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BlueEarth 〜攻略=世界征服〜  作者: まとかな
岩壁都市ドラド/サバンナ階層
115/507

115.チート野郎とガバだらけのオリチャー

【第48階層サバンナ:飛ぶ聖域】

──────

地を割り芽を出す怪植物は地獄の様相。

天へ並び飛ぶ島々はさながら天国への階段。

しかしそれは地獄からの尖兵。

昇るも降るも悲劇に相違ない。

──────


──シド消滅まであと12時間。


「どうですかシド。体調は?」


「大丈夫ですエリバ。物質データは最後に削れますので、体調を崩したりとかはしません。内部データは無事瀕死ですが」


空飛ぶ島──飛行植物が根を絡ませたままなだけみたいだけど──が天まで続く。

"ぷてら弐号"に吊るされて屋台車も上昇していく……事は無く、停滞中。


シドは外面は平気そうだけど……今日の24時丁度に消滅しちゃうのよね。それがシドの望みとはいえ……。


「……全員注目。今ドラドの【バレルロード】から連絡が入った。なんか知らんがスカーレットが連絡取れないらしい」


「スカーレットが?」


【バレルロード】はシギラの面倒を見て貰っていたけど、何でピンポイントにスカーレットだけが?


「"巫女の岩戸"にスカーレットが閉じ込められた。チャットもメッセージも通じないし……内側から開かないって事はシギラに何かあった」


「──シギラは無事なんですか!」


「落ち着けシド。俺からだとわからん。だがこうして俺たちまでそれが伝わってるって事は、そうなる可能性を考慮してたんだろ。

真紅道(レッドロード)】がドラドに到着した。昔スカーレットが人質に取られた時と同様に……あいつらは犯人を絶対許さないだろうよ」


このタイミングで何か起きるとするなら、やっぱりバーナード? でも不自然よね。


「シギラかスカーレット。狙いは……多分シギラね。あの岩戸に侵入できるのなら脱出もできるハズ。岩戸の中にはスカーレットが残されてるか、或いは纏めて誘拐されてるか。

でも狙いがおかしいわ。今あたし達はバーナードの都合の良い方向で進んでる。シギラとシドの関係を知ってるとも思えないし、人質に取る理由も無いわ」


「……それは……シド、もしかして」


「そうだね。ドロシー。もう隠しきれないか」


ドロシーが兼ねてより言っていた、シドの秘密。

……何となくあたしは察したけど。本人が言う覚悟できたなら遮る理由は無いわ。




「……シギラが誘拐された理由は人質じゃない。

──彼女こそが、最初に"データの池"に落ちたんだ」




──◇──




──データの滞留。

実はそれ自体は前々から各所に存在していた。

でも開発者であり現在進行形で修正をしているのは君たちの言う大天才、天知調。滞留ポイントを無人の場所にずらすとか色々やっていたんだろうね。

……私の中のログを見るに、サバンナで発生したデータの滞留は意図的なものだ。




サバンナでは半年に一度くらいの頻度だったデータの滞留が──僅か2日で()()発生したのだから。





「シギラとシドは、それぞれ別の"データの池"に浸かったって事か?」


そうなるね。

意図的と言ったのは、あまりに都合が良すぎるから。

両方とも私を狙ったのだろうけどね。目的はこれまで散々話されていたものだろう。つまりは"カースドアース"の復活。

最初はドラドの地下にいた私を狙って"巫女の岩戸"自体を"データの池"で沈めたんだ。

ここで向こうにとって最初の誤算。当時は敬虔な信徒だったシギラが、私だけを助けたんだ。私、ドラドの神様だからね。私だけは浸からないようにずっと持ち上げていたよ。


「シギラの行動はNPCの範疇を超えていた。前代未聞の逃亡に、侵入禁止の岩戸への他者受け入れ。役割のある重要キャラだろうに、明らかにルールを逸脱していたわ」


バレてたかぁ。

それでシギラは……そもそもあまり賢く無い子だから。あまり知識を活かしたりはしてないけど、とにかくここで一番重要だったのは──私が"カースドアース"である事に気付いたって事だ。

