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BlueEarth 〜攻略=世界征服〜  作者: まとかな
密林祭壇ウェンバル/ジャングル階層

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243/507

243.赤き大地から想いを込めて

【第100階層 密林祭壇ウェンバル】


「あの流れで逃げ出すかね!?」


誰もいない【満月】のツリーハウス。

何度検索をかけてもウェンバルに【夜明けの月】は居ない。

【満月】も【バレルロード】も!


「どうしまスパイラルです。おはようございます」


「んん! 【夜明けの月】はここで諦めるようなタマなのだろうか!?

そんなことは無い筈だ! 何か狙いがある!

【頂上破天】は変わらずジャングル階層に潜伏! 【コントレイル】と本部に連絡ぅ!」


「およ。もう本部には連絡行ってるみたいです。現状維持との命令ですが……」


「……嫌な予感しかしない!」


わかるぞ。俺にはわかる。

こういう時はリーダー格が悪巧みしてるんだ!




──◇──




──【夜明けの月】敵前逃亡から24時間後


【第101階層ジャングル:アペテ開戦ライン】


【コントレイル】と繋がる受話器が鳴る。

緊急連絡だ!


「こちら【頂上破天】ジャッカル! 如何した!」


『こちらエンブラエル。帰ってきたぞ、【夜明けの月】!』


行幸!

どうやら観念したようで、やっとマトモにやり合える!

一時的に雲隠れする事でこちらの索敵を惑わせて、一気に通り抜ける作戦か……?


『101階層に突入したのは……ミカンとリンリン、ドロシー、アイコ。それに【バレルロード】のコノカと、【満月】のパンナコッタ!』


……どういう組み合わせ?


と、硬直する時間も無く。




「──【建築ビルド】!【魔王城】!」




──密林を掻き分けて、巨大な城が建造される。


ミカンと、リンリン。

伝説の防衛コンビ──!




「オラー()()()()()()のです雑魚共!

ミカンさん達は()()()()()のです!」



……どういう作戦なんだ!?




──◇──




【第40階層 岩壁都市ドラド】

──最下層"巫女の岩戸"


「"イートミート"のステーキ持ってきたわよー」


「わぁいメアリー大好き!」


あたしとライズ、カズハとスペード。本当はバーナードも来て欲しかったけど、サバンナ階層に入るとバーナードの中の"カースドアース"がどうなるかわからないので今回は見送ったわ。


見上げるほどの巨体で飛びついてくるパンサーの巫女ガルフ。あたしの友達、"赤土の巫女"シギラ=ファング。

久々に顔を出したらもう全然離れてくれない。もふもふで気持ちいいけども。


「【植物苑】によくお忍びで出かけています。冒険者の所にガルフ族はあまり入ってこないので。

ミラクリースの戦いもリアルタイムで見ていましたよ。アレをああ使うとは」


レイドボス"カースドアース"の端末、シド。前に見た時は種まで戻っていたけど、以前の人型にまで成長しているわ。ちっちゃいけど。


……ドラドを旅立つ直前に2人から送られた餞別。特殊強化アイテム"赤き大地の想い"。

それを【紫蓮の(ヴァイオレット・)晶杖(ロータス)】にセットする事で一時的に【紫蓮赤染(ヴァイオレッド)の大晶鎌(・デスサイズ)】へと強化して、繰り出されるは隔離階層特効の一撃【赤き大地の(デディケイテッド・)輪廻戒天(シギラ=ファング)】!

