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BlueEarth 〜攻略=世界征服〜  作者: まとかな
城下町アドレ/ウィード階層
22/507

22.「いってきます」

【第7階層ウィード:ゴブリンの砦】


また平原。目立つのは、めちゃくちゃ大きな木製の砦が其処彼処にある事。

階層名からして、これがゴブリンの砦?


「次の階層への転移ゲートは、日替わりでこの砦のどこかにある。それを見つけなくちゃ先に進めないんだよ」


ライズ曰く、条件付き階層の練習版。奥の階層に行けば、毎度のように条件を満たさないと進めないらしい。


「その代わり転移ゲートの数自体が複数あるから、確率的にはそう厳しいもんじゃないが。まぁ確率を上げるために二手に別れるぞ。ゲート発見が遅れたチームが昼飯係でどうだ」


「ゴブリンの砦恒例の遊びであるな。昼飯時で丁度いい」


ベルグリンも乗り気ね。なんか皆、なんとなく仲良くなってる気がする。


「クエストもこなしてもらう。数討伐系の簡単なもんにするから、クエスト全攻略+転移ゲートの発見で勝ち。どうだ?」


「よかろう。チーム分けはどうする?」


「そうだなぁ……」


あれやこれやで、チームが決まる。


──────

《Aチーム》

ライズ

ニワトリ

ムネミツ

オオバ

メアリー


《Bチーム》

ゴースト

アイザック

ベル

ベルグリン

ナツ

──────


ライズチームになった。これは勝ち確では?


「ゲート見つかるかどうかはわからないからな。さっさと行くぞー」


はーい。




──◇──




《ゴブリンの砦:1F》


「ゲートの位置はランダムだ。だが基本的に『遊んでる』ところには無い。ゴブリンがなんか遊んでるところは無視だ」


門を開くと同時に、ニワトリ君が突撃。注目を浴びてゴブリン達が集まってくる。


「ダンジョン内ではパーティの距離制限が無いから自由に動いていいぞ。あ、でもまっすぐは行くな。王の間だからな」


「王が持ってたりしないの?」


「王の間は年中ゴブリンが遊んでるから確実に無い。ゴブリンは基本的に人間の真似事しかしない。ゴブリンキングなんて言うが、その日の気分で決まってるんだ。

王の間ではゴブリンキング役と臣下ゴブリン役がずっと寸劇してるぞ」


……なんか見てみたい気もするけど。後衛だからライズについていこう。

ムネミツさんとオオバさんはニワトリ君のところにつけた。


「さぁ行くぜ! この部屋は!」


ガチャリと建て付けの悪いドアを開ける。




「ちょっとアナタ! 埃が残ってるじゃナイ! 掃除も出来ないのカシラ!」

「喧しいぞアマ公ガ! アタシが惚れたのはアンタのムスコだヨ! シュウトメだからってなんでも従うとはおもわないでヨネ!」

「ナラバ剣にて語るとするカ。その鼻っ柱叩っ斬って干し柿と一緒に吊り下げてやるワ!」

「望むトコロだババア! この妖刀が生き血を欲しがってオルワ!」




「失礼しました」


ばたん。


「次行くか」


「説明しなさいよ」


なんか凄い辺な寸劇をみせられたんだけど。ゴブリン同士の。


「ああいうのがいない部屋を探すぞ。ちなみにリアクション取ると寸劇中でも攻撃してくるからちゃんとスルーしろよ」


めちゃくちゃツッコみたかったんだけど今の。

仕方ない、ちゃんとスルーしよう。


「次だ!」


ガチャリ。




「嗚呼我が愛しの灰被り(シンデレラ)。行きはカボチャの馬車だったのにどうして帰ってこれたのですカ」

「無論徒歩ニテ。継母姉君に鍛え抜かれタこの肉体。靴など履かせて貰えた日なぞありませヌ」

「嗚呼恐ろしイ。私は貴女の母に頼まれ遠くへ貴女を追放したというのニ。このまま先へは進ませられヌ」

「我は応えなくてハならなイ。継母が与えしこの試練ニ。

 衛兵も倒しタ。王子も倒しタ。最後の敵は貴様か魔女ヨ」

「笑止。闘争の果てに愛は無ク。貴女が力を追い求めても継母様は貴女を愛する事はアリマセン」

「構わヌ! 当に愛など捨てタ! 我が覇道を邪魔するのなラバ、残されしガラスの片靴のように粉々に踏みしめるノミヨ! キェェェーーーー!!!」




「物騒なシンデレラやめろ!」

「メアリー、やめろ!」


襲いかかるゴブリン達。

こんなの無理だって、ツッコまざるを得ないって!




