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BlueEarth 〜攻略=世界征服〜  作者: まとかな
荒廃都市バロウズ/ロスト階層
174/507

174.灰色の世界に別れを告げて

────────────

ギルド名:【夜明けの月】

ギルドランク:A

ギルドマスター:メアリー

サブマスター:ライズ

ギルドメンバー:10名


メアリー LV100【エリアルーラー】/【ハイサモナー】

ライズ  LV115【スイッチヒッター】/【鍛治師】

ゴースト LV100【リベンジャー】/【シスター】

アイコ  LV100【仙人】/【ナイト】

ドロシー LV100【サテライトガンナー】/【エンチャンター】

ジョージ LV100【ビーストテイマー】/【建築士(ビルダー)

クローバーLV150【ラピッドシューター】/【エンチャンター】

リンリン LV128【フォートレス】/【シスター】

ミカン  LV128【キャッスルビルダー】/【ライダー】

カズハ  LV138【サムライ】


────────────




【第61階層ロスト:鈍色平原】


「……あれ、カズハのサブジョブが表示されないんだけど。バグ?」


「いや、普通にサブジョブ無しってだけだ。珍しいが有り得なくはない」


平原を"ぷてら弐号"で駆け抜ける。

レベルが充分でこれ以上上がらないのでわざわざ倒す理由が無い。ギミックの無い階層は空路でスキップだ。

雑魚はクローバーが撃ち落としてくれるし。

現実問題、魔物の最高レベルが105に達するロスト階層では【夜明けの月】は火力不足だ。雑魚を瞬殺して先に進むというのも困難。火力としては俺でさえ苦戦する。

その点では広範囲の高火力アタッカーであるカズハの参入が助かる。単体特化のクローバーと器用貧乏の俺じゃ複数体相手は厳しいからな。


「サブジョブってのぁあくまで選択肢だぜマスター。ゴーストみてぇに物理職が魔法職をサブに付けて魔法火力を上げる事はできるが、物理職の物理火力上限がサブジョブで上がる事は無い。実際ライズだって戦闘においては【スイッチヒッター】一本でサブジョブの活用なんてしてねぇだろ」


「特にジョブに困ってない人がとりあえず設定するのが【鍛治師】【ライダー】あたりです。その辺がいらないならサブジョブをわざわざ設定しないのもアリはアリです」


「……でもやらない得ってのはないのよね? やっぱ思う所がある感じかしら。ライズ殴る?」


なんでだよ。

サブジョブ見つけたのが俺だからか。カズハになら殴られてもいいけどさ。


「ちがうの。ホーリーとね、話したのよ。もしもう一つジョブを選べるなら【ヒーラー】にするって。でもホーリーがいるから必要無いねって。それでまぁ……いっか、ってなったの。

もう今更よね。70階層(ヒガル)に着いたら適当に設定してくるわ」


「そのままでいいわ」


「えっ。でもメアリーちゃん」


「そのままで行きましょう。決定。ギルド決定よ」


全員異議無し。即決である。


「あらあら……ありがとうね、みんな」


……俺もホーリー殴りたくなってきたな。

ちゃんとカズハを幸せにしてくれ外道。




──◇──




log.

ロスト階層攻略記録


【第62階層ロスト:セラドンの森】

特定のゴブリンの巣の中に転移ゲートがあり、それを探すために陸路を探索しなくてはならない。そして巣の位置もゴブリンの位置もランダムなので、ゴブリン捜索競争が勃発。

ミカンの即席展望台からドロシーがゴブリンを補足すると、マスターの【チェンジ】を駆使して包囲。

しかし歴戦の逃げゴブリン王である"はぐれゴブリン"は華麗なステップとスウェイにより包囲を突破し逃亡。

マスターの【チェンジ】を掻い潜り、森の視界の悪さを利用しドロシーの目を抜け出し、無事に巣へ到達。

"はぐれゴブリン"の逃げた方向と巣の候補地から位置を特定したライズ・カズハペアによって粉砕されました。


【第63階層ロスト:白銀の檻】

到着早々に巨大魔物の群と遭遇。

ロスト階層名物"自重しない初見殺しシリーズ"とのこと。

"ロスト・サイクロプス"や"アッシュデーモン"などの大型魔物が暴れる大自然の闘技場。攻略条件は巨大魔物の複数撃破だそうです。しかも判定はギルド単体ではなく個人単位。

