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BlueEarth 〜攻略=世界征服〜  作者: まとかな
水鏡基地ミラクリース/ホライズン階層

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239/507

239.悪意はどこに潜むのか

"まりも壱号"班

92.93階層担当

操縦:ミカン

ライズ・ドロシー・スペード


【第93階層ホライズン:忘却B:優】

"誘導処理兵器Code:B2(ビーツ)"撃破。




"ぷてら弐号"班

94.95.96階層担当

操縦:ジョージ

クローバー・メアリー・アイコ


【第96階層ホライズン:交流E:悲】

"落涙航空兵器Code:E1(エイ)"撃破。




"うらしま参号"班

97.98階層担当

操縦:ツバキ

カズハ・リンリン・ゴースト


【第98階層ホライズン:哀愁G:崩】

突撃破壊兵器Code:G10(ジャイアント)撃破。




【第91階層ホライズン:泰平水平線】


「いやマジで馬鹿広いわねホライズン階層!」


三手に分かれたけれど、いい感じに時間差無く合流。

特に苦戦はしてないみたいだけれど、こっちは殆どがレベル130に対してホライズン階層の適正レベルは120〜125。次のジャングル階層では遂に130レベルで並んじゃうのよね。


「こっからは99階層の海底に行くだけだ。《拠点防衛戦》のように海が割れる事は無いがな」


「海底……"ディセット・ブラゴーヴァ"はいるのかしら」


「いるぜ。普段は休眠してるけどな」


「あらそう。寝てるのね」




──◇──




【第99階層ホライズン:海底地平線】


『まってたよ。ひさしぶり』


「起きてるじゃないのよ」


巨大機械イカ"ディセット・ブラゴーヴァ"。

ホライズン階層のレイドボスで、廃棄された最終兵器。


『すこし楽しみにしていたよ』


「なんかアンタかわいいわね」


その設定とは裏腹に、終始話が分かるというか、かなり理知的だった"ディセット・ブラゴーヴァ"。

今も目覚めてはいても襲ったりはしてこない。


『レインへの手向け。君達に手助けをしたい』


「随分と気に入ってるのねレインの事」


『データが少ない。レインしか冒険者のデータを持っていない。

レインの目的に賛同して、手を貸したのはわたしの意思。わたしの初めての意思の記念だから、レインは特別』


「独特の感性だな"ディセット・ブラゴーヴァ"。しかして聞いておきたい事もある。質問よろしいか」


カズハの肩から"エルダー・ワン"。レイドボス相手の交渉役が板についてきたわね。


「セカンド階層──即ちヘヴン、ホライズン、ジャングル、ナイト、ドラマ、ヤマト、リメイン。これらの階層では宝珠が常に()()している。

原因はやはりレベル上限解放クエストのための舞台であるからであろうが……問題はやはり、レイドボスの半身である宝珠を冒険者に奪われる前提であるという事だ。

即ち根本的なデータ不足。"ヘヴンズマキナ"も貴様も、自我を得たのはここ最近の話であろう。

他の者で自我持ちはいるか分かるか?」


冒険者の記憶復活、レイドボスの自我発生。どちらも共通して、一定以上の過剰データを取り込む事がトリガーになる。

セカンド階層のレイドボスは最初から半分のデータである宝珠が抜け落ちているから、その分偶然に自我を発生させる確率が下がる……ってことかしら。


「"ヘヴンズマキナ"といい貴様といい、自我を得たばかりのレイドボスというのは騒動を起こすものだ。ましてや今は不足分のデータである宝珠が階層を行き来している。やろうと思えばすぐ面倒を起こす事も出来よう。

しかしやり過ぎれば天知調からの制裁もあり得る。我はそれを避けておきたい」


『……推論は凡そ正しい。ただ、怪しい奴がふたり』


"ディセット・ブラゴーヴァ"は足二本を前に出すと、その先端が分かれ立体映像を映し出す。高性能すぎる。

一つは真っ黒なシルエット。シルクハット? の大人。

もう一つは……役者さん? 緑の派手な服の、でもピエロみたいなメイクはしていないわね。


『第110〜119階層:ナイト階層を担当するレイドボス【六本指の怪 セスト・コーサ・マッセリア】。第120〜129階層:ドラマ階層を担当するレイドボス【千両役者 ディレクトール】。

彼らは挙動が怪しい。そういうレイドボスだから、判別は付かない』


「……人間ぽいのね、どっちも。これまで見てきたレイドボスはどれも巨大だったけど」


「レイドボスにも種類ありだな。して、どの様な特徴か」


「ディレクトールなら良く知ってるぜ。あそこを通った奴は【夜明けの月】だと俺とスペードだけだよな?」


第120階層の適正レベルは135〜140。セカンド階層経験済みのカズハもリンリンもミカンもまだ辿り着いていない。

当時の最前線まで辿り着いてるクローバーとスペードがいて助かるな。


「ディレクトールは【第120階層 連綿舞台ミザン】の総支配人……"ヘヴンズマキナ"や"焔鬼大王"と同じ、拠点階層に根を下ろすタイプのレイドボスだよ。

別に冒険者の味方という訳では無いけど、レイドボスとして真面目かと言われれば首を傾げるね。良くも悪くも無関心な奴だよ」


「ミザンで《拠点防衛戦》なんてあったか?」


「ある事にはあったらしいね。僕達は遭遇しなかったけど。端的に言えば、自分の主催する劇を成立させるために冒険者を利用する奴だ。レイドボス側から見て挙動が怪しいというのは納得だね」


