表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/38

Episode 3 門前の戦い

~語り手~





…そう



彼はこれから何十年もこの呪縛に囚われ続けることになる。



ずっと自分の得た力で苦しむことになるんだ。




彼の孤独な戦いはまだまだ続くんだ。











あれから更に10年。


彼は51歳になった。





僕ら人間で言う20歳を過ぎたぐらいに当たるのかな?

その辺りは君の方が詳しいよね。



さぁ、次のページを開こう。



グロストが初めて破壊軍と戦ったあの日から、更に10年の時間が流れた。




グロストが潜んでいた森は破壊軍の占拠範囲になってしまい、グロスト自身も後退を余儀なくされてしまい、更に北東へと新たな居何処を探した。



そして見つけた場所が、更に北へ向かった先にもう一つまた1つ森があったので、グロストはそこへ身を寄せていた。






「…」

目を瞑り、木陰に座り、瞑想を図っていたグロストがゆっくりと目を開いた。


「……よし…」


グロストは決意を固めて立ち上がる。何かをしにいくつもりらしい。



ゆっくりと歩き出し、森の外を目指す。

破壊軍の侵攻は10年前とはさほど変わっていないが、グロストの潜んでいた森が侵略されたということはあり、やはり取り戻せてはおらず、わずかながらも侵攻を許していた。




そして今の世界の民たちにも変化が起こっていた。


それは破壊軍討伐の為に結成された軍隊、“平和軍”の変化である。



破壊軍の侵攻がこの20年でほとんど進んでいない理由はここにあった。

森でひっそり暮らすグロストの耳に少しばかり情報が入っていた。





それは平和軍に新たに現れた強豪である。


とても強い力を持つドラゴンが平和軍に入隊し、その力が破壊軍の侵攻を遅らせているらしい。

たった1体で20年間侵攻を食い止めているその力だけは凄まじい。



さて、グロストはというと、森を抜け、南を目指した。


3年ほど前に、平和軍が破壊軍の支配下にある場所と、そうでない場所との境を創るために大きな国境となる巨大な砦を作ったらしい。


グロストはそこを目指して歩いた。


高さは約10m。高さは砦にしては普通な方だが、特別な防御魔法がほどこされており、破壊軍100人が束になって襲っても傷一つつかなかったらしい。

しかし破壊軍兵士は数を増やしている。

いつかは大群で攻め入ってくるに違いない。


ただ、これのおかげで侵攻はほとんど食い止められている。


だが砦が全ての領地の境を覆うことは出来ないし、空から侵攻してくる破壊軍兵士には武力で対抗しなくてはならない。

破壊軍兵士も最初は地上を動く者だけしか居なかったが、空を飛ぶ兵士が現れるようになったのは最近のことだ。


いつかは海を渡ってくる兵士が現れるかもしれない。

人々の不安は高まるばかりだ。




平和軍は砦のすぐそばに拠点を設け、日々破壊軍兵士と戦い、空からの侵攻を阻止している。


所有する持てる限りの大砲や弓を人間や獣人が使い、ドラゴンや竜人、飛行系の魔法を使用する者たちは空からの敵を日々撃退している。



その空中戦を制するのが、平和軍で今一番強いとされるドラゴンだ。

彼が参戦してからというものの、空を攻める破壊軍の侵攻をほとんど許していない。





民と破壊軍の支配下の国境が厳重にされたので、軍では無い者は迂闊に国境を超えることが出来なくなった。



グロストとしては破壊軍を殲滅を試みる身。

それではただ指をくわえて見ていることしかできない。


そんなものはごめんだ。

グロストが向かう先は平和軍の拠点だ。









「止まれ!ここからは平和軍の管轄する地域である!一般人を通すわけには…うっ、でかい…!」


グロストの2mを超える巨体が平和軍の拠点の入口を守る2人の人間の平和軍兵士にプレッシャーを与える。


「どけ。俺を外へ行かせろ。」

グロストは平和軍の力など取るに足らない、この光闇の力でまとめて殺してやる。

そう考え、境までやってきたのだ。


「だ、駄目だ!一般人を外に出すわけにはいかない!」

兵士はグロストを止めようとするが、その瞬間…


「邪魔だ……!」


