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BlueEarth 〜攻略=世界征服〜  作者: まとかな
天上雲海エンジュ/ヘヴン階層
202/507

202.不服なバトンタッチ

──◇──

"白天宝珠争奪戦"

宝珠獲得クエストの発行を賭けた勝負


【ルール】

・"ヘヴンズマキナ"が提示する複数の競技を攻略していく。

・【草の根】21名と【夜明けの月】12名は1人一つの参加権を所有し、参加権を消費する事で競技に参加できる。参加権は譲渡不可。

・敗北したチームは【草の根】なら7名、【夜明けの月】なら4名を指名して"戦闘不可状態"となる。"戦闘不可状態"となった人は参加権が取り上げられる。

・参加権全てを失うか、全員が"戦闘不可状態"となったギルドの敗北となる。

・競技の参加人数は、現在の所持参加権の多い方から提示する。最低人数は2人とする。


【草の根】参加者21人

"戦闘不可状態"7人

参加権所持14人


【夜明けの月】参加者12人

"戦闘不可状態"0人

参加権所持10人

──◇──




──────

第2競技"凧揚げ"

大量の凧形足場を上へ上へと登っていき、最上部へ到達した方の勝利

──────


メアリーとゴースト。またしても最小人数での参加だ。

だが第1競技の時とは訳が違う。あの時は1人で何人でも倒せる"最強"クローバーと、戦力として未知数だったスペードを消費させるための最小人数。

今回のルールの定石で言うなら、まぁ……少なくともジョージは参加させるべきだ。"ぷてら弐号"で勝ち確だし、本人の身体能力もある。それこそメアリーの参加権を消費させるならジョージ&メアリーがベターだろ。


「何を考えてんだよメアリー……」


「ほらしゃんとしなライズ。任されたんでしょ?」


「そうだよライズ君。がんばれがんばれ!」


ツバキとカズハに挟まれて励まされているが、不安は変わらない。


「ドロシー。助けてくれ」


「はい。メアリーさんは……とりあえず、負けるつもりは無いみたいです。勝てる気もしてないみたいですけれど」


「なんじゃそりゃ」


「遺言……ではないですけど。ライズさんは準備をして下さい。そこまで不安になる事ないですよ。僕達にとってはメアリーさんもライズさんも信頼できる司令官ですから」


優しい。俺の心読んだ上での発言だとわかっているけどめちゃくちゃ嬉しい。


「こんな子に気ぃ遣わせるんじゃないわよ。負けたらアンタのせいだよライズ?」


「いじめないでツバキ。俺泣いちゃう」




──◇──




──ステージの上。蛸の凧の上。


怖い。エンジュって下一面雲なんだけど。

【飢餓の爪傭兵団:エンジュ支部】のマーモットが言ってたけど、ヘヴン階層はここからどんどん下へ下へ行くらしいわ。海面まで。つまりこの下がちゃんとあるのよね。

落下しても途中でワープさせてくれるんだろうけどさぁ。怖いわよね。


「さぁやるわよゴースト。2人で遊ぶのなんて久しぶりじゃない?」


「answer:yes。どのようにして遊ぶべきでしょうか」


負けを想定しているものの、負けるつもりは毛頭ない。

あたしは水/氷属性を伸ばしているけれど……風属性複合の氷属性魔法【風花雪月】をメインウェポンにして長いから、風属性適正も結構伸びてる。こういう空中戦では馬鹿にならない──


「少々、この老骨と戯れませんか。メアリー様、ゴースト様」


上方から華麗な着地をしてきたのは、【草の根】のサブリーダー……ヒョウさん。

先手を打たれた。【聖騎士】……ナイト系列のジョブの定石といえばヘイトコントロール!

【草の根】開始地点とはめちゃくちゃ距離があるのに、一瞬で詰められた!


「──ゴースト! 先に行きなさい!」


「そうは行きません。【時計塔の(ディタイム)十二の束縛(・オブ・ベン)】」


ヒョウさんが懐中時計を開くと──空間が閉ざされる。

あたしとゴースト、ヒョウだけを残して……鎖が周囲を取り囲む。足元には大きな時計の紋様……?


「空間作用形のスキル?」


聞いた事はあるわ。【マッドハット】のセリアンが使う【金色(こんじき)舞踏会】を筆頭に、ごく僅かな冒険者にしか使えない空間作用形のジョブスキル。

でも、とても【聖騎士】のスキルには見えないわね。


「こちらはアイテムによる擬似空間作用スキルです。我々【草の根】が発見したクエスト報酬の一つですな。

相手は天下の【夜明けの月】のギルドマスター。出し惜しみはしませんとも」


油断も慢心も無いのね。勘弁してよ。

時計……からして、おそらく制限時間付きの拘束。ヒョウさんを倒せば解除されるわよ、ね?


「行くわよゴースト。ヒョウさんを倒すわ」


「consent:戦闘開始します」


やってやるわよ!