ライズの【鬼冥鏖胤(きめいおういん)】みたいに手軽には打てない、あたしの必殺技。


「"赤土の巫女"──シギラの存在が私を抑える役割である事が功を奏しましたね。レイドボスを抑えられるという事は宝珠を抑えられる、つまり隔離階層特効でもある訳で。

"赤き大地の想い"はレイドボス特効の特殊アイテムですが、それは私の性質が反映されたもの。同時にシギラの役割が反映された結果そうなったのでしょう。感謝しろ人間」


「アンタにも特効なのよね?」


「杖を振りかざさないで人間。話せばわかる」


仕方ないわね。勘弁してあげるわ。


「……我が言うのもなんだが、随分と型破りなレイドボスだな。本体はサバンナ階層から出奔しており、システム上の代理をこの端末が担っていると言うことか」


「"カースドアース"そのものがバグで休眠したまま【Blueearth】が始まったから、そもそもサバンナ階層そのものがレイドボス不在に適応進化しているみたいだね。いや休眠させてたのは僕なんだけど」


レイドボス、そしてバグの話となると"エルダー・ワン"とスペードの意見も欲しかったので連れてきた。他の連中もそれぞれで上手くやってくれてるといいけれど……。


「……で、シド。シギラ。ガルフ族に"グリンカー・ネルガル"って奴がいるか調べに来たんだが」


「それなら買い出し中に調べておいたよ。行方不明になった遥か古の"赤土の巫女"だね。名前はネルガル=クロー」


「ガルフ族には本や紙に記録する文化は無いけど、"赤土の巫女"の記録は岩肌に刻まれてるからねー。すぐ見たかったね! ずっとずっと昔だけど」


ジャングル階層のレイドボス"グリンカー・ネルガル"。それは元ガルフ族のサイボーグだと言う。


「行方不明ってなってたけど、そっか。ずっと遠くの階層でレイドボスになってたんだね」


「残念ながら昔も昔。特に何か残ってはいません。……というのは、まぁ客観的で現実的な話ですが」


シギラが奥の物置から、一つの壺を持ってくる。


「ここにいる我々は【Blueearth】がゲームである事を認識しています。私とシギラは現実世界というものを知りませんし、ゲームというものがどういうものか正直よくわかりませんが……。

レイドボスがいて、それが他の階層と密接に関わる設定があるのなら。何らかのクエストが隠されていてもおかしくありませんよね?

そう言う訳でセキュリティシステムとしてドラドの内部データを確認して、見つけました。条件不明のクエスト。こちらがその報酬です」


「危ない事するねぇ! 僕、そこの"赤き大地の想い"を無理矢理メアリーに渡したって聞いた時びっくりしたんだから! 最悪君自身のデータに悪影響出るかもしれないんだよ?

……というか実際バグってたよ君。僕が遠隔でなんとかしたけどさぁ」


「おや、命の恩人。ありがとう畜生」


「僕の扱い畜生なの?」


まさかのスペードからの支援ありきだった。感謝しておかないとね。

……で、この壺だけど。壺というか、壺の形をした粘土というか……。凄い古さを感じるわ。


「恐らくはネルガル=クロー……"グリンカー・ネルガル"と何らかの関係を築き、これを回収するよう依頼されるのでしょう。折角だから持って行っては?」


「バグらない?」


「バグる。絶対バグる。僕がいたらリアルタイムで抑えられるけど、天知調に相談しておかないと僕殺されちゃう」


……なんかスペード、苦労人になってきたわね。

まぁ人じゃないんだけどねガハハ。


「助かるわ。じゃあスペード持っててくれる? そうすれば間違い無いでしょ」


「……いや、これ悪用したら僕復活できちゃうわ。メアリーが持ってて」


「あ、そう? じゃあ持っておくわ」


「……それでいいのかスペード」


「………………あっ。そっか。チャンスだったのに」


もう色々と大丈夫なのかしら。こっちは助かるけども。


「じゃあそろそろ戻るわ。ミカン達も始めたみたいだし」ありがとねシギラ。シド」


「うん! またいつでも来てね! あとご先祖様にもよろしく!」


「後は"カースドアース"本体にも宜しくどうぞ」


笑顔で見送ってくれる二人。やっぱりいいわね、この二人は。


「……"グリンカー・ネルガル"とフラグを立てた後に手に入る特別なアイテムか。階層を跨ぐクエストなら武器とかが普通だが……いや、連続クエストの途中なのかもな。その壺と引き換えに何かを"グリンカー・ネルガル"から受け取るとかか?」


「間違い無いのは、それを"グリンカー・ネルガル"に見せた瞬間バグるって事だよ。ちゃんと僕のいる所でやってね」


「はーい」


さて、寄り道はここまで。


「連絡来てるよメアリーちゃん。外でナンバンちゃん待ってるってさ」


「ありがとカズハ。じゃあ行くわよ。【夜明けの月】──出発!」


既にメアリーの計略は始まっている。

俺たちが心の底から信頼する、華麗で容赦の無い、絶対的な計略が。




──◇──




『こちらアクアラ! メンチラでごさいますデス!

