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未完の英雄   作者: TKN
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未完の英雄 第一章 「子供と精霊術師」 第1話 「分断」

どうも、TKNです。感想を頂き訂正箇所まで、ご丁寧にお教え頂き、有り難う御座いました。


さて、第一章の始まりとなります。


今回は、前回に引き続き複線を扱い。

 場を盛り上げる要所にて収束させる事は勿論。


人間臭さを出し、

 色々なキャラクターに愛着を持って戴ける様、心がけ。


 必要の無い文章を削り、小説自体の分割にも気を配り頑張ります。


では、第1話 「分断」 どうぞ、宜しくお願い致します。


貴方は、どれくらい星座を知っているだろう。

 誰もが知っている星座。それすらも判別がつかない程に、

  無数に散らばるまばゆき星屑の夜空。



その遥か下、

 手を伸ばせば、手の先が見えなくなる程の漆黒。


穏やかな海原を走る蒸気船。フォルゼア達の乗る船。

 


その船の内部の食堂で、軽装・・いや、

  洋服を着たディアナが、不服そうに正面に座るフォルゼアを見る。


それに対し、何食わぬ顔で、夕食をとるフォルゼア。


「ねぇ、食べる時ぐらい脱いだらどう。その鎧。」


不服の原因は、食事の時にまで鎧を着込んでいるフォルゼアにあった。


「ぶわははは。この娘。奴に鍛えられただけあって、骨の髄まで戦人であるな。」


笑うガラテアに対し、冗談じゃないわよ。とばかりににらめつけるディアナ。


「僕はそういう頑固さが彼女の良い所だと思うよ。」


ディアナの椅子に立て掛けられた白い剣もフォルゼアを庇う。


「度が過ぎておるわ。」


それに反論するガラテア。


「確かにねぇ。」


残念な様に白い剣に相槌を打つディアナ。


そんな不思議なやり取りを見て、

一人の男、茶色の七対三で整えられた髪。如何にも真面目そうな、

 三十代ぐらいの初老を迎えた、学者風の男が歩み寄り声をかけてきた。



「これはこれは、お若くもお美しいお嬢さん達。船旅ですかな。」

そういうと、フォルゼアの方を見て、少し首を傾けつつ、こう言った。


「優雅な船旅・・では、なさそうですね。」

と、言うや否や、男は軽くお辞儀をして自己紹介をする。


「おっと、失礼。初めまして。私は、セド。セド=エグニスという、学者で御座います。」

その素振り、誰かに似ている様な、そうでない様な。

 そんな感じを受けつつも、自己紹介するディアナ。


「ご丁寧に。私は、ディアナ=グラバドール。そっちの無愛想なのは・・・。」


性格か、また意地の悪いヘソの曲がった事を言おうとするディアナ。

 それを止める様に、セドの言葉が阻む。


「彼の大陸、イルドニア。

その大陸の動乱を平らげ、欲に溺れた暴君を改心させた赤の騎士。フォルゼア=レッドノート様ですね。」


怪しい、とばかりにディアナが試す様に問う。


「どうして判るのかしら。 誰かさんの差し金かしらねぇ。」


セドは、髭を丁寧にそっている清潔な顎に右手をあて、首を傾げつつ、こう答えた。

「はて、何の事でございましょう。

 私はただ、イルドニアに用事があり、赴いた先、その名と容姿を知るに至っただけで御座います。


いや然し、是非にでもお会いして、その崇高なお心を学びたいと思っておりましたが、結局会えずじまい。」


本当にそうなのか、残念そうな表情をした途端、

 大きく華奢な体を左右に開き喜びを身体で表しつつ、

 大きめな声で、片方の手の平をフォルゼアに向ける。


「しかしながら、願い叶ったり。

