054_テキスト
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ミドリさんたちが帰っていき、静まり返ったリビングで僕は床に座り込んだ。
自分自身に『テキスト』を使った。
氏名 : 各務裏穏
SFF値 : 二八〇〇(生命力六〇〇、物理攻撃力四〇〇、物理防御力四〇〇、特殊攻撃力一〇〇〇、特殊防御力四〇〇)
特殊能力 : 『結晶』『時空操作・改』『魔眼』『サハギン王』『テキスト』
詳細 : 五級シーカー、安住製作所執行役。両親は共働きで妹と共に祖父母に育てられたお婆ちゃん子。一人で寝ることができずに一二歳まで妹と一緒の布団で寝ていた。普段はおっとりしているが、戦闘になると容赦なく魔物を屠る。
「ちょ、愛華と一緒に寝てたのは、小学生の頃だし! そんな情報、要らないから!」
なんでそんな情報を出すの! 個人情報だからね!
お、落ちつくんだ。これは誰にも見えないから、僕さえ黙っていれば誰にも知られない。
うん、このことは墓場まで持って行くぞ。
「ふー……落ちつくんだ」
落ちついてから、改めてテキストを見る。
SFF値が二八〇〇なのは、そのくらいだと思うから問題ない。問題はその後ろだ。
生命力六〇〇、物理攻撃力四〇〇、物理防御力四〇〇、特殊攻撃力一〇〇〇、特殊防御力四〇〇。
これ、全部足すとSFF値と同じになるぞ。
「まさか、『SFF』の詳細がこの五項目なのかな?」
各能力値があって、『SFF』が総合力って感じかな。
もしそうなら、面白い。
「面白くなってきたぞ!」
次は収納からアイテムを取り出す。
地獄の門の下にいたドラゴンからドロップした鎧。
地獄の門の下にいたゾウからドロップした指輪。
『テキスト』でこの二つのアイテムの詳細を確認する。
名称 : 灼熱竜の鎧
希少性 : 神級
効果 : 生命力一〇万ポイント増加、物理防御力四万ポイント増加、特殊防御力五万ポイント増加。火属性、熱属性の攻撃を『SFF』に変換して吸収する。水属性、氷属性の攻撃を無効化する。その他の属性攻撃を半減させる。物理攻撃の七〇パーセントを遮断する。状態異常攻撃を七〇パーセントの確率でレジストする。サイズ自動調整。
名称 : 棘角象牙の指輪
希少性 : 神級
効果 : 特殊能力の効果を大幅に増大させる。取得『SFF』を大幅に増大させる。サイズ自動調整。
「おおお……めっちゃ凄い」
灼熱竜の鎧は凄い能力補正だ。さすがは神級のアイテムだよ!
でも灼熱竜の鎧は使えないな……。
これ、真っ赤なドラゴンの鱗で覆われた鎧だから、ドラゴンの鎧ですよーって猛アピールしてる感じなんだ。
こんな派手な赤い鱗の鎧を着ていたら、明らかに目立つよ。
「棘角象牙の指輪は地味なものだから、全然いけるけどね」
見た目は白っぽい象牙の指輪だから大丈夫。それにグローブを嵌めたら、見えない。
当面はこの棘角象牙の指輪だけ使っていこうと思い、指に棘角象牙の指輪を嵌めるとピタリとフィットした。サイズ自動調整の効果だ。
「よし、他のアイテムも見るぞーっ!」
名称 : 腕力上昇の腕輪
希少性 : 珍しい
効果 : 物理攻撃力三〇ポイント増加。
名称 : 俊敏上昇のブーツ
希少性 : とても珍しい
効果 : 物理防御力一〇ポイント増加。回避率五パーセント上昇。
名称 : 軽減の手甲
希少性 : とても珍しい
効果 : 物理防御力五〇ポイント増加。右手用と左手用に武器もしくは盾を一つずつ収納できる。
名称 : 耐毒のネックレス
希少性 : 覇王級
効果 : とても高い耐毒性を得る。
名称 : ファイアボアの革鎧
希少性 : ありふれたもの
効果 : 物理防御力一八〇ポイント増加。火属性と熱属性攻撃を一〇パーセント遮断する。
名称 : サハギンメイル
希少性 : とても珍しい
効果 : 物理防御力五〇ポイント増加。装備すると水中における呼吸を可能にし、水圧と低水温に適応できる。
名称 : 回復の指輪
希少性 : とても珍しい
効果 : 一日に一回、重傷を癒すことが可能。カウントは午前〇時にリセット。
名称 : タルタロスの盾
希少性 : 覇王級
効果 : 通常時はピアスだが、具現化すると盾になる。盾の形状や大きさは持ち主のイメージで変わる。盾を具現化した状態で物理防御力一五〇〇ポイント増加、特殊防御力一五〇〇ポイント上昇。
名称 : カラドボルグ(未完成)
希少性 : 伝説級
効果 : 光属性の剣。同位の光属性の剣を取り込むことで完成する。物理攻撃力一万二〇〇〇ポイント増加。特殊攻撃力一万五〇〇〇ポイント増加。
名称 : 下級ポーション
希少性 : ありふれたもの
効果 : 生命力を五〇ポイント回復させる。
名称 : 収納袋
希少性 : 珍しい
効果 : 一立方メートルまでのものを収納できる。生物は収納できない。
名称 : 脱毛の呪いの剣
希少性 : 伝説級
効果 : 光属性の呪われた剣。装備すると全身の毛根が死滅する。物理攻撃力一万ポイント増加。特殊攻撃力一万二〇〇〇ポイント増加。
