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BlueEarth 〜攻略=世界征服〜  作者: まとかな
大樹都市ドーラン/フォレスト階層
26/507

26.筋肉は裏切らない

【第10階層 大樹都市ドーラン】

【ダイナマイツ】アジト2F 会議室


ライズを座らせて、あたしとゴーストで左右を詰める。

逃がさないわよアンタ。やらかしてくれたわね。


「つまり、アンタか昔カメヤマに融資して、その縁で【鶴亀連合】に手を出せない状況になってると?


「口約束だけどな。困った事にいつの間にか連帯保証人だ。俺は【鶴亀連合】の味方をしないとならない」


「で、向こうは【夜明けの月】の旅立ちを妨害しない。むしろ協力するって事ね」


「気掛かりは稼ぎの手段だ。暗にエルフ派の排斥を軽減してもらおうとしたバランス調整案を提示したが却下された。

 あいつらがどうやって稼ごうとしてるのかまったくわからん」


色々と情報が出てきた。羅列すると……


・ライズは【鶴亀連合】の味方をしなければならない

・【鶴亀連合】は【夜明けの月】の階層攻略を妨害しない

・【鶴亀連合】には稼ぐための策があるが、ライズはそれを聞かなかった。

・↑ここまでの話は録音され、お互いにデータを持っている。

・《聖母》アイコの活躍でエルフ派の戦力は増強されている。

・アイコの周りで発生する《神の奇跡》

・【ダイナマイツ】は中立。立場的には【鶴亀連合】に近いが、心境的にはエルフ派


「【鶴亀連合】を地に堕とすには、《拠点防衛戦》でエルフが勝つか、【ギルド決闘】で勝つかの2択だと思うのよ」


「まぁ択としてはそうなるが、【ギルド決闘】は無理言ってるぞ。そもそも相手は商人だ。暴力の土台に上がってくれる事は無いだろ。

 安牌はエルフに勝たせる方だ。戦力も増えてるみたいだし、俺がいればかなり有利にはなるだろ」


そうなのよね。でもなぁ。


「なんとなくわかったわ。ライズ。

 今回、あたしを信じて何でもしてくれる?」


「任せろよ我らがギルドマスター。命令とあれば何でもどうぞ?」


こういう時、話が早くて助かるわ。

まだエルフ派と直接会ってないから詳しくは決められないけど……




「とりあえず監禁・恐喝・誘拐・放火・立て篭もりまでは確定でしてもらうわ」


「俺を監獄送りにしたいのか?」




──◇──




──数分後。


メアリーの作戦の解説が一通り終わる。

言われてみればな話も多かったが、虫食い状態の情報でここまで確実で凶悪な作戦が浮かび上がるとはな。

流石は悪のギルドの総統となるお方だ。聡明にして悪辣。


「決定ね。あたしの最初の考察が間違ってたら練り直しだから必死で見つけなさいよ」


そこは気楽にとかそういう声は掛けてくれないんだ。悪辣。


会議室を出て、下で酒盛りしてる【ダイナマイツ】達に声を掛ける。ボンバが先に俺に気付いて、全員を注目させる。


「うし、野朗共! 明日より【ダイナマイツ】はこの【夜明けの月】のイカれた修行に協力する!

 本筋の仕事はほぼ無いからな、今。全員参加だ」


これは事前に依頼していた事。ボンバと旧知の仲である事に加えて、きっちり【飢餓の爪傭兵団】に正式な依頼として前払いしてある。


「ライズの修行は爆発的にイカれてるからよ! お前らにもいい刺激になるだろう! 人数は俺以外の7人でいいよな?」


「それなんだが、俺はエルフ派に用事があってな……。

 それでドロシー君、お願いがあるんだが」


「はっ、はい! 僕ですか?」


端っこの席でオレンジジュースを飲んでいたドロシーが慌てて姿勢を正す。


「君にも協力して欲しい。こいつら前衛ばかりでチームがマトモに組めないからさ。どうだろうか。

 エルフ派ん所に合流したら君の安否は報告しておく。暫く単独行動するより【ダイナマイツ】にいた方が安全だと思うんだが」


【ダイナマイツ】は中立だから長く居られない。なので【夜明けの月】がドロシーを雇う。そういう作戦だ。人数も俺が減った分の補填になって俺とボンバ除いて丁度10人だしな。


