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BlueEarth 〜攻略=世界征服〜  作者: まとかな
城下町アドレ/ウィード階層
19/507

19.ライズ式デスマーチ

【第0階層 アドレ城下町】

──アドレ王宮 スレーティーの寝室




「なんであたし達を閉じ込めたの?」




スレーティーさんも、知ってたみたい。いや、察してた?

驚いてはないけど、だとしたら度胸も覚悟も凄いわね。


「そもそも、スレーティーさんはなんで直々に来たの? お姉ちゃんならあたしを特別扱いするって思われてたから?

スレーティーさんを餌に釣りでもしてた……なんて、言わないでよ」


お姉ちゃんに敵はない。

唯一の敵がいるとしたら、やっぱりお姉ちゃん自身だ。

外から見た【Blueearth】も【NewWorld】も、完璧すぎてハッキングにはかなりの時間が必要だった。

──もしバグが僅かでもあればそこから入ったと思う。でも、外側は本当に完璧だった。

だから、バグがあるとしたらゲームの内側だとは思ってる。


「お姉ちゃんはずっとバグと戦ってるんじゃない? お姉ちゃんによって発生したバグなんてとんでもない化け物でしょ。知能がある可能性すら否定できないわ。

……お姉ちゃん、答えて。スレーティーさんを駒扱いしてないって、答えてよ」


お姉ちゃんはただ黙って聞いていたけど、遂に──ぽろぽろと、涙をながす。


「お、お姉ちゃん!?」


『ふふふ……真理恵ちゃ、ん、そのとおり……です。私は最悪の、悪魔。部下の一人も守れないぃぃ〜うぇぇぇぇ』


めちゃくちゃ泣いてる!

これは流石にシロでしょ。あんまり疑ってなかったけどさ!

泣き止んでー! 可愛い妹だぞー。




──◇──




『さて。真理恵ちゃんの信じる通り、お姉ちゃんは無実です。スレーティーを派遣したのは、私と強く繋がっているため真理恵ちゃんの有志をより近くで鮮明に記録するためです』


泣き止んだと思ったら淡々ととんでも無い事言ってる。


『【ギルド決闘】が終わった直後、バグにより天候が書き換えられ始めました。この階層にバグの発生源があるとしたら、スレーティーがこちらに帰る際に進入してくる可能性がありました。なので急いで第6階層そのものを【Blueearth】から切り離したんです。転移できなかったのはその為ね』


力技すぎる。そういう大胆な無茶するからバグるのよ。


『これでバグの発生源を閉じ込める事に成功したので、私はずっとバグと戦っていました。テンペストクローのせいで全滅寸前になっているという情報だけは、バグ側から情報操作されており受信できずにいました。真理恵ちゃんが教えてくれなかったら、ライズさん達はみんな死んでたかもね』


「あたしはバカ犬を消すためにテクスチャを書き換えたけど──」


『その段階で第6階層を元の位置に戻す必要がありました。バグ側が重複した天気を利用して()6()()()()3()()()()()()()()()ので、ちゃんと元の階層間の隙間に詰めて増える余地を無くしたの』


なんか凄い事言ってる。

でも、お姉ちゃんの強みが出てる。

お姉ちゃんがどんな分野でも大天才であるのは、ひとえにこの勘の強さにあるのよ。

「物事のコツの掴み方」を熟知していると言えばいいのか、とにかく何事も「言語化できないけどなんとなくわかる」感じらしい。

そういうふわっとしたものだから、天知調に教えを乞うような愚か者はいないのだ。無理なもんは無理、でおしまい。


『でも元の階層に繋げちゃったから逃げられる可能性はあったのよね。だからブランを投入して見つけ次第力技で排除する方針にしたの。実際大ダメージ与えたみたいだけど、逃げられちゃった。

