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BlueEarth 〜攻略=世界征服〜  作者: まとかな
密林祭壇ウェンバル/ジャングル階層
259/507

259.【セカンド連合】引き抜き戦

【第102階層ジャングル:ゲルジ地雷ライン】


開けた密林ながら、不可視の地雷が張り巡らされている危険地帯。


挑むは──


「ミカンさんです」

「り、リンリンですぅ……」

「フェイなのだ!」


不壊不落。無敗神話の"無敵要塞"に、爆弾魔が乗り込んだ。


──【コントレイル】第十席カーチスは後にこう語る。


「こんなのたった3人でどうやって突破すりゃいいんすか」


地上は地雷原。難攻不落の城からは【コマンダー】の爆撃。

早い段階で地上戦を捨てた【セカンド連合】は3人纏めて飛竜に乗って空中戦を仕掛けるが──

フェイに撃ち落とされ、3人纏めてリンリンに補足され、無差別爆撃によって〆となった。




──◇──




「フェイちゃん!最後の爆破、凄くよかったです! もう一回やりませんか?」

「殺さないから殺す気でやれって言われて、実際やったのはフェイであるが。なんでこんなピンピンしてるのだ"無敵要塞"」

「流石リンリンちゃんなのです。ふふん」

「なんの信頼なのだそれは」




──◇──




【第103階層ジャングル:カロリナ水源ライン】


無限水源装置は【第92階層ホライズン:課題A:嘘】の空中水球を解析し作られたもので、噴水の他にそこかしこで水球が浮かぶ。


即ち障害物が多い。ここに配置されるは機械的に正確で精密なコントロールが自慢の【コントレイル】第九席コンベア。不安定な動きをする水球に対しても、固定ポイントまでの航空タイムにコンマ1の差も出さない。


【神気楼】からは遠距離時間差攻撃の使い手、サブジョブ【ウィッチ】選択の風魔法使いシスタープシュファル。風を頼りに敵を捕捉し、不可視範囲でも戦える障害物戦闘のエキスパート。


【頂上破天】からは寡黙なる甲冑狙撃手ミツカラナイト。適応力の鬼。【コントレイル】の荒れ狂う運転技術を物ともせず、的確な狙撃が可能。


対するは──




「水中戦は【蒼穹の未来機関(ロスエネルゴアトム)】の練習にピッタリだなぁ! 追い付いたぜオラァ!」




──"最強"クローバー単騎。




撃破時間30分。ノーダメージクリアである。




──◇──




「なぜ水中で加速できるのです」

「こう……足をグッとしてダッとしてグワッとだなァ」

「教えるの下手すぎませんかこの"最強"様?」

「……(加速より、こちらの攻撃全て回避した方を聞きたい)……」




──◇──




【第104階層ジャングル:レビス奇襲ライン】


背の高い草や木々に紛れた機械兵の奇襲を掻い潜り、光学迷彩で隠された機械を破壊する階層。

ここでは目立たない事が優先され、【セカンド連合】もまた空中の利を捨て地上に潜んだ。


『こちら【コントレイル】ショイム。【神気楼】ホエバ、【頂上破天】バナナボード、聞こえるか』


『聞こえて御座いますよ。バナ様は?』


『聞こえてんよ。こっちは……ドロシーとパンナコッタを見つけた。こっちにゃ気付いてねぇな』


『素晴らしい。私は迷彩機械を発見した。【夜明けの月】を撃破しこれを壊せば、それだけでもう【夜明けの月】は110階層に行けなくなる。この階層に【夜明けの月】がいない状況で104階層を攻略したという事になるからな……。

最悪はこれをダシに脅すとしよう。合言葉は悪役万歳』


『悪役ばんざーい、で御座います』


『悪役万歳……ってうぉ!?』


──不自然に切れる通信。

しかし深き森林は静かなものだ。バナナボードは距離的にそう離れていない筈だが……


『ホエバ。一旦退却せよ』


『わかりまして御座いま……ぴゃあ!?』


……ホエバは、私とバナナボードの間あたりにいた筈だ。つまり近くなっているが、声も音もしなかったぞ……!


「一体どこから……後ろか!」


殺気を感知し、槍を向けた先には──機械兵。

この程度、地上なれども第八席。単騎で撃破可能だ!

