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いずれは最強の探索者  作者: 大野半兵衛


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82/91

第82話 アイカのポカ

本作品が書籍化します!

発売日は2025年02月05日!

予約受付中です!

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 082_アイカのポカ

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 アイカがやってしまった。


「ルカ、ごめん」

「ルカさん、すみません」

「起こってしまったことは、仕方がない。気にしなくていい」

「アイカ。これからは勝手に触ったらダメだからな」

「うん」


 とはいえ、アイカの脳内に天候制御装置の設計図がある。これが外に漏れたら、非常にマズいことになるはずだ。考えすぎならいいけど、楽観視はできない。


「アイカが危険だな」

「ああ、それが一番の問題だ。どうするか……」


 僕とルカが頭を悩ませていると、アオイさんが手をあげた。


「ヨリミツさんに相談してみたらどうでしょうか」

「なるほど、それもそうだな……すぐにヨリミツに連絡してみるよ」


 頭を使うことはヨリミツに任せるに限る。

 少なくとも僕が考えるよりは、いい案が出てくるだろう。


 電話したら、明日の午後なら会えると言うので、安住製作所に行くことにした。


「協会への報告は私がしておくよ」

「頼むよ、ルカ」


 とりあえず、アイカの容姿が変わるわけではないから、すぐにどうこうということはないだろう。




 アオイさんが予約した店は、やっぱり立派だった。

 カウンターで皆が並んで、思い思いの天ぷらを頼む。


 宴が進みむと、話題にフウコさんの九級の試験のことが上った。


「え、もう?」

「何言ってるんですか、フウコは元々九級昇級の条件をクリアしていましたよ」


 ミドリさんに指摘されて手を打った。

 フウコさんがシーカーに登録した時の『SFF』は五五ポイントだった。

 これは九級昇級試験を受けることができる数値だったけど、少し慣れてから試験を受けると言っていたんだ。

 最初から、圧倒的な強さだったからね、フウコさんは。


「今の『SFF』は?」

「一八五」

「マジっすか!?」


 もうすぐ八級の試験も受けられるじゃん!

『SFF』の初期値が高い人は成長も早いと聞いたことがあるけど、どうやら本当のようだ。


「私も最初の『SFF』は五〇だったわ。多分、初期値が高いと成長が早いというのは、本当だと思うわよ」


 最速二級昇級者のルカも、初期値が高かったようだ。

 だから初期値が低かった僕はほとんど成長しなかったんだな……。


「私もシーカーになろうかな~」

「おい、アイカ。それは勘弁してくれ」

「なんで?」

「父さんが鬱陶しい」

「あ、それね……その光景が浮かんでくるわ」


 アイカが実家を出る時でも面倒だったのに、シーカーになると言ったらどんなことになることか。本当に勘弁してほしい。


 お高い天ぷらは、とても美味しかった。

 英気を養えたし、ルカも気持ちを切り替えられたようだ。





 僕は安住製作所に入った。

 自衛隊御用達もあるけど、最近は宇宙進出の話もあるから警備がとても厳重だ。


「やあ、カカミ君」

「あ、社長。こんにちは」

「いつも兄がお世話になっています。妹のアイカといいます。よろしくお願いいたします」


 今日は土曜日で、アイカが休みだから連れてきた。


「安住です。世話になっているのは、私のほうですよ。お兄さんには無理ばかり言ってます」


 挨拶をして、僕の部屋に向かう。安住社長も僕の部屋についてきた。


「土曜日なのに、随分と活気がありますね」

「今はスマートメタルの生産が追いつかないんだ。従業員たちには申しわけないけど、残業と土曜日の出勤をしてもらっているんだよ」


 従業員は募集しているし、設備投資もしている。それでも生産は追いつかないらしい。


「今は宇宙船の部品の生産も手掛けているから、てんやわんやだよ。ハハハ」

「宇宙船!?」

「あ、しまった。これは部外秘だったんだ……アイカさん、この通りだ、今のは聞かなかったことに」


 安住社長が手を合わせて頭を下げた。

 僕でもアイカたちに口を滑らせないように気を使っているのに、この人は何をしているのか……。


「分かりました。私は何も聞いてません」

「うん。すまないね」

「何を聞いてないんだ?」


 ヨリミツだ。

 安住社長は口にチャックとジェスチャーした。

 アイカと安住社長がなんでもないと誤魔化し、ヨリミツはソファーにドカッと座った。


「ヨリミツさん。久しぶり」

「アイカは綺麗になったな」

「やだー、ヨリミツさんたらー」


 むむむ。ヨリミツめ、やけにアイカと馴れ馴れしいじゃないか。

 アイカとの交際は、いくらヨリミツでも簡単には認めないからな!


「な、なんだ?」

「いいか、アイカは僕の妹だからな」

「そんなこと言われなくても知っているが?」

「だったらいいんだ」


 ヨリミツはいい奴だが、家庭を持ったらいけない人だと思う。絶対家庭を顧みることなく研究に没頭する。そんなヨリミツにアイカは嫁がせないからな!