ゴキッと骨が折れ、砕ける音がした。

兵士の首がかくんと横に曲り兵士の悲鳴が辺り一帯に響いた。


「きっ、貴様っ!ゴッ…」


グロストはもう一人の兵士の顔をガシッと鷲掴みした。


「ん、ぐ、ううう」


「邪魔だと言ったはずだ」


「がががあがががががががががああがががが」

グロストの手から放たれた雷が平和軍の兵士に伝う。

身体をガクガクと震わせ黒焦げになって力尽きた平和軍兵士を地面に叩き付けた。


もう一人の首を折った兵士は悲鳴をあげながら身体を震わせる。


「フン。」


その兵士の顔を更に一蹴し、兵士の顔はぐるんと上下逆さになるほどに骨が変形し、力尽きた。




グロストはその死体を見ることも無く先へと進んだ。




「止まれ!止まれっ!それ以上の侵攻は容赦しない!」


「…貴様らも死にたいのか…?」


「ぐっ…!舐めるなよ!」

次に立ちふさがったのは4人の獣人の兵士。


1人がグロストに剣を振る。

「フン。」

しかしグロストの身体には傷1つつかなかった。

グロストはその鍛え上げられた腕で剣を折った。


「なっ!?」


「通さないならまとめて始末してやる。」

グロストの身体をまとう雷。

その色は真っ黒だ。


じわじわと白い目が赤く染まって行く。

「グォッ!?」


だがその時、グロストの足に炎の弾が直撃。

バランスを崩し、体勢を崩した。


「何っ!?」


それから体勢を立て直そうとするが空中から何者かに地面に叩き付けられ、グロストの身体は地面に跪いた。



「くっ…「動くな。」



取り押さえられたグロストは必死に抜け出そうとするが、抑えている何者かの力が強すぎてまったく身動きが取れない。


「た、助かりました…ゴードス将軍…!」


「…早く逃げるんじゃ。こいつの力は何処か妙じゃ。何をしするか分からんぞ。応援はいらんし報告もせんでいい。ワシ一人でやる。」


少し変わった喋り方だ。


「は、はいっ!お気を付けて!」


兵士たちは距離を置くために退散した。


グロストは目だけをその手に向けた。

赤い手。

見た所ドラゴンのようだ。


名前は兵士が言っていた。ゴードスと呼ばれるこのドラゴン。

グロストも何か強い力を感じていた。


「さて…貴様は何奴じゃ。ここは軍の管轄地。不法侵入は重いぞ?」

ゴードスはグロストの顔を睨む。


バッファローのような曲線を描く角、赤い身体。

3mは軽く超える大きな身体のドラゴン。


左右の肩にはマントの留め具が装備されており、そこから灰色のマントが風の音でバサバサと音を立てて靡いている。




「くっ…俺は…破壊軍を殲滅しに来た……!貴様ごときの相手をしている暇は…ない!!」

グロストは体内から黒い雷を放出。


「フム。」


ゴードスはマントを魔力で動かし、雷を食い止めた。

そしてその雷を打ち消した。

ゴードスの眼は非情に鋭く、戦いの眼をしている。

その威圧感は誰もが驚いてしまうほどに強い眼をしている。


「何だと…!?」


「無駄じゃ、貴様の力は無力。命までは取らん。早々にここから去るのじゃな。」


「そんなこと…出来るかっ!!グオオオオオオオオオ!!!!」


グロストは力を更に放出した。


グロストの力は相変わらず3割程度しか出せず、それを上回ると暴走してしまう上に、しばらく動けなくなってしまう。


そのギリギリの力をグロストは引き出してゴードスの手から力づくで逃れた。


「ほう、少しはやるようじゃの。」


「……俺は…破壊軍を殺す…!邪魔をするなら…容赦はしない!!」

大きく雄たけびを上げるグロスト。

大地が大きく震えた。


雷が身体を纏い、その身体が巨体のゴードスの身体目がけて襲う。

「ならばワシを倒してみぃ!そうすれば何処へでも行けッ!」


「ウオオオオオ!」


グロストの放った雷は大きな音を立てて、地面を割りながら凄まじい速さでゴードスを襲った。

「どうした?その程度か?のぉ。」

その雷をゴードスは何と片手で弾き飛ばした。


「クッ、ならばっ」

接近戦に持ち込もうとするグロスト。

ゴードスは余裕の表情でグロストの拳を交わし、グロストの背に手を当てた。


「あんまりやりすぎると死んでしまうからな。このぐらいにしておいてやる。」


ゴードスは更に鋭い目で身体に力を溜め、爆炎を放った。

