188."あの日"から"今日"へ
【第70階層 煉獄都市ヒガル】
──隠れ料亭【六文銭】
【飢餓の爪傭兵団】【真紅道】【至高帝国】トップランカーの会談。
……珍入者もいたが、無事に会談は終了。
場所が【セカンド連合】にバレていた事もあり早めに撤収。
「……スペードよォ。この後飯行こうぜ。今日は気分が乗った」
「俺も相席していいかウルフ。偶にはリーダー同時仲良くしたいものだよ」
「構わねぇ。どうだスペード?」
珍しい事もあるものだ。
最前線が停滞して久しい。かつての殺し合いを思い出せないフレンドリーさ。
「凄く嬉しいお誘いだけど、遠慮するよ。先約があるから」
「……そうかよ。じゃあなスペード」
「後で来てくれてもいいんだよ。絶対来てくれ」
はは。まるで今生の別れだ。
気を遣って退席してもらったんだ。もう【六文銭】には僕とダイヤとハートしかいない。
……いや、あと1人。
「早かったね、クローバー」
「おう。改めて、久しぶりだな」
僕の親友。僕の切り札。
ようやく全員揃ったのだから、ちゃんとお話しないとね。
「クローバー。ダイヤ。ハート。聞いてほしい事がある」
これで最後だから。
僕の自己満足に付き合うのは。
──◇──
──大鐘楼中庭
「じゃ、あたし達は宿に帰るわ。加入したくなったら手土産持ってきてよね」
「僕達は外で待ってます。どちらにせよ、さっさと終わらせて下さいね」
メアリー達【夜明けの月】も、エリバ達【ダーククラウド】も平気な顔して俺たちを置いていく。
ジョージでさえ、惜しそうにしていたもののツバキを置いて行った。
ここには俺とハヤテ、ツバキ。あとは"焔鬼大王"が残った。
──かつての時と同じように。
「……ボコボコにされてたけど、大丈夫なの?」
「【決闘】だからな。ステータスは元通りだ。それで……ここでいいのか?」
「いいじゃないの風情があって。あの時なんてただの路地裏だったじゃないのよ」
「今回は見送りたい。というか知らん間に別れやがって。もう許さんからな」
【三日月】解散の時は、本当に突然だった。
焔鬼もそりゃあ驚いただろうな。【三日月】はヒガルで"焔鬼大王"にめちゃくちゃ世話になった。主に俺が。
「……ねぇライズ。もしもこの戦いが終わったら……」
「【ダーククラウド】に入るのも悪くない。お前に負けて、ツバキと一緒にそっちに行って。また【三日月】で冒険できる。最高だな」
一年半前、【三日月】が解散前からずっと夢見てきた。あの日の続きを、三人で。
でも、そこまでの過程を無視する事はできなくて。
俺はメアリーとゴーストと出会い、【夜明けの月】を立ち上げた。
いつでも抜けられるようにしていたのは、俺が不要だと思っていたのは、こういう時のためだ。
そしてメアリーは俺をクビにした。全部俺の理想通りなんだ。
「でも、ダメだ。可愛い連中が俺を待ってるんだよ。俺も……あいつらの事、大好きだしな」
「……実はボクも、似たような事考えてたよ。共に歩むには一年半は長すぎたね」
「お友達いっぱいでいいわねぇあんた達。あたしはずっと独りだったんだけど?」
「本当にごめん。どっちが勝つにせよ、もう独りにはさせないよ」
うん。一番の被害者はツバキだよな。本当にごめん。
なのにアクアラの時といい、お願いは聞いてくれるんだから本当に優しいよな。
……18歳、なんだよな。メアリーと同い年。事実って残酷だ。
「いやぁー……衝撃の事実だよな。未成年だとは。色気がこう……凄い。だってミカンが肉体年齢22なんだぞ」
「ミカンさんは例外枠だよ。ドロシー君と並べるくらいの小ささなんだから」
「エリバも18だよな?」
「エリバとツバキが仲良し同学年……なんか凄いクラスだね」
「いつまでお喋りしてんのよ」
ごめんなさい。
いやーダメだな。どうしても話題が逸れる。