クローバー、サティス、バーナードの最強トリオによるレジャー観光も終了のようデス! 転移ゲートよりウェンバルへ向かいまシタ!』




『こちらエンジュ担当マンソンジュ。ベル・アゲハ・スカーレット・フェイ・ツバキ・ジョージ。以上6名による店舗視察は終わりの様だ。何をしていたかは分からん。半数がこっちに気付いてやがる……。

あ、目が合った。悪い。ちと雲隠れさせてもらうぜ』




『こちらバロウズ監視役のリューゲ。プリステラとレン、ゴースト。転移ゲートに向かっているわ。私も一緒にタピオカドリンク飲んでるから見失う事は無かったわね。……隠密? 何のことやら』




──◇──




【第101階層ジャングル:アペテ開戦ライン】


「……【コントレイル】! 流石に手数が足りないぜ!助けて!」


ミカンが【魔王城】を建築してから数時間。

こちらとしては攻める必要は無いと判断し、暫く放置していたのだが……。


クローバーとバーナードとサティスという敵方の最高戦力が突如乱入。

戦場をガタガタにした後、【魔王城】に逃げるものだから困った。

それから更に二度、変なタイミングで敵が戻って来るためこちらの補給回復がままならない!


『【神気楼】を半数着地させますわ。【頂上破天】様に直接付けます』


「頼む! こっちはもうジリ貧だ! こっちから手出ししなければそこまで派手な事にはならないが……」


『──本部からの連絡だ。本命が帰って来たぞ』


撤退からの波状帰還。【魔王城】の立て篭もり。

主犯は恐らく──策謀家"盤上遊戯"メアリー!


「待たせたわね、アンタ達!」


現れるは小柄で強気で偉大な少女。

参謀である"妖怪再鬼"ライズ。"未知数"ジョーカー。"呪血"カズハ。

そして、タルタルナンバン。

……と、幾らかの記者。




「只今より! 宝珠争奪戦を開始するわ!!!」




──そ、そうきたかぁ〜!


沸き立つ【井戸端報道】の面々。あれはタルタルナンバンが揃えたのか!

宝珠争奪戦を開始する条件を厳しくする事で【夜明けの月】に降参させる作戦だったが、ここで盛り上げられると全てご破産だ!

こちらとしても相手がフルメンバーでなければ動けない。最初に【魔王城】を建築した段階ではまだ6人しか居なかったしこちらから攻める必要は無いからと放置していたが……その結果内部で城を強化し続け、数時間ごとに帰ってくるメンバーの避難拠点が出来てしまったという事か!


「あたし達【夜明けの月】は、【セカンド連合】の挑戦に受けて立つわ! この魔王城はただのお城じゃないわよ。あと2時間で【魔王城】は()()

"シェルフライト"に直接殴り込みするわよ!」


……なっ、何ぃーーー!!!


「って騙されるか! お前達の中に【エンジニア】居ないだろ!」


「部品ごとに【エンジニア】に依頼すればパーツは揃うわ。この丸2日、あたし達が何もしていないと思ったのかしら?」


ハッタリだ!


けど、それは言えない!


我々【セカンド連合】は【夜明けの月】達の逃亡中の情報を掴んでいるが、それは闇の情報組織【首無し】からの情報だ。我々が"【夜明けの月】がそんな事していない!"と発言する訳にはいかない……!


マスコミが多数いる中で、我々の取るべき行動は──()()()()()ロケットの発射阻止!