──◇──




『はい【草の根】の勝ちー』


うん。完全に上手だったな。見事な封殺だった。


「ぐげー。まさか最初の凧から動けもしないなんて」


メアリーとゴーストがとぼとぼ帰ってきた。

ううんありゃどうしようもない。


『さて、では【夜明けの月】は4名を"戦闘不可状態"に選んでね』


「勿論、参加権が無いクローバー、ジョーカー、ゴースト、そしてあたしよ」


マジなのか。

堂々と言うが、まだ信じられん。


「待ってくれメアリーさん! ギルドマスターが脱落するというのは……」


「ルール上特に問題は無いはずよスワン。【夜明けの月】の進行役はライズに一任するわ。

……ほら、早く連れてってよ」


『……構わないけども。一応確認するけれど、この《拠点防衛戦》が終わるまで私の腹に拘束されるんだけど大丈夫?』


「構わないわ。はよ」


ああもう覚悟ガンギマリのメアリーだ。どういう作戦なのかは……ドロシーから聞いたが、今後どうするかは完全にノープランなんだよな。


「んじゃ、後は任せたわ」


4人が閉じ込められた籠を"ヘヴンズマキナ"が吊り上げて、またも腹に格納。


「ううーん……とりあえず頑張るか。対レイドボスならクローバーが欲しかったんだけどなぁ」


「頑張りましょうライズさん。僕もサポートします」


ドロシー優しい助かる。

……さて、どうなるか。




──◇──

"白天宝珠争奪戦"


【草の根】参加者21人

"戦闘不可状態"7人

参加権所持10人


【夜明けの月】参加者12人

"戦闘不可状態"4人

参加権所持8人

──◇──




──side.【草の根】


「戻りましてございます」


「お帰りヒョウ爺。華麗な勝利だったよ」


「いえいえそんなそんな」


謙遜こそすれ、ヒョウ爺の俊敏さは【草の根】随一だ。同じスピードタイプのゴーストを抑えられたのは大きい。

……しかし、【夜明けの月】はまた奇抜な事をする。まさかのリーダーが脱落とは。


「気になりますか?」


「──あぁいや、気になるといえばそうだけど……私達は勝つだけだ。戦力的にも"ヘヴンズマキナ"と戦うなら我々が勝つべきだし」


「ははは。勝ちの目があるのなら【夜明けの月】に譲っても良い、と?」


むぅ。ヒョウ爺の悪いところが出ている。

これでいて意地悪なんだ。あくまで優しさから出るものだけれど。


「まさか。私は【草の根】探索部隊総隊長スワンだ。【セカンド連合】の一員でもある。

当然宝珠は手に入れる。──()()ね」


覚悟を口に出させる。

ヒョウ爺が教えてくれた、緊張を解くルーティン。


「……無理はなさらず。我々は貴女に付き従うのみです」


「わかっている。わかっているよヒョウ爺」


実績。

結果を出さなければ。

全てを納得させるほどの完璧な結果を。

探索が徒労に終わらせないために。

我々の努力が報われるように。

【セカンド連合】に与してまでしたのだから。


……まだメアリーさんと戦う方がマシだったよ。

ここにきて、貴方が相手だなんて。




──◇──




──side.【夜明けの月】


例えば。

この後2回勝てばこの"白天宝珠争奪戦"自体には勝利できる。

そしてそのまま宝珠獲得クエストに挑戦する。つまりは"ヘヴンズマキナ"への挑戦。

もし2勝のうち一度負けたなら、挑戦できるのは4人。一度も負けないのなら今の8人。

リスクを考えると、"ヘヴンズマキナ"に挑戦する最小人数の4人は参加させたくないな。

残存メンバーで最高火力はカズハとドロシー。ミカンとリンリンの防御性能は……レイドボス相手には微妙か? 少人数に加えて火力不足すぎる。

だとすると純ヒーラーのアイコの方が適正か……?

あぁでも俺が残らないといけないか。流石に連続でリーダー代打はダメだろ。少数先鋭理論なら役割の広い俺に強みが出るか。


ここまでの競技の傾向からしてフィジカル有利だ。ジョージは競技側に参加させたいな。となるとツバキをこの辺りで消費して……。


「次のルール説明が始まりますよライズさん」


「おっとそうか。了解」


独楽遊び、凧揚げ。暴力解決でいいならそれがいいんだが、さっきみたいな未知のアイテムも警戒しなくてはいけないな。


『では、第3競技は──"神経衰弱"といこうか』


中央に現れたのは──霧で見えないが、またしても雲のステージ。

神経衰弱というと、随分暴力の介入が難しそうだが。


『ルールは……戦闘者自体の能力を分散させてカード化する。10組20枚が両陣営で合計40枚。これで君達の代表者が神経衰弱をする。

戦闘者はこの霧の中で戦闘をするが、自分のカードが当たらなくては能力が戻らない。どうだろう?』


「代表者1と戦闘者1で最低人数2人って事でいいのか? その場合は10setに力が分散されるのなら参加者の能力は10分の1になるのか?」


『そうだね。戦闘者が2人ならば5set×2。一組につき20%の能力回復だ』


……なるほど。ここまで【夜明けの月】が最小人数ばかり投げてきたからテコ入れしてきたのか?