「それなら俺ァ歓迎だ。アイコさんを白昼堂々襲うような過激派がまだ近くにいるかもしれないしなァ。しばらくはここにいな、ドロシー」


こんな可愛くても【エルフ防衛最前線】の幹部だ。《敵対行動ペナルティ》でドーランから出られないのだとしたら、理由をつけて【ダイナマイツ】に置いておいた方がいい。

ドロシーも理解したようで、申し訳なさそうに謝ってきた。


「よし、じゃあ明日から頑張りますか」


やるべき事はちゃんとしなくちゃな。

──まずはドロシーの《監禁》に成功。




──◇──




──翌朝。


「【翠緑の聖域】も拠点階層だ。一度行った俺なら転移ゲートでワープできるはず。今日中にとりあえずドロシーの安全だけでも伝えておくから安心してくれ」


「わかりました。ごめんなさい、お願いします」


ぺこりと頭を下げるドロシー。その手には可愛らしい外見には似つかわしく無い、いや一周回ってロマンを感じる物々しい両手銃。


「だがまぁ朝イチに行くのもな。ボンバ。【土落】のパトロールしようぜ。どうせサボってんだろお前」


「誘われたら行くしかねェなァ!」


ちょっと確認したい事があるしな。


【ダイナマイツ】はBランクギルドなのは知っていたが、【エルフ防衛最前線】もここ最近Bランクに昇格したらしい。この階層でBランクまでいくのは結構凄いもんだ。おかげで条件を満たしているので、無事レベリングができる。


「ゴースト。今回は冒険者からの襲撃もありえる。攻略階層なら殺さなければ割とペナルティは薄いから、ボコボコにしておいで」


「consent:近付く者皆切り刻みます」


「やりすぎやりすぎ」


──────────

パーティ 10/10 ▼[レベル順]

