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BlueEarth 〜攻略=世界征服〜  作者: まとかな
煉獄都市ヒガル/ヘル階層
192/507

192.長所は叩いて延ばすべし

【第60階層 荒廃都市バロウズ】


【朝露連合】バロウズモール

モニュメントタワー"ユグドラツリー"


──"【セカンド連合】追放戦"から1ヶ月。


少し来ないうちにあの荒廃したバロウズがセレブタウンになっていた。

ドーランの大樹をモチーフにしたタワーの最上階から、灰色の世界を一望できる。

俺達【夜明けの月】はベルに呼ばれて【満月】【バレルロード】と一緒に集められた訳だが……。


「【需傭協会(Weak.enD)】を吸収した事でバロウズはドーラン以来の完全支配に成功した階層になったわ。よってここを【満月】の階層攻略拠点とした。

【夜明けの月】も少しは使っていいわよ」


……えらい事してんなぁ。

ベルに力を渡すと碌なことにならないな。


「……ライズの提案した"焔鬼大王"式レベリング。【満月】と【バレルロード】も相乗りさせてもらう。礼としてここを使ってもいいわ。

【ダーククラウド】と秘密の会議をする場所、欲しいんでしょ? 私にはよくわからないけど……ここなら【首無し】でさえ盗聴できないわよ」


「いや礼にしちゃ凄すぎるが。ここまでしろとは言ってないぞ」


「でもアンタが使えって言ったのよ、お金。これだけデカい事したんだから相当使ったけど、いいの?」


「あぁそっちは構わないんだが……」


「いや構いなさいよ流石に」


記憶持ちとしての会議にしても打倒【セカンド連合】の会議にしても、安全圏を確保できるってのは強い。

本当に助かるが……恐ろしい事に、それだけじゃないんだよな。ベルの手土産は。


「レベル130まで辿り着いたとて、相手はレベル150。しかも宝珠争奪戦の都合上、先制して自分だけレベル上限を解放する事はできない。この1ヶ月で既に3つ【セカンド連合】が見つけてるからね。

つまり正攻法でレベル差20を埋めないといけない。ここまではOK?」


「そうなるわね。……冷静に考えると、レベル差20まで追い付いたとも取れるわね。ブックカバーさんとかと真っ当に戦えるくらいの強さになるのよね」


「それでも差はデカいぞ。そこを補うのが──」


「──武器強化。ライズが考えた下剋上戦術。馬鹿みたいに強化した武器なら火力だけは補えるけど……素材と金と、技術者が課題になるわ」


ここがネックだった。ベルに投資してきたのはこの辺が狙いだったりする。


「サブジョブ【鍛治師】じゃ強化成功率にも限度があるわ。例えば【朧朔夜】なんて+30超えたあたりから成功率10%切ってるし」


「……えぇ……ライズよぉ、【朧朔夜】って今どんだけ強化されてんだ」


「サティス戦からも定期的に強化してっからな。なんと+130だ」


「僕とドーランで戦った時は+128だったよね!? 2しか上がってないじゃないか」


「もう成功率1%切ってるからな。【朧朔夜】の素材だけは諸事情で無限にあるからずっとやってるが、いい加減限度があると思っていたんだ」


……あれ。みんなドン引き。なにゆえ。げせぬ。


「……とにかく。第3職【ブラックスミス】になれば確率の壁も大きく突破できるわ。問題はフリーの【ブラックスミス】が全然いない事。【需傭協会(Weak.enD)】でさえメインジョブが【鍛治師】系列は極端に少なかったみたいね」


