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BlueEarth 〜攻略=世界征服〜  作者: まとかな
常夏都市アクアラ/オーシャン階層
128/507

128.揺蕩う海月の贈り物

【第50階層 常夏都市アクアラ】


──────

[ドロシー]:

『見失いました。やはり向こうには透明になる能力があるようです』


[メアリー]:

『これで三度目よ。ドロシーいける?』


[ドロシー]:

『勿論です。もう大枠のパターンは"理解"しましたから見えても見えなくても変わりません。ジョージさんを向かわせました』


[ジョージ]:

『市街小回りなら俺に任せてもらうよ。北の山方向への門に張って欲しい。俺がそっちへ誘導する』


[リンリン]:

『わたし、北門にいます! ここで構えます!』


[ドロシー]:

『クローバーさんそのまま西の通り突き当たり左です。透明な敵を北に誘導します』


[アイコ]:

『私。落とし物さん。どうしよう?』


[メアリー]:

『そのまま保護して北門へ連れて行ってくれる?』


[アイコ]:

『わかた』


[ゴースト]:

『result:二人目の落とし物を保護しました。北門へ向かいます』


[ジョージ]:

14:00(ヒトヨンマルマル)制圧完了。容疑者を捕縛した』


[メアリー]:

『……北門は!?』

──────




「……く、離して下さい! クローバーさん、これは一体!?」


背中に乗られたジョージを振り解けず、うつ伏せに拘束されるタルパーさん。とりあえず大通りだと目立つから裏路地に移動したけれど……。


「それが俺にも何でかはわからねーんだよ。アンタ何かしたのか?」


「くっ……借金を踏み倒したり家賃を踏み倒したりはしていますが、ここまで本気で追われるような事など……!」


「いや色々してんな? ダメだろー払うもん払わなきゃよー」


なんか借金取りみたいになっちゃったわね。

……それよりも、この子達だけれど。

アイコとゴーストが一人ずつ、今タルパーさんの隣でリンリンに捕獲されている……半透明な人間?

笠を被った半透明な人間……みたいだけれど、笠から触手が生えているしなんか浮遊してるし、クラゲの擬人化みたいね。

何故か透け生地のアオザイを着てるけど。ややえっちなのだけれど?


「せめて彼女達だけでも解放して下さい! 悪いのは私だけです!」


「やめてー……たるぱーを虐めないで……」


「はなしてー……」


力無く、脱力した感じだけれどしっかりと抵抗するクラゲ人間ちゃん達。


「……"ジェリー族"だな? 基本的には攻略階層の海の中にいるが……アクアラには滅多に出てこない筈だが」


「そ、そういえば()()()()は【三日月】……ライズさんが関係してましたよね?

もしかしてタルパーさんはあの騒動の関係者なんですか?」


クローバーとリンリンは何か知ってる感じね。

とりあえず……このままだと変な誤解を生むからなんとかしたいのだけれど……。


「ライズさん、あそこです」


「でかしたドロシー。思ってたよりずっと早いな。仕事し過ぎだお前ら」


ドロシーとライズ……と、黒尽くめの男が走ってきた。どうやら丁度よかったみたいね。


「その声……ライズさんですか! これは一体なんの真似ですか!」


「そういえばお前に貸してたアイテム返してもらってねーなーって思って」


「ひぇ」


「らいず……」

「らいず……たるぱーを助けて……」

「らいず。はよ」


ジェリー族にも少し舐められてない?