名称 : 封印結晶
希少性 : 不明
効果 : オークの生命力を封印した結晶。『結晶』所持者が使うことで生命力を五〇ポイント回復させるか、『SFF』を一ポイント吸収する。
シーカー協会で鑑定してもらうと、覇王級、伝説級、精霊級、神級がある。
この『テキスト』で鑑定すると、希少性は最低でも六段階ある。ただし、精霊級もあるとみていいと思うので、七段階だと思われる。
ありふれたもの ⇒ 珍しい ⇒ とても珍しい ⇒ 覇王級 ⇒ 伝説級 ⇒ 精霊級 ⇒ 神級
こんな感じで、希少性が上がっていくと思う。
シーカー協会だと効果が低くても伝説級に分類されていたアイテムが、細分化された表記になっているようだ。
そして目を見張るのが、カラドボルグ。未完成なのはシーカー協会の鑑定でも分かっていた。でも、光属性の剣を取り込むことで完成するとは聞いてない。
希少性のことといい、『テキスト』は『鑑定』よりも細かな情報が表示されるようだ。これは普通に嬉しい。
「さて、カラドボルグを……」
脱毛の呪いの剣をカラドボルグに近づける。
するとカラドボルグと脱毛の呪いの剣が発光した。
その光が徐々に一つになっていき、光が収まった。
どうやら取り込み成功のようだ。
名称 : カラドボルグ(未完成)
希少性 : 精霊級
効果 : 光属性の剣。同位の光属性の剣を取り込むことで完成する。物理攻撃力三万二〇〇〇ポイント増加。特殊攻撃力四万五〇〇〇ポイント増加。攻撃した相手を一分間行動不能にする。
「凄っ!」
思わず声を出してしまったけど、本当に凄い剣になった。
これでもまだ未完成なのが気になるところだけど、もっと気になるのが脱毛の呪いの剣が光属性だったことだ。
全身脱毛するから光属性とか言わないよね?
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二月の朝六時はまだ暗い。
最近、朝早く起きてランニングするようになった。
三バカの一件があってからランニングをなんとなく始めた。それが日課になってしまったようだ。
「うー、寒い」
吐く息がうす暗い中でも白く見える。
ヘッドライトを点け、蛍光タスキを肩からかける。
「いざ、行かん」
サウナスーツを着てのランニングだから、走り出して一〇分もせずに体から汗が出て来る。
「………」
時々、何かの気配を感じ、『魔眼』を発動させる。
僕を取り囲むように四つの人の反応が見える。バラバラに居るけど、連携しているような感じがする。
あの人たち、さっきはスーパーのところにも居た。昨日も居たし、その前も居た。
ヨリミツが自衛隊に僕の警護を頼んでいると聞いたことがあるけど、僕に警護がついたとは聞いてない。
では、誰なのか……。
安住製作所のハッキングのことを思い出す。大陸の隣国……。
いつもと違うルートを行くことにした。四人も僕を囲むように移動する。
上手いこと死角に入っているけど、『魔眼』のおかげでばっちり見えてますよ。
今の動きであの四人が僕を監視していることが分かった。問題は四人が味方なのか、敵なのかだ。
近くの公園の中を突っ切って大通りに出る。ここからは本気モードで走る。
四人は必死で僕についてくるけど、五級シーカーの力を舐めてもらっては困りますよ。
四人を振り切ってマンションに戻る。
シャワーを浴びてベランダに出た僕は、彼らの反応を確認。疲労困憊といった感じかな。
朝食を摂って、ヨリミツに電話する。
「なあ、僕を監視している人がいるけど、何か知ってる?」
ズバリ聞いてみた。
「いや、知らんな。とうとうお前に辿りついたか」
「時間の問題だって安住社長が言っていたけどさ、護衛とかじゃないよね」
「今のところ、お前に護衛がついたとは聞いていない」
「そうか。それじゃあ、用心しておくよ」
「了解だ。今日は安住社長に会うから、あの人にも言っておくよ」
あの四人はヨリミツとは関係なかった。
あっ、そうか。『テキスト』で見ればいいんだ。
ベランダに再度出て『魔眼』を発動。
上手いこと隠れているが、『テキスト』は『魔眼』越しでも使えるんだよね。
「なるほど、意外なところだったな」
四人は北の隣国の諜報員だった。
まさかそっちかと思ってしまったが、可能性はあった。
そのことをヨリミツにメールしておく。
「そうだ、ミドリさんたちにも連絡しておかないと」
彼らはせいぜい九級シーカー程度の力しかない。ミドリさん、アズサさん、アサミさんは油断しなければ自力で対処できると思う。ただ、不意を突かれるといけないから、日頃から警戒するように促そう。
問題はアオイさんと僕の家族たちだ。皆一般人だから狙われると危険だ。とりあえず警備会社と契約、それから皆にGPS発信機を持たせておこうと思う。
あとのことは皆に相談して決めよう。
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