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BlueEarth 〜攻略=世界征服〜  作者: まとかな
常夏都市アクアラ/オーシャン階層
150/507

150.藍から灰へ座礁せよ


log.

──オーシャン階層デスマーチ3日目。


【第55階層オーシャン:水没のロストタウン】


クローバーとドロシーによる「極太ビームと弾幕攻撃どっちがいいか」論争が勃発。クローバーは極太ビーム派、ドロシーは弾幕派。

ライズが「弾幕は必殺技にはならなくね?」と発言した事で弾幕派のドロシーと戦闘スタイルが弾幕のクローバーから非難される。

ジョージは「暗殺しやすくなるから弾幕派」。

……階層の方には特筆特記なし。男性チームの内輪揉めで殆どの魔物を蹴散らした。




【第56階層オーシャン:墓船のパイレーツ】


幽霊だらけの沈没船。

マスターが肝試しを企画するも、誰も彼も肝が座りすぎて企画倒れになる。

仕方ないので"最強の幽霊捕獲合戦"にシフト。優勝は雄々しい角の生えた"ヘラクレスオオ幽霊"を捕獲したジョージに決定。




夜。

リューゲがライズに夜這い未遂。急遽リューゲを拘束するために女子会(監視)を開催。

唯一【三日月】時代のライズを知るメンチラから色々といい情報を得ました。永久保存。

リューゲは簀巻きにして寝る事に。リンリンが羨ましそうにしていました。




──オーシャン階層デスマーチ4日目。


【第57階層オーシャン:渓谷のフォールダウン】


"うらしま参号"による急流崖下り。興が乗った"うらしま参号"が本気を出した結果屋台車を置き去りにする珍事発生。

"うらしま参号"待ちの空き時間にジェリー族住居跡地を観光。

メンチラは立場上訪れる事ができなかったとの事。何やら複雑そうにしていました。




【第58階層オーシャン:積雪のホワイトアウト】


海底に降りつもるマリンスノーを掻き分け、"コスモスゲート"と遭遇。

"コスモスゲート"が作成した無数のゲートによって59階層へのゲートが行方不明になる事件発生。

この階層では方向感覚が狂うので迷いやすいとはライズが言っていましたが、無事全員で迷子に。

ライズの地図によって"コスモスゲート"の転移ゲートから現在地を割り出すものの、ドロシーが雪に埋もれて行方不明に。

それを探しに行ったクローバーが行方不明になり、更にそれを追ったライズが"コスモスゲート"によって飛ばされる。

ライズは59階層へ飛んだので、他全員が合流してから攻略を再開。




──◇──




──オーシャン階層デスマーチ5日目


【第59階層オーシャン:星宙のパーティー】


──────

海底より深く

宇宙より高く

深海に瞬く星々

そしてミラーボール

──────


58階層は海底だったのに、何故かまた更に深く暗い。

"うらしま参号"によって悠々と泳いでこれているけど、壁も何も見えない。本当に海底なのかしら。宇宙に辿り着いてない?


「フロアボスはあのめっちゃ眩しい奴だ。わかりやすいだろ」


ライズの指す先には──銀の太陽、否。ミラーボールが浮かんでいる。


闇に輝く光が深海魚を呼び寄せ、その真下に集まっている。まるでステージ。

だけど、舞台は起き上がり──その全容は、巨大な蟹だった。




──【海底富豪 クラブ・アトランティス】LV95




──【スキャン情報】──

《海底富豪 クラブ・アトランティス》

LV95 ※フロアボス

弱点:ランダム

耐性:ランダム

無効:ランダム

吸収:ランダム


text:

