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BlueEarth 〜攻略=世界征服〜  作者: まとかな
岩壁都市ドラド/サバンナ階層
122/507

122.激闘を終えて:ハッピーエンドは譲れない

【第40階層 岩壁都市ドラド】

──"巫女の岩戸"


囚われの姫なんて言うけれど。

自ら外へ出た事はあれど、自ら囚われた事はあれど。

こうやって無理矢理閉じ込められるのは初めてね。


とはいえ。私は信じている。

バーナードを……グレンを、私の騎士達を。


……なんで最初にバーナードが出るのかしら。裏切り者なのにね。




──"赤土の巫女"シギラ=ファング、入ります!




あら。

意外と早かったわね。


岩戸が開くと──半べそかいた私の騎士達と配下達が飛び出して来た。

コノカ。苦しい。ちゃんとお姫様したいから一回離れて。

プリステラ変なとこ触るな。


「……なんて顔してるのよ。私の騎士達」


私の前ではいつも立派な騎士たらんとしていたグレンが、今にも泣きそうな顔をして。


「姫。此度の一件、全てお話しなくてはなりません」


「いいわ。全て、嘘偽り無く話しなさい」


──全てを。

バーナードのやらかした全てを聞くには、本人からが一番なのだけれど。

ここにいないのならば、それは──。




──◇──




──流石に、岩戸を半開きにした状態だと言い逃れが出来なくて。

私はお婆にめちゃくちゃ叱られた。

長ーい説教といっぱいの宿題を抱えて、やっと岩戸に帰った頃には【真紅道(レッドロード)】のみんなはもういなかった。


色々あったなぁ。49階層まで行ったのは初めてだ。

満足だ。きっと私はもうあそこまで行く事は無い。


……懐から、バーナードのお土産を──新しい"カースドアース"の種を取り出す。


「ちゃんと元の位置に戻さないとね」


あるべきものを、あるべき場所へ。

シドはいなくなったけれど、"カースドアースの端末"は"巫女の岩戸"に存在しないといけない。

──結局は、廻り廻って元通り。こうなるべくしてなったのかな。


後は、私一人。

ただただ目覚めない事を祈る"赤土の巫女"。

──永遠に。

代替わりはしない。冒険者が現れた2年前からずっと、この世界は時が流れていない。

私の役割は──この寂しい岩戸で、あるいはドラドという小さな檻で、永遠に祈るだけ。


寂しくは、無い。

最初は、本当は、その事実に怒りを覚えたから逃げ出したんだ。

でも、もういいんだ。

私の勝手で生まれたシドを、私の勝手で殺したんだもん。

もう、私はいいや。




「随分とお淑やかなりましたね、シギラ」




──幻聴。

うそ。

そんな筈は無い。

私の前にある種から、シドの声がする──


「私の自我もシギラの自我も、全部ひっくるめてバーナードが補填しましたので。余ってしまいました。

今はバーナードの端末です。まだ種のままですが……」


つい、シドを抱き抱える。

もう顔も何もわからないけれど。

シドはいつも通りに私を馬鹿にしたように。




「……ちゃんと迎えに来ましたよ、シギラ」





──◇──




【第49階層サバンナ:静かな荒野】


……【パーティハウス】跡地は消滅した。冒険者の建築物は所有者が破棄すれば消滅する。資材回収も諦めたか。


俺は独り……満天の星空の下、植物で作った椅子に腰掛ける。


あれから。元より消滅寸前だった"バグの黒子"は意識を取り戻さない……。復活には長い時間がかかると、合体時に聞いた。

……長い付き合いになるだろう。早く目覚めて欲しいものだ。


シドは……本来の役割を果たしてもらうために、新たに種を作りそちらに移行した。こちらも内部データボロボロの状態だが……ただの種として安静にすればやがて復活できるだろう。