対単体最強のクローバーは一抜け。攻略に難儀する事が予想されたリンリンとミカンは他のメンバーの補助をしつつ折を見てカウンターを入れて二抜け三抜け。

後衛職のマスターとドロシーが無事通過できた段階でライズとカズハも抜けました。

私とジョージとアイコで競争しましたが、僅差で私が最下位でした。

悔しい。私のターゲットをジョージに取られたのが敗因です。罰ゲームとしてお昼ご飯の当番になりました。ジョージの量だけ少し多めにしました。


【第64階層ロスト:鉛の艦隊】

空中ステージ。空飛ぶ飛行機の機械生物"ステルサー"を乗り継いで進む階層……ですが、"ぷてら弐号"でショートカット。特記なし。


【第65階層ロスト:薄鼠の河】

船守の魔物"カロン"の船を乗り継ぐ大河ステージ。"ぷてら弐号"でショートカット。特記なし。


【第66階層ロスト:つるばみの大穴】

巨大な大空洞を落下するステージ。"ぷてら弐号"でショートカット。特記なし。




「"ぷてら弐号"ズルじゃない?」


「普通はどれも撃ち落とされて終わりなんだがな。魔物としての格が高くて雑魚からの攻撃を受けにくいのと、キャミィ仕込みの操舵テクニックがあるから突破できてるんだ」


「屋台車のコネクト部を改良したので多少の旋回じゃブレませんです。せっかくミカンさんが改造しようとしたのに殆どイジれなかったですけど。ジョージさんなんでこんな完成度高いもの作れたんです?」