──◇──


「じゃあ次開けるけど、ツッコむなよ」

「ええ任せなさい。あたしはクールな女よ」


ガチャ。




「ネェオニイサーン。ちょっと寄ってかナーイ?」

「俺は硬派なオトコ。貴様の様な淫売に興味はナイ。死臭がするゾ、悪鬼メ」

「ホゥ。我が変装を見破ったカ。褒めてやロウ。そしてここで財布を置いてイキナ!」

「何があって俺を狙ウ! 貴様の目的は何ダ!」

「フン。貴様には興味ないワ! 金だけ置いて去ネ!」

「俺がイケメンだからカ! 悪質なストーカーメ!」

「いやだかラ金! お金が欲しいノ!」

「目的はわからんガ、相手になるぞ悪鬼! キェェー!」

「お金が欲しいダケなのニ! クソゥ、親分ー! 助けテ下せェーーー!」


「我こそは赤き拳のシンデレラ。貴様が敵カ?」




「シンデレラが物盗りにまで堕ちてるーー!」

「メアリー!」


むりでした。




──◇──

〜当然、競争には負けました〜

今日のお昼ご飯:ハンバーガー&チュロス

──◇──




【第8階層ウィード:魔獣の爪痕】


気を取り直して次の階層。

普通の草原……だったみたいだけど、所々で大地に亀裂が入ったり、隆起したりして足場が不安定。


「この階層なテンペストクローが目覚めた際に真っ先に被害に遭う。故に傷が癒える事は無いそうだ」


ベルグリン……【草原の牙】は、この辺りを拠点としていたそうだ。テンペストクローが目覚めるような嵐の日に隠れられるスポットを幾つか用意しているらしい。


「オオバが加入した時も、ここで敵を撒いたのだったな。ここは我々の遊び場だ」


自信満々なベルグリン。流石に頼りになるわね。


「じゃあベルグリンなら知ってると思うが、ここでも魔物に狙われやすいスポットあるからそこ行こうか」


「普通は! そんな所真っ先に避けるだろう! 知っているが!」


ライズはノリノリでひょいひょい進んでるけど、真っ直ぐ歩くのも大変よココ。


全員で到着したのは、大きな穴?

底の方に魔物がいっぱいいるけど。


「高低差を悪用した天然の魔物罠だな。遠距離攻撃なら届くが、今回はこっちから落ちます」


なんて?


聞く前に飛び込むライズ。間髪入れずに飛び込むゴースト。

それを見て流れで飛び込むニワトリ君。を見て飛び込むベルグリン。

あ、これ降りる流れか。意を決してあたしも飛び降りる。


ゴーストが受け止めてくれたから無事に着地。周囲一帯魔物だらけね……。


「メアリー」


「なによライズ。どのくらい倒せばいいの?」


「いや、メアリー」


頭を掻くライズ。心底申し訳なさそうに。




「後衛は上にいて良かったんだぞ?」




報告・連絡・相談。大事。

あたしは深く心に刻むのであった。




──◇──




【第9階層ウィード:嵐王の寝床】


ちょっとトラブルもあったけど遂に到着、ウィード最終層!