ライズは現状を把握して腕を組む。


「……タルパー。秘密基地は健在か? そこで詳しく話をしよう。

お前ら、拘束を解いてやれ。タルパーはジェリーを見捨てられないからな。人質のつもりはないが、とりあえずジェリー族一人抱えておけばいい」


アイコの抱えていたジェリー族がアイコに懐いているみたいだから、それ以外の子を解放。タルパーさんもゆっくりと起き上がる。


「秘密基地は健在どころか、未だ使っていますよ。こちらです……と、貴方は!」


「はいどうも、しがないデュークさんでして。お気になさらず」


「……ライズさん?」


「強襲して悪いが、俺を信じてくれ。信じられないってんなら色々と金を取る」


「脅しじゃないのよ……」




──◇──




北門から少し山を上り、山を流れる川が滞留して小さな池になっている空き地に辿り着く。


「ジェリー族には自分と付近のものを透明化する能力があります。私が街に降りる際はよくジェリー達も遊びに付いてくるのです」


「神出鬼没ってのはそのせいか。しかしこの空き地が秘密基地か?」


「ええ。()()()()()()()このくらいの範囲を隠せるのです」


タルパーが手を振ると、空き地に突然ウッドハウスが出現する。そして大量のジェリー族。


「……驚きまして。こりゃあ見つからない訳だ」


「たるぱー」

「おかえりたるぱー……」

「おそいぞ。うわ、らいずだ」


大量のジェリー族が次々と群がってくる。

いや凄い数だな。かつてより随分と増えた。


「すみません皆さん、ちょっと大事なお話をしますので」


「たるぱーこれあげる……」

「豊作だー」

「つめろつめろ……」


タルパーのアロハパーカーのフードやらポケットやらにジェリー達が宝石のようなものを詰める。友好の証だ。


「……ああそうか、成金商人だと思ったが……アンタのそれ、全部"海の瞳"か」


「なにそれ?」


「search:"海の瞳"──強化素材です。オーシャン階層全域で入手可能なレアアイテム。発光するため深海エリアで入手される事が多いようです。

原住民には宝石以下の値打ちですが武器素材となりますので冒険者界隈では高値で取引されています。

ジェリー族と親交を深めると低確率で手に入るという情報が残されていますが、そもそもジェリー族自体が少なく親交を深める時間を確保する事が難しいようです」


「ちなみに冒険者基準で言えば宝石よりも高級品だ。借金なんてする必要ねぇじゃねーか」


「できませんよ。ジェリー達が私にくれた親交の証なんですから。全て身につけますし、持ちきれない分は部屋に飾っています」


……全員何とも言えない表情だ。

そう。タルパーは一見悪趣味な成金アロハおじさん、軽く調べると借金踏み倒し野郎だが……その正体は、ジェリー族大好きな優しいおじさんなんだ。


「……それで、お話とは?」


「まずはここにいる全員に話さないとな。お前が何をやらかして、どういう危険が待っているのか」


情報共有は必要だ。デュークにも、【夜明けの月】への共有は許可を貰っているしな。


ウッドハウスのデッキにとりあえず座って話を始めた。




──◇──




「……とまぁそう言う訳で、お前がいなくちゃエンジュ行きのゲートがどれかわからないんだよ」


「ええ。エンジュに迷い込んだ後にマンソンジュさんに案内されてこちらに戻った際に終われましたから。メンチラさんに」


「……それは……ウチの者の配慮不足でして。逃げて当然でしょうな。大変失礼しやした」


タルパーとメンチラはかつて殺し合いにまで発展した仲だ。それもメンチラからの襲撃だったが、当時と同じ勢いで来たら逃げるだろそりゃ。


「で、この案件俺が間に挟まる。元より【首無し】はお前の事を傷つけようとはしていないが……とにかく俺を経由すれば大丈夫だろ。信用してくれるか?」


「……はい。しかしですね、二点問題があります」


タルパーは先程ジェリー達から貰った"海の瞳"を一つ一つ箱に収めながら話す。


「一つ。そのエンジュ行きのゲートは、ジェリー族の住処のど真ん中なのです。それを一般開放しては彼女達の住処が無くなってしまいます」


「あっしが【首無し】としてアクアラを統治した頃、ジェリー族への対処はタルパー氏に一任する事としまして。なるほどジェリー族の住処とあらばタルパー氏にしかわかりやせんね」


「その辺については──」


「あぁいえ、ちゃんと考えてます。そもそも、そろそろジェリー族をアクアラに移住……というより復帰させようと思っていたのですよ。これ幸いと引っ越しの支度をしているのです。だからこちらの問題は割と無理なく済むのですが……」