「やはり物語はハッピーエンドでなければな……」




「なら貴方も幸せになって欲しいんですが」




椅子の後ろに、知った声。

やっと来てくれたか。天知調──共犯者。


「……俺は幸せだ」


「自己犠牲です。ビターエンドにしかなりませんよソレは」


……この女は。

【TOINDO】を欺き、世界を敵に回し、それでもこうやって罪悪感と同情を持つ。

なんともまぁ……損な人だ……。


「レイドボスとの一体化。プレイヤーに背負わせるようなものではありません。分離できるようこちらで動きます」


「……いや、これは地雷だ。形式上合法で成立した俺をいじれば……何らかのバグが生まれるだろう。

……このままでいい。俺だって【Blueearth】開発者の代表だ……むしろここまでサボっていた事を詫びよう」


「恨まれこそすれ、詫びを頂く事はしていません。なんでそこまで自己犠牲なんですか貴方は」


「……お互い様だ」


遠い記憶。

あの大天才が、天知調が【TOINDO】に来た時から。

俺は……こうなるかもしれないと、思っていた。

何と無く……似ているかもしれないと、思ったから。


「……それに、悪役は……楽しかった。ちゃんと自分が悪役と自覚した上でやってみたいと思っていたところだ。レイドボスは楽しそうだな……」


「そうやって無理矢理自分に言い聞かせて。もういいです。私も好き勝手やっちゃいますから」


……背後の気配が消えた。


……しまった。兄妹恋愛の是非を聞きそびれた。




──◇──




──log.

クローバーの弾薬補充・ライズの武器修理によりドラドに1週間滞在する事が決定。


【夜明けの月】がドラドへ帰還した時を同じくして、【真紅道(レッドロード)】は最前線へ帰還。

【ダーククラウド】もまた一通りの問題が解決した事で攻略へと復帰。デスマーチへの参加要請は断られた。


"マッチングサーカス"緊急中断の影響から【パーティハウス】は一時的に活動を休止。経営システムそのものが破綻したため、新しい興行を思案中。

現在はドラド屋外【植物苑】の隣に仮設テントを設営している。

余談だが、座長マスカットは【アルカトラズ】に対して強気の交渉をして、かなりの補償金を獲得したらしい。


シギラの行動についてはガルフ族側で全てを把握している者がいない事もあり、大きな問題にはならなかった。

攻略階層への逃亡は前代未聞だが、ドラド内であれば結構な頻度で脱獄していたようで、そこまで疑問視されていなかった。

それはそれとして"巫女の岩戸"に大量の冒険者を招き入れた事が発覚したため謹慎処分を受けている。外部の我々へはメッセージでのやり取りとなった。

どうやらシドは復活したようだ。


【バレルロード】は……バーナードが49階層にいる事を知ると、息巻いて階層攻略を開始した。

マスターはスカーレットの恋愛事情について心配しており、別れる数時間前まで「もうスカーレットとグレンに記憶ぶち込んだ方が早くない?」と悩んでいたが、「やってる事がハヤテレベルだ」とライズから指摘を受けて断念した。


バーナードはあれ以来49階層に定着。レイドボス"カースドアース"としての仕事を確認中らしい。【Blueearth】側への敵意は無く、レイドボス勢力とバグ勢力との対話交渉の可能性がある事から、天知調によるサポートを受けている。


あの時切り落としたバーナードの片腕は天知調による解析によって活用され、あらゆるバグ勢力の炙り出しと排除に貢献しているらしい。尚切られたバーナードの腕は3日ほどで復活した。