 是非とも、是非とも赤の英雄様のご高説を後学の為に聞きたいと、まかりこした次第で御座います。」



我関せずと、黙々と食べていたフォルゼアも何事かとセドの方を向く。


期待に目を光らせ、胸を躍らせるセドを見て、ややゲンナリした素振りで問うディアナ。


「あ~…、その赤の英雄様の性格とか知ってますの。」

それに対し、何も知らぬ事を全面に出しこう答える。


「いえ、全く存じておりません。が然し。」

その問いに否と答え、右拳を強く握り締めこう続いて語るセド。


「一つの大陸の動乱を平らげる程の英雄。

 一人の暴君を改心させた賢人。

 惜しみなく富を分け与える慈悲深い人。

 幾度の絶望にも負けぬ折れぬ心を持つお方。

 それはそれは素晴らしい方に違い無いと私、セドは信じて疑いません。」


どうやら、エルドの詩でも聴いただけのようだ。

本当に知らない眼差しで、フォルゼアの口が開くのを、今か今かと待ち望む。


「…。」


見事に裏切り、黙々と料理を口に運ぶフォルゼア。

 それを見て、口元を押さえて笑うディアナ。


「こういう性格ですのよ。戦い以外には無関心・無頓着。その上、鈍重で鈍感。

  ドレイクも裸足で逃げ出す鈍さですわ。そして、どうしようもないお人好し。」


言葉とは妙な物。セドの連ねた言葉。

ディアナの連ねた言葉。受けた印象は違えど、意味は同じ。


そして。そのディアナを睨むフォルゼア。そして尚、感動と喜びを露にするセド。


「素晴らしい…己が全てを戦いに捧げた一振りの剣。という方で御座いますね。」


苦笑いをしながら、答えるディアナ。


「ええ、まぁ、体よく言えばそうなるわね。」


「素直に戦馬鹿と言ったらどうだ貴様。」


耐えかねたガラテアが、ディアナの言葉に連ねる様に言う。

その言葉に不思議そうに辺りを見回すセド。


我はここだといわんばかりに、自分の位置を教えるガラテア。

 驚き腰を抜かさんばかりに、目を丸くし大げさな仕草を見せるセド。


「おお。もしや、貴方が赤の英雄様を支えた優しい死神。ガラテア様で御座いますか。」


なんとも順応力の高い学者。いや、順応力が高いから学者というべきか。


「いかにも、我が…いや、その名前は余り呼ぶな。気が滅入る。」

優しい死神。という呼び名を気に入っていないのか、不服の声を漏らす。

 それに謝罪するかの様にセドは答える。


「それは申し訳御座いません。ではガラテア様で宜しいのですね。」

納得するガラテアに、白い剣が今度は不服を申し立てる。


「あのさ、赤の英雄様だけじゃ無いと思うんだけど。」

その声に、ディアナの足元を見るセド。


「む。まさか、いやこれは失礼しました。

 私はてっきり、そちらの女性は赤の英雄様の従者かと思っておりましたが。」


その言葉に眉間にシワをよせるディアナ。

「じゅ…従者。」


「従者じゃないよ。僕達も似たようなものだよ。」


僕も褒めてと言いたい様に、自分の存在をアピールする白い剣。

 それに勘付いたセドは、こう答えた。


「確か、皇帝ベルグランの傍に、一人の白い騎士が居た。

 そう覚えがあります、もしや。貴方があの白の聖剣。クラウ・ソラス様ですかな。」


その答えに、白い剣はこう答えた。


「ううん、クラウ・ソラスは別にあ・・・・」

影で白い剣を軽く叩くディアナ。

慌てて、訂正する白い剣。


「うあ、え、あと。その。うん、そう。」


軽く首を傾げセドは言う。


「ふむ。何か教えられない事がおありの様ですね。

 大変興味深いですが、いつしか語られる事がありましたら、一番に地の果てまで飛んで参りましょう。」


軽く礼を言う、ディアナ。 そして、食事を終え、ガラテアを手に席を離れるフォルゼア。

