんて無意味だった。
アイコの異動は本人除いて8票が「笑顔で見送る」。
ヒイラギさんの処罰は9票すべて「いいからそのままギルドマスターしろ」。
「いいギルドじゃない。共闘するのが楽しみだわ」
「ヒイラギさんは、まぁ怪しかったですからね。突然いっぱい物資来た理由が私なのはおかしくありません? 私、もっと前からいたのに」
「そりゃそうね。さーて、早く連絡来ないかしら」
そのままヒイラギさんには、アイコさんが【夜明けの月】に加入した事と階層攻略を始めた事を【鶴亀連合】にチクってもらった。使えるものは使うわよ。
あとはライズ達がエルフに献上する予定の備品を全部壊してくれればオーケーなんだけど……。
「……メアリーさん、ゴーストさん。下がって」
「んえ?」
考え事をしていたのがいけなかったのか。目の前には巨大な花──ラフレシアのような見た目の花が、二足歩行で立っている。しかも美脚。
「search:──《タイラントフラワー》LV40。レアエネミーです。3人での攻略は困難かと」
「逃げましょう。私はメアリーさんを担いでいきます」
と、いとも容易くお姫様抱っこされる。違う。片手で擬似お姫様抱っこだ! 右手空けてモーニングスター持ってる!
当然、こんな行動はセッティングされていないのでマニュアル操作、つまりあたしの体重全部かかってるんだけど。
「メアリーさん、しっかり捕まっていて。二手に別れましょう」
「consent:御武運を」
ゴーストとアイコさん、同時に別方向へ走り出す。
タイラントフラワーが追うのは──こっち。
「運がないわね!」
「いいえ、命の数が多い方を狙ったのでしょう。振り落とされないようご注意を!」
木々を掻き分け。
というか木々を利用して半分飛んでない?
あたしを抱えて?
でもタイラントフラワーもツタを伸ばして木々を渡るように加速していく。
見た目ホラーすぎるんだけど! こんな深い森を上半身花の化け物が高速で走り回るの!?
「あ、アイコさん! 追いつかれる!」
「──いえ、奇跡は起こります」
今正に、タイラントフラワーが接触しそうになった瞬間──
──パァン!
破裂音と共に、タイラントフラワーが停止した。
「……《神の奇跡》!」
「まだ健在のようですね。今のうちに逃げましょう」
十数秒の隙を得て、その場から逃げるアイコさん。
周囲は木々に囲まれてるし元々視界が悪いけど、誰かいたようには思えない。
でも。
何となく、わかったかもしれない。
《神の奇跡》の正体は──。
~フォレスト階層の謎~
《執筆:【井戸端報道】記者T》
今回はドーラン……というよりフォレスト階層のある謎についてお話しますゥン……
フォレスト階層には度々、機械化した魔物が登場します。
機械化した蜂、キャタピラを装着した芋虫、ドローン爆弾を操るバッタ……
極めつけは19階層に生息するミサイル搭載の巨大カブトムシ。
彼らはフォレスト階層に点在する全自動整備工場で燃料を補給していますが、この工場は何なのでしょうか。
【Blueearth】には古代文明が存在していた事は有名です。
続く地底のケイヴでは地層に埋められた機械、さらに先の凍土フリーズでは氷づけになった機械が発見されています。
また、既に滅びしロスト階層も、かつては高度な文明を持っていたと推測されます。
ではフォレストの機械生物たちは古代文明の遺産なのでしょうか?
答えはノン!
彼ら機械生物の素体は現代を生きる生物です。そこに機械装備を取り付けられた形になります。
つまりどこかで、古代技術を活用している何者かが! 今も魔物を機械化しているという事なのですゥン!
ではどこなのか! 残念ながら現在に至るまで、その正体を見つけられた人はいません。
ですが、怪しい存在はあります。
即ちレイドボスです。
ウィードの《咆嵐の傷痕 テンペストクロー》、
ケイヴの《穿孔する蟲王 ミドガルズオルム》、
フリーズの《呪氷の叛竜 スフィアーロッド》。
各階層には拠点防衛戦にて戦闘する事となるレベル200の大ボスが常に存在していますが、フォレスト階層では未発見なのです。
この存在は未だ明らかにはなっていませんが、私はこれが関係しているのではないかと思っていますゥン!
古代技術は地中に多く存在しますが、特に怪しいのが【第17階層フォレスト:朽ちた永年樹】の地下にある、何もない洞穴!
レアエネミーが存在するでもなく、安全に下りられる道があるわけでもなく。なんの発見もない縦穴があるのです。
なぜか現代に生産され続ける古代技術を搭載した機械生物たち。
未だ見つからないフォレスト階層のレイドボス。
ドーランの永年樹ユグドラシルと同種でありながら、何故か朽ちてしまった17階層の永年樹。
そしてその地下にある、何もない縦穴。
これらの謎には、なにか繋がりがあると思うのですゥン!
我々調査隊は今もフォレスト階層にて調査中です。情報をお持ちの方はお近くの【井戸端報道】まで!