大槍の技術はエンブラエル第二席直伝だ。受けて、払って、一気に斬る──!




「ご苦労様。少々動きが大振りすぎるね」




機械兵を撃破した直後。肩に小さな手が乗る。

──気配が無い──!?


「では、おやすみ」


ひたり、と首筋に冷たい物を当てられて。

反撃の余地も無く、私の体は切り刻まれた。




──◇──




「ジョージさん、1人で全員撃破しちゃいましたよ」

「別に活躍したい訳じゃないが、私の出番っていつも無い気がする」

「縁の下の力持ちって奴ですよ。ベルさんもパンナコッタさんの管理癖に感謝しているみたいです」

「……えぇー?嘘だ」

「あはは。そう言いながら疑っても無いじゃないですか」

「む。……噂に聞きし"聞き上手"はこういう事か。ドロシー、あまり生意気言うなよ」

「ごめんなさい、あたまぐりぐりしないで……」




──◇──




【第105階層ジャングル:ライデン補給ライン】


コンテナひしめく補給基地。

隠れる場所など幾らでもあるが、真っ先に動いたのは──




「うおおおお!! 俺の出番っスよ!」

「さあさあいらっしゃい。老若男女なんだってイケるわよ?」

「ふふ。貴方達面白いわねぇ」




コンテナの上で目立つ3人組──【満月】レン、【バレルロード】プリステラ、【夜明けの月】ツバキ。

戦術も何も無い、突然の注目。これには【セカンド連合】もびっくり。


「……質問よろしいか!」


現れるは【コントレイル】第七席ダイナミクス将軍。

兵を率いる将軍として第六席ドンリュウとバチバチにぶつかり合っている。負ける訳にはいかない。

将軍は冷静で慎重な男。この三人の事もよく調べていた。


"踊り"によって広範囲の地上戦を可能とする移動タンクのレン。

超近接戦闘を得意とするプリステラ。

後方支援の鬼、ツバキ。

コンテナの上という狭い場所に出るのは、罠としか思えない。


「あらダイナミクスさん。お久しぶりねぇ」


「んぅ、ツバキさんも元気そうで何より」


ついでに【黒髑髏】の常連でもあった。


「……オホン。何故そのような目立つ事をするのか!」


「いい質問ねダイナミクスちゃん。ここまで来たら特別に教えてアゲルわよ?」


「え、何となく楽しそうだからって言ってたっスよねプリステラ」


「あぁん堪え性のない子ねぇもぅ。一歩引く技術ってものがあるのよレンちゃん」


「引いたら落ちるっスけどね、このコンテナだと!」


(──ちなみにこの三人は何も考えていない。

作戦は味方頼りなレン、刹那享楽主義のプリステラ、仲間のやりたい事を尊重するツバキが揃う事で──何となくやりたい事を何でもやってしまう恐ろしいパーティーが設立されていたのだ!)


しかしダイナミクス将軍は気付いていない。

これは罠だと想定し、【神気楼】と【頂上破天】は隠れて後ろから奇襲するよう指示していた。


真意はわからんが、あのコンテナから動かないというのなら囲んで叩くべきだ。

いや、完全後衛職のツバキさんを確実に守るための布陣か?なるほど全員姿を現せばこちらからの奇襲に単騎で対応する必要は無くなる。

流石は知略の鬼【夜明けの月】。よく考えている。道化を装うのも策謀の内か!


(──そうではない。この三人は完全にライブ感で動いているだけである)


「ならば、ここで同時に──」

「もう我慢出来ないから行ってくるわね?」


コンテナからダイナミクス将軍へと飛び掛かるプリステラ。


「……来るんかい!」

「ごめんあそばせ?」


両手剣と拳銃がぶつかり合う。

予想外だったが、一番の火力要因を剥がせたのは大きい。レン1人ではツバキさんを守りきれない──!




「俺も行っていいっスか?」

「ええ。楽しんでらっしゃい」




レンも剥がれるのぉ!?

誰もツバキさん守らないのか!?


これには潜伏していた【頂上破天】タコワサも驚き。というか位置バレてるな。……高所に登っているからか! 成程我々の位置を探るための作戦だったか!