深き世界唯一の光、唯一の陸地。

頭上の発光球が輝いている間は全ての耐性がランダム決定する。

フロアに集まる観客を蹴散らすとボルテージが下がり消灯。全耐性が消え弱体化する。

観客を全滅させると割合ダメージが入る。

────────────


……フロアが熱狂してる。


「パターンは二つ。正面切って戦うか、甲羅の魔物を片っ端から潰すかだ。

正面切って戦うにはデカすぎるし、足場も無い。諦めて甲羅の上で踊るのが定石だが」


「クローバーは禁止?」


「おう。クローバーだけな」


「……って事は、ライズも?」


「そうだ。いよいよもってレベルも追い付いてきたからな。上手く使ってくれよマスター?」


ライズのレベルは115。あたし達は70階層(ヒガル)まで100が上限だけど、それでもかなり近くまできたわ。

……じゃあ今テンペストクローを一人で抑えられるかって言われたら無理だと思うけど。レベル以上の経験値があるわね。


「……【夜明けの月】に敵は無し! ちゃんとぶっ倒すわよ。作戦は──」




──◇──




──深海に輝くミラーボール。

それは"クラブ・アトランティス"のものではなく。

その蟹もまた、光に寄せられただけに過ぎない。


いつからあるのかは知らないが、この深海に住むものにとってそれは一つの意味であった。意義も意味も無い暗闇に、一つの目印となった。


故に蟹はその背を預け、大地となった。


故に蟹だけは、その光を見れなかった。


蟹はいつだって暗き海に目を落とし──




「作戦開始よ!」


──亀が現れた。

背に乗った人間数名。正面に立つのなら、その鋏で屠るのみ。

だが亀は硬く、鋏が通らない。狙うは甲羅の上の人間だ。

右の鋏で甲羅の上を削ぎ落とそうと──


「【イージスフィールド】!」


──大盾の女に阻まれる。

止まった鋏に数名が飛び乗り、蟹の背中へと向かう。


蟹は、動かない。

その背に乗るならば抵抗は無く。

未だ正面に立つというなら、それを挟み切るのみ。




──◇──




「狙うは正面撃破! でも同時にステージの方も殲滅してダメージ源にするわ。あたしとドロシーは範囲攻撃でステージ殲滅班。移動手段にメンチラの魚を用意して、それぞれ護衛にライズとリューゲを付けるわ。

"うらしま参号"は蟹の正面に着けて、リンリンとアイコで防衛。ゴーストとジョージは蟹本体に攻撃して」


「了解!」


巨大魚に跨って、俺とメアリーは着地点を見定めるべく旋回する。

ドロシーが目立つ活躍をしているが、メアリーもまた広範囲高火力担当。甲羅の上の雑魚散らしには適任か。


「──よし。あそこにするわよ」


メアリーの指定したスポットに着地──ステージの、ど真ん中。

深海魚人達がこっちを見る。まさかの乱入だ。


「護衛、よろしくね?」


「我儘プリンセスがよぉ……【スイッチ】──【月詠神樂(ツクヨミカグラ)】!」


一斉に襲いくる魔物達。とはいえ護衛対象は一人だけだ。上手く回せば問題無い。


槍兵の攻撃を【宙より深き蒼(ディープ・ブルー)】で受け──逸らした瞬間に【封魔匣の鍵(パンドラ・カリギラス)】に切り替える。


「【スイッチ】。【パワーストライク】!」


槍のリーチには銃で。そのままノックバックで正面の敵を巻き込み吹き飛ばす。あと三方。


「【スイッチ】【グランドマッシャー】──【アースサラウンド】!」


ハンマーを地に叩きつける。地震を起こすスキルだが、ここにおいては"クラブ・アトランティス"のリアクションも重なり大きな揺れとなる。

体制を崩した魔物達に、メアリーが嗤う。


「行くわよ。【風花雪月】!」


氷の華が容赦無く魔物を殲滅。

こういう派手な広範囲技は無いからなぁ。いいなぁ。


「っと【スイッチ】──【簒奪者の愛(ゲットバッカ―)