「なんか、やってしまったらしいな、アイカ」

「そうなの。ちょっと失敗しちゃった」

「ちょっとじゃないよ。大変なポカだからな、アイカ」


 ルカにも迷惑をかけているんだから、そこら辺をちゃんと理解してもらわないと。


「分かっているわ。ルカさんには、悪いと思っているわよ」


 本当にそう思っているのか怪しいものだ。


「で、相談というのは?」


 安住社長が席を立とうとしたけど、この人も教授をしていたほど頭のいい人だ。相談に乗ってもらおうと、巻き込むことにした。さっきのポカの穴埋めだ。


「ダンジョンはそんなものまで出るのか?」

「実際に出たからね」

「しかし天候制御装置とはね。アイカ君、それはどれほどのものか教えてくれるかな」

「はい。天候制御装置は海水温度の制御から、気温の制御、気圧の制御、湿度の制御などができるもので、それらの機能を使えば台風の制御もできるし、雨が欲しい地域に雨を降らせ、逆に雨が多くて困っている地域の雨を止ませることもできます。あと、温暖化を改善することもできます」

「それは星規模か、それとも一部地域でできるのかね?」

「どちらでも可能です。要は出力次第です。あ、一応ですけど、この国の年間平均温度を五度下げようとすると、五〇〇TWhが必要です」

「五〇〇TWh……それはこの国の年間使用電力の半分に匹敵する電力量だ。かなり多いね」

「それだけの電力で、年間平均温度を五度下げられると考えると、それはそれでやる価値はある気がしますよ、社長」


 国の総電力の半分なんて、僕でも目が眩みそうなエネルギーじゃないか。


「あと、天候制御装置は衛星軌道上で使用する必要があります」

「ふむ……ほぼ実現できないものだね」


 安住社長が苦笑しながら言った。


「リオンは分かってないだろ」

「さっぱり」

「衛星軌道上で、それだけの電力を発電させるのは簡単なことじゃないんだよ。大規模な発電施設が必要になるからな」

「ああ、なるほど」


 僕の結晶を使っても、難しそうだ。

 そもそも衛星軌道上で大規模な発電所を作れるかという疑問もある。


「天候制御装置は公表したら大変なことになるだろうが、実現不可能に近いね。といっても、せっかくなので異常気象対策としてほしい装置でもあるのは言うまでもない」


 安住社長は腕を組んで悩みだした。


「アイカ。そのことは誰にも言うなよ。分かってるな」


 ヨリミツが難しい顔して言う。


「今は現実的でなくても、数年先なら現実できるかもしれない。だから、アイカが狙われないように、黙っているんだ」

「僕もそう思う。悪いことは言わないから、ヨリミツの言う通りにしておくんだ」

「私もそれがいいと思う。これは誰にも言わないと私も誓うよ。ただ、その装置をうちで造ってみないかね」

「「え?」」

「社長、本気で言っているのですか?」

「ああ、本気だとも。うちは衛星軌道上にその装置を運ぶ技術があるからね」


 宇宙船を作っている安住製作所なら天候制御装置を衛星軌道上に運べると思うけど、電力はどうするの?


「電力はトキ君が言ったように、数年後には発電できるようになっているかもしれないじゃないか。むしろ、うちが電力産業に参入できるかもしれないしね」


 商魂逞しいですね、社長。


「つまり、アイカを引き抜くってことですね」

「うちは技術者が不足しているから、大歓迎だよ!」

「いいですか!?」

「ああ、是非にお願いするよ」

「はい、お願いします!」

「お、おい、アイカ。そんなに簡単に決めていいのかよ?」

「今を時めく安住製作所に入社できるなんて、人生最大のチャンスだわ、お兄ちゃん!」


 うわー、もう転職モードになっているよ……。こうなったアイカは止められない。

 お父さんとお母さんになんて言おうかな。


 結局、アイカは転職することになった。

 あと、天候制御装置のことは極秘裏に製作するらしい。これは自衛隊やオカザキ自動車などにも秘密なんだとか。


「さて、せっかくきたのだから、工場内を見学していくかね、アイカ君」

「いいのですか!?」

「カカミ君の妹さんだし、すぐにうちの社員になるんだから構わないよね、トキ君」

「ええ、構いませんよ。でも、ここで見たことを外で言いふらしたらダメだぞ」

「はい!」


 安住社長の気遣いで、工場内を見学させてもらえることになった。


「あ、そうだ、カカミ君」

「なんですか?」

「第二工場を建てることになったんだ。次の役員会で正式に承認されて話が進むから」

「おー、第二工場ですか」


 安住製作所はドンドン大きくなっていくね!


「今度建設予定地を見学にいくから、カカミ君もきてよ」

「はい、是非」


 宇宙船の部品を生産しているエリアに入る。

 宇宙船は巨大だから、ここでは生産できないのだ。そこで安住製作所では重要な部品の製造を行い、オカザキ自動車の工場で組み立てを行っているのだとか。


「いいなー、宇宙船。いつか私も設計に関わってみたいなー」

「安住製作所に入社したらそうなるかもな」

「楽しみだわー♪」

「アイカ、分かってるのか」

「何を?」

「完全に縁故採用だぞ」

「縁故採用の何が悪いの? そもそもお兄ちゃんが引き抜いてくれたらよかったのよ!」

「僕のせい!?」


 その後、スマートメタルの生産ラインを見学したんだけど、もうテンションアゲアゲで月曜日に退職届を出してくると言っていた。



本年最後の更新になります。

よいお年を!

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― 新着の感想 ―
 ファンタジー素材が在って重力制御が可能ならば……比較的簡単に軌道エレベーターが建造できそうですね。  ダイソン球殻は無理としても地球オービットリングを巡らせ宇宙空間で地上とは比較にならない効率で発電…
細かいことですが、 >五〇〇TWh……それはこの国の年間使用電力の半分に匹敵する電力だ。 Wh(ワットアワー)ならば「電力」ではなく「電力量」になると思います。
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