「そうですね。カヴォスちゃんの部下はそもそも数が少なかったです。そこらで買えたり拾えたりする武器にそこまで関心を持つ変人は少ないですから」


「変人呼ばわりは失礼ですね、ミカンちゃん。ぷんぷん」


自動ドアが開き現れるは──色々と見覚えのある連中。


「【需傭協会(Weak.enD)】ギルドマスターベラ=BOX、及び元配下【ブラックスミス】2名。ベルさんと専属契約を結びました。以後よろしく。ふんす」


「ルガンダの鍛治ギルド【架け橋】から【朝露連合】へ友好派遣する【ブラックスミス】2人を見送りに来た

【金の斧】のナメローです。お久しぶり」


「【朝露連合】の【珊瑚商】ハゼの親方率いる【ブラックスミス】部隊5名! ここに参加奉りますぜ!」


なんと驚き、【ブラックスミス】10人とナメロー。

こんなに【ブラックスミス】を抱えてるギルドなんてないだろ。圧巻だな。


「どうもメアリーさん。()()()()()()()()手を取らせてもらいます」


「あの時は失礼を働いて申し訳なかったわ。改めて対等に握手をさせてもらいます」


「パパー! どうしてバロウズに?」


「ははは。パパ呼びやめなさいアゲハちゃん。見送りですよ見送り。

アイアン8君が立派にリーダー張れるようになってきたから任せてきた。レベルがあるに越した事はないからね。明日には帰るが、定期的に様子見に来るよ」


メアリーと握手しつつ、アゲハとただならぬ雰囲気を醸し出すナメロー。尊敬する先輩から発される突然のスキャンダル臭にジョージが愕然としている。


「で、ハゼだが……どうした?」


【珊瑚商】傘下の影に隠れてわなわな震えている人間ドワーフ、ハゼ。

これまでもクローバー用の大量の弾丸を強化してもらったりと色々貢献してもらっていたが、どうにも様子がおかしい。


「………………もう我慢ならぬ! 武器を、何でもいいから武器を打たせてくれ!」


発狂。鍛治バカとは聞いたがこれほどまでとは。

……ハゼが配置されていたのは20階層(ルガンダ)。ここまで40階層は攻略しないといけないよな。


「ちなみにこの強行軍はいつから?」


「ライズが【需傭協会(Weak.enD)】を手に入れたって言ったあたりからね。大体一月半くらい前からかしら。途中からは【需傭協会(Weak.enD)】に戦闘補助として合流してもらったからそれなりに早く着いたわね」


「それなり!!!??? ここ1ヶ月は寝る間も無くレベル上げと攻略だったのだぞ! 鍛治、鍛治をせねば!

槌は魔物ではなく武器を叩くためのものなのだぞ!」


うん。違います。


想像だにしない強行軍だった。流石優しさをドブに流した女、ベル。

ハゼは狂乱のままエレベーターへと駆け込んだ。バロウズに設置した鍛冶場の場所はわかるだろうし、そこ以外行く訳がないから放置するが。


「私を含めた【ブラックスミス】10人体制で全ての武器をガチガチに強化するわ。素材についても一通り揃えてある。任せなさい」


「頼りになるなベル。大盤振る舞いすぎないか?」


「まーね。鍛治だけじゃないわ。ここまでの階層の【朝露連合】及び協力者から有志を募って合計40人。このバロウズで商売をしていくわ。ケツモチは【ダーククラウド】と【夜明けの月】と【バレルロード】なんだから、全員ナメられるような攻略はするんじゃないわよ」


おおっと知らないぞソレ。いいけどさ。


「このバロウズは謂わば【夜明けの月】の前線基地よ。欲しいものは全部【満月】と【朝露連合】が揃えてあげる。だから【セカンド連合】を蹴散らしなさい。ムカつくのよあいつら」


「ははは……僕達【満月】/【朝露連合】の目的である【マッドハット】が相手だからね。必然的にライズ達に手を貸さなくちゃいけなくなるって訳だよ。

決っっっしてベルがライズを気に入ってるわけではないから勘違いしないように」


「嫉妬か? お前が見捨てていた頃のベルと一年近く同居していた俺に嫉妬か?」


──《冒険者サティスに"敵対行動ペナルティ"を科します。24時間、この階層からの転移を禁じます》──


「言葉より先に()が出てるっスよサティスさん! 抑えて抑えて! どうせ恋愛経験の無いライズさんの僻みっスよ!」


「レン君言葉の切れ味上がった? サティスの一撃より痛かったんだけど」


「何してんのよおばか」


ベルからのデコピンで許されるサティス。身体も心も瀕死の俺。これが……格差か。


「自業自得じゃない?」




──◇──




"バロウズモール"裏

"超最強鍛治神殿"


「ひょほほほほーーーー!!!!!!鍛治場じゃ鍛冶場じゃーーーー!!!!!!」


妖怪ドワーフ人間、鍛冶場に出没。


面白そうなので【ブラックスミス】軍団を連れて外に出てみると、そこには円形に並ぶ鍛冶場。すげぇ効率しか考えてねぇ。野晒し!