おかげでバグの攻撃を受け続けたスレーティーを安心して引き取れたからいいけどね』


……多分、バグ側も逃げられるワンチャンに賭けてスレーティーさんを攻撃してたんだろうな。

瀕死のスレーティーさん、でも無闇に持ち帰ったらバグが本拠地に侵攻するかもしれない。短期決戦で殺すなり逃すなりしないと! ってことね。


『そういうわけで、これが全容。わかってくれた?』


「あたしがその椅子に座った後もお仕事は残ってそうだなーって思ったわ」


おそらく知能を持った、お姉ちゃんレベルのバグ。

今後そんな奴の相手をしなくちゃならないってワケね。


「んじゃお姉ちゃんはもういいわ。目的通りスレーティーさんの看護してあげるわね」


『私もそっち行きたい〜』


「マスターはまだ後処理が終わってませんよね? さあメアリーちゃん、ベッドにどうぞ。私が眠るまで添い寝して下さい」


『あー! あー! いーいーなー!』


完全に上司をからかってるスレーティーさん。

添い寝を断る理由なんてないし、あたしも全力で乗っかる。

あっ良い匂い。




──◇──

《宿、どうするよ》




時刻は18:00。


ゴーストから連絡が入った。二人は【アルカトラズ】に匿われる事になった。


……じゃあ俺はどこで泊まればいいのか。

そんなもん簡単だ。やる事もあるしな。

持つべきは友だよなー。




──◇──




雑貨屋【すずらん】


「武器修理するから鍛冶場に暫く住ませてくれ」


「気絶させるまで丸一日鍛治しまくってた様なアホの言うことを誰が聞くと? 商売舐めんな」


厳しいロリ店長、ベル。

でもアドレだとここくらいしか設備が整ってないからなあ。


「仕方ない。格は落ちるがログハウスの鍛冶場を使うか……」


「あほ。とまれ」


トゲつきそろばんで頭を刺される。いやなんでトゲがついてんだよ。


「だ・か・ら! 倒れるまで鍛治するアホが! 単独で鍛治するなって言ってるのよっ! 2時間毎に休憩する事、私の監視下で1日3食摂る事、1日6時間以上の睡眠を摂ること!」


「ごめんなさいお母さん」


「アンタみたいなデカいガキを持った覚えはないよっ!」


「セリフがオカンなんよ」




──◇──

《精神集中。そして親フラ》




──鍛治場にて、武器と向き合う。


今回問題になったのは、何と言っても準備不足だ。

俺が武器を狂ったように強化し始めたはサブジョブが【鍛治師】になってからだが、攻略を辞めた一年前から過激化した。

階層攻略を再開するにあたり、本気用の装備は一通り一つずつで充分とか考えてた。

あの頃より武器火力は大幅に上がってる。レベル差も上限がある以上はやがて追いつく。そんな事を考えていた。


……甘かったな。俺が第6階層ですべきだったのは、ベルグリンとゴーストとサメゴリラに真っ先に武器を提供する事だった。

あらゆる武器を最高の状態にして、尽きない量を常に持ち歩く。移動武器庫であれ。それが俺に求められるべき役割だった。


……あの後ログハウスに戻り、封印された俺の部屋を開けてきた。まだ未強化ながら質のいい武器も素材も眠っているハズだ。

そして、ずっと使わずに温存していたとっておきを解禁。お気に入りの武器達がこんだけバキバキ壊れまくった後だったものだからテンペストクロー戦では呼び出せなかったが、今後はちゃんと使うべき時に使おう。

とっておきとは言うが、ややトラウマでもある。あの日【決闘】で使って負けた武器だしな……。


とにかく、徹底的にだ。

武器を修繕する。武器を修繕する。ひたすら修繕する。


封魔匣の鍵(パンドラ・カリギラス)】。

最後の一発に大幅に補正がかかる片手銃。だが武器切り替え戦術においてはこれ一本じゃ対応仕切れない。

地底の祭りの優勝景品で手に入れた双頭の銃【双頭の狂犬(オルトロス)】を強化して使おう。こっちは速射性に優れるから瞬時の切り替えには向いているし、両手持ち──2丁拳銃も可能になるな。

2丁拳銃といえば【Blueearth】最強の男。【至高帝国】の銃使い。その力は秘匿されているが、裏ルートなら情報も流れてるだろ。デュークに聞くか。


煉獄の闔(ケイオス・エイギス)】。

光と闇を兼ね備えた両手盾。そもそも両手盾は種類が少ないからこれ一つを徹底的に強化していたが、今回これが破壊された事が戦線崩壊のきっかけになった。下位互換で構わないから両手盾を確保しておくべきだ。

これは先の階層の方がいい。ウワサの【第110階層 不夜摩天ミッドウェイ】のオークションでいいのが売ってないか、デュークに探してもらうか。


簒奪者の愛(ゲットバッカ―)】。

盗みを極めた者の前にのみ現れる盗賊王から盗み取った短剣。スキル【窃盗】の最高確率を大幅に上がるが、その入手条件から入手できる頃にはもう不要になっているというやや残念な装備。素材狩りによく使っているが、よくよく見ると基礎性能がめちゃくちゃ高い。これも強化して実戦で使えるようにしよう。