第1階層みたいな穏やかな平原だけど……目を見張るのはやはり、これよね。

小高い丘を切り抜かれて作られた巣穴。高さ5mはあるかしら。

そこにぎっちり詰まって爆睡してる、因縁のバカ犬。


【テンペストクロー】LV200。


「こいつはまじで嵐の日以外は動かない。気にしないでいいからな。ほれほれ」


ライズはテンペストクローの鼻をぷにぷにと押す。鼻息で抵抗されてる。怖いもの知らずすぎるでしょ。


「やってくれたなバカ犬。今度はちゃんと倒し切ってやるから覚悟しろよー」


寝ているというか、動かないだけ? テンペストクローは無意識なのかいびきなのか、小さく唸って返事したように聞こえた。


「テンペストクローといえば……あの時に助太刀してもらった男はどうなったのであろうな」


ベルグリンがそういえば、と一言。

あたしは直接会ってないけど、チャットに名前が突然流れてきたから覚えてる。

サメゴリラってどういう名前よ。


「あいつは知らん間にいなくなってた。ブランに後で聞いたが、ちゃんと事情聴取は行ったらしいぞ。奴が誰なのかは俺にもわからん」


分かっている事は、レベル150だからトップランカーか最上位セカンドランカーであるという事くらい。なぜこんなに下の階層にいたのかは未だ謎だが……。




協議した結果、白昼夢という事になった。




──◇──




「各9階層目にはフロアボスが存在する。これを倒さない事には次の拠点階層には行けないって事だ」


あたし達の目の前には、大きな大きな──草葉で身を包んだアルマジロがいた。


──フロアボス【草原転球 ミノマジロ】LV21


「まぁソロでも倒せるからな。攻略判定が必要なメアリーとゴースト、ついでにナツちゃん、あとは前衛でニワトリ君でも必要か?」


まぁそうなるわよね。レンでも攻略できたって事だし、そんなに強くないかな。


とか思ってたら、奥の方から3匹くらい出てきた。


「おお4匹もいるのか。運がいいな。総員戦闘体制!」


ライズの号令で全員が武器を構える。

ミノマジロ達はその場で回転を始めた。


「連中の葉っぱは擬態した外皮だ。めちゃくちゃ硬いから回転中に攻撃しても無駄だ。【スイッチ】── 【煉獄の闔(ケイオス・エイギス)】!」


「俺もこればかりは大盾だな」


ライズとベルグリンが最前線に立ち、大盾二枚で壁を張る。

回転してきたミノマジロを2匹盾で受け、残る2匹はそのまま後へすっ飛んで行く。


「メアリー! 指示してみろ!」


突然のアドリブ! ……でもギルドマスターだからね。やったろうじゃん。


「ライズはそのまま後方の2匹! ベルグリンは連携の取りやすい【草原の牙】チームで固まって1匹! ゴーストはもう1匹を食い止めて!

 アイザックさんはライズ側の援護! こっから攻撃して足止めして、こっちに来るまでに時間差を作らせて分断!

ヒーラー陣はバフを優先して、大盾持ちのライズとベルグリンの後ろに立つように!

 ベルとムネミツさんは一箇所に! ここを拠点として動くわ!」


戦闘の定石は分断。4体を1体×4にする事が重要。

厄介なのはさっきの回転攻撃なので、同じ直線上に前後させる形で分断する! そうすれば大盾2枚で攻略できるからね。


正面奥へはミノマジロ1匹をゴーストで押し出す。

正面手前のミノマジロは【草原の牙】チームで。

後方手前はライズで。

後方奥はアイザックさんで対処する!


「丸まったら攻撃が通らないのよね。じゃあ炙るわよ! ナツちゃん、炎属性をアイザックさんに!」


ナツさんは手早い詠唱でアイザックさんにバフをかける。指示をするまでも無く、アイザックさんは矢を空に向け──


「──【アローレイン】!」


火の雨が後方へ降り注ぐ。

あたしも急いで、正面方向へ向き直る。


「【アイススパイク】!」


狙いはミノマジロではなく、そこ周囲。


地面を燃やす/凍らせる事で、丸まったミノマジロが防御体勢を崩す!