「まだ素材が届いてないから出来ないわよ。

……そういう訳で10人がかりで片っ端から鍛えていくわ。だから()()()()()()()()


ベルの言うのは……第79階層の話か。


「……第79階層フロアボス"羅生門"。強さどうこうではなくて、一月に一度しか挑めないという性質がヘル階層を最初の関門と呼ばせた所以なのです。

ギルド単位ではなく、挑戦したチーム単位で決まるので……【夜明けの月】か、【満月】【バレルロード】連盟のどちらかしか通れないのです」


「挑めない方は1ヶ月待ち……ね。一度通っておけば戻るのは容易いから、いつ攻略を再会するにしても"羅生門"の撃破自体はしておきたいけど……」


「エンジュに辿り着いた瞬間、出待ちされるわよ。そもヒガルから出た時点で【セカンド連合】に情報が回るわ。私達は狙われてはないから、先遣隊としてエンジュに【朝露連合】派出所を設営する。そこをセーフティエリアとして乗り継いで行くのが安牌じゃない?」


ベルの提案は手堅く反論の余地もない。

ヒガルは大鐘楼、バロウズはユグドラツリー。今の所はセーフティエリアがあるからいいが、拠点階層でさえ安全とは言い切れないのが現状だ。


「エンジュに控えている【首無し】のマンソンジュは表向きにはアクアラの協力者よ。【セカンド連合】に連盟してるギルドには加入してはいないから私達と敵対する事は出来ない。まずはそこを頼って店を開くわ。

レベル上げは一度115で止めて、エンジュから出戻ってきてからヒガルで130にするわ。そして今度は【夜明けの月】がエンジュに行くまでエンジュに戻らない。どうせレベル130になってる事はエンジュに到着したら【セカンド連合】にバレるでしょ?」


「行き届いた配慮助かるな。【バレルロード】はそれでいいのか?」


「一切異論ないわ。セカンド階層からは横の繋がりが重要になるけど、【セカンド連合】の存在がそれを許さない。なら貴方達に乗るわ。励みなさい」


ふんぞり返るスカーレット姫。まぁ【バレルロード】の目的は【真紅道(レッドロード)】との合流だろうから、道中の面倒な【セカンド連合】を処理できる方に付くのも納得だ。


「……おいハゼ? 何してるんだ」


「何って灰をかき集めておる。素材さえあれば鍛治はできるからな」


もう何でもいいのかお前は。




──◇──




──数日後。79階層にて"羅生門"が撃破される。

【満月】【バレルロード】連盟が【第80階層 天上雲海エンジュ】に到達。

しかしここでアカツキ痛恨のミス。【ダーククラウド】に追い抜かれて半狂乱となっていたため、【夜明けの月】ではないベル達のマークも勧誘も取り下げてしまう。

ベルはこれをチャンスと見て【飢餓の爪傭兵団:エンジュ支部】と取引。【セカンド連合】に追いやられつつあった【飢餓の爪傭兵団:エンジュ支部】に資金と物資を援助する事で事実上の支配を成し遂げる。

その後【マッドハット】によって固められた商業ラインを強奪し、エンジュを事実上支配する。

──この間僅か3日である。




「アカツキ。エンジュが盗られました。【夜明けの月】待ち伏せ作戦は難しいですね。責任とってその席私に譲って下さい」


「なぁんでぇ?」

〜心温まる旅路〜


オレ様は【至高帝国】のハートである。

先日惜しくも【ダーククラウド】に敗北し、ギルドが解散。残された我々は各々が好きにする事となった。

クローバーは今の仲間……【夜明けの月】に帰った。あの時"テンペストクロー"と戦った若造のギルドとは数奇なものだ。

ダイヤは暫くは立ち直れぬ。拠点階層各所にセーフティハウスを買っていたのが功を奏して、今はあちこち転々としながら休んでおる。強い女だ。うまいもんでも喰えば立ち直ろう。


