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BlueEarth 〜攻略=世界征服〜  作者: まとかな
荒廃都市バロウズ/ロスト階層
169/507

169.覚悟と計算と信頼と

"霊憶の丘(バベル・ヒルズ)"


ルール:合計得点70ptに到達した方の勝利


同じレベルの相手を討伐→10pt

自分より高いレベルの相手を討伐→20pt

自分より低いレベルの相手を討伐→5pt


【夜明けの月】:60pt

需傭協会(Weak.enD)】:50pt




──◇──




──中央城廃墟


「……うぅー……負けました。悔しい悔しい!」


一瞬の攻防。辛くも勝利したのはリンリン。

ミカンは地団駄を踏んで……可愛いわね。


「強くなりましたね……メアリーちゃん。ミカンさんは嬉しくて悔しいのです」


「門開くの一瞬すぎ。やっぱり化け物ねミカン」


──【エリアルーラー】の転移は万能じゃない。特に密室内、特定の領域内には転移ができない。

だから諸々のギミックを無視して攻略ができないわけだけど……【キャッスルビルダー】の作る建物はある種の弱点とも言える。

だからミカンが出口を作ってくれた一瞬で侵入して、あとはミカンの背後へリンリンを飛ばした。あたしの方に気付かれてたら終わってたから本当に一瞬の勝負だったわ。


「ふふん。まだまだミカンさんも甘いのです。……じゃ、後の激重感情コンビは任せたのですよー……」


光になって消えるミカン。

……これでこっちは王手。化け物カズハを倒さなくても、フォースクエアを倒せば良くなった。

それに……最強の盾も用意できたからね。


「行くわよリンリン。アンタがいれば勝ち確よ!」


「……ふへへ。はい、マスター」


何よ。そのへにゃっとした顔。

かわいいじゃないの。




──◇──




log.

城の崩壊を確認。

マスターの計略と判断。これにより最優先事項をマスター及びリンリンとの合流に再設定。

サブジョブヒーラー二枚体制であればフォースクエアの撃破も視野に入ります。フォースクエアを城跡地へと誘導──


「慣れてきた。もう逃げられないぞゴースト!」


──フォースクエアの移動速度向上曲線止まらず。

遂にジョージ式樹上移動まで獲得。逃亡優位の喪失まであと1分45秒。


「……では、受けて立ちます」


森を抜けて城跡地までの街道に着地。

フォースクエアも合わせて着地。


「いい度胸だ。剣で相手させてもらう」


「answer:ここで仕留めます。お覚悟を」


速度特化の【リベンジャー】ですが、計算上初速は今のフォースクエアに勝てません。

アクアラでファルシュから受けた戦闘訓練を回想──


──────


『せやからな、あんたさんはキマってへんねん。

トップランカーともなればみーんな尖った味を持っとる。ウチは防御性能ぜーんぶ投げ捨てて速度と火力に伸ばし倒しとんねや。仲間を助ける事も、命惜しさに防御する事もせぇへん。

あんたさんは半端やねん。仲間を回復しつつHPを調整して前衛中衛を切り替えて……てのは仲間がおる前提の戦法や。

ゴーストが一人の時、どう動くか! ここがキマってへんねん。

せやから仕込んだる。ウチにはできひんゴースト1人専用の戦い方をな』


──────


──残りHP78%

目標値を25%に設定。

これよりHP調整に入ります。


「action:skill【襲牙】!」


「それは通じない!」


突進を最小限の動きで回避され、側面から斬られます。


──残りHP54%


──────


『ビーチフラッグで見せたありえへん時間管理。アレがあんのやったらHP調整もリアルタイムでできるやろ。

【リベンジャー】の鉄則、HP25%以下。相手からのダメージと回復を利用して完璧にキープしてみろや。

ウチはそんなん考えるの面倒やし無理やけど、アンタならいけるやろ?』


──────


フォースクエアからの追撃。2撃のみ受け、残りを防ぎます。


──残りHP24%

──目標値達成。


「skill【聖なる祈り】発動」


「時差回復か。だがその前に倒し切る──」


「action:skill:【リベンジブラスト】


期待値以下のHPにより、最大出力。

それでもフォースクエアの回避成功確率は94%

──成功。フォースクエアは【リベンジブラスト】を回避し、突進術【ピアッシング】を発動。想定ダメージ28%


「──action:」


──skill【聖なる祈り】は、20%の時差回復。

フォースクエアの【ピアッシング】を受ける直前に回復し──残りHP16%


「skill:【双月乱舞】」


誰であれ、スキル発動中に防御はできない。

最高出力の双剣で切り刻む──!


