30.ゲスを倒すゲスの後ろにいるのはゲス
──【夜明けの月】がドーランに到着した日の夜。
【土落】ギルド【ダイナマイツ】の2F会議室にて。
「多分、全部わかったわ」
メアリーに可能な限り全部情報を伝えて泣きついたが、まさかの数秒で回答が出た。
ちなみに会議は紅茶とケーキを摘みながらダラダラ駄弁る形式で進行した。甘いものは脳にいい。
「消去法よ。バランスとって闘争を煽るやり方をライズが提案して、断られたのよね?
じゃあバランスは取らないって事よ。つまり一方的な蹂躙」
「そりゃそうだが、今まさにそうなんだって。ドリアード側がエルフ側を一方的に蹂躙してる」
「だから消去法だって。あと残ってるのは?」
「……あぁ、あ? いやそれは無いだろ」
「answer:エルフ側がドリアード側を蹂躙。即ち《拠点防衛戦》に敗北し、ドーランをエルフに明け渡すプランです」
いやそりゃそうなるが、それじゃ噛み合わない。
「全部の選択肢がありえなかったとしても、《否定された案》と《現状の案》は確実に選択肢から外れる。最後に残ったその案だけは、否定に条件がついてるでしょ。
あんたの思うありえない所、言ってみなさいよ」
「……まず、利益が無い。ドリアード派にどっぷり浸かり込んだ【鶴亀連合】……とくに主導者のカメヤマ達は、《拠点防衛戦》で負けたら全てを失う。エルフからの好感度は最悪だろうからな」
「はいそこ。なんでエルフからの好感度が最悪なの? 鞍替えしてそのまま残る可能性は?」
「……一応、昔は何度かエルフとドリアードが交代してた。その時ボンバはドーランに残るために陣営を鞍替えした事がある。確かに鞍替えは可能だ。
だが好感度は確かにある。負けてドーランから追放された一派の中心人物は、そのまま【翠緑の聖域】まで一緒に撤退する。今回でいうとドリアードと一緒にカメヤマ達が行くはずだ」
「じゃあ聞くけど、ドリアードがカメヤマ達を見捨てたら?」
「……ドリアードが《拠点防衛戦》に負けたら事でドリアードとカメヤマ達はドーランを追放。
ドリアードに見捨てられたらカメヤマ達は……まあ、宙ぶらりんか」
「少なくともドリアード派では無くなるわよね。
聞き方変えるわよ。カメヤマ達が直接エルフの好感度を下げる事した?」
言われて唸る。
確かに、カメヤマがエルフ派を弾圧しているのは冒険者としての話。というか、冒険者を弾圧しているシステムを構築しているだけで、エルフについては冒険者達で自衛してもらってるだけだ。
今更カメヤマ達が前線に出てエルフを討伐する事はないか。
「エルフからの好感度は0。ドリアードからの好感度はマイナス。これならエルフ派に取り入れるんじゃない?」
「確かにそうだが、まずどうやってそれに持っていくんだよ。
現在圧倒的な戦力差があって、その上どうやってドリアードの好感度を下げるんだ?」
「負ける事は難しくないわ。アイコさんのおかげでエルフ派に協力してくれる実質中立の冒険者が増えてるんでしょ?
そこに兵力を裂けばいいのよ。『一度アイコに信奉するフリをしてエルフ側に付け入れ』みたいな指示をして。
そうでなくとも武器もアイテムも元締めは【鶴亀連合】なんだから弱体化は難しくないわ」
「そうかもな。でも肝心の【葉光】はどうする。太陽光を浴びたドリアード王家はめちゃくちゃ強くなってるぞ。セキュリティも万全だ」
「だから確実なのよ」
メアリーは最後に残していたショートケーキの苺をフォークで刺す。
「確実に後ろから刺せるじゃない。カメヤマ達が」
至ってシンプル。至って合理的。
最もドリアード王家に近い位置に陣取っているのは、わざわざ王家の真下を会議室にしているのは──
「エルフ達が【葉光】まで来たタイミングでセキュリティを解除してドリアード王家を背後から襲撃。倒せなくてもすぐエルフ派が来るわ。王家がめちゃくちゃ強くなってるなら尚更共闘してくれるわよ。
裏切られたドリアードはカメヤマ達を恨むでしょうね。好感度爆下げ待った無しよ」
「それだけじゃない。《拠点防衛戦》にはMVPボーナスが入る。王家を倒せば《ボス討伐MVP》、倒せなくとも《貢献MVP》は間違い無くもらえるだろ。勿論エルフ側で」
そしてドーランの《拠点防衛戦》ではそのボーナスがそのまま入れ替わった勢力での貢献度にも繋がる。恐ろしく合理的だ。
「……だが今の地位までは無理だろ。エルフ側にはずっとエルフと一緒にいた連中がいるぞ」
「貢献度はポイント制だと思うわ。エルフに物資を送るだけの立場であれば充分。ドーラン最大の商人なら物量でポイントを荒稼ぎできる」
「冒険者側は? システムはともかく、カメヤマを敵視するエルフ派冒険者は多いぞ。感情の話になると計画ってのは破綻するもんだ」