「本職に褒められて嬉しい限りだが、そこまで大した話ではないよ。運転の荒い先輩の戦闘機に乗せられた事があって……」


「やはり警察じゃないのでは?」




【第67階層ロスト:トープタウンの夢】

恒例の古代文明廃墟ステージ。攻略条件は10種のカードキーの入手。

"機穿蟲ミドルレンジワーム"の地中からの奇襲を潜り抜け、遠距離から狙撃してくる"マシンアーミー"を撃破しながらカードキーの入手をしなくてはならない。

……が、カードキーは被弾即破壊という脆さ。

「クソゲーすぎない?」

「はぐれゴブリンもそうだが昔より厳しくなってるんだよな。学習してるのかね」

「そりゃずっと冒険者にボコボコにされ続けるのはたまったもんじゃないわよね……」


【第68階層ロスト:タワー・オブ・グレー】

塔を登るだけ。

しかし登る側から階段が崩れるのでタイムアタック。

「……現実だったらあたしここでリタイアだわ」

「多分アイコとかジョージくらいしか通れないだろ。馬鹿すぎるだろこの階段」

「一番ヤバいのは鎧装備のリンリンちゃんです。というか【Blueearth】は本当に精神的疲労しか無いですね」

「こうやって話しながら階段走るの、普通無理よねー」

「できるが?」「できますが?」

「フィジカルお化けは2段飛ばしで登るのやめなさい。早すぎ」




──◇──




【第69階層ロスト:灰の崩城】


──────

かつて機械文明に対抗した王国があった。

高度な文明こそ持たなかったが、統率力と魔法により機械文明を退け、緑豊かな土地を独占した。

だが、敵は機械文明ではなかった。

今や色は失われ、灰色の世界に古城が一つ。

玉座に座る者はもう永くおらず。

王は今も、復讐に燃える。

──────


立派な城。

その頂上にいるは──黄金の炎纏った白い竜。


「あれが我の半身──"エルダー・ワン"である」


目覚めたカズハの"エルダー・ワン"がわざわざ見上げて解説してくれた。


「【Blueearth】の"エルダー・ワン"は気紛れにバロウズを滅ぼし、自らに挑むアザルゴン王を暇潰しの道具としている。

【NewWorld】の我はそれを飽いておったが……そもそも別物であるのだ。奴の趣味を否定する理由はない」


分離した二体の"エルダー・ワン"。向こうもこちらの"エルダー・ワン"に気付いてはいるが、動く様子は無い。


「今回は通してくれるそうだ。我もまた我を気遣ったおる。あやつはあやつでいい奴なのだ」


「【Blueearth】史上最悪のレイドボスだがな。所業が。

まぁ()()()()()()()()()()()助かるけどさ」


ロスト階層最大の難所。69階層にして最悪の壁。

即ちレイドボスからの妨害。場合によってはクローバーと【朧朔夜】まで選択肢にあったが、その必要が無いのはいい事だ。


謁見の間。無座の玉座の下、空いた屋上から"エルダー・ワン"の頭が覗く。

立ち尽くすは灰燼の王──ブレイクソウル族の王、アザルゴン。




──【無座の灰燼 ロストキング・アザルゴン】LV105




──【スキャン情報】──

《無座の灰燼 ロストキング・アザルゴン》

LV105 ※フロアボス

弱点:

耐性:炎/闇/斬

無効:炎/闇

吸収:炎


text:

滅びたバロウズの王。"エルダー・ワン"を倒すべく永年の時を生きる。

国宝の武器を自在に呼び出す。国宝の数だけ特殊耐性が付与され、12種の武器全てを展開すると完全無敵になる。

魔法【王命の決闘】を受けると一対一の戦いになってしまうが、その間は全ての耐性が消える。

不死身属性を持つためHPを削る事で倒すことはできない。王の気が済むまで決闘を受けよう。

また、あまり長く戦っていると"エルダー・ワン"が割り込んで来るので注意。

────────────


「サクッと攻略するぞ。今回は俺が指揮を取る」


ここのフロアボスはトップランカーでさえ運が悪ければ負けかねない。普段みたいなメアリーの指揮訓練には使えない。


「武器展開モードを削ると決闘モード、これを繰り返してクリアになる。武器展開モードは武器破壊に範囲攻撃のカズハとドロシー、本体への火力にクローバー、位置調整にメアリーとミカン。国宝の殆どが接触時呪い付与だから他のメンバーはアイコかゴーストと離れるな。

決闘モードの選出はランダムだ。選ばれた奴は全力で倒せ。同じ奴が2回選ばれる事は無いから本気でいいぞ」


「随分焦ってるのね」


「チンタラやってて"エルダー・ワン"に水刺された事があるんだよ。2回。おかげでヒガル到着がめちゃくちゃ遅れたんだ」


口約束で手出ししないとは言っていたが、本当かどうか怪しいもんだ。全力でさっさと潰す!


「あいよ。マスター、頼むぜ!」


「了解。【チェンジ】!」


クローバーが王の正面へ。

アザルゴン王は黄金の剣を展開するが──クローバーに速射勝負で勝てるわけがない。


「武器破壊組は盾を狙え! 物理耐性付与は全部盾だ!」


「任せて──【虚空一閃】!」


最速に、最大範囲で。

国宝を全て巻き込んで盾を落とす。


「僕は……次のスパンで撃ちますね」


「そうだな。まずは一手目だ」


クローバーの速射により、アザルゴン王が手を挙げる。




「──王に魅せよ──その力──【王命の決闘】」




──黒の光陣があらわれる。最初のターゲットは──


「……えっ、私?」


メアリーか。およそ一番嫌な展開だな。


「ちなみにこれ負けたら強制で全員敗北だからな。時間切れとかも無い。絶対勝てよ」


「これ後衛職不利すぎるでしょ! 【召喚サモン】"ダミーウィッカー"!」


藁人形を召喚。ターゲット誘導があるのでこういう時に真っ先に本体を狙われなくなる、初見観察に最適の召喚獣だ。


「──【一閃】」


「えっ」


黒の光が視界を眩ます。

──ロスト階層名物"自重しない初見殺しシリーズ"最後の関門。強制タイマンからの爆速【一閃】。魔法系が詠唱始めたら秒殺されてバロウズに逆戻りという凄い嫌がらせである。たまったもんじゃない。


メアリーは──驚いてはいるものの【チェンジ】でなんとか回避。【一閃】までは読んでなかったにしても逃げの準備だけはちゃんとしてたな。


「……っ、馬鹿じゃないの!? 【フリーズリンク】!」


地面を凍結させて動きを止める魔法。だがアザルゴン王は既に人では無く、凍結した脚を捨てて素早く振り返る。ランダムタイマンシステムに許される反応速度じゃない。

アザルゴン王は国宝の一つ、黄金の弓でメアリーを狙うが……。


「【チェンジ】──」


王の背後へと転じ、その手が背中へと届く。


「──【次元断】!」


今回は完全に決まった。

黒の光陣が消え、中央へとアザルゴン王が移動し、国宝を出現──


「ジャストです! 78%──【サテライトキャノン】!」


降り注ぐ光の奔流。宣言通りドロシーが決めた。

先日の【ギルド決闘】でいい所を見せられなかったから張り切ってるらしいが……開幕1人だったのに素早く戦線離脱し全体を見渡せる高所廃墟に構えた上に、ピンポイントでブックカバーを撃ち抜いた"神の奇跡"。大活躍だ。