「……っ、まだだ!」


【双月乱舞】の連撃を受けるフォースクエア。

一撃ごとに20%近くのHPを削る。


一撃。二撃。


【ピアッシング】の演出が終わる瞬間、フォースクエアは()()()()


三撃。四撃。


「──掴んだ!」


──私の手を掴み、最後の一撃より早く──私を投げ飛ばす。


想定の範囲内です。ジョージをインストールしている今なら、飛んだ先の樹木を足場に復帰し最後の攻撃を──




「──【虚空一閃】!」


「うおおお!【スイッチ】──【ガイアプレート】!」




──木々を薙ぎ倒し、カズハとライズが飛び出す。


ライズは籠手装備【ガイアプレート】でなんとか受け止めていますが、次の【燕返し】を受けられないようです。片手でカズハを掴み、もう片手の【月詠神樂(ツクヨミカグラ)】を振り翳す。


──カズハの【燕返し】も、ライズの【月詠神樂(ツクヨミカグラ)】も、そして──フォースクエアの行動も、私がすべき行動も。全て把握しました。


「間に合え!【七星七夜】!」


ライズの放つ七連閃は──


──フォースクエアが、その身で受け止める。


「……ぐっ、ふ。殺れカズハ!」


「勿論──【燕返し】」


不発に終わる【七星七夜】。範囲に特化した【虚空一閃】の同技【燕返し】。

その返しの太刀がライズを襲う、その前に──




「──skill:【襲牙】」




──()()()()蹴り飛ばします。

足癖が悪く失礼。刃の方は味方にダメージ判定が入らず逃がせませんので。


「ゴースト!」


「ライズ。マスターを頼みます」


──カズハの二刀が襲いかかる。




──◇──


──『【需傭協会(Weak.enD)】フォースクエア 敗退。

【夜明けの月】に5pt加算されます』──

需傭協会(Weak.enD)】:50pt

【夜明けの月】:65pt


──『【夜明けの月】ゴースト 敗退。

需傭協会(Weak.enD)】に5pt加算されます』──

需傭協会(Weak.enD)】:55pt

【夜明けの月】:65pt


──◇──




──してやられた。


フォースクエアの野郎、ゴーストに負けたら10pt取られるからって俺に割り込んで、ついでにカズハに俺を倒させようとしたな。

ゴーストの機転が無ければマズかった。


「──ああ、困ったわね。リンリンちゃんも倒さないとポイントが足りないわ」


目下最大の問題は──素のカズハがそもそも倒せないって事だ。

"エルダー・ワン"がどうこうとかじゃない。まずカズハに勝てない。こっちの生き残りはメアリー。ミカンが倒されたけどどうなってる? 背後の城を見る余裕が無い!


「ライズさん。そろそろ【朧朔夜】の圏内ですね。刀装備同士らしく打ち合いますか?」


「抜刀速度的にも攻撃範囲的にも無理だ。お前火力の【怨魂一閃】と範囲の【虚空一閃】を使い分けて牽制してるが、抜刀速度最速の【迅雷一閃】も控えてんだろ。二刀流相手は2回抜刀チャンスがあるからこっちも甘えた事はできねぇって」


「あらあら慎重派。お姉ちゃん悲しいです。そういう時は男らしくお姉ちゃんの胸に飛び込んでこないと」


「ホーリーはそんなに男らしくなかったか?」


「……ええ。それはもう女々しい男でした。なんでもかんでも考えすぎで──」


「【スイッチ】【スターレイン・スラスト】!」


「【迅雷一閃】」


──会話中の【壊嵐の螺旋槍(タービュランス)】の不意打ちも受け切れるのかよ。俺の最速だぞ!


