第85話 魔宝石と生命宝石
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085_魔宝石と生命宝石
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「皆、あまり飲み過ぎないようにね」
今さらの言葉をかけ、僕は安住製作所へ向かった。
「さっさと出せ」
安住製作所に入ってすぐに、ヨリミツがカツアゲしてきた。
冗談はさておき、ヨリミツはどんなに飲んでも平然としている。二日酔いもないようだ。こいつは本当に人間なんだろうか?
「そう焦るなよ」
今日、僕が安住製作所にやってきた理由は、灼熱竜と棘角象の魔石のことについて相談するためだ。
灼熱竜と棘角象は地獄の門の下で巨大ネズミに倒され、僕に『魔眼』と『時空操作』をくれた魔物だ。
正直に言うけど、その存在をすっかり忘れていた。てへっ。
「ほう、デカいな」
魔石は極小(三センチ)、小(六センチ)、中(一二センチ)、大(二一センチ)、特大(二二センチ以上)があるけど、この二つの魔石は五〇センチくらいある。まさに化け物魔石だ。
「これだけの魔石なら、この国の電力を賄えそうだな」
「それくらいはあるかも」
僕は稲沢ダンジョンの第五エリアのボス(麻雀牌)から得た『エネルギー共有』『エネルギー回復』の結晶を取り出した。
「これが『エネルギー共有』『エネルギー回復』の結晶か」
ヨリミツは結晶を穴が開くほど見つめた。
「この『エネルギー共有』『エネルギー回復』をその魔石に付与すれば、面白そうだな」
ヨリミツの口角が上る。
『エネルギー共有』『エネルギー回復』があれば、エネルギーを使い切っても、また回復するはずだ。
つまり、この二つの巨大魔石の最大魔力を維持できる可能性があるんだ。
「だが、その前に」
「どうした?」
「『エネルギー共有』『エネルギー回復』の結晶はどれだけ手に入るんだ?」
「B級ダンジョンの第五エリアのボスからだから、一日に四個かな。今は四個持っているよ」
「実験に使っても問題ないな」
「まあ、四個なくなっても、すぐに手に入るからね」
「なら、中サイズの魔石と生命光石で確認をするぞ。それで『エネルギー共有』『エネルギー回復』との相性を調べる」
ヨリミツの言うように中三級魔石と同じ魔物から得た生命光石に『エネルギー共有』『エネルギー回復』を付与することにした。
この中三級の魔石と生命光石は稲沢ダンジョンの第一エリアのリザードマンから得られるものだから、いくらでも集められるものだ。
一応、中三級魔石は通常三〇〇万円くらいで引き取ってもらえるもので、世間に出回っている中では比較的貴重なものになる。
ヨリミツは何かの装置に魔石を入れ、操作した。実験に没頭すると、ヨリミツは僕のことなど目に入らない。椅子に座って待つことにする。
一〇分ほどで装置から紙が排出されてきて、ヨリミツがにらめっこしている。
さらに待つと、ヨリミツが僕の横に座った。
「リザードマンの中三級魔石の魔力を引き出した。本来なら空になるくらいの魔力を引き出したが、生命光石のエネルギーが共有され、さらに回復している」
「おおお」
「『エネルギー共有』『エネルギー回復』はあと二個ずつあるんだな?」
「そうだけど?」
「それなら、魔石が二個と生命光石が二個で、三カ月間の試験を行うから付与してくれ」
『エネルギー共有』『エネルギー回復』を付与した魔石と生命光石ヨリミツに渡した。
「これらの魔石と生命結晶のエネルギーを消費しても最大値に戻るか、どうなるか楽しみだ。もし、三カ月間の試験が良好な結果になったら、面白いことができるぞ」
「面白いこと?」
「天候制御装置だ。先ほどの巨大魔石に『エネルギー共有』『エネルギー回復』を付与すれば、大電力が得られる上にエネルギーが回復する。さらに、エネルギーを他の魔石や生命結晶に共有できるはずだ。元々魔石の発電施設は火力や原子力にくらべて極めて小型で済むから、宇宙船に載せることも可能なはずだし、地上に発電施設を造ってエネルギーを共有させることもできるかもしれない。面白いだろ!」
「おおお!」
そこで僕は『テキスト』のことを思い出した。
僕の『テキスト』で『エネルギー共有』『エネルギー回復』を付与した魔石と生命結晶を見たら、なんかおかしいことになっているんだ。
名称 : 魔宝石・中三級
希少性 : 伝説級
効果 : 中出力の魔力を内包している。対となる四つの魔法石または生命宝石と魔力を共有する。消費した魔力を回復し続ける魔宝石
名称 : 生命宝石・中三級
希少性 : 精霊級
効果 : 魔宝石・中三級の七倍の魔力を内包する。対となる四つの魔法石または生命宝石と魔力を共有する。消費した魔力を回復し続ける生命宝石
は? 伝説級? え? 精霊級?
