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BlueEarth 〜攻略=世界征服〜  作者: まとかな
密林祭壇ウェンバル/ジャングル階層

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240/507

240.密林に潜む者達

──────


密林は恐ろしい。

暗闇が、入り組んだ樹木が、凶悪な動物が恐怖を生む。

故に彼らは潜む。

恐怖を克服した兵は、更に恐ろしい。


──ここは【第100階層 密林祭壇ウェンバル】

仮初の樹海。不可視の敵意。


──────




【第101階層ジャングル:アペテ開戦ライン】


【満月】【バレルロード】連盟

ジャングル階層到達から数日経過。


まだジャングルの浅い位置ながら、攻略は難化していた。


「さぁーそろそろ諦めたらどうだ! いくら元トップランカーが二人いるとは言え、補給無しじゃ限界じゃねぇかな!?」


やかましいのは【セカンド連合】ジャングル階層地上班指揮官……【頂上破天】GMジャッカル。

現状、相手側の手のひらの上で踊らされているのが悔しいわね。


「……完全中立のタルタルナンバンを利用して物資をピストン輸送させてるけど全然足りないわね。【バレルロード】。あとどのくらい戦える?」


「正直そろそろ限界……って言って何日目かしら。あーあ。敵が真っ当に攻めてくれればねぇ」


スカーレットもお手上げ。


そう。ここの【セカンド連合】は攻めて来ない。

ジャングル階層の性質を最大限利用して、空に浮かぶ"シェルフライト"から一方的に妨害をしてくる。


()()()()()の相手は厳しいね。ここは一時撤退すべきだろうベル」


私達に立ち塞がるのは、二つの敵。

空中という安全圏からこちらを一方的に索敵し妨害してくる統率の取れた組織【セカンド連合】……【コントレイル】。

もう一つは……このジャングル階層を取り仕切るレイドボスによる、密林を熟知した軍隊。

【セカンド連合】は守りに徹するだけで、レイドボス側の軍隊をけしかける事が出来る……って訳。


「まだやるわ。隙は必ずやってくる。それまで繋ぐのよ……!」


意地ではない。向こうの補給線を断つには、戦闘を継続させなくてはならない。

そして何より、この私に噛み付くような野良犬は許さない。地獄に叩き落としてやるわ【セカンド連合】……!


「ベルっち社長。撤退するよん」


──アゲハが私を抱える。


「……何してるのアゲハ。はなせおろせ」


「【夜明けの月】来たってさ。だったら役割終了っしょ。このまま戦闘慣れした状態の【セカンド連合】相手にするよりさ、仮初の勝利を味わせて緩んだ所を刺した方が良くね?」


………………一理ある。

こういう時に本当に助かるわね、元殺し屋。


「わかったわ。【満月】は撤退する。【バレルロード】に無理強いは出来ないけど、()()が欲しいわ」


「そういう気遣いは不要よ。こっちも限界。対等に尻尾巻いて逃げましょう、【満月】の皆様」


非常に業腹だけれど。

私もスカーレットも顔を合わせて、決定した。




──【満月】【バレルロード】撤退。

数日に渡る戦闘は、【セカンド連合】に軍配が上がった。




──◇──




【第100階層 密林祭壇ウェンバル】


【夜明けの月】ウェンバルに到着。


密林に囲まれた畑。畑……?


「人類、そこどいてくれにん」


「あ、ごめんなさい」


後ろから声を掛けられて振り向くと──


──なんか足の生えたカブが立ってた。


「通るにん」


「あ、どうぞ」


クワを担いで、身体を左右に揺らしながらのそのそ歩くカブ。

……え、あれ原住民?