「ガッ、グアアアアアアアアアアア!!!!!!?」


灼熱の炎に包まれて叫び、倒れるグロスト。


「…グッ…アア…」


「ワシ一人では苦戦する相手と戦うのに貴様程度の力では太刀打ちなど出来まい。顔を洗って出直してくることじゃな。」

ゴードスは後ろを向き、立ち去ろうとする。


「…俺は…諦めん……!」

弱々しい声で言うグロスト。


「……どうしても破壊軍と前線で戦いたいのならば平和軍に入隊するがいい。」


「…弱い奴と群れるだけ…無駄だ…!!」


「…群れねば成しえぬこともあるのじゃ。」


バサッとマントを靡かせ、ゴードスは去った。





「クソッ…クソッ…クソオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!!!!!!」


悔しさがこみ上げ、地を叩くグロスト。


(俺の雷が通用しないだと…?それに奴でさえも破壊軍に苦戦するだと…!?破壊軍は力を増しているというのか…!?)


かつて10年前グロストは破壊軍を倒している。

しかし今、歯が立たなかったゴードスでさえも破壊軍に苦戦しているという。

破壊軍の力はどうやら強くなっているようだ。



「…もっとだ…もっと…修行を重ねて…必ず貴様を超え…破壊軍を倒してやる…!!」


グロストの中で新たな決意が芽生えた。


「平和軍…入ってやろうじゃないか…!もっと強くなって…必ずな…!」



グロストは身体中に出来た火傷に苦しみながら、ゆっくりとこの場を去り、元の森で傷を癒した。






「ゴードス将軍、奥で何やら激しい物音がしたが大丈夫なのだろうな。」


「問題ない。」


「不機嫌だな。そんな態度を取っていいのかな?」


「チッ、分かっている。」



「分かればよい。キミにはもっと働いてもらうぞ。我が平和軍の勝利のためにな。」





ゴードスは何やら事情を抱えているようだ。



ゴードスはこの平和軍では一番強い。

だが軍は上下関係もある。

ゴードスは上層部に利用されているようだ。

何かを脅しの材料にされているようだが…



(…あの竜人…あの雷…もしや10年前の破壊軍が倒された事例…奴がやったものかもしれんな…)



ゴードスは憶測を立てた。

だが確証はないので断定はしなかった。











(…チッ、上層部め…好き放題言いおってからに…じゃが…待っとき…ワシがすぐに解放してやるからのぉ…)


ゴードスにはグロストとはまた別の決意がある様子。



彼にもまた、戦う理由があるようだ。














Episode3 END


---------------------------------------


~語り手~



……グロストは平和軍将軍、ゴードスに敗れ、更にこれから何十年も修行を重ねることになるんだ。





えっ?あの人と名前が一緒?





そりゃまぁ、同一人物だし…


ちょ、そんなに驚かないでよ!言ってなかったっけ?

あはは!ごめんごめん。


でも静かにしてあげてね。

彼はお休みしているから。







さぁ、これからグロストの時間は19年後…70歳まで飛ぶよ。


すっかり成人し、大人になったグロストは果たしてどこまで変わっているかな?


今日はまだまだ時間があるからすぐに進もうか。


さぁ、未来のページを更にめくってみよう。

---------------------------------------



~怠惰~









…もうすぐか




もうすぐこの世界も終わる




ようやく俺も役目が終わるんだな
















あん?そうはさせないって?



お前に決める権利があんのかよ









うっせーな。俺にも権利はねぇよ。


けどな、俺の世界をどうしようが俺の勝手だろうが


お前の世界さえ無事ならそれでいいだろ、そういう理で出来上がっちまった世界なんだからよ















うるせーな、喚くなよ。

だったら信じてみればいいだろこの世界の奴らをよ

干渉だってしたければ勝手にしろよ


俺は何もしないからな




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