「どーせ覚悟なんて決まらないんだから。サクッとやっちゃいなさいよ」
それもそうだ。
ツバキも焔鬼も呆れている。
──あの日。
「お前は誰かを殺しに行くと言った」
「【Blueearth】じゃ暗殺くらい少なく無かったし、死んでも生き返る。そこまで反発されるとは思ってなかったよ」
「俺もそう思う。だけど──お前の顔が、苦しそうだった。ただ暗殺ギルドの真似事じゃないって感じた。
今ならなんとなくわかるけどな。優しすぎだ」
「……そうか。じゃあ、始めようか」
暗黒剣【ラグナロク】に、継続回復付きの盾【ブラッドガード】。
いつもの鎧は外している──軽装なのは、速度重視か。1対1なら味方を守る必要も無い。
ジョブは相変わらず【ダークロード】。性格に反して禍々しいんだよな、チョイスが。
HPとMPの吸収を得意とする、対個人戦において強力な削り役。比較的タンク寄りの前衛アタッカー。
「決着は付けないとな。【スイッチ】── 【月詠神樂】【封魔匣の鍵】」
片手剣と片手銃。距離不問の構え。
あの時俺は負けたが──今回は更に勝ち目が薄い。レベル150になってるからなハヤテ。
「では──始めぃ!」
「【ゴシックバイス】!」
焔鬼の轟に始まる【決闘】。
先手はハヤテ。MP吸収の霊魂を飛ばしながらも接近する。
──近距離武器種にとっては、どうやって接近するかが問題となる。ハヤテはこの飛び道具を陽動に使う訳だ。
狙うは【封魔匣の鍵】。霊魂は8つ、残弾数は10発。
オートターゲットでは間に合わないが──銃の使い方はジョージに教わり、銃の戦い方はクローバーに教わった。全部マニュアルで撃ち落とせる!
……一発外した。運が良い!
「喰らえハヤテ!」
【封魔匣の鍵】は、最後の一発に補正が乗る──!
だが残弾数まで管理していたか、ハヤテが構えたのは盾ではなく剣。
「喰らうか!【アビスチャージ】!」
闇を纏った突進スキル。補正あっても通常攻撃じゃ止まらないか。
スキル後の硬直が短く、通常攻撃に移行しやすい【アビスチャージ】だ。受ければそのまま殺される。
「【スイッチ】── 【ミラーガード】」
呼び出すは鏡の盾。
【アビスチャージ】を受けて──粉々に割れる。
驚いているハヤテだが、そのまま攻撃の手を止めない。ハヤテは【ラグナロク】を、俺は同時に呼び出した短剣【簒奪者の愛】をぶつけ合う。
「…… 【煉獄の闔】じゃないのかい!」
「ついさっき武器弾きの相手と当たったからな。対策だ。弾かれる前に壊れればいい」
片手剣の相手を短剣で、というのは難しい。だが再度【スイッチ】を発動するまでの1秒を稼ぐだけなら十分だ。
"窃盗"バフが付与されている【簒奪者の愛】と殴り合いたい相手はいないからな。ハヤテは再び距離を取ろうと半歩引くが──
「──【バックナイフ】!」
「あぶなっ!」
ローグ系のお家芸。短剣の投擲スキル。
しかも性質はそのまま。【ブラッドガード】の"窃盗"に成功するも【簒奪者の愛】を手放しているので、ただハヤテの手から弾かれる。擬似武器弾きだ。
「【スイッチ】── 【天国送り】」
「【ブラックアウト】!」
距離を活かすなら両手銃。だが即応で黒い霧に隠れられた。
この霧、ハヤテ以外のHPとMPを削ってくるんだよな。すごい嫌。だから入らない。
「吹き飛ばすか。【エアブラスター】」
風属性範囲攻撃スキル。前方への爆烈扇風機。
霧を物理的に晴らすと──ハヤテが飛び出してきた。
「【スイッチ】── 【月詠神樂】【雪月花】!」
即応。
ハヤテも武器を切り替えたな。右の【ラグナロク】はそのまま──左に白の剣を持っている。片手剣二刀流か。知らないぞそんなの。
片手剣二刀流同士なら、全体的に使いこなせる俺の方が上……のはず。
剣閃、剣戟鳴り止まず。
四刀の打ち合いが止まらない。
止めたら殺される。スキルを挟む隙をくれ!