「もう一つは知らねぇ。ミッドウェイのレイドボスって判明してたか?」


「デュークからの秘密情報の中にあったな。宝珠獲得の際に初遭遇したらしい。詳細なデータは無いが……」


『"セスト・コーサ・マッセリア"は【第110階層不夜摩天ミッドウェイ】を総べる原住民側の王。どちらも共通して、行動が不安定。しかしその不安定さが彼らのアイデンティティでもあるから……あえて自我があるとするならば、このふたつだと思う』


中々変な奴なのね。まぁこれまで遭ってきたレイドボスなんてどいつもこいつもクセ強かったけど。


「……ふむ。恐らくその2つの階層のどちらかにバグの親玉がいるぞ。【夜明けの月】よ」


"エルダー・ワン"の言葉に緊張が走る。


「ど、どうしてですかぁ……?」


「ここまで"ヘヴンズマキナ""ディセット・ブラゴーヴァ"と2連続で、自我発現したレイドボスによる妨害を受けておる。

だが先程も言ったようにセカンド階層のレイドボスは宝珠分の空き容量があるのだ。自然のデータ溜まりなどで偶然自我は発生しない。"ディセット・ブラゴーヴァ"がレインによって無理矢理自我を発現させられたように、"ヘヴンズマキナ"もバグ勢力によって意図的に自我を発現させられたと推測できる。

しかし純正なるバグの使い手であるスペードはともかく、今はただの人間の二世バグ使いであろう。レイドボスに詳しく無いのにそこまでの芸当はできん。

つまりバグ勢力はどこかのレイドボスと手を組んでおる。それが"セスト・コーサ・マッセリア"か"ディレクトール"という訳だ」


なるほど。論としては信憑性があるわね。

というか"エルダー・ワン"も真剣に考えてくれているのね。


「今後の参考にせよ。スペードほど厄介な相手では無いが、だからこそあちらは手段を選ばん。

……もしもレイドボスが喰い尽くされてしまえば、救えぬ。それは避けたいのだ」


「……わかったわ。アンタも【夜明けの月】の一員よ。忠告は留意するわ」


「うむ。ではそろそろ寝るのである」


"エルダー・ワン"はそのままカズハの首に巻き付く形で眠りに着いた。

"ディセット・ブラゴーヴァ"は、表情はわからないけど嬉しそうに触手を蠢かせる。


『楽しみに待ってる。わたし達を解放してくれる、その日を』


「……任せなさい。せっかく芽生えた自我なんだから、楽しみなさいよね」


『任せたよ、【夜明けの月】』


"ディセット・ブラゴーヴァ"はそのまま本来の休眠モードに移行し──


──その影から、何かが飛び出す。


「【イージスフォース】! ……来ました! フロアボスです!」


警戒していたリンリンが受け切り弾く。

そこには、でっかい球体。


──【スキャン情報】──

《廃番の夢守 バックログ:No.Z0(ジオ)

LV125 ※フロアボス

弱点:打

耐性:斬

無効:

吸収:


text:

ホライズン階層全ての機械兵器の起源。侵略前に開発された兵器は使われる事なく海底に捨てられた。

受けた属性を三つまでストックして、それを無効化する。攻撃を受ける度に巨大化し、最後は爆発する。

────────────


巨大爆弾じゃないの。


「例によって無属性で攻めるわ! ドロシーは【サテライトキャノン】準備、あとは適当に攻撃! 属性耐性チェンジ系なんて慣れたもんよ!」


「ううんメアリーちゃん。Z0(ジオ)の厄介な所はそこじゃなくて──」


海底に響くアラート。

地中から飛び出す──球体の群れ。


「──()()()()って所だァな! 挑戦人数の3倍! つまりは36基だ! こいつの対処は無属性物理! 俺に任せなぁ!」


飛び出すはクローバー。

……よし、方針変更。


「斬撃耐性あるならカズハとスペードは下がって、ジョージは鞭に切り替えて! 出来るだけ固まらせて!」


【Blueearth】において、物理職の斬撃属性偏りすぎ問題がある。

そもそも武器が短剣双剣片手剣両手剣片手斧両手斧刀……と斬撃だけ種類が多すぎ。そりゃ偏る。

その斬撃に耐性があって、それでも突破しなくちゃならないフロアボスなら……ちゃんと斬撃のみでも攻略法はある筈。だってセカンド階層の関門は次のジャングル階層であって、ここじゃない。多くのソロプレイヤー……カズハとかがここを通れたのなら、抜け穴はある。