【夜明けの月】の出発は明日となる。2名の協力者を抑え、明朝出発予定だ。




──◇──




【第49階層サバンナ:静かな荒野】


「やっと会えたわね、バーナード」


……骸骨の船守に引かれ、運命の相手がやってきた。

姫花……スカーレット。或いは【バレルロード】。


「……約束を破ったか。悪い子だ……」


「ここで果たすわ。【決闘】なさいバーナード」


……そうだ。このままでは【バレルロード】は先に進めないのだった。

しかし困った。今の俺はレイドボス。"わざと負ける"が出来ないな……。


「スカーレットちゃん、本当に大丈夫?」


「ええ。コノカ達はここで待ってて」


スカーレットが1人で俺の前に立つ。

……今考える事ではないが。俺の彼女が、可愛すぎる。

可愛すぎる。


「……バーナード。【真紅道(レッドロード)】はどうしたの?」


「……脱退はした。半分冒険者辞めているようなものだからな。名前と席は……まだあるらしい」


「そう。じゃあ良かったわ」


スカーレットの体が──白く、光る。


スカーレットは【ガンスリンガー】……二丁拳銃の使い手だった筈だが。ありえないものをその手に握っていた。


「レンジャー系第3職【ブレードガンナー】。今日この日の為だけに転職するのは大変だったんだから」


スカーレットの左手には──白い劔。

【アルカトラズ】"拿捕"の輩の──ブランのそれと同じ。


「手段選ばないから。フェイ!」


「なのだっ」


遠くからフェイが俺に何かを投げつける。

キャッチしたそれは──砲台と、片手剣。俺のものだ。


「【真紅道(レッドロード)】本部に残してた、あんたのスペア用よ。ちゃんと"バーナードとして"闘いなさい」


……天知調。

好き勝手とは……こういう事か。


「すっごく痛いらしいから──覚悟しなさい」


「……良いだろう。帰る準備も忘れるな」




──光の円が、俺とスカーレットを囲む。


決闘開始のブザーが鳴ると……スカーレットの姿が消えた。


「跳躍か」


砲台の砲身で上空からの射撃を受け止める。

……本来【ブレードガンナー】は銃と片手剣を同時に使うだけのジョブ。あそこまで飛び抜けた跳躍スキルは無かった筈だ。

……あの白き劔は、色々と反則のようだな。


「初見で見切ってんじゃないわよ!」


だが使用者はスカーレット。剣の扱いなんて付け焼き刃だ。

飛び降りながらの剣を、俺の剣で受け止め──


──受け止め……られない。


白き劔が剣をすり抜けて……俺の体を切り裂く。

白き劔は……そういうタイプか。

ゲームの土俵には上がるが……悪を相手に真面目に取り合うつもりは無いと……!


──『"バグ側"の力なら対抗できますよー』


うわなんか割り込んできた。


──『あっヤベ逆探知された。失礼します頑張ってー』


……なんなんだ。

ともかく。生えたての右腕に武器をイメージする。

腕から手に……手から指に……指から柄に……柄から刀身……その先端まで──


「ホラもう一発!」


「甘い……!」


白き劔を──黒の刃で受け止める。

【ブレードガンナー】なれば……二手目を出せるか?スカーレット……!


「くっ……【クイックファイア】!」

「【海賊流儀(マーシャルパイレーツ)】!」


右の片手銃は……比較的大振りな左の剣の隙を補うもの。だが早撃ちとはいえ発動が遅かったな……。

"持つもの全てを振り回す"こちらのスキルの方が早かった。おかげで距離を取れた……。


「……予定外に弱い。新たなジョブが悪いとは言わないが……元の姫の方が強いぞ……」


「テキトーこくな。この劔が無いとアンタに届かないでしょ──()()()!」


「──!!!」


今……何と……!


「隙あり! 死ねぃ()()()()()!」


「ぬっ……」


硬直した俺の隙を逃さず左の剣。剣で受けて……スカーレットの右の銃を、大砲で丸ごと吹っ飛ばす。


「行けると思ったんだけどね。手強い!」


……スカーレットは気付いていないのか?

……そうか。白き劔。運営用チート装備が、記憶のロックを外しかけているのか……?


──────

『一々考えてる暇あったら私に言いなさいよ。聞いてあげるし、応えてあげるし、叱ってあげるわ』

──────


……まぁ、いいか。

何もかも考えすぎだ。


「……()()。お前は何時だって俺を導いてくれた」


「ヒメカって誰よ。おりゃ!」


白き劔……を囮にした銃撃。

劔を左の樹木の腕で絡め取り、右の剣を大振り。

剣を手放して回避する姫花。白き劔は消滅し再び姫花の左手へ。


「……全てを忘れたお前を、見守ろうと思った。だがダメだった……。俺を見ないお前を、見たくなかった!」


距離があれば銃撃戦だ……。大砲を放ち姫花の退路を断つ。

当然姫花は突進する。


「……ちゃんと言えたじゃない! ()()()追い込まれないと本音が出ないわよね、()()()!」


「これでもマシな方だ……。お前ら兄妹がどんどん追い込んでくるからな……!」


姫花の攻撃を跳躍回避。

──砲撃の雨。錨を下ろす。


「【ドロップアンカー】! ……喧嘩もしたな! 4つ下の女に、よくもまあやったものだ!」


──砲撃を切り裂き。

光が一筋。


「……そして……俺は、お前に勝てた事は無かった」


「ふざけんな。本気で喧嘩なんて……してくれなかったじゃない」


白き劔が……俺を貫く。




決闘の終わりを告げるブザーが鳴る。


……ああ。ただ本音で話すというのは。

難しいものだ……。




──◇──




「じゃあ行くわよ()()()