「"マンドラにん"だ。元は自衛のために奇声で生物を退ける魔法植物だったが……色々あって天敵が居なくなり、もう奇声をあげる必要が無くなった代わりに種が繁栄出来なくなった。ので、自力で栽培して繁殖しているらしい」


「いやそうはならないでしょ」


そもそも古代文明側の"エンジネル"、滅びを待つのみな"マーフリー"と、なかなか原住民もお辛いものが続く。レイドボスが連続して古代文明ってのも気になるけれど。


「性格は温厚。ただし商売にはならない。雨も太陽光も彼らの必要な分はもう充分あるからな。

日中は若い"マンドラにん"に水やりしたり寝床()を耕したり。日が落ちたら全員土に潜って眠る。それだけで生きていけるんだから凄いもんだ」


「今褒めたかにん」


「掛け値なしに褒めたぞ。凄い生き物だ」


「人間もよくやってるにん。褒めてやるにん」


「そりゃどうも」


……二足歩行する人参がすれ違い様に褒めてくれた。

なんか、こう……ファンタジー過ぎるわね。エルフだドワーフだと真っ当なファンタジーやってた頃とは比べものにならないわ。


「人類とは相互不干渉。故に急務は宿だ。日が暮れたら原住民全員地上から消えるんだからな」


「それはマズいわね。急いで宿探すわよ──」


「その必要は無いぜっ!!!」


うるさっ。


振り返ってみれば、仁王立ちするヒーローマスク。その周りの取り巻きは別にヒーロー衣装とかじゃないけれど。


「俺は元【飢餓の爪傭兵団】傘下にして現【セカンド連合】ジャングル階層部隊地上班司令【頂上破天】のギルドマスター……ジャッカルッ!!!

お前達、冒険者用の宿はあっちの森にあるぜっ! 貴重な太陽光の当たる場所は"マンドラにん"に譲らなくちゃいけないからなっ!」


「【マッドハット】経営の宿がありますよ。私は【頂上破天】サブマスターのスパイラル。ジャッカルが不祥事を起こせば私がギルドマスターです。

拠点階層で事を構えるつもりはありません。これは【セカンド連合】としての意向です。スパイラルです」


……【セカンド連合】側の代表って事だけど、堂々としているのね。イロモノ集団なだけかしら。


「ウェンバルにおいて宿と飯は重要! そこで排斥するのはナシって事だぜ! 俺達は紳士だからな!」


「我々は宝珠を割り当てられていませんから、無理に悪印象を与える意味もありません。もしものもしもを想定するなら好感度を稼いでおきたいスパイラルです」


「おう。マスタングの爺さんは元気か?」


「おっ、カマかけだな! いい悪役だぜ!

現在ジャングル階層に派遣されているのは【頂上破天】【神気楼】【コントレイル】の三ギルドで、賭ける白の宝珠を持ってるのはマスタングさんだぜ!!!」


全部言っちゃった。

いやでも勘は良いわよコイツ。案外侮れないかも。


「この条件を提示した上で、我々【セカンド連合】は【夜明けの月】に宝珠争奪戦を提案しまスパイラルです。

拒否しても構いませんが、我々の仕事はここでの非【セカンド連合】の攻略阻害ですので、無傷で通れると思わないでスパイラルです」


「だとよ。どうするマスター」


「……そうね。人を待たせてるからどいてくれる? 優しいお兄さん達」


「ん、そりゃすまん。どうぞ!!!!」


あっさり道を開けてくれた。なんか……こう、やりにくいわね。


「ちなみに【満月】と【バレルロード】ならこのまま真っ直ぐ行って突き当たりの木を左だ。連中、ウェンバルに到着するや否や真っ先に"マンドラにん"の長の所に行って土地を買い占めたからな。俺達は近付けないぜ!」