「そこでアイコを使うのよ」
「アイコを見て改心しましたって言えばいいのよ。実際そうやって改心した奴がいる以上、門前払いなんてできないわ」
よくもまあスラスラと恐ろしいアイデアが出てくるもんだ。感動する。
「だが、物資支援でポイント稼ぎは止められるかもしれないな。そうなると平民止まりだ」
「絶対必要、あるいはエルフが欲しがってる物を用意すればいいのよ。そうすれば頼らざるを得ないわ」
「エルフが? あいつら結構無欲だが」
「ところで。あたしドーランを見て思ったんだけど、ドリアードが住んでるって言われたら納得できる外装内装になってたわね。
でもエルフが住んでるって言われるとどうなのかしら。ピンとこないわ」
──確かに、俺が昔来た時よりポップで可愛らしい感じになっている。原住民用の花のベンチは冒険者やエルフが座ったら潰れるだろう。
特に【葉光】ドリアード王家用の《向天神殿》。
ひまわりデザインで日光浴がしやすい構造はドリアード専用のデザインだ。
エルフは別に日光浴の必要は無いし。
「つまり備品、インテリアね。多分どこかに大量に、エルフ用のインテリアを隠し持っているわ。
そうね……ドリアードに見つかったら反逆罪もいいとこだから、ドリアードが来ない……【土落】にあるんじゃないかしら」
【土落】の管理は【ダイナマイツ】に一任している。なら、土地の確保だけ【ダイナマイツ】に頼んでおけば、後は勝手に防衛してくれる。
「すげぇな。マジでそんな感じがしてきたぞ」
「【ダイナマイツ】のパトロールに同行するのは【鶴亀連合】に敵対する事にならないでしょ? それで探してきて。
その後はアイコさんを恐喝するなりして誘拐よ。【夜明けの月】に加入させれば【鶴亀連合】はあたし達を追う事はできないって約束なんでしょ?
この作戦はアイコさんを失ってもギリ出来なくもないわ。ドリアード側を弱体化させて、《拠点防衛戦》に負けて、エルフ側にインテリアをプレゼントする。この作戦の骨はここだからね」
ケーキのおかわりを食べ尽くして、またおかわりするメアリー。もうホール分は食べてないか?
「だから、アイコさんが【夜明けの月】になったらインテリア全部燃やしなさい。それで詰みよ」
──◇──
──時は現在に戻る。
【土落】【鶴亀連合】の土地のとある倉庫
燃え広がる炎。バッキバキに壊れた高級インテリア達。
そして縄で縛りつけた数名の男。
モニター越しに疲労困憊のカメヤマ達の顔が映る。なんか想像以上に疲れてないか?
「やっほーカメヤマ見てるー? 見てくれよこれ」
『ラ、ライズさん! 我々の土地で何をしているんですか! これは歴とした敵対──』
「お前らの土地に侵入者が住み着いてたからよ! 捕まえたぜ!」
『──なんと?』
ふはは。驚いてる驚いてる。
すかさず追撃だ。勢いが重要。
「お前達の倉庫って聞いたからボンバと巡回に来たらよ、【鶴亀連合】じゃない奴が住み着いてたんだよ! しかも倉庫の中にはエルフ向けのインテリアがいっぱいだ! これはエルフ派のカス共に違いないぜ!」
──ドリアードにバレたくなくて【土落】に隠してるんだとしたら、用意する手も外部に依頼していると思うわ。不届者として締め上げなさい。
間違ってもカメヤマ達に助けを乞わないように口は塞いでおきなさいよ──
『あ、えっと、あぁ』
「あいつらこんな近くに潜んでやがった! これはもう戦争だな! 任せろカメヤマ! 俺は【鶴亀連合】の味方だ!
絶対ドリアード側を勝たせてやる!」
──揚げ足でもなんでもいいわ。向こうの発言をしっかり聞いて──
『あ、あぁ……
……やめて』
「わかったやめる!
エルフ側に付く!」
『ぎゃあああああああああああああ!!!!?!?!』
机が折れる音が聞こえる。転んだか。
「流石の俺でも気付くぜカメヤマ! なんかお前が困ってるって事は! 理由はわからないが、もう全くもってわからないが、エルフに勝ってほしいんだよな!
任せな!俺は!【鶴亀連合】の味方だからよぉ!」
正気でないならカメヤマもただの人。追撃の手は止めない。
横にいたボンバが画面に入るように頭を傾ける。
「よォカメヤマ! 中立決め込んでた【飢餓の爪傭兵団】も今回ばかりは腹にきたぜ!
今回は完全にお前の味方だァ!
つまりエルフ側に行くぜェ!
今回の件はちゃんと本部に報告した! 今回の一件、【飢餓の爪傭兵団】はエルフ派に付くって署名付きだァ!」
『おぎゃああああああああ!!!?!??』
「次の《拠点防衛戦》っていつだボンバ?」
「いつもの傾向だとあと5日ってところだな! 絶対エルフを勝たせてやろうぜ!」
「あぁ! 【鶴亀連合】のためにな!」
「「がっはっはっは!!!」」
馬鹿笑いが響き渡る。
いやぁ人助けは! 楽しいなぁ!