【リベンジ: ゴースト: 99】

【ナイト :ミズバケツ: 35】

【バーサー:  アミド: 33】

【バーサー:  シモセ: 33】

【バーサー: ペンスリ: 31】

【バーサー:コクショク: 30】

【バーサー: カリット: 29】

【ガンナー: ドロシー: 29】

【ウィッチ: メアリー: 28】

【トリック:   レン: 26】

──────────


パーティの結成が完了。

ドーランは攻略適正レベルが35くらい。メアリーのレベルなら数日で追いつくだろう。色々あってレベリングする余裕がめちゃくちゃあったからな。


「マジで脳筋パーティね。サブジョブでヒーラーできるゴーストは今回中衛ね」


「あ、僕回復アイテム投げます。支援得意です」


「そういうサポートもアリか。ちょっと陣形考えましょう」


「俺らは殴る事しかできないぜメアリーちゃん!」


「いいじゃない役割がハッキリしてて。頼りにしてるわ」


「……お、おう! 任せとけ!」


馬鹿にするでもなくあしらうのでもなく、至って普通に切り返すメアリー。どうやら脳筋共の心に響いたようだ。ゴリラ共が雄叫びを上げてメアリーに付き従っている。

……放置しても大丈夫そうだな。俺は俺のすべき事をやるか。




──◇──




【土落】大樹下の繁華街


対冒険者用の店の立ち並ぶ繁華街は、乱雑で無秩序なようで一本の根に沿って展開されている。

【ダイナマイツ】GMボンバの指揮の元、冒険者用の店舗はあまり広がりすぎないように整備されているからだ。


この雑極まる男が何故そんな事をしているのかと言えば、つまりは【土落】が広すぎるから。

ドーランのお膝元、永年樹の根が広がる先まで全てがドーラン、全てが【土落】。

雑ながら面倒見の良いボンバとて、無法に広げられたら見回りきれない。ちゃんと理由があれば細かな仕事ができる男なんだこいつは。


「今となっては【三日月】と共に過ごしたあの日も懐かしいなァ」


俺の前のギルド【三日月】……。

ギルドメンバー自体は3人だったが、いつも誰かの手を借りていた。その最初の協力者が、他ならぬボンバだ。

【飢餓の爪傭兵団】が結成され、各拠点に傘下ギルドを配置する事になった時もボンバは声をかけられた。戦闘技能では量れない力があるんだな。


「まぁウチは断って【飢餓の爪傭兵団】には入るんだなって思ったが」


「ふはッ! 思ってないだろ別に。俺ァこのドーランが気に入っちまったンだ。そりゃァ出られねェよ」


「まだ片思い中なのかケーキ屋の娘さんに」


「ちげェし! 見守ってるだけだしィ!」


……とまぁ、こういう事だ。

ドーラン時点で最前線を走っていた、原初の英雄。射止めたのはただのケーキ屋だった。なんとまぁ微笑ましい事だ。


「お前がここで降りなけりゃ本気で連れて行くつもりだったぞ俺達は」


「やめろよ。それで……何を企んでるンだ? お前の悪巧みは面白い。一枚噛ませろよ」


ボンバは察しがいいし話がわかる、粋な男。

今回の計画で恐らく最重要人物となる、俺達の最終兵器。


「勿論だ。今回は、お前と悪巧みがしたかったんだよ」


「ヒュー! その口で口説いたのかァ? あの2人」


「それ聞かれたらギタギタにされちゃうからやめてね」


「スケ通り越して嫁かよ。尻に敷かれてンじゃねェか」


うるさい。




──◇──




──数時間後。

ボンバとの散歩も終え、俺は早速転移ゲートを潜った。


深い森の奥、木洩れ日に照らされる廃墟。

現在はエルフが住まう、迷いの森の聖域。




──フォレスト裏拠点階層【第13階層裏 翠緑の聖域】




入ると同時に目に入るのは──見目麗しいエルフ達。想定より人数が多い。ドロシーの言うように、エルフそのものの数は増えている様だ。

だがそしてそれと対比するかのように、冒険者の数は少ない。


「何者だ!」


訂正。隠れていただけか。

数人の冒険者が俺の首に剣を突き付ける。


「まあ待て。俺は──」


「第一声が合言葉でないなら【エルフ防衛最前線】のメンバーでも増援でもない。何者だ」


徹底してやがる。初見殺しだが確実な味方認証だ。

そしてそれほどまでに追い込まれているって事でもある。


「ここにはかつて訪れた事がある。俺は完全な部外者だ。あとそれで脅しても俺は殺せないからな」


この世界において無意味な脅しだ。ぶっちゃけ現代の感性が復活している以上、すこし怖いんだが。


「そうか。すまないが、我々もギリギリなんでな。信用できないから一旦出直してくれるか」


「ドロシーを預かっている」


動揺。そしてちょっと刃が当たってんよ。痛いよ。


「……ドロシーを人質にしても、我々は屈さない!」


あれ、ちがうちがう。そうじゃない。信用が欲しいんだけど。

なんか逆に盛り上がってる。困ったな。




「皆さん、構えを解いて下さい」




澄んだ声。聞いただけでわかる、聖人の声。

この人が《聖母》アイコか。 頭を上げる。




シスター然とした紺の修道服──

──を今にも弾け破らんとする、圧倒的筋肉!

圧倒的な体躯! 俺以上の高みから見下ろすその身長は、威圧感により実際のそれより大きく見える。が、間違い無く俺より背は高い。

右手に握られるはトゲ付きの鉄球、モーニングスター。それすらこの圧倒的暴の威圧の前には小枝のようだ。




この人が《聖母》アイコか? 頭を下げる。




「ようこそエルフの里へ。私は【エルフ防衛最前線】の幹部、アイコです」




アイコさんかあ。頭が上がんねぇや。怖くて。

ん? 神の奇跡ってこういう事じゃないだろうな。

~ジョブ紹介【グラディエイター】~

《寄稿:【祝福の花束】GM(ギルドマスター)グレッグ》


ワタシも愛用しているジョブ【グラディエイター】を紹介するわ。

ウォリアー系第3職。第2職【バーサーカー】からの正当進化系ね。

第2職【ナイト】系列と比べて防御性能が劣るように見えるけど、実はそんなことはないわよぉ。

【ナイト】系列は防御力で攻撃を耐えるけど、【バーサーカー】系列はHPで攻撃を耐える感じかしら。

とにかく敵と接近して殴り合い!同程度の火力ならHPの高い方が生き残る! 原始の鉄則よぉ。

だから自身に対するバフや単体攻撃が多かったりで、仲間を守るのは苦手ね。

だから敵を迅速に殲滅して味方に回さないよう立ち回りましょうねぇ。


・《適正武器》

近接装備はほとんど装備できるわ。

剣、槍、斧、槌、盾……。短剣や双剣は装備できないわ。

スキルやアビリティの方針に合わせて二分化されるわねぇ。

両手用装備を使うか、片手武器二刀流にするかの二択ね。


・《アビリティ》

【二刀の極意:斧/剣/槌】

三種の二刀流アビリティね。斧二刀流は【グラディエイター】や【オーガタンク】くらいしか取得できない希少アビリティだったりするわ。

ただ、手数だけを求めるならローグ系やレンジャー系には適わないわ。ダメージが増えるって考えた方がいいわね。


【双腕剛力】

両手剣、両手槌、両手斧、槍といった両手装備の火力が上がるわ。これがあるから決して二刀流のみが強いとは限らないわね。

攻撃を受けても怯みにくくなる耐性もあるわよぉ。


【撃破進軍】

敵を撃破した場合に数秒間、全ステータスが上昇するわ。

混戦の時に範囲火力を叩き込んで一気にステータスをブチ上げると最高にキマるわよぉ!


・《スキル》

【バトルコロセウム】

ターゲットに自身を強制的にターゲットさせる、タイマン強制スキルね。

お互いからのダメージを受けていない場合、あるいは部外者からの攻撃を受けた場合はすぐに解除されちゃうわ。

再発動までのクールタイムは丸一日。発動したら積極的に殴りにいきましょう。

一回切りだけど、タゲ集中技として相手の攻撃を引き受ける事もできるわ。


【パリィ&タックル】

相手の攻撃を弾いた後に突進して追撃するわぁ。敵との距離も詰められるからそのまま攻撃にも繋がるのよ。



・《オ・マ・ケ》

機動力が突進頼りな【グラディエイター】だけど、魔物に乗ると攻撃力そのまま機動力を確保できるわ。

戦場を愛馬に跨り駆け巡り、敵郎党を片っ端からぶちのめすのは今も忘れられない快感よぉ。是非やってみてね。

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