「あ、お待ちください。是非ご高説を承りたく。」


慌てて、後を追っていく、セド。少し羨ましそうに微笑むディアナ。


黙り込む白い剣。


それを見て、ディアナは白い剣に言う。

「だめよ、エルドと約束したでしょう。喋ったらダメな事。

  例え、自分が褒められなくても、我慢なさい。」


不服そうに答える白い剣。

「でも、ディアナだって頑張ったじゃないか。すこしぐらい。」


少しため息をつき、間をあけてディアナは優しく白い剣に教える。


「昔、亡くなったお父様に寝る前に良く聞かされた事。

 今の貴方、子供の頃の私に良く似ていますわ。」


不思議そうに尋ねる白い剣。

「子供の頃の君に。」


その言葉に、優しく微笑みを白い剣に向けて語る。


「そう、簡潔に言うと、我慢をしなさいという事。

 あの頃の私は、自分の才能に溺れていたわ。


同じ年どころか、大人の人とも互角以上に渡り合える力があったの。

 フォルゼアは防御。ガラテアは攻撃力。」


それを知っている白い剣は答える。

「うん。ディアナ、君は速力に秀でているからね。神速果断、それに一つの剣閃に無数の刃を伴う程の速力。」


微笑み、少し残念な様に答えるディアナ。

「けど、フォルゼアに簡単に負けてしまったけどね。それを上回る防御と攻撃力で。」

慌ててフォローをいれる白い剣。

「それはガラテアの力もあったからだよ。無かったら絶対君が勝ってるよ。」


軽く礼を言い、話を続けるディアナ。


「ありがとう。でも仮にそうだとしても、慢心はいけないわ。


 そして、続きだけど。そんな力があってもやっぱり子供だったのよね。


見て欲しい、知って欲しい。自慢したかった。お父様やお母様に何度見せた事かしら。

 その度に、頭を撫でて褒めてくれた、あの優しい目と大きな手を、忘れないわ。」


続きを早く聞きたがる白い剣。

「うんうん。僕には親っているのかな。わからないけど、褒められるのって嬉しいよね。」


軽く相槌を打つディアナ。


「そうね。褒められたらやっぱり嬉しいわ。でも、それが過ぎてもダメですわ。

 相手にそれを強要する様な真似は特に。」


白い剣は不思議そうに、尋ねる。

「強要するって。どういう風に。」


ディアナは、冷めてしまった食事の方に目をやり、こういう。

「あらら、折角の食事が冷めてしまいましたわ。また後で続きはお話しましょう。」

不満の声をあげる白い剣を横目に、料理を口に運ぶディアナ。




場所は変わり、船外。夜風に身をさらし船から身を乗り出しているフォルゼア。

 それを見る壁に立て掛けられたガラテアは、ため息をつく。


「情けない。船酔いか。というか貴様、アレほど物を口にして今まで・・・象か貴様は。」

ツッコミを入れるガラテア。船から身を乗り出しぐったりしているフォルゼア。


勘も鈍ければ、神経も鈍い事を露呈した彼女。

そして、ようやく見つけたのに、と残念な顔をして、船内から顔を出すセド。


 「あ~。この様子だと、目的地につくまで、ご高説は頂けない様ですねぇ。」

と、ぐったりするフォルゼアに、セドは近寄り、薬を手渡した。


「気休めですが、船酔いのお薬です。どうぞお使い下さいませ。」


無言でそれを手に受け、早々に口に運び一言。


「に・・・がいいい。」


軽く笑うガラテアとセド。






そして夜は更けていく。

 穏やかだった海は、表情を変え、さながら獣の咆哮が如く唸り、波を高ぶらせる。


船内・操舵室。

「船長、いつになく激しい嵐ですね。」


それに相槌を打つ。

「うむ。」


少し、意地悪げに操舵手は言う。

「この荒れ模様、クラーケンでも出そうですね。」


少し怒ったように言う船長。