「さぁ頑張りなさい。あんた達が、挑む側よ!」




まだ何もしてないのに、もう逆転されたんだが?



〜【井戸端報道】組織図〜


【井戸端報道】第1編集部編集長補佐のタルタルナンバンナンバンですゥン!

本日は我らが【井戸端報道】についてご紹介!


【井戸端報道】は階層攻略やお手頃お得な情報などなど、冒険者にとって有益な情報を無料でお届けする報道組織です!

冒険者を雇っているアドレ王宮より後援を賜り、全冒険者への新聞の公布を許可頂いております!

国家公認でありますので正式には冒険者ギルドではなく、色んなギルドに籍を置いて活動している人も少なくありません。私も【満月】のお力を借りていますし。


そんな【井戸端報道】の編集部は全部で7つ!

6.7編集部はアドレに、残りは攻略階層に点在し、記者は1番近くの編集部に記事を流す事になります。


・第7編集部

【第0階層 城下町アドレ】

アドレは冒険者の数がダントツなので二分化されています。

第7編集部は非攻略勢の冒険者を対象とした記事を執筆していますね。

最近はキラリちゃんという名物記者が盛り上げてくれて、第6編集部と手を取り合う事も多くなったとか。

実際二分化していると変な所で連携取れなくなるから、纏まってくれるならそれが1番ですねー。


・第6編集部

【第0階層 城下町アドレ】

アドレの冒険者向け編集部で、本部ではありませんが一番規模が大きいです。私もかつてはこちらに在籍していました。

あまりにも膨大な記事記録ですが、偉大なるパンナコッタ先輩が"記録員"というポジションを樹立したので情報管理は完璧です! バックナンバーの閲覧は一般公開されていますので、調べ物の際には気軽にどうぞ!あの【象牙の塔】も定期的に情報を閲覧しに来るんですよ!


・第5編集部

【第10階層 大樹都市ドーラン】

【鶴亀連合】時代はここで停滞する冒険者が多かったので立ち上げましたが、最近の階層攻略ブームと【朝露連合】の台頭により少々役割が薄くなってきました。最近は【第30階層 氷結都市クリック】に移転する事を考えています。


・第4編集部

【第50階層 常夏都市アクアラ】

毎日遊んで暮らしている……訳ではありませんが、イベントに積極的な盛り上げ隊です。

陽気なアクアラの雰囲気に呑まれないよう、メンバーは厳選されています。それでも人気No.1。だってみんな、会社の金でバカンスに行きたいですから。


・第3編集部

【第70階層 連獄都市ヒガル】

こちらは不人気No.1、陰鬱としたヒガルの編集部です。

主に"羅生門"を潜れなかったり、セカンド階層から出戻った人達で組まれています。

しかし先日の訪問では大盛り上がり。言う事も素直に聞いてくれましたし、今も活発に活動しているようです。不思議。

またどこかで声を掛けに行きたいですね。


・第2編集部

【第80階層 天上雲海エンジュ】

こちらはセカンド階層以降の情報を収集するための編集部。第1編集部が移動し続けているので、しっかり拠点を構えている編集部ではここが最前線となります。

訪問した時はみんな大人しくて、なんというかお寺みたいな厳かさを感じました。

今は皆、音楽に夢中です。

【飢餓の爪傭兵団:エンジュ支部】と対バンする毎日。ちゃんと取材もして下さいね?


・第1編集部

【スケアクロウ】と共に攻略中

こちら私が配属される予定の最前線、第1編集部!

ですが、全然追いつかない! 人事に異議を唱えたいけどその人事が遠いです!

基本的に最前線の情報は定期的な対談で確保していますが、直接伺えるならその方がいいので直接最前線に追い着こう!という理念です。

考えは立派ですが! 後追いの難しさを考慮してほしいですね!

ちなみに攻略に必死なのであまり報道記者としての執筆はされていません。記事未満の情報を第2編集部あたりに投げてばかりです。だから補佐が必要なのですが。

……第1編集長のシェケルさん、あちこち遊びに行ってるのをウチは知ってるんだけどなー!

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