というか俺は片手剣と短剣と双剣を一緒くたにしすぎだ。もう少し器用に使いこなしたい。短剣使い……確か【飢餓の爪傭兵団】のトップが短剣使いだったハズ。……デュークに調べてもらうか。


壊嵐の螺旋槍(タービュランス)】。

風属性の槍。出の速い【スターレイン・スラスト】で距離を詰めるか離すかぐらいしか使ってない。【Blueearth】には槍使いが少ないから参考にできる人を探したいな……デュークに依頼するか。


……ほぼデューク頼りだな。まぁいいや。


さて、続き続き。時間はいくらあっても足りない──


「晩御飯の時間よ。10秒以内に席につかないとアンタの分はそこの石炭になるわ。じゅーうー……」


「ごめんなさいお母さん今行きます」


「お母さんちゃうわ。手ェ洗ってきな」


おかんなんよ。




──◇──

《合流》




数日後、噴水広場にて。


「【夜明けの月】久しぶりに集合ぅー」


「おおー」「consent」


メアリーとゴーストと合流。ギルドハウスは無いので青空会議室だ。


噴水の縁に座り、買っておいた鯛焼きを2人に渡す。


「第6階層の交通規制も解除されたし、俺たちも自由の身だ。いつでも攻略を再開できる。

……せっかくだから、本来の予定を繰り上げてアレをやる事にする」


何とは言われてなくとも、嫌な顔をするメアリー。

察しが良くて良い子だ。


「そう。Bランク以上の冒険者パーティ10名による、王国クエストと階層攻略の同時進行だ。即ち《ライズ()式デスマーチ》だな。

本来は第10階層(ドーラン)から始める予定だったが、協力者が揃いそうだからここでやっちまおう。楽な今のうちに慣れた方がいいぞ」


今回は本当にお試し版だ。やるやらないはメアリーの裁量でいいが……。


「……合理的ね。断る理由がないわ。不服だけど」


賢い娘だなぁ。

まぁ実際はクエスト攻略特化の《ライズ()式レベリング》と比べたら楽な方だ。クエストは程々にしないと全然進まなくなっちゃうからな。


「では我らがギルドマスターの許諾も取れましたので、みなさんどうぞー」


「いるんかい! ってか今から行くの?」


「おう。それ朝飯な」


実はそこに控えていました。

出てきたのはベルグリンと、元【草原の牙】の部下2人。シスターのオオバと、バーサーカーのニワトリ。

泊まるついでに多額で雇った移動手段のベル、《お礼》権消化のためにアイザック。

ベルグリン組の監視の為に【祝福の花束】から2人。シスターに昇格したナツと、アドレ最優の飼育員ことライダーのムネミツ。


「あれ、確かBランク以上のギルド所属じゃないと出来ないのよね? 攻略中に王国クエストを受注できないから」


「我々元【草原の牙】は現在【祝福の花束】であるからな。ギルド解散して得したやもしれぬ」


「【蒼天】も先日やっとBランクに昇格したわ。【夜明けの月】はあっという間にやったけど、本当に大変なんだからねBランクって」


「ベルは?」


「手形自体はギルドじゃなくても保有できるのよ。ギルドじゃないけど店舗経営でもランクはあって、私の雑貨屋【すずらん】はギルドで言うBランク相当って訳。

 そもそもこのランク分け自体、アドレ王国への冒険者の貢献度って分類だから。店舗もギルドもあんま変わらないわよ」


そう。Bランク相当でドーランまでの数日間一緒に付き合ってくれるそこそこの冒険者を7人というのは、出発時点では厳しかった。

ここでベルグリン達、ウィード階層に慣れている連中を纏めて引き込めるのは嬉しい誤算だった。一応【祝福の花束】預かりの観察処分的な扱いなので、殆どを【祝福の花束】待機で実質人質に取って、その監視にグレッグやモーリンを配置して……という処置。だから3人しか引き出せなかったんだよな。


