第91話 相模ダンジョン(三)
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第91話 相模ダンジョン(三)
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「うへー。私のフレアストームスラッシュを受けて、まだ生きているんだ。さすがはショウコたちが苦戦するスライムね!」
ルカが嬉しそうに口角を上げた。
スライムは自分の一部を射出してルカを牽制する。
スライム弾が着弾すると、ダンジョンの壁がジューッと音を立てて熔けてしまった。
「酸の弾ってわけね!」
空を飛び、時に『神速』を使って加速し、酸弾を回避していく。あれだけ酸弾を射出しているのに、スライムの体は小さくなっていかない。
「追いかけっこもそろそろ飽きたから、奥の手を出すわよ!」
まさかあれをやるのか!?
「はぁぁぁぁぁぁぁっ!」
ルカの姿がブレ、再びスライムに肉薄する。
「これでーっ最後ーっ! デスストライク!」
なんでもない槍の連撃。そう思う人は多いかもしれない。
だけど僕は知っている。あの一五連刺突には恐ろしい効果があることを。
三回目の刺突でスライムはどす黒い紫色に変わった。これは毒状態になったということだ。
このままだとスライムは毒のスリップダメージで生命力が削られていく。
だが、これはほんの序の口で、本当に恐ろしいのはこの後だ。
九回目の刺突を受けたスライムがペチャリと形を失った。スライムに残っていた生命力が、この一撃によって一瞬でゼロになったのだ。
「勝利!」
ルカがガッツポーズをした。
あの刺突攻撃には、スライムを倒せるだけの攻撃力はなかった。それなのにルカはスライムを倒してしまった。
それを可能させたのは、ルカが持つ『即死』の特殊能力のおかげだ。
この『即死』はリッチという魔物の武器である鎌についていたものだ。
リッチの攻撃は僕の空間の壁を常に壊せるものではなかったが、それでもたまに破壊されてしまったんだ。その効果が『即死』だった。
だからリッチの鎌から『即死』の特殊能力を結晶化させた。それでリッチは物理攻撃が効かない、火、水、風、土の四属性を操るただのお化けになり下がった。
さて、『即死』は任意発動型の特殊能力だ。つまり意識しないと発動しないということ。そして『即死』を使っても、その効果はたまにしか発動しなかった。そこで色々検証した結果、八回から一二回に一回発動することが分かった。
一つの戦闘内では、八回から一二回で変動しながら発動するものだった。そこでルカは考えた。「だったら、一二回以上の攻撃をすれば、いいんじゃない?」とね。
そして生み出されたのが、一五回刺突攻撃に『即死』を乗せるデスストライクだった。
なんで一二回でなく一五回なのかは「私の限界だから!」と答えたのは、ルカらしいと思ったものだ。
「なななななんで一人で倒しちゃうのよ!?」
ショウコさんの悲鳴のような叫び声が響き渡った。
ショウコさんたち【女神の微笑】のメンバーがルカを取り囲んで大騒ぎだ。
「ルカさん、何あれ!?」
「なんで空飛んでるの!?」
「なんか燃えてたんだけど!?」
ひっちゃかめっちゃか揉みくちゃだ。
「はいはい、落ちつきなさい。今のルカはうちのメンバーじゃないんだから、特殊能力の詮索はダメよ」
カコさんが皆を落ちつかせ、ルカを解放してくれた。
「ルカさん、今からでも遅くないわ。うちにもどってきなよ!」
「そうよ、あんなヤツのところにいる必要なんてないわ」
「あいつに弱みを握られているのよね? 私たちがルカさんを守るから!」
「ヌード写真? それともお金? あいつに何を掴まれているの?」
お、おぅ……。僕、悪者?
「ちょっとあんた! ルカさんを解放しなさいよ!」
「そうだ、ルカを解放しな!」
「「「解放しろ!」」」
「えぇぇぇ……」
「あんたたち止めなさい!」
「「「でも、ショウコさん……」」」
「アハハハ。あんたたち、すごい勘違いしているぞ」
「ルカ?」
「私は何も弱みを握られてないぞ」
ルカは胸を張って主張した。その言葉に一点の曇りもない。
「それにリオンは私より強い。ショウコよりもな」
ザワッ。
それ言っちゃダメなヤツ!?
二級シーカーが一級シーカーより強いなんて、誰も認めない。特に【女神の微笑】のメンバーにとっては禁句といっていいほどの言葉だ。
「ルカさんの言葉だけど、それは聞き捨てならないわ!」
「そうです! あんなのがショウコさんより強いわけないです!」
「あののほほんな顔をしたヤツがショウコさんより強いなんてありえないわ!」
「あんな顔のヤツよりショウコさんのほうが絶対に強いです!」
顔のことは言わないで……。
心が抉られる。
「だったら見ていればいい。次のスライムは秒で倒されるから」
「「「そんなことあるわけない!」」」
ルカさんや、煽らないでくださいよ。秒はキツいから、せめてもう少し時間をください。
「本当に秒で倒せるの?」
「しょ、ショウコさんまで……」
「倒せるさ。な、リオン!」
「ルカ。あまり大きなことは言わないほうがいいよ。リオンさんの立場もあるから」
カコさんの言う通りです!
ルカはちょっと黙っていて。
「ふん。どうせ口だけなんだから!」
「あいつの無様な姿を見てやろうじゃない!」
「ここまで言ったからには、できませんでは済まないわよ!」
えぇぇぇ……。僕、何も言ってないよね?