「お前引けよ! 相打ち同士だとダメージゼロだろ!」
「やだね! 中距離遠距離になるとキミの方が有利になっちゃうだろ!」
【ダークロード】は対個人戦では相手を削りながら戦えて、対多人数戦ではタンクになれる二種の役割のエキスパート。
対して【スイッチヒッター】はあらゆる距離や状況に応じて戦えるが……一点に集中した場合はエキスパートには練度で勝てない。もしこっちの土俵で戦うとしたら、距離も武器も一々変えながら戦う変則戦闘だ。そこを理解してるからこその軽装接近戦。
俺の行動を理解しているから近距離二刀流で多数を俺に合わせて、全ての攻撃を相打ちにする。一見何も変わらないように見えるが──【ダーククラウド】のアビリティ"インビジブル・メア"がそれを許さない。
自身の周囲に常に、HPとMPを吸収し続けるデバフ空間を展開している。吸収は超低倍率だが、近距離戦闘ができる距離で最高倍率3秒あたり最大HPMP値の1%の割合固定吸収。1分も続ければ20%もってかれる。
しかももし相打ちができず直撃すれば普通に死ぬ。ってか高速連撃で一手ミスったらそのまま全弾ヒットやむなし。
だから、覚悟してミスるしかない。
右。左。右。──左をあえて受ける!
「えっ、ちょ」
「【スイッチ】──【灰は灰に】!」
次の右に合わせて煙袋の槌。煙幕を展開しつつ、足を浮かせてハヤテに俺を弾き飛ばしてもらう。後方退避成功!
「──【アビスチャージ】!」
「嘘だろおい!」
ノータイムでの突進。煙幕でターゲットは外れてるから、手動で当てに来たか!
まだ【スイッチ】は使えない──【灰は灰に】を盾にして受けるしかない!
再度展開される煙幕でハヤテは見えないだろうが、【灰は灰に】も破壊された。緊急回避はもうできないな。
──【スイッチヒッター】は【スイッチ】のクールタイム1秒を全力で確保する戦いになる。だからこそハヤテは超近距離高速戦闘なんだろうが、ちょっと相性悪すぎるぞ!
「──【スイッチ】──【壊嵐の螺旋槍】」
「……【ゴシックバイス】!」
自動追尾の霊魂なら煙幕貫通だが、MPを削るだけだ。
押し通る!
「【スターレイン・スラスト】!」
「【アビスチャージ】!」
星の光と影の闇。
衝突する二つの突進スキル。
【ゴシックバイス】は……言っただけかよ!見えないからってわざと隙を作りやがったな。
──相殺。ハヤテの独壇場、完全近距離。
「おかえり」
「嫌だぁー……」
マズい。非常にマズい。
ここでもう使う事になるなんてな──。
ポケットから取り出したるは、どんぐり。
ぽいっと下に落とす。投げる余裕は無い。
「お土産だ」
「……げっ!」
目視で確認して、そんで即応して逃げるハヤテ。
俺をよく知る相手にこそ通じる奇策だったんだがな。
──【朝露連合】新作、"どんぐり爆弾"が炸裂する。
ダメージはほぼ皆無。だが強烈なノックバック!