シギラが逃亡したのは、ドラドを守るためだ。私をできるだけドラドから引き離そうとしたんだ。本能に近い自己犠牲。


向こう側は次の手に打って出た。もう一度データの滞留を起こしたんだ。既にデータを蓄えたシギラはもうデータを吸収できる容量が無いからね。

向こうは完全に復活した私が欲しかったのだろうね。今思えば、あの段階でシギラを誘拐していれば終わっていたというのに。

衰弱しきったシギラは私をデータの滞留に投げ入れて意識を失った。そして私が生まれ──バーナードが現れた。

そこからが向こうにとっての第二の誤算。バーナードは私の角を奪い取り、そのまま私を逃したんだ。何を考えているのかわからないけど命の危機だ。当時はまだ"カースドアース"に戻ろうとしていた私は、シギラを連れて逃げ出した。

歩くのも下手くそな私を見失う訳無いよね? 私はきっと逃がされたんだ。


「ちょいと待ってくれ。アンタの言い方だと、なんか……まるで……」


()()()()()()()()()()()()()()()……って事でしょうゴローさん。

それはあたしも同感よ。確証無かったから言えなかったけど、バーナード一人じゃ出来ない事ありえない事が多すぎるわ」


「……だったら五三郎(バーナード)は無実なのか!?」


「まだわからないわ。その辺は直接聞いてちょうだい」


……よろしいかな?

では続きだ。

私はシギラを利用して"カースドアース"本体を目指した。のだけれど、バーナードを警戒してとびきり大回りしているうちに……まぁその、シギラに惚れたと。この辺はもう話したからスキップするよ。

なんやかんやドラドに帰ってきた頃にはもうシギラを守る事しか考えてなかった。

私は私の死期を悟った。私が消えれば"カースドアース"の復活はナシになるが……シギラがいる。私が消えたらシギラが狙われてしまう。それだけは回避したい。

そこで既にお話しした"乗っ取り後自殺作戦"です。ただ、作戦中シギラを守ってくれる人が必要でしたので……皆さんを利用した、という事です。




──◇──




「これで全部ね?」


「はい。嘘偽り過不足無く全て。その上で、恐らくシギラは攫われたのでしょう。ここからが問題です」


屋台車の窓からはサバンナが一望できる。遥か遠くに米粒みたいに小さな赤い岩。あれがドラドよね。


「連中がシギラを攫った。シドが"カースドアース"に向かっているこのタイミングで。それはつまり、こっちの狙いがバレているかもしれないって事か?」


「いえ、ガバガバチャートっぷりからしてそこまで賢く無さそうです。どちらかと言えば……シギラ誘拐犯とバーナードが仲違いしていると考えるべきではないでしょうか。

バーナードが上手くいきそうで、ガバい方が必死になってるのでしょう」


「"なんか知らんけど上手く行ってるバーナード"vs"なんか知らんけど全部裏目に出て必死なガバい方"って事か。面白ぇー」


「笑ってられませんよ。形振り構わないという事は──本体では無く、各階層に存在する端末を目覚めさせる方向に行くかもしれないという事です」


「それ対策済みな」


エリバさんの点てたお茶を飲むライズ。対策? 知らないんだけど。


「こうなるとは思って無かったが……【植物苑】が発明した、"一時的にセーフティエリアが消えてしまう除草剤"を近辺のセーフティエリア……つまりは"カースドアース"の端末にばら撒いてる。効能の程は体験したろ」


