第83話 リオンの戦闘スタイル
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083_リオンの戦闘スタイル
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安住製作所第二工場は、一宮市の古い紡績工場などの跡地に建設されることに決まった。五〇〇万平方メートルくらいの広大な敷地だ。
一宮市は電車で名古屋駅から一〇分ちょっとでいける。建設予定地は、駅からも近く交通の便がよい場所にある。
ここでは、宇宙開発プロジェクトだけでなく、スマートメタルの最新生産ラインも立ち上がると聞いている。
早期に建設を開始し、全体の完成は五年後を目途にするけど、宇宙船用の工場は二年後の操業を目指すそうだ。
そんな中、僕は宇宙船の試験飛行に立ち会うために、浜松にある自衛隊の基地へやってきた。
「今回は宇宙空間に出て飛行試験をする」
もう宇宙空間に出られる船を作ったのか!?
本当にこういうことには目がないな、ヨリミツは。
ヨリミツたちがせわしなく動き回っている。こういうところにくると、ヨリミツが活き活きとしているのがよく分かる。
「打ち上げまで六〇〇秒になります」
特に問題はなく進み、打ち上げ一〇分前になった。
「二〇〇秒前」
最終チェックは全部終わった。
「一〇〇秒前」
システムに異常はない。順調だ。
「五〇秒前」
重力エンジンは静かに稼働しており、何も問題は見当たらない。
「三〇秒前」
「一〇秒、九、八……三、二、一」
「打ち上げ!」
打ち上げといっても、ロケットのような派手な煙は出ない。重力エンジンにジェット噴射は不要だ。
ゆっくりと浮上していき、徐々に加速していく。
「高度一〇〇〇メートルを突破。システム、オールグリーン」
宇宙船の大きさは全長三〇メートル。流線形で小さな翼がある。
前回の試作機がAー1型で、その性能を引き継ぎながら大型化と性能向上させたのが、今回のAー2型だ。
地上から宇宙への物資輸送が主目的なので、貨物スペースがかなり広くとられている。
今回は、大きな貨物スペースに、五〇〇トンの物資を積んでいる。聞いた話では、最大積載量は八〇〇トンらしい。
この積載量が大事なことなのだ。
これまで五〇〇トンの物資を宇宙に上げるのに、どれだけのロケットを打ち上げないといけなかったか。
Aー2型試作宇宙船はそれだけの物資を積んでも順調に高度を上げていく。
「高度一〇キロメートルを突破」
「高度五〇キロメートルを突破」
「高度一〇〇キロメートルを突破!」
「「「おおおっ!」」」
どうやら宇宙空間に至ったようだ。
皆から歓喜の声が聞こえる。
「システムに異常はありません!」
「よし、無限加速航行に移行だ」
「はい! 無限加速航行に移行します!」
ヨリミツが指示するが、その無限加速航行というのはなんなのか?
「無限加速航行というのはね、無重力空間で加速を続けることだね。理論上はやがて光速に至ると思われるが、今回はマッハ三〇で地球を周回するのが目的だよ」
安住社長がコーヒーを飲みながら教えてくれた。
ちょっと聞いただけで、それがすごいことだと僕でも分かる。なんたって、光速なんだから!
「速度マッハ一〇に到達!」
「速度マッハ二〇に到達!」
「高度三〇〇キロメートルを突破!」
「速度マッハ三〇に到達!」
「「「おおおっ!」」」
ロケットエンジンは積んでいないため、最初の加速はそれほど速くはない。それでも加速し続けているから、徐々に速度が上がっていき、とうとうマッハ三〇を超えた。
「高度一〇〇〇キロメートルを突破! 周回軌道に入ります!」
その後、地球を五周したAー2型試作宇宙船は、地上に戻ってきた。
その行程に問題はなく、大気圏突入時の機体温度上昇も予想内だったらしい。
Aー2型試作宇宙船はバラされて各部品の消耗のチェックまで細かく行われた。
十日後には全てのチェックが行われ、問題ないことが報告された。
その報告を聞いた翌日、今度はスマートメタルの新型機の試験が行われることになり、僕も呼ばれた。
安住製作所の開発部は、休みはあるのだろうか。
アイカはあと半月もしたら安住製作所に勤務することになったけど、ブラックじゃないよね? ちょっと不安だ。
「ハハハ。カカミ君の懸念は分かるよ。でも安心してほしい。うちはオカザキ自動車と自衛隊の技術者の協力を得ているから、ちゃんと休みはあるよ」
「それならよかったです」
もしアイカが過労で倒れたら、安住社長といえども許さない。
そうならないことを願っています。
「今回のスマートメタルは、飛行型強襲機になる」
「飛行型強襲機……。飛ぶんですか?」
「そういうことだね。一応、最高速は時速八五〇キロかな」
「はい? それってかなり速くないですか?」
「旅客機並みの速度だから、そこまで速くはないと思うよ。それに目指すのはマッハ一・五だから」
それ戦闘機じゃん!
