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第87話 二級シーカー

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 第87話 二級シーカー

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 僕は『テキスト』を自重せずに使うことにした。僕だけでなく、家族の安全がかかっているのだから、やれることは全てやるつもりだ。


「なんでこんなにいるのかな……」


 僕が移動する先々に大陸の大国の工作員がいる。

 クランハウスの周囲にも、マンションの周囲にも、安住製作所の周囲にも、実家の周囲にも……。

 もう怒ったぞ!


 僕は工作員を見つけると、全員を稲沢ダンジョンの第一八エリアに放り込んだ。都合四十人くらいかな。さようなら、二度と会うことはないでしょう。

 それから、北側の大国と半島北国の工作員も数人いたけど、この人たちもおさらばした。

 多くの工作員が稲沢ダンジョンで死ぬことになるだろう。そうなっても一切の後悔はない。


 あとは安住製作所で働いている三人だ。

 安住社長は監視カメラを工場内のあっちこっちに設置した。

 そして警備員や従業員として自衛隊の人たちが入った。

 工作員包囲網が完成している。


 そんなある日、僕は自衛隊の基地で宇宙船の試験を見学している。

 そんな僕が見たものは、自衛隊員の中にも工作員が紛れ込んでいることだった。


「安住社長」

「何かな?」


 安住社長と物陰に入る。


「自衛隊の中にも工作員が紛れ込んでいますよ」

「なっ!?」

「この現場に二人います。メモしておきました」

「分かったよ。牛島二佐に連絡しておくよ」


 僕はもう躊躇しないから、工作員たちは覚悟してほしい。


 さて、試験は順調で、宇宙船は衛星軌道上に上がった。

 今回は十日間、衛星軌道上にとどまり、その後下りてくるそうだ。





 僕はクラン員の皆と相談し、クランの提携について考えた。

 提携時のメリットは、大クランの支援が受けられること。デメリットはこちらもある程度の支援をしなければいけないことかな。

 支援の要請を受けても、断ることは可能だ。だけど、毎回断るわけにはいかない。


「今のところ、支援を受ける必要性はないですよね。このクランは困りごとがないことが困りごとのようなものですから」


 アズサさんの言うように、僕たちは困っていない。

 僕個人としては大陸の大国がウザいけど、それはいくら大クランの【女神の微笑】でもどうにもならない。

 もっとも、最近は工作員をダンジョンに遺棄するか、自衛隊に処分を任せているので周辺をウロチョロしていることはなくなったけど。

 安住製作所の従業員に紛れ込んでいた三人もすでに自衛隊がこっそり確保しているし、自衛隊の基地にいた二人も確保されたと聞いている。

 それで大陸の大国はどう動くか。もっと直接的な何かをしてくるかもしれないけど、それこそ【女神の微笑】には手に負えないことだ。


「一応、大手のクランですから、多くのアイテムが手に入ります。そういったものをオークションを介さずに優先的に融通してもらえるようです」

「オークションに出さないと、収入が少なくなるんじゃないの、アオイさん?」

「過去のオークション実績を考慮して価格は決まります。ようは、確実に手に入るというメリットがあるということです。【女神の微笑】にとってもオークションの手数料の一〇パーセントを納める必要がないので、その分は実入りになります」


 提携先が多いと、そういうことができるのか。ふむふむ。


「私がいた頃の【女神の微笑】は、総勢で二〇〇人以上が所属していた。それだけの組織力があると、集まるアイテムもかなり多かったかな。さすがに私やリオンの使うような武器や防具は滅多に出てこないけど、ミドリたちが使うものならかなり多く出てくると思うよ」


 それはメリットだな。ミドリさんたちはなかなかいい武器や防具がないと、かなり苦労しているからね。


「支援要請だって、向こうのほうが高位シーカーが多いのだから、うちに要請があることはあまりないかもしれないわ」


 経験者というか、元所属員のルカならではの情報だな。


「あと、【女神の微笑】の支援をする名目なら、A級やS級ダンジョンに入ることができるかな」

「え、マジで?」

「ああ、マジだ。何せショウコは一級シーカーだからな」


 ショウコさんのパーティー『女神の翼』は二級だが、彼女一人だけは一級シーカーなので所属パーティーはダンジョン制限がなくなるらしい。


「リオンならA級でも問題なく通用するだろうから、要請を受けて手伝いでA級に入ってみるのもいいと思うぞ」

「それはいいですね! リオンさんなら十分きっと大活躍です!」


 そんなキラキラした目で見ないでほしい。僕はまだB級ダンジョンを踏破してないんだから。

 でも……。


「分かった。この提携を受けよう。細かいことはアオイさんに任せてしまうけど、いいかな?」

「分かりました。責任を持って話をまとめます」

「うん。お願い」






【女神の微笑】との提携が合意に至ったのは二カ月後のことだ。その間も僕は工作員をダンジョン内へ遺棄し、宇宙船開発も順調だ。

 宇宙船はあれから三度の無人試験航行が行われ、さらに有人航行の試験も二度行われた。そして一宮の宇宙船ドックも完成し、すでに稼働を初めている。

 それからヨリミツが調べていた『エネルギー共有』『エネルギー回復』の件は、僕にはあまりよく分からないがいい結果になったらしい。

 ヨリミツはそれも含め、スマートメタルと宇宙船開発を手掛けているから、本当に忙しそうにしている。

 あいつ、研究に没頭すると周囲が見えなくなるから、体を壊さないか心配だよ。


 僕自身も稲沢ダンジョンの探索を進めた。

 稲沢ダンジョンの第一八層にあった隠し通路は、五カ月後にやっと認定された。稲沢ダンジョンに入れる人が多くないからかなり時間がかかったようだ。

 そして、僕とルカはとうとう稲沢ダンジョンの三五層のボスを倒した。これで稲沢ダンジョンを踏破だ。


「次はA級ダンジョンだな」

「その前に二級昇級だけどね」


 ルカの『SFF』は三級程度まで落ちていたけど、稲沢ダンジョンを踏破した今では元の数値まで戻っている。

 元々ルカは二級シーカーだったから昇級試験は不要だけと、僕は違う。

 三級昇級試験はすんなり通ったけど、二級はどうなることか……。


「カカミ君ならすぐに二級だ! 任せておけ!」


 暑苦しい筋肉をゴキュゴキュ動かした大水支部長が請け負ってくれた。


「実績は足りていますか?」

「ハハハ。心配しなくていい。カカミ君の実績は抜群だ!」


 それはよかった。

 あの後、第二二エリアと第三三エリアで隠し通路を発見したのがよかったようだ。


 その数日後、僕は二級シーカーになった。



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