ふよふよと浮かぶジェリー族達。

本来はアクアラの原住民だったが、アクアラの発展にともない陸上種が増えて自ずと海底へ移住していったという。


「移住に伴いアクアラ統治部とはお話をさせて頂いたので、なんやかんやで許可を頂けたのですが、それとは別に【飢餓の爪傭兵団】傘下に目を付けられてしまい。

かねてよりの借金の返済のため、ジェリー族を引き渡すよう要求されてしまったのです」


「……それはお前が悪いな」


「困った事にアクアラの冒険者用の土地は【飢餓の爪傭兵団】が占有しています。彼らに納得して頂かなくては話が進まない。そこに"常夏のハイパー海祭り"の情報が入りました」


俺を探していた理由がよくわかった。


「色々あって【飢餓の爪傭兵団】と勝負をする事になってしまったのです。この"常夏のハイパー海祭り"で多く売り上げを叩き出した方が、ジェリー族を統治する!と。

受けて立ってから思ったのですが、そもそも出店ができません。土地抑えられていますので。あるのはこの郊外山の上の空き地のみ。

……ライズさん! 助けて下さい!」


「お前本当にお前さぁ……」


困ったぞ。金で解決できそうな段階が過ぎてる。

借金を俺が建て替えたらそれで終わってたじゃねーか。


「……ふむ。祭りを開いたバロン局長にも問題はありやすね。つまりはそちらを解決しなくてはジェリー族は海底から出られず、海底にいてはそこのゲートを利用できない、と」


(……お前の所に【飢餓の爪傭兵団(ファルシュ)】いるじゃん。その辺なんとかならねーの?)


(こういう統治政治に絡む立場ではないんでして。変に疑われる訳にも……)


つまり真っ向勝負しないといけない訳だ。


「……うーん……実際問題、ジェリー族をアクアラに定住させるとして問題は無いのか? また誘拐とか……」


「そこは【首無し】で睨んでおきまして。タルパー氏にはむしろ下地が整うまでお待ち頂いた所存。もう今のアクアラなら誘拐は起きませんでしてー」


「そうか。じゃあ本当に【飢餓の爪傭兵団】を黙らせりゃいい訳だ。祭りの最中に10億L(ラベル)ドンとくれりゃいいのか?」


「収支報告で反則負けくらいますよ旦那。向こうもちゃんと正攻法で来やすから……」


正攻法ったって土地抑えられてりゃあな……。


「……いいんじゃないか? 普通に勝負すれば」


ジョージがよっこいしょ、と椅子に登り座る。


「言ってしまえばタルパー君の我儘だろう。"海の瞳"を売らないのも、ジェリー族の世話をしているのも。

アクアラの行政の基盤がしっかりしたというのならタルパー君が見ていても【飢餓の爪傭兵団】が見ていてもジェリー族に危険は無いんじゃあないかな。

つまり別に勝っても負けても移住は出来るんだ。タルパー君が負けを認められればね」


「そ、それは……そう、かもしれませんが」


「希少価値というならばそこいらに宝石以上の価値のものがゴロゴロあるじゃないか。冒険者向けの高級"海の瞳"店を開けばきっと勝てる。民間より冒険者の方がお金を使うからね」