「ありがと。具体的なお話は明日するから、マスタングさんと【神気楼】の代表さんを呼んでおいてくれる?」


「合点承知ィ!!!」


……良かった。

こいつバカそうに見えてかなり賢いわ。セカンドランカーのギルドマスターなだけはある。

ちゃんとルールに則って動いてくれるんなら色々と気楽だわ。

……監視は付けるけどね。




──◇──




森の中

【朝露連合】の領地──ツリーハウス


「待ってたわよ【夜明けの月】。遅いわよ」


不機嫌リスちゃんがほっぺた膨らましていらっしゃる。


「遂に追い付かれてしまったね。不甲斐ないばかりだ」


「やめてくれサティス。ここまで助かりっぱなしだ。特にエンジュはファインプレーすぎる。そりゃ警戒もされるさ」


サティスはベル社長のご機嫌取り。膝に乗せて木の実与えてるよ。

俺達の前で堂々とイチャイチャしてるのは相当だぞ。


「……で、なんでアゲハは吊るされてるのよ」


「ライズっち〜。メアリっち〜。お久〜」


何故か簀巻きにされて吊るされているアゲハ。レンが降ろしてあげてる。


「ギリまで【セカンド連合】と交戦してたんスけど、流石に限界で。アゲハさんの提案で撤退する事になったんス」


「【夜明けの月】が来た、なんて嘘を吐いてね。だから本当にアンタ達が来るまで丸一日吊し上げてたのよ。

……本当は、【夜明けの月】が到着するまで粘って連中の兵站を枯らすつもりだったんだけど。一日分の補給チャンスを与えてしまったわ」


「とはいえあのままでは半日も保たなかった。ナンバンも瀕死だったし。何処かで切り上げる必要はあったわ」


「パンちゃむフォローあざ。でもいいよ。リーダーを欺いたのは事実っしょ?」


「……客観的事実だから」


なんだかんだ【満月】もベルのワンマンではなく、周りの理解やストッパーがいて上手くやってるようだ。


「……なっちゃったものは仕方ないわ。ここ暫くで私達が手に入れた情報を共有する。作戦はそっちに任せるわ」


「って事はベルとガチ共闘なのね。ちょっと面白くなってきたわ」


「私もいるんだけどー?」


ひょっこり窓から顔を出したのは【バレルロード】の姫 スカーレット。

【満月】の協力者としてもう長い付き合いだが、こちらとも良好な関係なようで何より。


「敷地内にはフェイのトラップを張り巡らせてあるわ。一応の警戒ね。

夜に強いフェイとコノカが交代で見張ってるから安心して寝なさい」


「それは悪いよ。見張りなら俺も混ぜてくれないか? 多少は夜目も利く方だ」


ジョージの場合は夜目と言うか、聴覚だけでも充分な性能なんだがな。


「情報共有が先よ。聞きなさい」


ベルの一声に、一同は切り株などに腰をかける。


「ではここからは【満月】記録員のパンナコッタが紹介する。

まず根本的なジャングル階層のシステムについて。

ホライズン階層同様、ジャングル階層の攻略階層もまた特殊な形態をしているわ。【第101階層ジャングル:アペテ開戦ライン】が大きく広がっていて、その中に8箇所のエリアが存在。それらが102〜109階層という扱いになっている。

全ての階層が地繋ぎになった超巨大な階層だと思って欲しい」


「8箇所のエリアってのは、レイドボス指定の奴だよな?」


「その通り。ジャングル階層のレイドボス【侵緑(しんりゃく)軍長 グリンカー・ネルガル】はジャングル階層に潜み、軍隊機械兵を使って冒険者を排除して来ます。彼らの妨害から逃れるためには"グリンカー・ネルガル"の指定した8つのエリアを攻略し認められなければならない」


レイドボスがガッツリ関わってくるタイプか。なかなか面倒だな。


「8つのエリアは"グリンカー・ネルガル"が指揮する軍隊によって移動しているが、その位置を【セカンド連合】はリアルタイムで認識し、そこへ行こうとする冒険者を妨害する。妨害に徹するだけでその内"グリンカー・ネルガル"の部隊が到着し混戦。撤退を余儀なくされる……というやり口になる」


「そのエリアの認識というのは?」


「【セカンド連合】きっての偵察部隊。ことジャングル階層においては無敵の航空母艦……【コントレイル】の"シェルフライト"。それが敵の中核です。

ジャングル階層においては高度限界位置の"シェルフライト"に届く高所建造物は無く、飛ぼうにも"グリンカー・ネルガル"の妨害を掻い潜る必要がある。もし抜けたとしてそこまで暴れた後では【コントレイル】から見つかり、自慢の航空部隊に返り討ち……という訳で」