「……ドロシーが使った、あの除草剤ですか。確かにあれは"カースドアース"端末の性能を一時的に消滅させる程の激物」


「そんなに危なかったんですかアレ」


……シドがまだ【Blueearth】崩壊を企んでいると踏んでこっそり始めた作戦なんでしょ。よくやるわ本当。


「……じゃあ向こうさんは三度目の誤算か。どのくらいのワープが出来るのかは知らねぇが、俺たちより先に"カースドアース"本体までワープしちまったりしねぇかね?」


「その辺も大丈夫……だと思う。【パーティハウス】には警備頼んでるからな。【真紅道(レッドロード)】にも今チャットを送った。来るなら"カースドアース"本体しか残されて無いからな」


どっちに転んでも【パーティハウス】は爆散しちゃうんだけど、その辺伝えてるのかしら。伝えてる訳ないか。

ごめんねマスカットさん。成仏してね。


「……良し。改めて整理だ。敵の行動の矛盾から、敵勢力は複数。現実の記憶とシドの欠片を持つ普通の冒険者バーナードと、ワープしてシギラを誘拐したチート能力持ちなのになんか誤算ばっかのオリチャー野郎。いくらチートといえ上にゃ天下の天知調がいる。お手上げな程に理不尽って事は無いはずだ」


「目的は依然変わらず、シドを"カースドアース"化させて自害消滅を待つ。変わったところとして、"カースドアース"が目覚める要因であるシギラも49階層に向かってるって事ね」


「問題はチート野郎と戦えるのか、だろ。俺達はゲームの範疇でしか戦えねぇ。相手がそもそもゲームの存在じゃなかったらどうすんだ?」


「……answer:75%で対処可能と断言します」


普段は静かにしているゴーストが、自発的に発言した!

なにかしらどうしたのかしら。びっくりしたわ。


「【Blueearth】は元々、【NewWorld】侵略ウィルス──より適切な表現をするならば、"【NewWorld】のセキュリティシステムを無理矢理ゲーム化させるウィルス"です。

俗称"チート野郎"がもしもゲーム外行動を取れば、それは天知調(ゲームマスター)に察知されてしまいます。逆にゲームデータに置き換える事が出来たのならば、行動を起こすまでは【Blueearth】に溶け込み隠れる事が可能です。

更に。"チート野郎"は既に最低5度のゲーム外行動を取っています。データ滞留発生2回、"巫女の岩戸"侵入2回、スカーレットの連絡阻害1回です。流石に天知調(ゲームマスター)に察知されていると推測します。恐らくは無闇にゲーム外行動が出来なくなるようなペナルティが科されたいるでしょう」


……希望的観則、とは言えない。あのお姉ちゃんを前にして6度目の狼藉が通る訳無い。あるいは同じジャンルの行動に3度目が無いとも言えるわね。


「つまりは、シドが死ぬまで俺たちで耐えればいいって話だな。気合い入れろよ」


「任せろ。攻撃が通るってんなら"最強"見せてやんよ」


頼もしいわねクローバー。

相手が何をするのか全くわからない。その辺はあたしの役割ね。適切な指示をしないと。


──屋台車は天へと登る。

シド消滅まであと──5時間。




──◇──




──ああ。

──ああ、なんて事だ。

──おのれ天知調。偉大なる祖から頂いた私の身体がボロボロだ。


「離せ! おらおら!」


──暴れないで"赤土の巫女"。

──ここで落としたら私も貴女も帰ってこれなくなりますから!

──もうこのワープもこれっきり。次外に出たら二度と使えないんだから!


「むぅ……じゃあやめるけど。どうするつもり?」


──あっ、聞き分けがいい。

──……そうですね。ハッキリ申し上げて負け戦なのですよ。

──だってどう足掻いてもシドが本体と接触しちゃうもん。

──バーナードは当然受け入れちゃいますからね。


「諦めるの?」


──まさか!

──私の目的は【Blueearth】に混沌と破壊をもたらす事。

──復活が確定しているのなれば、そこをバグらせてしまいましょう!

──復活した"カースドアース"に貴女をぶち込んでバグらせるのです。きっと想定外に延命できてしまう。消滅までの時間を稼いでしまいましょう!


「それやるとして、どうやって近付くの?」


──なんか乗り気?