物理なら斬撃だけど、魔法はもっと酷い。初撃以外は三属性無効にしてくるって事だから。【大賢者】じゃあるまいし、四属性も持ち歩く魔法使いの方がレアよ。


斬撃と属性魔法に該当しない攻撃で、誰でも可能なのは──奴自身の自爆。つまり奴らは誘爆する。

そこまで読んだ上で、爆発に如何に巻き込まれないかがポイントになる訳だけれど──。


「クローバー! 1番奥の奴を狙って!」


「あいあいマスター!」


無属性突撃属性。銃攻撃の分類はちゃんとZ0(ジオ)を痛めつけられる。

ここからが、あたしの仕事。


「リンリン、ライズ、ミカン! 防衛準備!」


「任せるのです。【建築ビルド】──【不落の城壁】!」

「は、はい!【ワイドシャッター】!」

「【スイッチ】──【煉獄の闔(ケイオス・エイギス)】」


壁は出来た。クローバーの狙うZ0(ジオ)が赤く発光する──


「全員()()()! 【チェンジ】──【チェンジ】【チェンジ】【チェンジ】!」


クリックの《拠点防衛戦》で見た、ダイヤの連続【チェンジ】移送。

今前衛に出ている全員を、連続で、高速で、城壁の後ろへ飛ばす。

有用は数秒。座標ミスは即ちそいつの死。絶対にミスれない──!


「──よし、全員避難出来たわ──」


「お前がまだだろうが!【ワイドシャッター】!」


うっかり私自身を飛ばし忘れた。

ライズが大盾を構えたまま、あたしの前に出て──




──海底が大爆発した。




──◇──




「いやー見事一掃。普通は流石に耐えきれないから各個撃破させるんだがなぁ」


「リンリンちゃんとミカンさんがいて耐えられない攻撃は無いのです。ふふーん」


「二人ほど吹っ飛んだけど?」


「あいつらが勝手に抜け出したのです。しらん」


防御には成功したが、踏ん張る足場が無いので彼方まで吹き飛んだライズとメアリー。奇しくもその方向が転移ゲートだったので全員で向かっているけれど……。


「そういえば今回はバグ側からの妨害は無かったな。三チーム分けてた時とか来そうなもんだったんだが」


「そうよねぇ。もうスペードに興味が無いか、或いは……」


「次の階層で確実に潰せるから、とかもありそうですね」


「ドロシー、物騒だよね。僕怖いよ」


「疑うのも僕の仕事ですから」


頼もしいなぁ。

……次の階層でもそうだけれど、僕を狙うバグ二世の手には警戒しないとね。

そして、チャンスがあったら……。


「……だから、なんで僕の前でそういう悪巧みを……」


「おや、罰が必要かな。俺で良ければ全ての関節を逆向きにするが……」


「勘弁して下さい」


くそう。悪いことはできないなぁ!

〜ホライズン階層研究〜

《ジョージの階層研究レポート》


前回のヘヴン階層では侵略した機械生物と原住民の竜種の事実上の共生関係が見られたが、ホライズン階層では随分と偏った生態系になっている。

まず原住民が駆逐されている。唯一の生き残りのマーフリーはミラクリースに篭っているから、攻略階層は古代文明の好き放題になっている。

とはいえ侵略兵器は所詮兵器。原住民を駆逐した後にどうするかは別の問題だ。

そもそも侵略が完了したのなら兵器に役割は無く、その土地を利用した何かを行うべきだろう。しかしホライズン階層はどこも機械生物の魔物ばかり、殺意の高い機械兵器が稼働しっぱなしで、フロアボスもレイドボスも例外なく兵器。

そしてエンジュもそうだったが、古代文明自体の発展の形跡が無い。エンジュは古代文明の進出のための現地拠点だったため現在不在というのも頷けるが、絶賛兵器稼働中で居住区の一つも無いホライズン階層はどうだろうか。


仮説と複数の情報から分かってきた事には、恐らくこのホライズン階層を担当した古代人は捨て駒のような扱いを受けていた。少ない資源をやりくりして無数の兵器を生み出し、ようやくホライズン階層を制圧した。

その後、今に至るまで兵器を稼働させ続けてしまう理由があった。いやそうなってしまう理由か。


詰まる所が暴走だ。古代人がここで発明した兵器の多くは"特定の条件を満たすと殲滅する兵器"か"無差別に破壊する兵器"ばかりだ。ストッパーなど設定していなかったのかもしれない。

全ての生物を制圧したにも関わらず、自らの発明でホライズンを手放さなくてはならなくなった。或いは……巻き込まれてしまったか。どちらにせよホライズン階層は誰の手にも残らなくなってしまった。

その結果滅ぼされた側の怨念で動く"ディセット・ブラゴーヴァ"が支配者となったのなら……本当に勝ったのは、古代文明なのか原住民なのか。

誰も得しない結果であることは、間違いないね。

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