ルール無用のスタン押し付けが弱い筈もなく、フォースクエアを誘き出したとも言える。それでも良いところを見せたかったというのは男の子だな。





「──王に魅せよ──その力──【王命の決闘】」




2回目の王命。選ばれたのは──




「ミカンさんですか。仕方ないです。【建築ビルド】──【崩落岩石流】!」


アザルゴン王の【一閃】より早く、空から瓦礫の雨霰。

この戦闘が始まった時点でミカンは壁沿いに【建築ビルド】しており、こうやってもしもの攻撃に備えていた。

とはいえメアリーが苦戦した相手を瞬殺というのは凄い。まだドロシーのクールタイム10秒経ってない。


またしても王が武器を取り出すが──


「ある程度は理解した。俺たちで充分だよ」


「はい。私達にお任せを」


フィジカルコンビ、アイコとジョージが全ての武器を弾き飛ばす。ガラ空きの本体へクローバーが止めを刺し──




「──王に魅せよ──その力──【王命の決闘】」




3度目は──俺か。


「【スイッチ】── 【月詠神樂(ツクヨミカグラ)】」


「──【一閃】」


来るとわかっていれば盾さえいらない。武器ガードスキル【パリィ】で武器を弾いて──


「【スイッチ】── 【封魔匣の鍵(パンドラ・カリギラス)】」


この近距離ならこれでいい。銃口を王の腹に当てる。


「──【ゼロトリガー】」


ゼロ距離高火力スキル。アザルゴン王はそのまま剣を杖にして立ち止まる。

膝をつく事は無い。誇り高き執念の王だ。


「──善い」


それだけ言い残すと、王はそのまま王城を出た。




転移ゲートが出現。これでロスト階層の攻略も完了だ。


「よし、さっさと行くぞ」


「感動も感傷も無いわね」


上から見てる"エルダー・ワン"が怖いんだよ。

……兎にも角にも、やっとヒガルだ。


【三日月】解散の地で、またどうせ面倒な事が起きるんだろうなぁ。


……今度は先に進めると、いいんだが。

〜お部屋訪問〜


【夜明けの月】ログハウスの各自自室の紹介(追加組)


・クローバー

部屋に誰も入れない主義。理由はクソ散らかってるから。

ライズ同様部屋汚い勢だが、ライズと違って絶対にパーソナルスペースに人を入れない。対外コミュニケーションが中心となっていて常に炎上と隣り合わせだった"アシュラ"の生存戦略。

ゲームとかでマイルームのカスタムできる奴は性能利便性重視でぐちゃぐちゃになるタイプ。


・リンリン

ふわふわぬいぐるみ天国。ミカン加入後はほぼミカンとの同室。

記憶が戻ってからは暗くして眠る事が出来なくて、電気を消しても薄ぼんやり照明がついている。

ベッドの下だけは誰にも覗かせない。

不定期でお部屋女子会が開催され、ぬいぐるみに埋もれたミカンを見つける"ミカンさんどこだゲーム"が大人気。


・ミカン

物置。あらゆる資材でインベントリを満たしているため、大容量インベントリチェストを大量に並べて【建築ビルド】用資材を整理している。

僅かばかりの乙女心でチェストのデザインを四角いケーキにしており、"ケーキ屋さん"と呼ばれている。満更でもない。


・カズハ

相談や世間話をする事が多く、他人がよく入れるようにしている。男性陣が入りにくくならないようあまり女子女子した可愛すぎる感じは抑えている。

リラックスしてお話ができるよう、アロマとお茶と菓子といったおもてなしセットを常備。いつ行ってもいい匂いすると評判。

それはそれとして自室に男を連れ込むのは良くないとライズに諭される。

ライズとクローバーは出来る限り入らないようにしている。

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