「では──【燕返し】」


「【スイッチ】【煉獄の闔(ケイオス・エイギス)】!」


【迅雷一閃】は光属性判定。ダメージ吸収と防御性能で何とか返しの太刀を受け止めるが──今のはカズハの【分陀利(ぶんだり)】。本命の【厚雲灰河(こううんはいが)】がまだある!


「──【巖烈一閃】」


大地を打ち上げる斬り上げ。受ければ【燕返し】不可避のクソコンボ!【煉獄の闔(ケイオス・エイギス)】の防御対象外の地属性!


──カズハは超火力ゴリ押しジョブ【サムライ】で、しかも呪いで火力をブーストしてる超火力アタッカーだ。一撃でもマトモに喰らえば死ぬ! だが光と闇属性を受けられる【煉獄の闔(ケイオス・エイギス)】が壊れたら【迅雷一閃】と【怨魂一閃】を受けられない──




「【チェンジ】!」


「──【イージスフォース】!」




割り込んだのは無敵の鎧。

光の壁がカズハの【燕返し】を受け止める。


「よし、動き止まったわね! 【チェンジ】!」


「させないわよー」


俺を包む光の立方体に、カズハは枝を投げ込む。

──【チェンジ】は足元含まない立方体に何かが挟まった場合不発になる。にしたって機転が早すぎる。


「ちぇ。ライズだけでもどこかに飛ばそうと思ったんだけど」


合流したのはリンリンとメアリー。一度失敗したが、【チェンジ】の速度が格段に向上してるな。


「後はお互いに倒すだけよ。覚悟できてる? カズハお姉さん?」


「……ええ。【夜明けの月】には八つ当たりで悪いとは思ってるけれど……これが私達の戦い。最後まで私は、ホーリーの願いと共に」


……サムライ相手とはいえ、サティスとは訳が違う。

武器そのものの火力はサティスが上だ。【瑜伽振鈴(ゆがしんれい)+88】とか間違いなく俺とサティス以外に作ろうと思う奴すらいない。

だがカズハの【厚雲灰河(こううんはいが)】と【分陀利(ぶんだり)】は呪われている分火力補助が入る。そして呪いのデメリットは踏み倒している。なんでやねん。


「メアリー。わかってるよな? これは前座だ」


「勿論よ。さっさと化けの皮引っ剥がすわよ」


「物理相手ならわたしに任せて下さい。わたしの後ろにいる限り、傷一つ付けさせません」


──チームは、防御のリンリン、物理の俺、魔法のメアリー。悪くない。

何よりメアリーの頭がある。作戦は丸投げにしよう。


「……じゃあ行くわよ。"ラスボスお姉ちゃん討伐戦"開始!」


「なんじゃその名前!」




──◇──




──【黒の柩】


ネグル看守長に見せられた"霊憶の丘(バベル・ヒルズ)"。

かつての仲間が、それは必死に戦って。

遂にカズハ1人になりました。


「彼らは、なぜ──」


「クフフ。それは勿論、貴様への当てつけだろう?」


「当てつけ、ですか?」


ネグルはふかふかのソファに座って、もう隙を晒すとかそういうレベルではない無警戒さで映像を見る。私、終身刑の大犯罪者なんですが?


「貴様は奴らを信じず、全て背負い込んだ。或いはミカンのように手駒としてしか使わなかった。

最後には自分で全責任を負ってここに来た。負いきれてないがな。

……奴らは、それは腹が立ったろうな。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()のだから」


「……それは、我々は、【需傭協会(Weak.enD)】は私の洗脳で集まった組織ですから……」


「それは途中からであろう。貴様の洗脳は後天的。最初は普通に人徳で集めておっただろう?