「……厄介ね。しかも宝珠持ってんのはマスタングさんよね」


「明日降りてくるんだろ? っつーか宝珠争奪戦するならそこはクリアなんじゃね? 向こうも降りてこないと宝珠を賭けられねぇしよ」


「いや、向こうは今説明のあった鉄壁の布陣で階層攻略を妨害できる。ある程度不利な提案もしてくるだろうし、その布陣の中核であるマスタングさんが来るとは思えないな」


明確に敵のホームグラウンドでの争奪戦。後は交渉次第……って事ね。


「……嫌気が差すわね。あわよくば突破まで考えてたのに、大した事出来ずアンタ達を迎えてしまったわ」


「そんな事言わないでよベル。助かってるって……」


「出来た事なんて宝珠対応アイテムの強奪と市場独占、回復薬の輸出量をダシに商業ラインの確保共存、レイドボス繋がりでバーナードが調べたここ暫くの8エリアの位置変動図、ナンバン経由で集めた敵三ギルドの情報、アゲハが調べた敵の配置と組み合わせくらいよ」


「いやいやいやいや待って待って。やりすぎよ」


味方になるととんでもないなベル。

……いや、一度も敵になった事は無いんだが。

〜ウェンバル研究〜


ジョージだよ。

【第100階層 密林祭壇ウェンバル】に到着。なかなかこれまでの階層とは一風変わった面白い階層だ。

密林に支配されているジャングル階層においては太陽光の当たる広間は貴重なのだろう。何故"マンドラにん"達はここでのんびり過ごせるのだろうか。


交流してみて分かったが、"マンドラにん"は如何なる生物においても食用に適さない有毒植物の様だ。奇声を上げるという性質からして所謂マンドラゴラがモチーフか。

そこから地上へ進出した件については……まぁ説明が付かなさそうだけど。重要なのは言語が通じる点だ。

どうにも彼らの先祖……マンドラゴラ時代からある程度の意思、或いは"音声や言語を理解する機能"があったようだ。

普通のマンドラゴラなら(普通もなにも現実には無いので憶測だが)そんな機能は必要無い。引っこ抜かれた時に奇声を上げるだけだからね。

では何故そんな機能が必要だったのか。

恐らくは"マンドラにん"、ひいてはマンドラゴラの起源によるものだと思う。


ここまでエンジュとミラクリースの双方で古代文明の侵略を見てきたが、ここでも例に及ばず。レイドボス"グリンカー・ネルガル"は機械兵を操るという。古代文明側だろう。

となると"マンドラにん"の奇妙な生態は、原住民というより古代文明寄りだ。有毒、奇声、自意識そして自立。全てが自然のものとしては不自然すぎる。意図的に作られたものだろう。


つまり"マンドラにん"はそもそも古代文明側の兵器の一種であり、本来のウェンバルの原住民は滅ぼされたのだろう。

しかしそうなると疑問なのは、原住民の痕跡が一切無い事だ。ウェンバル……"マンドラにん"達の畑には生命が住み暮らしていた痕跡が無い。


……ここで考えたのは、古代文明の技術と目的だ。

即ち侵略。新天地を求めた侵略こそが彼らの目的で、【Blueearth】各地に今も稼働し続ける工場が残っている訳だが……。

詰まるところが、どんな場所でも過ごせるように土地を改造する手段があってもおかしく無いのではないか。

ウェンバルの端の方は土ではなく砂になっている。

そもそもここまで広がった密林の中でウェンバルだけが木の根の一つも生えてない不自然な樹木の形をしている。"マンドラにん"に木こりの技術も力もある様には思えない。


つまりウェンバルは、いや、ジャングル階層そのものが古代文明によって作られたのではないか。という仮説だ。


まぁ説は説。"マンドラにん"は古代文明の事を知らないし、今の"マンドラにん"達が過去の原住民を滅ぼした訳でも無し。

しかし文明そのものの上に根を張って森を作るとは、恐ろしい技術力だ。人類には早すぎる兵器戦力だが……天知調なら出来るだろうね。

こうやってオーバーテクノロジーを実感する度に、つくづく天知調が平和主義で良かったと思えるよ。

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