動けない俺を無理矢理起こして、フェイとコノカに担がれる俺。

白き劔はもう消えていた。


「……どこまで思い出した?」


「この世界の話はね、【夜明けの月】と【ダーククラウド】からハブられた時に盗聴したから何と無く知ってるのよ。

変な連中が変な話してるって思ったけど、なんかアンタの事だけは思い出したわ。それ以外はさっぱり」


……なんとも粋で酷な事をする。

そこまで思い出させておいて、俺は姫花を送り出す事しかできない……。


「ほらさっさと自分で歩きなさい。50階層(アクアラ)は砂浜なんだから、おぶってられないわよ」


「……いや……何を言ってる? 俺は"カースドアース"で……」


「そのために白き劔を借りたのよ。アンタのその辺の最低限の拘束はもう切り裂いたわ。

まぁ多少は世界に不都合が出るかもしれないけど……知った事じゃないわね。

思い出した以上、もうアンタと離れるわけないでしょ。さっさと行くわよ、五三郎」




……なんとも。


……なんとも粋で、酷で……。




「ようこそ【バレルロード】へ。吐くまで働かせてやるわよ、新入り」




……泣ける、ハッピーエンドだ。



~外伝:徒然城下町日記4~

《カリスマ厄介オタクストーカー現る》


【第0階層 アドレ城下町】

──西大通り南側裏路地

──獣人種交流カフェ【DogDay】


獣人種やそれに近い有毛種が経営している犬猫カフェ。

店長はウェアウルフのテンさん。粗暴な見た目を気にして始めたカフェは大通りから外れてこそいるけど、隠れた人気スポット。

厳つい店長のデザインした店内は可愛くてキラキラ。デートスポットに最適!


「キラリちゃん。また取材か? 御贔屓にしてくれて嬉しいが、あんまり向いてないだろこの店」


「ノン! 取材じゃなくてデェートだから!」


オキニのウサギヘアゴムでツインテールにして、今日もカワイイ私!

意を決して入社した【井戸端報道】でもチヤホヤされてるもの! 世界二カワイイ私!


「こんにちわ! お待たせキラリちゃん。待たせちゃった?」


慌てて入ってきたのは私を差し置いて世界一カワイイ私のアイドル──ラビちゃん!

ああんラビちゃん! ちっちゃいカワイイ! なのにむちっとしててカワイイ!

あらー今日はオーバーオールなの! ぶかぶかでかわちいねぇ!


「ううん、今来た所だよ」


「キラリちゃん1時間前には来てたぞ」


「店長!」


「うひぃ殺意。ごめんて」


何人たりとも私とラビちゃんの逢瀬の邪魔はさせぬ。


……ラビとは長い付き合い。承認欲求モンスターだった私が一目惚れして以来ずっと(一方的に)つるんでる。

でも推しの邪魔にはなりたくないから、陰ながら応援。こうやってデートするのも週に一度に留めるの。


「……こうやってお話できるの、嬉しいねキラリちゃん。無事就職できて何よりだよ。【玉兎庵】で働いても良かったのに」


「ラビのいる所だと私が霞んじゃうじゃん。私は私の道を歩まないと」


毎日ラビちゃんの無意識0距離ファンサービスの機会を蹴った私を誰が責められようか。

推しの過剰摂取は汚れた肉体の許容限界を超えてしまう。命大事に。


「でも、意外だったな。【井戸端報道】ってほら……キラリちゃん苦手そうだったし」


「配属は第7編集部──"アドレ非攻略派区画"だから。攻略勢と関係持つ事は無いからね」


──攻略組と非攻略組。この間には深い溝がある。あるいは触れたくない傷痕?

とっくに塞がったとはいえ痛ましい傷痕を触ろうとする人はいない。

私だって別にもうその辺の垣根はどうでもいいけど……立場上、気にしてませんとは言えないのよね。


「【井戸端報道】にはね、二つのシンデレラストーリーがあるのよ。二人の美女の伝説ね」


「伝説?」


「一つ目は僅か数カ月で第1編集部長補佐になった太陽の女神、タルタルナンバン先輩!