「……う……まぁ……はい」


「……それでも意地を張るというなら」


ジョージがしょぼくれたタルパーの前まで回って、顔を見上げる。


「──それもまた"男"だね。貫いてみせたまえ」


タルパーのデコを指で突いて無理矢理姿勢を起こさせる。


「"海の瞳"は売らない。【飢餓の爪傭兵団】にも負けない。どっちもやってしまおうじゃないか。男なら理不尽な無茶を声高に叫ぶんだ」


「し、しかし……そんな事できるのですか?」


「違う。"出来る"じゃなくて"する"んだ。男ならね」


随分と無茶を言う……が、ジョージは(そうは見えないが)ぶっちぎり最年長男性。その言葉に口を挟めない。


「だってほら、こんなに手があるじゃないか」


ジョージが指差す先には──池で戯れるジェリー達。


「アクアラにおいても珍しいジェリー族がこんなにいる。結果に関わらず彼女達はこの祭りの後にアクアラに定住する。だとするなら見逃せないアピールポイントだろう?」


「し、しかし! ジェリー達に働かせるなんて……」


「ジェリー族はタルパー君の役に立ちたいと思っているだろうさ。だって……自分を犠牲にしてでも君を逃しただろう?」


それもそうだ。

普段から数名のジェリー族が透明になってタルパーを護衛しているって事だ。それがどれだけ好かれているという事なのかを物語っている。


「祭りの売り上げは宣伝が命だ。その点においても珍しい売り子を独占できるこちらに分があるよね?

それにここはそこまで北門から離れていないし、そこまで高い位置でもない。海も街も一望できるから景観もいい。

やるなら飲食……海の家ってところだろうか。財布に底は無いが胃袋には限界がある。郊外のこちらで飲食した人は大通りではそこまで食べられない。つまり知名度され勝ち取れば相手の売り上げを削る事が可能。逆もまた然りだけれど」