……ハハハ。これは笑えないな。
『テキスト』で見える希少性は、七段階ある。
ありふれたもの ⇒ 珍しい ⇒ とても珍しい ⇒ 覇王級 ⇒ 伝説級 ⇒ 精霊級 ⇒ 神級
伝説級と精霊級は上から三番目と二番目のものになる。
ちなみに、中三級の魔石は『ありふれたもの』で、生命結晶は『とても珍しい』だ。
僕はすごく大変なことをしたのかもしれない。
「ほう、試験をするまでもないか。だが、データは大事だ。試験は行うことにしよう」
僕が書き出したものを見たヨリミツは、一人でブツブツ言っている。
こいつは本当に学者なんだなと、なんか納得した。
「しかし、リオンはヤバい案件ばかり持ち込むな。本当に狙われるぞ、お前」
「僕だってそうなりたくてしてるわけじゃないんだぞ」
「まあ、お前を拘束しようとしても無駄なんだろうがな」
「まあね。へへへ」
僕には『時空操作・改』があるからどこに閉じ込められようと、逃げることができる。
それに『魔眼』があるから、目を塞がれても問題ない。
あれ……僕って結構強くない?
「笑い事じゃない。お前が駄目なら、本当に家族が狙われるかもしれないんだぞ」
「うっ……」
「クズの考えなんてそんなものだ。もっと自重しろ」
「僕が自重したら、こういうの持ってこないぞ。いいのか?」
「それは駄目だ、俺をもっと楽しませろ!」
「おい!」
まったくヨリミツは……。
僕は安住社長に挨拶して、クランハウスに帰った。
安住社長は「トキ君が楽しそうにしているところを見ると、また何かやらかしたね?」と痛いところを突いてきた。よく分かってらっしゃる。
クランハウスに帰っても、皆はまだグダグダしていた。今日一日はこんな調子なのだろう。
多目的スペースのソファーで寝ていたルカを起こした。
「うぅぅ……リオン? おはよう……」
「もう昼の二時だぞ」
ルカだけじゃなく、ミドリさんやアオイさんも青い顔をしている。
「ルカ、ちょっと話があるんだ。僕の部屋にきてくれるかい」
「あと三時間後で」
「何その微妙な時間は!?」
「大声出さないでよ。頭に響くんだよ」
「はいはい。じゃあ、三時間後ね。きっとだからね」
「はーい」
しかしフウコさんまで復活できてないのか。フウコさんなら二日酔いにならないかと思っていたけど、違ったようだ。
《《四時間後》》、ルカはなんとか話せる状態になった。まあいい。
「麻雀牌から得た『エネルギー共有』『エネルギー回復』のことだけど」
「黙っていろってことね」
あら、分かっていたんだ。
「あれは扱いがとても危険なものなんだ」
僕や周囲の人が危険なことになり得るだけのヤバいものだ。
「分かっているわ。だから誰にも喋ってないわよ」
「よかった。ありがとう」
『エネルギー共有』『エネルギー回復』の潜在的な危険性を理解しているのは、さすが二級冒険者になっただけはある。危機管理ができているところは、見倣わないといけないと思った。
僕は『エネルギー共有』『エネルギー回復』の能力結晶を得るために、麻雀牌がいる稲沢ダンジョンの第五エリアにやってきた。
今の僕の『結晶』は、『魔眼』とのコンボで視界に入ったものから特殊能力を奪える。
麻雀牌の射程距離よりも離れたところから、『エネルギー共有』『エネルギー回復』他、全五種類の特殊能力を結晶に封印し、最後に生命結晶にして終わりだ。もはや戦いではなく、作業だなこれ。
僕とルカは一日狩りをして三日から四日休む。その休みの日は一人で麻雀牌狩りを行った。
そんなある日、第一八エリアをルカと歩いていると、また隠し通路を見つけた。
「ムムム。またリオンに負けた」
「勝ったとか負けたとかじゃないと思うけどな。僕たちはパーティーなんだから」
「そうだね! 私とリオンはパーティーの仲間だもんね!」
何が気に入ったのか、ルカの機嫌がよくなった。
「でも、今日は疲れたから、隠し通路の探索は明日にしないか」
「無理は禁物だから、いいわよ」
朝九時に入って今は午後六時前だ。さすがに疲れた。
「それじゃあ、明日に備えて帰ろうか」
「ラジャ!」
僕たちは転移で第一エリアまで移動し、ダンジョンを出た記録をつけたらまた転移でクランハウスに帰った。
転移があると移動が楽でいい。
クランハウスの僕の部屋に帰ると、帰ったことを知らせるメールをアオイさんにする。
クラン員の帰還については、アオイさんが管理しているんだ。もし予定より一日遅れても帰ってこない場合は、何かしらの対応をすることになっている。
そしたらアオイさんから電話が入った。
「もしもし」
「リオンさん! ルカさんも一緒ですよね!?」
「え、うん。ルカも一緒だよ」
「二人とも応接室にきてもらえますか!?」
「いいけど、着替えてからでいいかな?」
「できるだけ早くお願いします」
ルカにもそう伝えると、ルカは自分の部屋に向かった。一日中探索していたから、何をするにもシャワーと着替えはしたい。