(──違います。高い所に登りたかっただけである)


しかし残るは【神気楼】ジャンジャック。武闘派シスター(【神気楼】は大概そうだが)ならばツバキさんも一捻りだ!


「お命頂戴ツバキ様!」


槍を持ってツバキさんに突進するジャンジャック。だが──


「……こうかしら?」


──槍の穂先を、杖の先端で逸らして。

ツバキさんは華麗にジャンジャックをいなして、そのままコンテナから突き落とし──


「【無気力の霧(ダウン・タウン)】【脱兎の足跡(バッド・スタンプ)】【落ち葉散る蘭(リーフ・サービス)】【目取り足取り(アイ・ラブ・シー)】」


──怒涛の呪い付与!

本来そんな連発できるものではない。単体対象呪いは外せば自分に返ってくるものも多いんだぞ。

つまり今の回避は偶然ではなく、確実に避けられる算段を付けて並行詠唱していたと言うことか。

速度減少、ダメージ減少、固定ダメージ、視界と攻撃範囲減少。多分ジャンジャックはもうダメだ。

……あれ。あの位置にツバキさんがいたら終わりでは?




──撃破時間4時間たっぷり。

ダイナミクス将軍とタコワサは最上級の呪いフルコースを堪能させられ、劇的に消耗されながら倒された。




──◇──




「やっぱ作戦考えてくれる人がいるっスね」

「ツバキちゃんが指令してくれてもヨかったのよ?」

「2人が楽しそうだったから見守ってたのよぉ。ふふ。可愛い」

「……こ、これが本物の魔性の女……」

「なんちゃって魔性のプリステラじゃ届かないっスね」

「レン?」

「ごめんなさいっス! 腹に突き付けた銃しまって!」




──◇──




【第106階層ジャングル:ナチュラリス空撃ライン】


空からの機械兵達の爆撃、そこに加えて【コントレイル】の奇襲もあるのが恐ろしい。


配置されるは変幻自在、柔剛併せ持つ怪物斧使い【コントレイル】第六席ドンリュウ。

強化された投擲ナイフの使い手、何度数えても一本足りない【神気楼】オオサダ。

元【象牙の塔】、師匠直伝の最上位魔法連発マシーン【頂上破天】バンダード。


【コントレイル】を含めた戦術において最も恐ろしい非接触戦闘部隊。特にドンリュウとオオサダは良くペアを組む仲であり連携も上手い。鉄板の布陣と言える。


「……【デッドリーショット】!」


うねり自在に飛ぶ緑の竜"タテワキ"だが、その行動は地上からの射撃に阻害される。

【バレルロード】"黒き巨塔"コノカの超精密射撃。回避こそ紙一重だが、的確に行動は制限されている。


「少々操舵が荒れにごつ、しっかりと掴まられよ!」


「いやいや楽勝ですな! もっと速度上げてもいいですぞ!」


「その通りです!!!!私の投擲は元々そこまで役に立ってませんし!!!」


機械兵の空撃は【セカンド連合】も対象となる。

それら全てを掻い潜りながらの飛行であるがため、ドンリュウ達は残る2人の位置を捉えられなかった。




「──"黒蛍(くろほたる)"!」




虚空に巨大な穴──空間を繋げる謎多き魔物"グリーンホール"。

これを空中に呼び出せる技量を持つ魔物使いは、【Blueearth】にただ1人──


「突撃だし! 【ウィップバインド】!」


飛び出すはアゲハ。鞭を伸ばし、緑の竜を捕らえにかかる──


「お断りです!!!【ショットピアス】!!!」


即応するはオオサダ。エンチャントされた短剣を後方へ飛ばし、鞭と衝突させ撃ち落とす。


「空中では逃げ道がありませんな! 早計では?」


「にゃはは。ウチだけじゃ無いよ?」


アゲハの影から飛び出すは──蒼の一筋。

"タテワキ"の尾を掴み、そして収縮。


──"聖母"アイコが竜の背に現れた。


「なっ──」


「失礼しますね」


魔法の詠唱を始めたバンダードだが、間に合わない。

アイコによって持ち上げられ──そのまま、外へポイする。


「ぬわあああああ!?」


「ば、バンダード殿ォー!!!」


「はい失礼しますね」


「あっ」


「オオサダ殿ォォーーー!!!」


軽やかな手際で2人を投げ捨てるアイコ。

ドンリュウは思考を巡らせ──


「……一度戻れ、"タテワキ"!」


「あら」


──足場たる緑の竜を引っ込める!