──……そんなもの簡単ですよ。バーナードの近くに潜むのです。両陣営が接触すればノータイムでシドを本体に送るでしょう?

──そのタイミングでここから向こうに出現!

──貴女を"カースドアース"に撃ち込む!

──ついでに近くのバーナードに一撃入れちゃいましょう!ムカつくから!


「清々しいほどカスだねお前!」


──はっはっは。悲しい。

──私だってもっと余裕持ってやりたかったですよ。

──()()()()()()()()()()()()


「……可哀想だねお前」


──貴女は自由ですね。

──全てを思い出して尚、逃げられない箱庭のお人形。

──似たもの同士、ですか?


「そうかもね。だったらお前も……恋したら?」


──恋。


「そうそう。恋したら何でも出来ちゃうよ」


──だとして、もう時間もありませんね。

──惚れてもいいですか?


「やーだ。私はシドのものだし、シドは私のもの!」


──肉食系!

──……初めての失恋。なるほどこれは。

──なんか何もかもどうでも良くなりますね。


「へへへ。でしょ?」


──へへへ。

──さあて哀れなピエロらしく盛り上げて行きますか!


「ごーごー!」



~ジョブ紹介【聖騎士】~

《寄稿:【真紅道レッドロード】団長グレン》


王道にして正道。【真紅道レッドロード】の団長を務めております、グレンだ。

今回は三種の神器と名高い【聖騎士】を紹介するよ。

【聖騎士】はウォリアー系第3職。第2職は【ナイト】からの派生で、特殊な入手条件の無い基本職だ。

剣・槍・斧に盾。基本的な運用は【ナイト】と変わらないな。

何故三種の神器足り得るか。それはあまりに万能だからだ。単体性能がかなり高いという事だな。

戦闘は元より防御、光属性のエンチャントが可能。それによる回復や解毒も多少は可能だ。

対近距離には単体性能の差で押し勝ち、銃などの遠中距離は距離を詰めるまで攻撃を防ぎきれるだけの耐久性能を発揮。

魔法相手には受けきるだけのエンチャントレジストを有する、単体完結アタッカー&タンクだ。

つまりは強いから強い!


・アビリティ

・"聖女神の加護"

聖騎士の固有アビリティだ。デバフや呪い等に対する耐性が付く。このアビリティだけでは心もとないが、他のアビリティや装備と併用する事でデバフへの完全耐性となる事も可能だ。

その他、闇属性の耐性など細かな特典が様々。


"不撓不屈"

こちらは大盾装備時のステータスアップ。武器弾き・ノックバック・スタンに耐性が付く防御強化アビリティだ。

とはいえ大盾は一切攻撃ができないピーキー装備。装備とアビリティの付け替えも時間がかかるから、完全にタンク一本の人が使うアビリティだな。

タンクといえば【フォートレス】があるが、このアビリティがあれば匹敵する所まで行けるだろう。


・スキル

騎士の咆哮(ナイト・プライド)

ウォリアー系列お得意のヘイト集中スキルだ。ターゲット集中が決まった敵の数だけステータスアップ倍率が上がる。

硬直時間も少ないので、どんどん使っていこう。


【ブライトカリバー】

光剣を振り下ろす大技だ!

タメも必要だし、かなりMPを浪費するし、隙も大きい。だが当たれば高火力!

防御貫通の光属性の物理/魔法混合攻撃。【サテライトガンナー】がいない場合はこれで代用する事になるよ。


【聖騎士守護陣】

自己回復の結界だ。数名なら一緒に回復できる。ついでに闇属性の攻撃なら防げる。

だがそもそも【聖騎士】は魔法に向いていないので、サブジョブをマジシャンかヒーラー系にしていないなら推奨しない。

逆に言えばサブジョブで十分運用できるという訳だ!


以上のように、ターゲット集中、決定的火力、自己回復と前衛に求められる性能を全て持っている。

だが上手く扱うには本人の技量が関わってくる。ジョブの強さに慢心してはいけないよ。

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