とんでもないナイスバデーと前向き明るい太陽のような性格で人気を博し、【井戸端報道】裏人気投票で首位独占していた女王を打ち破り優勝した昇竜!

あの"アドレ噴水広場決闘事件"で新人ながら現場指揮を務め、"【鶴亀連合】陥落事件"では主要陣の独占インタビューを担当。"岩窟大掃除"ではたった一人で取材から編集校正まで全てこなした怪物!

そして現在は第1編集部長補佐。閃光の如き駆け上がり成り上がりってわけ!」


「すごーい。あの噴水広場の事件の人かぁ」


今となっては昔に感じるけれど、そう古い話でもない前の話。

中央噴水広場で繰り広げられた、攻略勢最高峰【象牙の塔】のブックカバーと、当時無名の【夜明けの月】ライズによるアドレ全体を巻き込んだ【決闘】事件。

あの時は第7支部も捜索のために片っ端から駆り出されたみたいで、実際にタルタルナンバンさんの指示を受けたという先輩もいた。

一目でいいから会ってみたいなぁ。


「二人目は月の女神。幾度となく挫折しても立ち上がった地伏竜。パンナコッタ先輩!

かなりの古株なんだけど……ダウナースレンダー美人なんだけど、自分にも他人にも頓着のない人で……裏人気投票ではちょいちょい優勝するし3位以下になった事が無い超美人なんだけど、記者としては評価されなかったの。

対人取材が特に致命的で、編集側に異動になったんだけれど……資料の整理と把握が化け物すぎて、"記録員"なんて役職を作り上げたのよ!

そこからは書庫の番人として名を馳せて、遂には局長お付きの秘書にまで成りあがった!

……んだけど、ドーランの騒動の後にドーラン監視役として任命されちゃったの。

そしたらきっと不満ふだったのね。【井戸端報道】抜けて今や【井戸端報道】と兄弟関係にあたる【朝露連合】社長と一緒にギルドを立ち上げたの!

厳密には【井戸端報道】を抜けた人だけど、そのロックなストーリーには未だに寝強い人気があるわ」


「すごい人なんだねぇ」


犬と戯れるラビちゃんが可愛すぎて死ねる。

が、耐えた。


「……そして、その二人がアドレに戻って来なくなった事でアドレの第7編集部と第6編集部は業績ガタ落ち!

そこに世界二カワイイこのキラリが君臨して、第三の女神になってやろうってわけ!」


「わぁーぱちぱち」


ちっちゃいおててで拍手するのかわちいねぇ!

んん指がぷにっとしててかわちいねぇ。新商品のちぎりパンかな? 味見していい?

止まれ内なる変態。これ以上は(変態)が相手よ。

……ふぅ、危ない。ラビの指にむしゃぶりつく所だった。


「そんな凄い所に配属されたんだねぇ」


「ふふん。私万能だから? 攻略勢と関わらなければどうってこと無いわ。

それよりラビは大丈夫? 最近【祝福の花束】に行ってるらしいじゃない」


本題。

新聞記者になってさらにラビの動向が掴めるようになったけど、本当に心配なのはここ。


「あー、えっとね? キラリちゃんが思ってるほど怖い人じゃなかったよ」


「……そう。本当なのね?」


「うん。心配してくれてありがとう。そうだ、今度一緒に──」


「だめよ」


本当は、攻略勢が悪い人だらけなんて思ってない。

でもそれを私が言ってはいけないから。


「私は"非暴力のカリスマ"だから」


「……そっか。ごめんね」


傷痕を作った原因が、ファンを投げ捨てて目を反らす訳にはいかない。


「じっくり時間をかけないとね。【井戸端報道】に入ったのも、うちのファンにゆっくり現実を知らせるためでもあるの」


「立派だなぁキラリちゃん」


えへへ。ラビちゃんに褒められちゃった。撫でられちゃった。ばぶぅ。

脳内で原始回帰が始まる私の頭を撫でながら、ラビちゃんは何かに気付いた。


「あ、キラリちゃん。その髪留め、うさぎちゃんなんだね。お揃いだ。ぴょんぴょん」


両手を頭にあててうさ耳っぽくぴょんぴょん、照れながら。


……。


ガ゛ワ゛イ゛イ゛の゛は゛お゛前゛だ゛よ゛!!!!




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