氷に耐性のある甲殻類が奇襲を仕掛けてきたが、短剣でいなす。着地前にどいつが耐性持ちかはあらかた目星つけてたからな。


あと2秒。


「ライズ!」


「言われずとも。メンチラ!」


「西方向に待機させてまス!」


「おっけ。【チェンジ】!」


俺に飛びかかってきたメアリーを受け止めて、ステージの外へと転移。


向かいの方にいるドロシー班の準備が整った頃だ。




「79%──【サテライトキャノン】!」




光がミラーボールごとステージを撃ち壊す。

なかなか高得点だ。ミラーボールからの光も抑えられた。

海の中、ピンポイントで待機していたメンチラの魚に回収してもらう。


「これで割合ダメージと弱体化だ。頼むぞ正面組」


視界遠くに見える"うらしま参号"の背から二人の影が飛び出す。


「action:skill:【双月乱舞】」

「火は通るかな? 【炎月輪(えんげつりん)】──!」


こちらも近距離火力要員として磨きがかかった【夜明けの月】のアタッカー2人。瞬間火力を稼ぎ4割ほど削ったが──背中のミラーボールが復活する。




「あと2週くらいね。同じ事するだけよ!」


「「「了解!」」」


指示も指揮も慣れたもの。流石は俺たちのマスター。

……いや暫く見ていなかったが、火力だけなら追いつかれる所まで来たな。武器の強化値で誤魔化しているが、いよいよもってだ。




──◇──




「ん、終わったか?」


"うらしま参号"の屋台車からのっそり出てきたクローバー。ハブにして悪かったな。


ミラーボールが割れて、中から転移ゲートが現れた。これでオーシャン階層も終わり。


「じゃあ名残惜しいが水着スキン外すぞ。そのまま突っ込んで恥晒す奴が絶えないんだ」


「あーね? 確かにずっと水着だったから感覚麻痺してたわ……。あー懐かしい」


【Blueearth】だから、着替えに手間なんてかからない。勿論手間をかける事も可能。着たり脱いだりが楽しい人もいるからな。但し今回は手っ取り早く済ませる。

水着なんてアクアラでしか着ないからなぁ。見納めか。


「【夜明けの月】の皆様様、アクアラはどうでしたカ?」


「すっっっごい楽しかったわ。また来たいわね」


「ウフフ。そうでしょうそうでしょう。タルパーも加えて更にパワーアップ! なのデ。是非また来てくださイ!」


ぴょんこぴょんことメンチラが跳ねる。ずっと暗部にこそいたが、メンチラはずっとアクアラにいる。それだけ好きなんだろうな、オーシャン階層が。


「お前がいれば安泰だな。タルパーの事、任せた」


「任せるほどの事ですカ?」


「あいつすっかり非戦闘要員になってるじゃねーか。何が起きるともわからないしさ」


「……任されましタ。従来通りにですネ」


元より陰ながらタルパーを案じていたメンチラだ。悪いようにはしないだろう。


「リューゲはこれからどうするんだ?」


「もう暫くアクアラに。傭兵に転身するか或いは……考え中です。しかしそう遠くないと思いますよ、再開」


「ははは。お手柔らかに」


本当に些細な事だが、人間関係トラブルを起こし倒したリューゲ。【鼠花火】が解散したのって……まさかな。


「……さて、行くか。久々の地上だが、気分が良くなるかはわからないぞ。

永遠の曇天。滅びの大地。向かうは第60階層──荒廃都市バロウズだからな」


「廃墟なら割と攻略階層で散々見てるじゃない。今更よ」


今更。そうだよなぁ。

このまま観光気分で通り抜けられればいいんだが。


「じゃ、2人とも。行ってきます」


「はーイ。いってらっしゃーイ!」


「行ってらっしゃい。また」


二人に見送られ、転移ゲートをくぐる。




……色々と思い出す。灰色の記憶を。


バロウズの記憶を。



〜実はあの人:タルパー編〜


タルパー

冒険者LV100

サモナー系第3職【マーメイドハープ】


かつて【三日月】がアクアラに到達した時、金の無心をライズにした事で追われ、その後ツバキがバイトしたBARでツバキを口説いているところで確保。

当時はバリバリ戦闘職の【グラディエーター】だった。

負傷したジェリー族を看病していたタルパーは借金に追われており、手負いのジェリー族の力で山の中腹の隠れ家に潜んでいた。

借金取りの大元が異種族売買組織であり、ジェリー族を対価に要求されているという。

正直ライズは乗り気ではなかったが、ハヤテが犯罪組織撲滅に協力を志願。数日の共同戦線を張る。


当時アドレから【Blueearth】の裏世界を牛耳っていた"影の帝王"と【三日月】の再戦は、語られない名勝負。ライズ達は覚えていないが、この時にデュークは【三日月】と一戦交えている。


闇組織が解体され【三日月】がアクアラを離れ、ちょっかいかけてきたメンチラも見なくなったタルパーは、カジノでふと思い立つ。

ジェリー族が自由に楽しく過ごせる拠点を作れないかと。

そして彼は笑顔の練習を始めた。

ジェリー族とコミュニケーションを取るためサモナーに転職し、一から鍛え直して【マーメイドハープ】になった。

物腰柔らかな態度は、ハヤテとツバキのハイブリッド。ライズは何の参考にもならなかった。

借金もやめなかった。

その影でメンチラが色々と奔走していたが、それをタルパーが知る事は無い。


……こうして、借金・賭博なんでもござれの碌でもない恵比寿顔が誕生したのである。

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