……変わらんよ。連中はただ、貴様と共犯者になりたかったのだ。

なのに勝手に責任を被って逃げおって。特にカズハは怒り心頭であろうよな」


……そんな。

私が、そこまで想われているはずが無い。


「まぁいい。これは罰なのでな。ちゃあんと最後まで見るのだぞ」


「……はい。目を逸らしません」


罰であるなら、受け入れられます。

私は彼らを──




──────


『ホーリーはそんなに男らしくなかったか?』


『……ええ。それはもう女々しい男でした。なんでもかんでも考えすぎで──』


──────




「……看守長。くじけました」


「脆いなぁ!?」

~あのキャラどのキャラ~

《天地調の備忘録》


今回はバロウズ編……というか【需傭協会(Weak.enD)】編です。


・ホーリー

──阿僧祇(あそうぎ) 那由多(なゆた)(28)

海外のクーデター犯エブライム・アハムの息子。詐欺宗教の教祖であったエブライムは、二人目の自分を作るために子供を作った。そうして生まれ、虐待教育によってエブライムの人格を植え付けられるが、エブライム自身のプライドまで移ったために本物のエブライムを恨み、自身がエブライムになるという事を自覚していたがために"エブライム=最低最悪の悪魔"に成るという最悪の方程式が完成。悪意のままに世界を滅ぼす悪鬼が生まれた。詳細は157話の通り。

……エブライムは那由多の悪意に気付いていた。だから那由多を操るため、娘を用意した。人質とするために。

だが残念ながら那由多の成長が早すぎた。那由多は妹に会う事すら無く日本にて父エブライムを騙し、自由の身になる。

──彼が阿僧祇那由多の名前を捨て、日本から逃げ延びたある日。とても使い勝手のいい女を手に入れた。

反抗的ではあるが、何故か那由多を庇う。日本に留学していたようだが、説明できない理由で帰ってきたと。

那由多は彼女の事情には興味が無かったが、自分に不利益があってはならないのでその事情を聞く事にした。

彼女の父親は世界的犯罪者で、その罪が暴かれると母親は殺された。知り合いのツテで日本へ逃亡したが、その先でまた追われ、こうして故郷に帰ったと言う。

彼女の名前はタプーズ・アハム。那由多の妹だった。

だがそれで那由多が何をした訳ではない。

何故なら、その事を白状させるために既に彼女の心を壊したからだ。何もできないのだ。

壊した心は治せない。少なくとも、那由多では。

その時、那由多は全てに興味が無くなった。

燃え上がるような悪意も、唯一の家族を壊した罪悪感も。何もかも。

今の俺はもういい。俺は自業自得だ。

だから、どうか。俺の妹を、誰か。

──そんな事情は知りませんでしたよ? ほんとほんと。大犯罪者に重い罰を与えるためでしたとも。


・カズハ

──宮司(みやつかさ) 和葉(26)

銀河最強のパーフェクトOL。気難しいお局さんも1日で仲良くなれてしまう最強のOL。

末っ子でありながら病弱な姉や兄の面倒を見ており、姉への憧れからお姉ちゃん属性を獲得する。

それでも滲み出る末っ子属性から可愛がられる。

学生時代からめちゃくちゃモテるが、交際経験は無い。

学友のとある男子と仲が良かったが、彼が他の学友から虐められるようになってから男女関係に恐怖を覚えるようになり、告白を回避ではなく拒否するようになる。

とある男子とは卒業後の就職先が近かったので数年仲良くしていたが、彼の転職と和葉の転勤が重なって離れ離れになる。疎遠にはなったが、友達感覚で連絡を取り合ったりはしていた。直接会うと周りに何をされたものかわからないので文通はお互いに慣れたものである。

──全然那由多さんと関わりはありません。悲しい過去も特にありません。周りに愛されて、周りに護られて育った良い人です。


・ミカン

──亜浜 蜜柑(22)

幼少期に日本に留学という形で転がり込んできた外国人。孤児で、色んな施設を転々としてきた。

生まれつき小柄で性格は内向的。だが真面目で社交性があり周囲からの評価は高かった。たった1人で18になるまで安全に育つ事ができたのだから相当である。

高校の卒業後、彼女は日本を去る。記録はここで途絶えており、彼女がその後4年間何処で何をしていたのかは不明。

ずっと隠し通していた本名はタプーズ・アハム。

──……とても要領の良い子です。強くて、優しい子です。電子化に伴い肉体の欠損は補填されますが、彼女はそれが脳に作用されています。【Blueearth】突入時、彼女人間と呼べるかすらわからない状態だったので……。

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