「今よ! 総員突撃ーー!」




号令とともに、全員が攻撃へ転ずる。


あっという間に全てのミノマジロのHPを削り切れた。


目の前にあった転移ゲートが光を放つ。どうやら合格っぽいわね。


「凄かったわねメアリーちゃん。指示が早いし的確。【蒼天(ウチ)】に来ない?」


「ごめんねアイザックさん。あたしはあたし達で天下取るから」


残念、と思ってもない事を言うアイザックさん。笑顔が美人ね。


「……さて、私達はここまでね」


ベルは既に帰り支度をしている。他のメンバーも頷いた。


「本来ならドーランに入ればアドレへワープできるのだが、俺たちは出禁なので徒歩で帰る。だが他の連中は別にいいのでは?」


「ベルグリン、貴方いま観察処分中よ。貴方を抑えるならレベル的に私も必要でしょ」


「【祝福の花束】もそういう名目だし、僕がいないとすぐ帰れませんからね。僕とナツも徒歩で帰ります」


なんだ。じゃあ本当にここでお別れなんだ。

……少し、寂しいな。


「メアリーちゃん。レンに会ったらよろしくね」


「本当に気をつけるのだぞ! 変な事して出禁になるなよ!」


「ヒャッハー! 今後の御健闘をお祈り申し上げます!」


口々に別れの言葉を言いながら、最後まで手を振って見送ってくれた。

優しい人たちだったな。


「色々あったが、ようやくスタートラインだ。気を引き締めて行くぞ」


ライズにそう言われて、苦笑。


確かに。ただアドレを出て9階層進むだけなのに、やれブックカバーさんと【決闘】するわ、【草原の牙】と【ギルド決闘】するわ、テンペストクローに襲われるわ……

随分寄り道するハメになったわね。


最後に。転移ゲートをくぐる直前に振り返って、笑顔で。




──「いってきます!」




〜ギルド占い〜

《寄稿:【パーティハウス】GM(ギルドマスター) マスカット》


皆さんこんにちわ!

第40階層にてギルド仲介ギルド【パーティハウス】を経営しています、マスカットです!


今や数多くの冒険者様が私共の所まで到達する事を目標として頂いていますようで、大変恐縮です!


今回はギルド占いと称しまして、皆様に合うギルドを紹介できたらなと思っております!

何らかの参考になりましたら幸いです!


《もしアナタが【マジシャン】なら……?》

→オススメは【象牙の塔】!

マジシャン系列の全てを網羅する魔術師の学舎にして、現在セカンドランカーとして前線攻略中、総合攻略ランキング4位! 鉄板中の鉄板ですね。

ギルド加入まで行かなくとも、知識は無償提供されています。色んな階層で講演会を行っていますので、気になったら是非。【マジシャン】ならマジで聞いて損することはありませんよ!


《もしアナタが【ローグ】なら……?》

→オススメは【飢餓の爪傭兵団】!

総合人数が文字通り桁違いなので忘れがちですが、【飢餓の爪傭兵団】はローグ系が中心となったギルドです。現在最強のローグ系はだいたいここに集まっていますからね。

ローグは耐久力に課題がありますから、仲間が多いに越した事はありません。裏切り御法度ですがね!


《もしアナタが【ウォリアー】なら……?》

→オススメは【真紅道(レッドロード)】!

王道の中の王道! 歩みが道となる私たちの【真紅道】!ランキングも堂々の同率1位!

罠も全て圧倒的な耐久力で踏み潰す、最前線のロードローラー!

威風堂々、絶対の力を見せつけてくれます! 最前線まで追いつくには相当な努力が必要ですが、優しくも厳しい先達があなたを全肯定! なんか変なゾーンに入っちゃいます!


《もしアナタが【ライダー】なら……?》

→オススメは【コントレイル】!

飛行部隊で結成されたほぼライダーのギルド【コントレイル】。加入条件は「空を飛べる事」!

その攻略速度は凄まじく、次代を担うギルドとなる事間違い無し!

培った飛行技術はトップランカーすら凌駕すると専らの噂です!


《もしアナタが【クリエイター】なら……?》

→オススメは【マッドハット】!

第30階層以降全ての拠点階層に店舗を広げている大商会【マッドハット】! ジョブとしてはクリエイター系です。

持てる技術、生み出せる資源を全てお金にできてしまう! 自給自足の極地へあなたもどうぞ!


勿論、今回ご紹介させて頂いたギルド以外にも紹介できるギルドは多数ございます!

お問い合わせは40階層まで各拠点に配属しています赤のピエロにお伺い下さい!



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