立て直しだ。ダメージは今の所許容範囲。まだやれる。
「……粘るね、ライズ」
「まぁな。この日のために色々準備してきたからな」
「ボクもだよ。そろそろ倒せると思ってたけどね」
「ぬかせ」
もう手の内半分くらい出してるっての。
ハヤテは油断も慢心もしてくれないからな。もうちょっと俺の事を安く見積もってくれよ。
白と黒の剣を構えて、ハヤテが飛んで来る。
また【月詠神樂】と【雪月花】で応じる。
剣と剣がぶつかり合って、隙を見て【煉獄の闔】で受けて属性吸収回復。攻撃を一手だけ受ければ【スイッチ】する余裕はある。
武器と武器がぶつかる度に、ふと思い返す。
喧嘩や訓練、手合わせ稽古。ハヤテと戦う事は多かったが、本気で殺すために下準備をした事は無かったなぁ。
それこそかつての【三日月】解散戦でさえ、突発的なものだったから準備はできてなかった。
──【宙より深き蒼】破損。
──【壊嵐の螺旋槍】破損。
【朧朔夜】を警戒して武器弾きを狙うハヤテ。
武器の換装に注意を逸らしてアイテムを使う俺。
防御を捨てて俺の最高速に合わせるハヤテ。
壊れやすい盾を用意する俺。
お互い。勝つために本気だ。
例え負けても悔いが残らないだろう。
というか負ける。レベル差相性差、色々あるだろう。
奥の手の出番のようだ。
「面白いなぁハヤテ!」
「何が、かな?」
──【煉獄の闔】破損。
闇属性吸収を利用した擬似回復ができなくなった。
「喧嘩なんてした事あったか?」
「散々しただろう! もう【三日月】を忘れたのか?」
──【雪月花】破損。
二刀流を剣一本で受けなくてはならなくなった。
当然受け切れない。HPがひたすらに削れていく。
「そうじゃない。【Blueearth】よりも──前の話だ!」
──【月詠神樂】破損。
「俺たちは喧嘩一つしなかっただろう──兄貴!」
「なっ──」
「隙アリぃ!」
「ぐげっ」
隠せてたと思っていたのか。驚いて固まったところを蹴りで吹き飛ばす。奥の手が決まった。
そりゃそうか。だって性別から違うもんな。
──たかがそれだけの事で兄貴の事を見間違えるかって話だ。馬鹿め。
「【スイッチ】──【朧朔夜】」
「もう七つか。受けるしかないね」
ハヤテは白の剣を投げ捨て、【ラグナロク】を両手で持ち直す。
──そういや兄貴は一時期剣道部だったな。途中で辞めたが。
──弌ツ。己が命を闘争に奪われる事。
【ラグナロク】専用スキル【アポカリプス】。
成功すれば必滅の、10割固定ダメージ。
──ハヤテの廻りに黒雲が立ち篭める。
──弐ツ。七の同胞を失っている事。
「軌道は読めてる。当たりはするよ。後は成功するかどうかだ」
失敗したとしても今の俺を削り切る事は容易い。
だからこそ、対策はしてきた。
──参ツ。その一振りのみに全てを捧げる事。
「──【アポカリプス】!」
黒雷がハヤテから天へと伸び、巨大な一刀となる。
俺は──既に一歩踏み出した。
「【朧朔夜】──」
それは過去を灼き焦がす焔。忘讐の太刀。
月も霞む程の陰炎がその刀身を覆い隠す。
炎と怨に蝕まれた妖刀の、閃光の如き抜刀術。
──前傾の侍は、抜刀を前に大地を踏み込む。
黒雲雷雨を断ち斬らんとする意思が、その脚を前へと進めた。
「──【焔鬼一閃】!」
──永き妄執の後悔が、黒雲を斬り晴らす。
〜朧月夜1〜
──過去
大鐘楼"焔鬼大王"執務室
アクラに案内されて通されるはツバキ。
普通はリスポーンするか不法侵入でしか来られないのだが、ライズの事が気になっていた"焔鬼大王"は特例で通した。
……事にした。割と勝手にアクラが絆されて通してしまったとも言える。
「そうかい。顔を出さねぇと思ったら……帰ったのか、ライズ」
「ええ。ライズはもう先に進めないって。ハヤテは新しい仲間と一緒に先へ。明後日には79階層に到達するんじゃないかしら」
なんだよ。別れの挨拶も無しか。
……ハヤテ。実のところは俺の同僚、黒木翔。
【Blueearth】突入後に【NewWorld】から救出できたのは天知調から聞いた。自我持って【Blueearth】にいるメンバーは少ねぇからな。ちゃんと報告を聞いてやらにゃ天知調が浮かばれん。
……データの破損が激しいからって性別まで変わるかよ、と思ったが。本人は気にしてなさそうだからよしとする。
ともかく、あの翔が本来の目的を果たすために集めたメンバーが【三日月】だってんなら……ここで解散しちゃマズイんじゃねぇのか?