「おいおい。あんな海の荒くれ者が出てきたら、とてもじゃないが助からんぞ。この船では。」


悪い予感は、不思議とそれを現実とするもの。

 予感的中。荒れ狂う海の中から一本の巨大な足が船を打つ。

 左舷の一部のデッキが半壊し、船が大きく傾く。

 右舷側にいたフォルゼアは、力なくその傾きに耐えられず転げまわる。

 同時に立て掛けられていたガラテアも、耐える術が無いので滑りまわる。


「ぬごぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおっ。」


ガラテアは叫びつつフォルゼアを呼ぶ。

「貴様、しっかりせんかっ。

 敵だ。あの白い足。恐らくはクラーケン。貴様が戦わないと乗客が危ないぞ馬鹿者。」


叱咤するガラテアにたいし、完全に戦闘不能なフォルゼア。


「えぇぃ。情けない。」


そんなガラテアが、慌てて飛び出てきたディアナに目がいく。

「おお、貴様達か、クラーケンだ。奴がこの船を狙って足を叩きつけてきおったわ。」


慌てて答えるディアナ。

「クラーケン。そんな海の化け物がこの海域にいるなんて、聞いて無いわ。」


間髪いれず答えるガラテア。


「知らん。居るから仕方あるまい。そして小娘はこの始末。

 最早、奴とまともにやりあえるのは貴様しかおらん。頼んだぞ。」


自信なさげに答えるディアナ。


「いくらなんでも私一人で、あの怪物を相手になんて。」

不服そうに言う白い剣。

「一人なの。」


慌てて訂正するディアナ。

「あらやだ、ごめんなさい。二人ね。二人。・・・でもそれでも。」

更に不服を訴える。

「クラーケンって確か巨大なイカだよね。そんなのに負ける筈が無いよ。

 さぁ行こう。行って軽く叩き潰すんだ。そして僕達も褒められるんだ。」


少し、ため息を漏らすディアナ。

「本当に貴方、子供の頃の私ですわ。

 いいこと、その慢心は時に自分の大切なものを失う事にもなるのよ。」


判らないという風に答える白い剣。


「勝てるのに失うなんておかしいよ。それに失ってもボクがいる。取り戻せるよ。」


残念そうに答えるディアナ。

「貴方・・・。いいわ、問答している暇はあまりなさそ・・あ。」


再びクラーケンの足が左舷を襲う。 半壊したデッキから、一人の人間の叫び声が聞こえた。


洋服のまま白い剣を携えたディアナは、慌てて左舷へと向かう。

 左舷で彼女が目にしたのは、クラーケンの足に捕まった船長。


「た・・・たすけてくれ。」


凄まじい力で体を圧迫され、息も絶え絶えに助けを求める。

 意を決して、船外に飛び出し、名も無き白い剣は無数の閃きを見せ、

 船長が捕まっていたクラーケンの足を数え切れない程の肉片と化した。


足の縛から解き放たれ海へと落ちる。その船長をデッキ付近の海へと蹴り自分は先に海中へと。



「くっ。なんて・・大きさなの。」


足の大きさから予測は可能であったものの、

それを遥かに上回る巨大なクラーケンの影が、うっすらと船の光で見て取れた。


 いかに剣の力とディアナの速力があったとしても、ここは海。太刀打ちできる様なものでは無い。

 そして、それはフォルゼアがいても結果は変わらなかったであろう。


クラーケンの足がついに海中からディアナを捉えんが為に、姿を現した。


「ほんと、厄介極まるおイカ様だこと。」

怒りと性格からかそんな言葉を漏らしたディアナ。

 そのディアナの後方から声が聞こえた。



「名も無き雷の精霊達よ、我が声を聞き眼前の邪悪を貫き給え。」


先ほどの学者、セドは、古びた本を左手に、右手をクラーケンの足へ向けて言い放った。


「雷の槍…ライトニング」


右の手の平から放たれるは、無数の細い雷の槍。クラーケンの足を焼き貫く。