「メンバーに回復薬が乏しいからオオバさん、個人的に話が通じやすいからニワトリ君を要望した」


「はいよっ、オオバです。色々と便宜を図って頂いたようで、本当にありがとうね。精一杯お手伝いさせてもらうよ!」


快活な女傑、《草原の牙》の姉御肌オオバさん。ヒーラー・ガール系第2職【シスター】のサポート要因。バカ犬戦ではそのバフがベルグリンの命を何度救った事か。


「ニワトリです。宜しくお願いしますヒャッハー!」


片手剣二刀流を目指す赤いモヒカンのニワトリ君。言動からは読み取りにくいが、かなり賢く、要領がいい。

前衛を厚く配置したかったから丁度よかった。


「で、【花束】からは回復要因としてナツと、移動手段としてMr.動物園に来て頂いた」


「宜しくお願いします……!」


「その呼び名は恥ずかしいよ。張り切らせてもらいますけどね。ムネミツです。どうぞよろしく」


緑のツナギの朗らかな男ムネミツ。このアドレにおいて彼ほど魔物を手懐けた【ライダー】はいない。グレッグの愛馬《鳴神(ナルカミ)》の世話もしているらしいが、グレッグ以外にそうそう懐かない《鳴神》を知っていると衝撃である。


「じゃ、この10人でドーランまで、クエストをこなしながらバシバシ進んで行くぞ。デスマーチ開始だ!」




──────────

パーティ 10/10 ▼[レベル順]

【スイッチ:  ライズ:115】

【リベンジ: ゴースト: 99】

【アーチャ:アイザック: 36】

【鍛治師 :   ベル: 34】

【バーサー:ベルグリン: 30】

【バーサー: ニワトリ: 26】

【マジシャ: メアリー: 25】

【シスター:  オオバ: 25】

【ライダー: ムネミツ: 24】

【シスター:   ナツ: 20】

──────────


〜アビリティとスキル〜

《寄稿:【スケアクロウ】ギルドマスター イミタシオ》


【井戸端報道】さんには毎度お世話になっていますので、前線攻略中ですがお手紙にて寄稿致します。

現在前線にてセカンドランカーとして攻略させて頂いております【スケアクロウ】がギルドマスター、イミタシオと申します。今回は先方のギルドマスター、バロン様より依頼頂き寄稿させて頂く運びとなりました。


本稿では初歩的ですが重要で奥深い、「スキル」と「アビリティ」について解説致します。


・両者の違い

まず最初に完結に説明致します。

スキルは「発動する」特殊な技、

アビリティは「発動し続けている」特殊な技。

端的に申し上げましたら、そうなります。


・アビリティ

スロットに装備されている限り発動し続ける常在能力です。レベルで解放されるスロットに自由に設定できるものを一般的にはアビリティと呼びますが、「呪い」や装備に付随する特殊効果など、スロットとは別枠で強制的に装着されてしまうものもアビリティの一種です。

例えばローグ系第3職【リベンジャー】にはアビリティ【自傷】とアビリティ【反骨】のどちらかを必ず選択しなくてはなりませんが、代わりにスロットを圧迫しない別枠としてカウントされます。【リベンジャー】から転職すると枠ごとアビリティが消えます。

例えばマジシャン系第3職【大賢者】は昇格時にアビリティ【魔術の真髄】を獲得できます。こちらは普通のアビリティスロットに当てはまるタイプのものです。このアビリティはジョブ経験値を貯めれば真に習得でき、他のジョブに転職しても引き継ぐ事ができます。

大抵は、自分自身が手に入れたアビリティはカスタムが可能、武器やジョブに依存するアビリティはカスタムが不可能、と覚えるといいでしょう。


・スキル

MPなどを消費して発動する能力です。魔法は全てこれに当たりますね。

こちらにはスロットもありませんので、使えるスキルは何でも使えます。

しかし多くのスキルが発動条件を持っています。特定のジョブ、武器種を装備するものが1番多い条件ですね。

例えば【パワーショット】は銃・弓・槍でしか使えない、【ウォークライ】はウォリアー系第2職【ナイト】とその派生のジョブでしか使えない、といった感じですね。

スキルは熟練度が上がれば進化しますが、その際に独自の方向へ進化する事もあります。

例えば【パワーショット】は銃も弓も槍も使えますが、槍専用の【スターレイン・スラスト】、弓専用の【ピアッシングアロー】、両手銃専用の【デッドリーショット】へと派生し、片手銃には派生しません。

現在は多くの冒険者によって派生図が確立されていますので、自身が使用する武器やジョブに合わせたスキルを狙うと良いでしょう。



以上、アビリティとスキルの差異についてでした。

【スケアクロウ】はセカンドランカー以上のなかで攻略に詰まった冒険者や、事情がありギルドを解散してしまった冒険者達の寄せ集めギルドです。

もしセカンドランクの厳しい世界に耐えられなくなった人がいましたら、お声掛け頂きたい。我々で宜しければ、是非とも御協力させて頂きます。



せめて貴方の傷が癒えるまででも。矢面に立つ案山子より。

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