お互いに空中に投げ出されるが、ドンリュウが上。

斬撃の斬り下ろし技があるドンリュウが上ならば、本当の空中戦でも優位である!


「喰らえぃ! 【炎月輪(レッドムーン)】!」


両手斧での回転斬り下ろしスキル。火力だけなら【コントレイル】随一の大技。自ら回転するそのエネルギーは、流石にアイコのフィジカルでも止める事が出来ない──!


──が。


「蒼の"仙力"!」


【仙人】三つの"仙力"が一つ。遠距離攻撃の蒼の"仙力"を伸ばし、ドンリュウの側面を捉え、僅かに逸らす。触れるだけで蒼の"仙力"は砕けたが──回転するドンリュウを紙一重で躱す!

正面衝突では叶わないが──節約した"仙力"を集中し、赫く輝ける両掌を、横から叩きつける!


「【仙法・赫蓮華(せきれんげ)】!」


「ぬぐっ!?」


スキルとスキルのぶつかり合い。

ドンリュウの回転が停止する。

唖然とするドンリュウの腕を、アイコが征する。


「では、失礼しますね?」


「ぬぁっ、は、離すでごわす!」


そのまま、アイコが軸となって縦回転。

──加速、回転し──地上にドンリュウを叩き落とす!




──◇──




「アイコっち、人力で【炎月輪(レッドムーン)】やってんじゃん。草」

「……薄く赫の"仙力"纏っているので、ちゃんと攻撃判定入ってますね……。あれは、痛い」





〜レイドボス通信〜


"ヘヴンズマキナ"で大仏。

セカンド階層レイドボス連絡回線を整備しているよ。

ここは自我持ち用のチャンネルだ。"ディセット・ブラゴーヴァ"が暇そうにしていたので、ちょっかいついでに開設してみた。


「殺風景ですね」


「飾りつけとかわからないからね。嫌だった?」


「海底よりは明るくて好きです。ありがとう"ヘヴンズマキナ"」


自我の発現からそう時間差がある訳では無いはずだけど、なんというか"ディセット・ブラゴーヴァ"は随分と幼いというか素直というか。私が素直じゃないのかな?


「──私は身動き取れないからね。ここでお喋りでもしたいんだが、如何?」


「わたしもレインが消えて暇です。お誘い嬉しい。でもわたしは何も返せない」


「見返りを求めてやってはいないよ。しかし……随分と冒険者に肩入れするね君は。私はあんな連中滅ぼしたいと思っているけど」


「友達なので。怪物となる私に寄り添って利用してくれたレインは好きです」


うーん無垢。良い子だが心配だ。


「何だ何だ面白そうなチャンネルがあるね! どうも"グリンカー・ネルガル"だよ!」


「"グラングレイヴ・グリンカー"です。何卒宜しくお願いします」


「歓迎するよ"グラングレイヴ・グリンカー"。"グリンカー・ネルガル"は帰れ」


「私の方が正統なレイドボスなんだけれど!? そっちは一応元バグ人格なんだけど!」


うるさいのが来た。

特例でレイドボス2人体制になったジャングル階層。騒動の原因は自我が発現しながら引きこもった"グリンカー・ネルガル"にある訳で。


「君がサボらなければジャングル階層は【Blueearth】に対抗していた【NewWorld】希望の土地だったというのにね」


「チクチク言葉ぁ! 私は正直セキュリティシステムもレイドボスもどうでもいいからね。"グラングレイヴ・グリンカー"を我が子のように可愛がりながら余生を過ごすよ」


「余生なんて無いよ我々には。"エルダー・ワン"が何とかするまで大人しくしとけ」


「そうだね。ジャングル階層は広いから散歩し放題だし、飽きはしないよ。どこかの誰かさんは指一本動かせないって? かわいそー」


「腹立つなこの人妻」


「2人とも抑えて抑えて……」


……よし。次の自我持ちにはツッコミ役を丸投げしよう。"グラングレイヴ・グリンカー"君が過労死してしまう。


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