 貫かれた足は、轟音と水しぶきをあげ、海中へと沈んでいく。


驚くディアナは、声の方を見てこう声を上げた。


「貴方、さっきの。それは、その力は何。」


それに答えるセド。


「そういえば、貴方の国では、精霊術師は居ませんでしたね。

 よろしい。ならばご覧になって下さいませ。」

そういうと再び、詠唱を始めるセド。


「名も無き雷の精霊達よ、名も無き風の精霊達よ、我が声を聞き集い給え。」


再び、クラーケンの足めがけて右の手の平をかざし、言い放つ。


「荒れ狂う雷…サンダーストーム」


先程とはまるで威力の桁が違う、広範囲に雷を伴った荒れ狂う風が、

 器用にディアナを避け、クラーケンの足を根こそぎ薙ぎ払う。

 薙ぎ払われた足は、次々と海中へ水しぶきをあげ落ちていく。


落ちる足、水しぶきをあげ更に荒れる海。その中必死に泳ぎつつも、声を上げるディアナ。


「すごっ・・・。自然を操ったとでもいうのっ。」


目を丸くして、その精霊術というものの力に驚嘆する。

それを見て、セドはこういった。

「驚くのは後で構いません。さ、早く船内に。ここは私が任せられましょう。」


そういうと、ディアナは船長も既に船内に戻っているのを確認し、戻ろうとする。

突如ディアナの体をクラーケンの腕が捉える。


「なっ。」


足はほぼ全て薙ぎ払ったが、まだ一際長く細い腕が残っていた。

 一本はディアナを捕らえ、一本はセドのいる左舷を激しく鞭の様に打った。


倒れこむセドと船長。


海中に引き擦り込まれるディアナ。




「息が・・・。」


巻きつくクラーケンは、更に強くディアナを圧迫し、酸素を奪う。


酸素の泡が、水面へと昇り、意識が遠のくディアナ。その中で、おぼろげな一つの幻聴が聞こえる。


「ア・・・ミ…ス」


 声も出せないディアナの代わりに、白い剣が驚く。


「え。何あれ。い・・犬。無茶苦茶大きい犬っ。」





薄れいく意識の中で、

 巨大なクラーケンを遥かに凌ぐ巨大な牙を携えた何かが、

 分厚いタイヤの様なクラーケンの肉を、紙きれの様に容易く食い千切る。


そして、その巨大な口はディアナをも飲み込もうとする。必死でディアナを起こそうとする白い剣。


「ちょっとねぇっ。飲み込まれるよ食べられるよっ。起きて。ねぇっ。」



慌てる白い剣の声も空しく、、巨大な何かは、意識を失ったディアナを飲み込むと、何処かに消える。






「弱りましたね。本体が海中から出ない事には、打つ手が。・・・あれは。」



悩むセドは、ディアナが引き擦り込まれた海中に、クラーケンよりも一際大きい何かの消え行く影を見た。


「これは一体。」


その直後、巨大なクラーケンの亡骸が海を墨で黒く染めながら浮き上がってくる。

 まるで何者かにそう、巨大な牙を持つ獣に噛み殺されたかの様な姿を、荒れ狂う海中に漂わせていた。



「一体何が、いや・・ディアナさん。」


慌てて船から身を乗り出し、ディアナを探す。夜が明けるまで探し続けたが、結局彼女は見つからなかった。




 


翌朝。落胆するセドといまだに船酔いで潰れているフォルゼア。

「ディアナさん。私がもう少し早く出ていれば。」


自分を責めるセド。そこに聞きなれた竪琴の音色が流れた。


「心配御座いません。ディアナ様はご無事です。」


美しく透き通った声、白い肌。女性と見まがうばかりの容姿。エルドだ。


「貴方は、エルドさん。」

エルドを知っている。フォルゼア達を知ったのは、やはりエルドの詩であった。

 エルドと関係する者、セド。

そして、この者もまた、フォルゼア達と同じくするものであると言う事は、

 この時、エルドを除き本人すら知る良しも無かった。

 