──◇──
──【葉光】入り口付近。
セキュリティを突破する、幹部専用のカードを守衛に見せて悠々と外へ出て行くは黒の男、デューク。
その手には一枚の手紙。
『拝啓 素敵な俺の親友へ。
なんか非合法な手段で命を狙われてる気がする。
どうせドーランにも部下配置してんだろ。何とかしてくれ。
面白いもん見せてやるからさ。
報酬は莫大な資金と利益ってとこか。俺は払わないが、その辺から拾ってくれ。
お前の最低な友人より』
「……【闇夜鎌鼬】の依頼料、キャンセルの払い戻し金。ここに侵入するという危険。はてさてどうやって報酬を渡すというのでして?
ま、よ〜く目を凝らして観察しますかね。それも面白そうでして」
そのまま【天秤】へと消えゆく影。
どこにだって影はあるように、【首無し】はどこにでも潜む。
──果たして、今度は誰の影に潜むのか。
~ジョブ紹介:【悪魔祓い】~
《寄稿:【マツバキングダム】特攻隊長 プリンセス・グレゴリウス》
皆さまご機嫌いかがでございますか~!
わたくしは銀河最強のお嬢様、プリンセス・グレゴリウスと申しますわ~!
お象様と言ったやつ。ぶちのめしますわ~! 覚悟あそばせ~!
ゴリ先輩と呼んだやつ。てめぇを餌にワカサギ釣りに出かけますわ~! お覚悟~!
ヤジのせいで話が進みませんわ~! 出てけぇ!
~数分後~
改めましてご挨拶ですわ。
わたくしはプリンセス・グレゴリウス。【第30階層 氷結都市クリック】にて展開する最強最大の王宮、【マツバキングダム】にて特攻隊長をやらせて頂いておりますわ~!
【飢餓の爪傭兵団】傘下ギルドでもダントツの人数を誇る【マツバキングダム】の、さらに頂点に近いわたくしこそ!
プリンセスを名乗るのにふさわしいですわ~!
~数分後~
そろそろ本題? いっけね。ジョブ紹介を忘れていましたわ~! プリンセスごめんなさいですわ~!
では早速紹介いたしますは、私の愛用ジョブ、ヒーラー系第3職【悪魔祓い】ですわ~!
ヒーラー系第2職、戦う聖職者【バトルシスター/モンク】から派生したジョブになりますわ~!
きったねぇ悪魔もろとも魔物共をぶちのめしますわ~!
・《装備》
これまで装備できなかった銃や槍など、なんでも装備できますわ~! 節操がねぇですわ~!
でも、ちゃんとお清めして特別な改造を施した《聖具》にならないと使えませんわ~!
くっっっそ面倒臭ぇですわ~! 金も時間もかかりまくるし強化も自分でやらないといけませんのよ~!
わたくしの《聖具:釘バット》は超強いすっげぇ装備ですわ~! 悪魔共の悲鳴を間近で聞けて最高ですわ~!
・《アビリティ》
【聖別の信徒】
《聖具》を装備できるだけのアビリティですわ~! 物を持つだけならゴブリンでもできますわ~!
《聖具》の作成・強化が可能になりますわ~! いらねぇから市販してくれですわ~!
また呪い装備の鑑定と解呪がMP消費無しでできますのよ~!んなもんケチらねぇっつーのですわ~!
【悪鬼滅殺】
死霊・悪鬼・邪悪の類に対して有利になりますわ~! 魔物はすべて悪鬼だと思うのですがどうなのかしら。
光属性と闇属性はお互いに弱点を突いてしまい、有利な相手に不利になるという本末転倒クソ属性ですが、このアビリティで一方的に有利になりますわ~!
一方的な虐殺は気分がいいですわ~!
・《スキル》
悪魔祓いのために光属性に特化していますわ~! 一芸特化はクソですわ~!
【ホーリークロス】
光属性に死霊・悪鬼・邪悪特攻が付いた魔法ですわ~!
光の十字で悪を拘束できますわ~! 悠々と距離を詰めて顔面フルスイングですわ〜!
ホームラーーーン!!!!
【破邪光陣】
きったねぇ魔の侵入を阻む結界を構築しますわ~!
自身が結界内にさえいれば結界内の移動は可能ですわ。
馬鹿みたいに結界にぶつかる魔物の目の前まで近付いてきったねぇド頭かち割ったりますわ〜!
たーまや〜〜〜〜!!!!!
・《おしめぇですわ》
これで紹介は終わりでございますわ。
そもそも【バトルシスター/モンク】を選択する人が少ねぇから希少ジョブですが、魔物相手に刺さりやすい特効と属性を持っているのは非常に強力ですの。
どのように戦うのか知りたい方はぜひ【第30階層 氷結都市クリック】にいらしていただきたいですわ~!
わたくしが連日暴れ散らかしていますわ~!
それでは、腹ぁ減ったのでわたくしはラーメン喰ってきますわ~!
麺はわたくしの肉、スープはわたくしの血液ですわ~!
ごきげんよう~~~~!!!!