さて、オレ様はどうしたものか。いややりたい事は決まっているが、やはりこの外見よな。

セカンド以下には顔も姿も知られておらなんだが、知ってる者が俺サマを見れば一目でバレてしまうだろう。ここは変装が必要だ。


……とりあえず、服を着てみた。シックなワインレッドのスーツだ。うむうむダンディだ。

そしてゴリラの被り物。これで完璧である。




──◇──




【第0階層 城下町アドレ】


曰く【開拓祭】という冒険者向けの祭りがあったとか。街は未だ活気溢れている。後の祭りとは言うが、派手な祭りであるほど熱気は冷め止まんものだ。


ううむ、昼飯はどうすべきか。目下やりたい事と言えば食べ歩きだが、今はアドレもクリックもアクアラもミラクリースも落ち着いたものである。祭特有の屋台とか巡りたかったのだが。


む。鼻腔をくすぐるスパイシーなこの香り。

この辺りは表通り。飲食店はそう近くない筈であるが……。


……ここは、確か【祝福の花束】。

冒険者支援のギルドであった筈。身内でパーティでもしているのか? だとすれば残念だったが……。

いや、看板が出ておるな。レストラン【祝福の花束】……?


ええい物は試しだ。もう入ってしまえ。




──◇──




「いらっしゃいませ!!!!!!」


筋骨隆々な漢共が出迎える。

ふむ。善いな。


「一名様いらっしゃいましたヒャッハァ!」


「こちらの席にどうぞ〜」


流れるような案内とメニュー提供。慣れておる。

メニューは……ドラドの"イートミート"の様な肉料理がメインであるが、あらゆるジャンルを網羅しているな。アドレは多種族国家であるからの配慮か。


「オススメは」


「お客様ならこの"ワイルドグレッグスペシャルコース"がオススメですヒャッハァ。分厚いステーキにペッパーとスパイスを振りかけた病みつきの一品。辛さの調整は10段階から選べます」


このモヒカンのウェイターは中々デキるな。接客は食の基本である。


「ではそのコースを。大盛りで」


「ご注文頂きましたッハァ! こちらサービスのスープです。お待ちの間ご堪能下さい」


うむうむ。善い。コーンスープであろうか、メインに舌を控えさせるためかそこまで濃い味ではなくするする飲める。猫舌のスペードにも優しい温度だ。

既に味によってはリピートしたいとすら思っている。

アドレにもセーフティハウスはあったな。今度ダイヤを連れてくるか。……奴はサラダを愛する野兎であったな。


先程のウェイターは行ってしまった。そこな大男のウェイターに聞いてみるか。


「もし。追加でサラダを頼みたいのだが」


「はい喜んでェ。………………アンタ、前会ったよな。"テンペストクロー"戦の時」


「む? ……おお、よく気付いた。如何にも。久しいないい筋肉をしていた男。ガッツもあった」


そういえばあの時のメンバーがちらほら。というか先程のモヒカン君も見た気がする。

しかしオレ様の完璧な変装を見抜くとはな。


「……んな被り物している奴は他に見た事無いのでな。被り物してたら食べられぬだろう」


「いや、口が開く。ほら」


「ゴリラが大口開けてるの怖いな」


チワワが大口開けるよりはマシである。




──◇──

レビュー:レストラン【祝福の花束】

肉料理の味も勿論のこと、行き届いたサービスと接客、効率的な配膳など接客技術に目を見張るものがあった。

これでいて飲食店経営はここ最近始めたというのだから驚きだ。

お通しのスープや、サイドメニューのサラダなども満足感のある出来栄えとなっている。

全てのメニューは辛さや量などが細かに調整できるため、どのような客層も足を運びやすいだろう。フレンドリーな店員もグッドだ。

アドレに来るのなら一度は行くべきだ。少なくともオレ様は行く事にする。

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