そんなエルドにセドは問いかける。

「エルドさん、心配は無用・・とはどう言う事で御座いましょう。」


心配を隠せないセドにエルドは優しく答える。

「ディアナ様は、彼女を求める者に招かれたのです。

 心配は無用ですよ。彼はとても純粋で無垢な狼。」


不思議そうに問うセド。

「狼・・あの大きさ。まさか、フェンリル狼ですか。

 そのような太古の凶獣がディアナさんを求めて。ふむ。面白いですね。」


またわざとらしく、首をかしげるエルド。


「はて、何が面白いのでしょう。」


安心した様に、エルドから、この世界の何処かにいるディアナへと視線を向ける。

「いえ、貴方が仰るならば、それは間違いないと言う事。何故か、そう思います。

  そして、フェンリル狼がディアナさんを助け、求めたと言う事も事実なのでしょう。」


わざとらしく、困った様に肩をすくめるエルド。


「過大評価し過ぎですよ。私にもわからない事は沢山あります。

  でも、ただ一つ言える事。」


黙ってその言葉の続きを待つセド。





「類は友を呼ぶ。そういう事です。」


呆気に取られるセド。

「類は友を呼ぶ。つまりディアナさんはフェンリル狼と似ている。と言う事ですか。

  そんな愚か者に思えませんでしたが、彼女は。」


軽く首を振るエルド。

そして、出番欲しさにガラテアが横槍を入れる。


「クラウ・ソラスが似ている、ということであろうが。

  然し、我等にフェンリル狼の神話を聞かせて、その実、あの高飛車女に関係していたとは。」


少し力をためて、大声で叫ぶ。


「警戒しておったというのに…謀りおったな貴様ぁっ。」


笑いながらガラテアに答えるエルド。

「ははは、何の事で御座いましょう。あの時は、先を見過ぎて、足元をすくわれない様。

  そして、必要以上の知識を無理に得ようとしない事。ただそれだけの意味でしたよ。」


どうやらエルドの方が何枚も上手の様で、観念したガラテア。


「…尤もだ。」


そこにセドが確認をする。


「成る程。ディアナ様は、何か私が知り得てはならぬ運命。いや使命に招かれた。

  と言う事で、宜しいのでしょうか。」

それに静かに頷くエルド。


「判りました。では、次の出会いを楽しみにしているとしましょうか。

 では、私は船の修理を手伝って参りますね。」


そういうと、船員達の中へと駆け込んでいったセド。


それを見送ると、ガラテアはエルドに問う。

「エルド殿。フェンリル狼は、確か戦いの神トールによって、

 地面に埋めつけられ、口に山を叩きこまれて身動きとれないのではなかったか。」


その言葉に、エルドは答える。


「ええ、そう。神話では確かにその通りで御座います。

  しかし、それはあくまで神話。神話が真実であるという証拠は御座いませんよ。ガラテア様。」


納得するガラテア。それに続けざま答えるエルド。


「さぁ、ガラテア様、私は用事がありますので、これで失礼致しますね。

  そこで寝ているフォルゼア様を護ってあげてくださいませ。これからもずっと。」


それに対しこう答えたガラテア。

「…知らぬわこの様な腑抜けた象。」


その言葉は、本意では無い事を知るエルドは、静かに船内へと姿を消した。

 そんなエルドを見送り、傍で横たわるフォルゼアに一言。



「無様過ぎる。」







数日後、船の修理を終え、一路船は目的地へと。



これより、二人の物語は、一時分かたれる。


一人は、次なる大陸、精霊術師セドと共に、溶岩と氷雪が混在する大陸へ。

 そこは、その環境の厳しさからか、生きる者は自然を尊び・恐れ、

   学び、共に歩む為に生まれた力。精霊術。

  イルドニアとは異なる文化・成長を遂げた大陸。

  自然を護り、過去の遺産が多く眠る大陸。


フォルゼアは、彼の地にて、何を見・何を考え・何を学び得るのか。





もう一人は、フェンリル狼に飲み込まれ、見知らぬ何処かへと。

  

大地に縛られ動けない筈のフェンリル狼と、途切れた幻聴。


   フェンリル狼は、ディアナに何を求め見たのか。

  


ディアナと白い剣は、何処の地で何を見・何を考え・何を学び得るのか。



互いに行く先が異なるも、目的は同じ、必ず交わる時が来る。


さながら時計の針の如く、



遅い針


早い針

 




チクタクチクタク、規則正しく針は進む。



歴史に刻まれる物を求めて、戻る事を知らず、定められた道を進み続ける。





第一章「子供と精霊術師」




第1話 「分断」   終

第1話。最後までお読み下さって有難う御座います。


今回から、

 新たなキャラクター。神話、過去が、主人公達に交わってきます。


ほぼ一章の構成は済んでおりますが、

 もっと練り込んで出していく為。

 期間を置いての小出しになると思いますが、長い目で見てやって下さいませ。


では、どうも有難う御座いました。

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