とか。色々と考える事はあるが……。
ツバキを独りにするのはダメだろ。馬鹿兄弟がよォ。
「ツバキはアレか? 降りないのか?」
「ライズにしてもハヤテにしても、どっちかに付いたらもう片方が可哀想よ。あたしはヒガルに根を下ろす事にしたわ」
「そうかい。じゃあ店を構えな。場所とかは俺が融通効かせてやる。だが無職を置くほどヒガルは優しくねぇ」
「優しいのね。感謝するわ寛大な王」
「ふは。ライズの言う通り、話を聞かんなぁお前は」
どうせ俺ぁヒガルから出られない。
なら……まぁ、見守るくらいはしてやる。同僚と親友の忘れ物だ。
「そうねぇ……酒場でも開こうかしら。あたしの経験が活かせるなんてそのくらいしかないし」
……天知調からデータをもらっている。
ツバキ──谷川瞳。なんと18。
【Blueearth】ではアルコールやニコチン・タール等の依存性がかなり下げられている。というか別の弱い快楽物質に変換される。表向きには世界の【TOINDO】でお出しするゲームだから規制も厳しいってもんだ。
とはいえ。とはいえ未成年に飲酒はさせられねぇ。だって俺だけモラルが現実のままだ。気分が良くない。
「昔通りってのも色々思い出しちまうんじゃないか? 思い切って別の事してみろよ」
「それもそうねぇ。でも忘れるために停滞する訳じゃないから」
ううーんこれ無理だ。【三日月】は揃いも揃って頑固者ばっかりだからな。
よし、舵を切ろう。船を変えられないならせめて安全な方向へ。
「あー……アレだ。ほら。男衆から貢がれてんだろ。ライズの倉庫無しにゃ抱えきれねぇ。切り売りして雑貨屋にでもしたらどうだ。夜はBAR。雰囲気出ねぇか?」
「へぇ……いいわね。元よりあたしへのプレゼントは実用品ばかりだし。使い切らない分を捨てるくらいなら売っちゃう、と」
「店員も必要だろ。女手一つじゃ回るもんも回らねぇ。うちのタイガーベアと"赤鬼"衆を貸してやる」
「あらいいの? タイガーベアさんってヒガル四天王じゃない」
「いいんだよ。おいタイガ! こっち来い」
「へい兄御」
"青鬼"序列三位。折れ角の虎ジャングラサン。見た目で圧かけるならこいつが適任だ。背丈も比較的"青鬼"では小さい方で2m程度。護衛にゃピッタリだ。
「お前、このお嬢さんの護衛をして差し上げろ。ヘマこいたら殺す」
「へい。【六万銭】で働いてたお嬢でやすね。宜しくお願いしやす」
「あらあら。優しいのね」
──こうして雑貨屋【黒髑髏】は開店した。
ライズとハヤテに守られていたツバキを狙う輩が出ると踏んでいたが、ツバキ持ち前の人心掌握術により片っ端から籠絡。なんならトップランカーまで堕とし、有力者権力者同士で不可侵条約が勝手に締結されて結果的に守られる形にすらなった。
タイガーベアは雑貨屋側の経営を中心に手伝う事となり、いつのまにかグラサンは三角から四角になったし虎ジャンは黒スーツになった。黒服じゃねーか。