「武装を積んでマッハ一・五だからね。まだまだ試行錯誤が必要だけど、こういうのは楽しいよね」
「そんなものを作ったら、他の国がうるさくないのですか?」
「まあ、うるさいかもね」
いやいや、絶対うるさいよね。
「当社は顧客(自衛隊)のニーズに合ったものを造り上げるために、最大限の努力をするだけかな。国のことは自衛隊や防衛省の方々がすることだからさ」
安住社長、すごく割り切ってますね。教授を辞めて社長業をしたのは正解だったかもしれない。
「色々面倒なことも多いけど、会社が大きくなるのは、本当に楽しいよ。我が子を育てているという実感があるんだよ」
安住社長は軽やかに笑った。
僕は苦笑する。
フウコさんが無事に九級に昇級した。
お祝いの宴会を開いた。
「すぐに八級」
フウコさんの抱負はすぐに達成できるだろう。
最近、安住製作所のほうが忙しく、シーカーを休んでいたけど活動を再開する。
ルカと稲沢ダンジョンに入った。
「最近忙しくて、ダンジョンに入れなくてごめんね」
「そんなことは気にしなくていい。私たちは一日で億を稼ぐんだから、月に二、三回入るだけで大金持ちだよ。アハハハ」
ルカにとってはお金よりも『SFF』が大事なはずだ。それをあえてお金のほうに話を向けてくれる。ありがたいことだ。
僕たちは第五エリアのボスと対峙する。
ボスは初めてみる魔物だ。
「東南西北の麻雀牌?」
「あいつらは遠距離攻撃ばかりしてくる。しかもあんな姿なのになぜか連携が上手いのよね」
「どのくらいの距離まで攻撃が届くのかな?」
「はっきり分からないけど、一〇〇メートルなら間違いなく届くわね」
麻雀牌は空中に浮いているので、まずは四つの麻雀牌の『飛行』『浮遊』を『結晶』で奪って地上に落とす。
地面に落ちると、動こうともがいている。どうやら『飛行』『浮遊』がなくなったことで、自由に動けないようだ。
麻雀牌だから、首と手足をひっこめた亀以上に動けない気がする。
「ルカ!」
「任せて!」
落下した際、東と西は文字面が下になって攻撃さえできない。
と思ったら、地面にビームを放って浮き上がった。執念だな。
でも、東は落下した際に今度は文字面が上になった。ビームを放っても、動けない。
西はまた文字が下になった。
基本的に横のほうが面積が少ないから、文字面かその裏側の面が上になりやすい。
北と南は明後日の方向に文字面があるから、僕やルカへ攻撃できずにいる。
「せいっ!」
北、南、西、東はルカの攻撃を受けてあっけなく散った。
『飛行』『浮遊』を奪っただけでこうも戦闘が楽になるなんて思わなかったよ。
一応、ルカが倒す前に、『エネルギー放出』『エネルギー共有』『エネルギー回復』を結晶にして回収しておいた。
この『エネルギー共有』は東南西北が持つエネルギーをロスなく共有するというものだ。
東のエネルギーがなくなっても、他の三つからエネルギーが供給される。しかも『エネルギー回復』があるから、使用したエネルギーを毎分三パーセント回復してくれる。
こいつら、ほぼ無制限に『エネルギー放出』できるじゃん!
「以前は近づくのに苦労した……。リオンといると戦闘勘が養えないかも」
「え!?」
「冗談よ。でも、楽をし過ぎると本当に勘が鈍るから、ほどほどで頼むわ」
「りょ、了解」
僕は『結晶』と『時空操作』の二つを、主に戦うことを最近考えていた。
以前は剣を使った戦いを模索していたけど、僕では塚原師範やフウコさんどころか、アズサさんにも及ばないと悟ったんだ。
剣の稽古も、シックスセンスの稽古も続けているけど、僕の戦闘スタイルは『結晶』と『時空操作』の二刀流がベストだと悟った。