「……ジョージって商売人だったっけ」


「大人は色々経験するものだよ。さてどうだろうかタルパー君。君が意地を張るというなら案の一つでもあげるが……"負けても文句言わない"なら、だよ」


ふわふわと、タルパーが虐められていると勘違いしたジェリー族がタルパーに集まる。


「……私は、決めました」


椅子を引き、ジェリー達を避けて。

タルパーは……深く頭を下げた。


「どうかこの私に協力して下さい、【夜明けの月】の皆様!」




「じゃあ判断をお願いするねマスター」


「この流れであたしィ!?」


ギルドマスターは辛いよな。

って言うか普段から割とマスター通さずこういう事してるよな俺達。反省反省。



~外伝:徒然城下町日記10~

《もふもふ勧誘術》


【第0階層 アドレ城下町】

──西大通りパン屋【玉兎庵】


「ただいまでーす!」


「……おじゃまします」


【祝福の花束】を後にして、一応ボディガードとして付いて来たが……着いてしまった。

おかしいな。明らかに様子のおかしいストーカーがいた気がするんだが。

……まぁ無事ならそれが一番か。


「おお帰ったかラビ。ちこう寄れ」


「はい店長!……あっ、煙臭い!」


「一服してきたからの」


帰るや否や真っ先にラビが飛びついたのは【玉兎庵】店主──巨大兎のジョウガ様。

顔を合わせるのは初めてだが……なんというオーラだ。


「ん、貴様は?」


「ブレイクソウル族のブランカです。ラビとは……友達です」


「おお、言っておったなラビが。東大通りの方であろうに遠路遥々ご苦労であった。

ほれ使い魔共。茶の一つでも淹れてやらんか」


「あ、おかまいなく……」


ぴょんぴょんとウサギが跳ね回る。

──ガルフ族と獣人樹はかなり見分けがつきにくいが……恐らくは獣人。

異種族大使館の最上位に位置するやんごとなきお方だ。僕などは面を上げられない。


ちなみに。ガルフ族はサバンナ階層にしか生息しない亜種獣人種。

見た目や構造がかなり動物に寄っているが、四足歩行も可能だったりする。

獣人は人間の靴を履けるが、ガルフ族は(かかと)が出るから履けない。

人間が狼になったら獣人。狼が立ち上がったらガルフ族。

……要するに獣っぽさが濃いかどうかだ。ジョウガ様は毛深いだけでほぼ人間だ。

あと、ガルフ族は肉食動物しかいない。


「"異種族大使館"には草案を投げておいた。"冒険者"慰労の意自体は多くの者が抱えておった。

細かな内容は人間側と調整するがの」


「ありがとうございます! 店長大好きー!」


「ほほほ。嬉しい」


……考えてみれば、凄い人脈だ。

"非暴力派"も"攻略勢"も、"異種族大使館"も"アドレ貴族院"も、誰も彼も仲良くなってしまう。

ラビ本人は陰謀だなんだと無縁だからな。

……何も考えていないのだろうが。気楽なものだ。


「ラビよ。新たなパンがそろそろ焼ける頃合いじゃ。ちょいと取っておいで」


「わかりました! ブランカさん、帰りは送りますから言ってください!」


「いやそうしたらここまで来た意味が無いだろ。適当に一人で帰るよ」


「ええー」


ばたばたと騒がしく工房に駆け込むラビ。

……体よく追い払われたという事は。


「さてブランカとやら。そち、"理解している側"であろう」


「……! ジョウガ様も、ですか?」


「うむ。妾は色々事情が特殊じゃがの。

ともかく、少し確かめたいのじゃ。ちこう寄れ」


ラビのように飛びつくわけにもいかないが。

ジョウガ様の顔色を窺いつつ、手の届く範囲まで寄った。


「確かめる、とは」


「"理解組"はの。かなり特殊な状態なのじゃ。

【Blueearth】を容易く変えてしまう。その危険があるため、妾は選ばれた」


高貴なる獣人の長。だが……"ウサギの獣人"は、ジョウガ様しか存在しない。

考えてみればジョウガ様の存在は不可解だ。

冒険者と深く関わらない立場でパン屋を開業したり。

使い魔を"冒険者"に貸し出したり……。


「……僕が、危険だと?」


「んにゃ。釘刺し程度とする。元よりそちは被害者よ」


被害者?

……それはつまり、あの"青い海の人"を知っている?


「じわりじわりと。そちのように"理解組"が増えてきておる。

カグヤのようにはっきりとそこまで辿り着いておらん者がほとんどではあるがな。

その原因を探り、"理解組"を管理するが妾の使命よ」


「では、ジョウガ様は"青い海の人"は……」


「カグヤの言う奴か。それは知らぬ。しかしカグヤとそちが共に見たというのであれば、それが要因であろうな。

貴重な情報提供感謝するぞ」


……思っていたよりも。

僕の考えている世界より、この世界は狭いらしい。


「……しかし、そち。かなり危険である事を自覚せよ」


「危険、ですか?」


「妾は兼ねてよりそちと接触しようと考えておった。祭りの後にでも招集をかけようと思っておった。

……そちは、自分の意思でここまで来たのじゃ。"冒険者"によって大枠を固定された生活圏を越えて」


冒険者によって、固定。

ジョウガ様の話にはやはり、特例が存在している。


「ジョウガ様。【Blueearth】を容易く変えてしまう存在と仰りましたが、それならば"冒険者"はどうなのでしょうか。

彼らは容易にアドレを変革してしまいます。攻略中の先の階層でもそうでしょう」


「うむ。妾の使命は"冒険者以外による変革の阻止"じゃ。即ち冒険者は素通りであるな」


「それでは、それではまるで──【Blueearth】が"冒険者"の為に存在しているようではないですか!」


もふん。

ふっかふかなジョウガ様の手が、僕の顔面にクリーンヒット。

痛くはないが。僕の灰が毛に絡まないか心配だ。


「……そち、これから定期的にここに通え」


「え。何故ですか?」


「監視と養成じゃ。そちはかなり危ない所まで行きかねん。なれば妾の後継者とした方が良い」


もふもふ。

今度は両手で顔を挟まれる。

後継者? 僕が?


「何てことはない。各日でうちで働けばよいのじゃ。ラビと働けるならば嬉しいじゃろう?」


「……そりゃ嬉しいですが。……あ、いや、ジョウガ様の手ほどきを受けられることが、ですよ!」


「うむうむ。わかっておるって」


ほほほのほ、と生暖かい目線を向けるジョウガ様。

……何だかよくわからないうちに、新しい仕事を手に入れてしまった。


「ちなみに時給は」


「一日労働につきもふもふ10分じゃ」


「暴利!!!!」



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