人数が多ければ多いほど得をするタイプか。これが最初に来てくれたら良かったんだが。


「その"能力"の基準はどういうものなのかな?」


『単純に発生ダメージの割合としようか。全員最初は0%からスタートだ。勿論私の作り出したこのステージには外的要因となる障害物は無いし、場外負けも無い。

戦闘者が片陣営のみになるか、神経衰弱が終わるかのどちらかで競技は終了となる。どうかな?』


……神経衰弱。神経衰弱か。

記憶ゲーならメアリーいれば秒殺じゃねーか。


『あと、神経衰弱中は代表者もお互いに顔が見えないようにするよ。カードの位置は見えるから安心してね』


げ。露骨にドロシーとツバキをメタられたな。

致し方なし。このまま続行だ。


「ルールはそれでいい。参加者を選定する」


『わかった。5分後に再確認するよ』


"ヘヴンズマキナ"から許しを得たところで、【夜明けの月】全員を確認する。


「代表者……神経衰弱をする奴なんだが、どうする?」


「マスターがいればなぁ。だがドロシーの"理解"は最悪見えなくても通用するよな?」


「"理解"できた相手ならば、はい。ですが恐らく今回は……僕の知らない人が出てくると思います」


ドロシーの"理解癖"はまだ知られていない筈だが……まぁめちゃくちゃ察しのいい子だってあたりには思われているだろう。そもそもクリックで一度共闘している手前、身内読みは避けたいよな。


「……よし、こうしよう」


吉と出るか凶と出るか。とはいえ、ほぼ消去法だが。


〜【NewWorld】開発陣〜

《"LostDate.ラブリ"のログより抽出》


【NewWorld】開発チーム。

天知調と7人の協力者。

輝かしい過去の"監獄"。


・小峠ヨネ

後に【飢餓の爪傭兵団】副団長アピーとなるおばあちゃん。現実時代は肉体年齢50代くらい。

大天才にして親友のひ孫である天知調に安全な隠れ家を提供する大地主。開発陣営のコネ担当。

協力の理由は新しい地球である【NewWorld】の地主になるため。という名目ではあるが、実際は親友のひ孫を見守るため。根は光のおばあちゃん。フミヱとは対極。


・霧切うらら

【Blueearth】では暗殺者ツララ。現実でも暗殺者。

殺すことでしか自らを安心させる事が出来ない。【NewWorld】開発チーム内ではフィジカル最強なので、肉体データの提供と実演試運転担当。

基本的には【NewWorld】開発陣営に良く懐いた大型犬。殺しばかりの人生で唯一の安息地であり、平穏を乱すような者は許さない。


・アルス・グッドマン

月面飛行(ムーンサルト)】ナイスとして活動中の、筋肉博士。生体研究が専門分野。肉体データの設定担当。

筋肉自慢のムキムキマッチョマン。警備員よりパワーのある研究者。7児のパパさんで、うららの世話をよくしていた。チームのまとめ役。


那桐(なとう)傘座(さんざ)

のちの"焔鬼大王"。システムエンジニア。あまりにもメンバーの担当が尖りすぎていたので、【NewWorld】内部データはほぼ天知調と傘座が手掛けた。

自信家で横暴な態度から会社を追放されたが、実力は折り紙つき。なのだが、天知調と働くようになってからはプライドをズタズタにされて結構温和になった。

黒木翔の親友。同年代の男性だしな……。


・黒木翔

【ダーククラウド】ハヤテとして活動中。

色々あって流れ着いた警備員……に見せかけた雑用。そして天知調の相手をする係。

あまりに普通の男ではあったが、変人ばかりの開発陣からすると希少な常識人で重宝した。

【NewWorld】完成の際に1人だけデータが損傷し帰還に失敗するが、他6人がノータイムで生命維持対処をした事も、その後彼を助けるために【Blueearth】開発を始めた事も、彼の人徳の成せる業である。

変人キラーなのか?


・月浦美都

【Blueearth】ではシステムに介入し、最も根幹部であるアドレのシステム維持を担当した。

小柄な女性で、天知調と同年代。

ちなみにシステム側担当に立候補したのは、重度のケモナーであり変身願望があったから。今の体のままでしか参加できないとか苦痛すぎる。

記憶こそ無いが、【Blueearth】のアドレにてもっふもふの巨大兎獣人となって人生を謳歌している。姿が変わりすぎているのでハヤテもツララも気付いていない。


・鳳凰院ソニア

現在セカンドランカーの1人。

【NewWorld】開発陣営の財源担当。鳳凰院財閥の隠し子ながら、その愛嬌と謀略と暴力で正式に財閥を乗っ取ったパワフルお嬢様。当時まだ二十歳だった。

色々と濃い人生を歩んできたので心の底から人間が嫌いで、財閥の乗っ取り後は世界を滅ぼそうと画策する。

財閥のコネで天知調と知り合い、腐敗した世界を浄化する装置を依頼。流石にそんなものは作って貰えなかったが、自分より遥かに生き辛そうで、それでも人間を恨まない天知調に感化されて協力を申し入れる。

月浦と特に仲が良い。というか勝手にお姉様呼びして慕っている。

なお、うららには財閥時代に二度暗殺されかかっている。


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