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021_ゴブリンの支配者

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 021_ゴブリンの支配者

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 第五エリアの城は、ゴブリン城と言われている。オークよりゴブリンのほうが弱いと思われているけど、その考えは間違いではない。

 弱いゴブリンがオークより深いエリアに城を構えていることに、違和感がある人は多いだろう。だが、このゴブリン城に居るのは、ゴブリンキングに率いられているゴブリンなのだ。


 ゴブリンに限らず、キング種に率いられた魔物は通常よりも大幅に強化され、ホブゴブリンがオーク並みの強さになる。しかも、このゴブリン城に居るゴブリンは、ホブゴブリンよりも上位のゴブリンナイト、ゴブリンメイジ、ゴブリンジェネラル、そしてゴブリンキングなのでオーク城よりも危険なんだ。


 オーク城にはオークキングも居たけど、隠し通路の奥に居たせいかオークたちを強化する効果は届いていなかった。隠しボスはオークを率いていないという設定なんだと思う。


 ゴブリン城のエリアボスは、言わずと知れたゴブリンキング。だけど、ゴブリンキングを倒してもゴブリンたちは元の強さにならないのが厄介だ。

 さらに、ゴブリンキング以外にも厄介な魔物がいる。ゴブリンメイジだ。ゴブリンメイジは魔法を使う魔物で、それも色々な属性の攻撃をしてくる。


 そのゴブリンメイジが五〇センチほどの杖を構えて、僕に火の槍を放ってきた。空間の壁を出して火の槍を防御した僕だが、そこにゴブリンジェネラルが大きな斧で攻撃してくる。


 目の前にはゴブリンジェネラル一体、ゴブリンメイジ三体、ゴブリンナイト五体のゴブリンパーティーが居る。

 厄介なゴブリンメイジ三体を『結晶』で倒し、ゴブリンジェネラルを空間の壁で囲って動けないようにする。

 ゴブリンジェネラルはその大きな斧を叩きつけて空間の壁を破壊しようとしているけど、ジェネラルと言えども空間の壁を破壊するほどのパワーはない。


 最近は空間の壁の強度が上がってきた気がする。気のせいじゃないと思う。多分、僕の『SFF』が増えたことで、特殊能力も強化されるのだと思う。


 拘束したゴブリンジェネラルを後回しにし、ゴブリンナイトと剣で打ち合う。ナイトというくらいなので、なかなかの剣捌きだ。

 ただ、圧倒的という程の差はなく、一体、また一体とゴブリンナイトを倒していく。僕だって剣の訓練はしている。剣の使い方を研究し、どうやったら効果的な攻撃ができるか考えているんだ。ナイトでもゴブリンに負けるつもりはない。


 五体目のゴブリンナイトを倒した。残るはゴブリンジェネラルだけ。


「あ……ごめん、忘れてた」


 忘れていたというのは空間の壁を密閉させていたということであって、ゴブリンジェネラルの存在を忘れていたわけではない。

 そんな言いわけはよくて、空間の壁に閉じ込めていたゴブリンジェネラルが酸欠でぐったりしている。かなり暴れていたので、酸素を多く使ってしまったんだね。


 空間の壁を解除してふらふらになったゴブリンジェネラルに遅延をかける。一気に懐に入って赤銀の剣を横に薙ぐ。

 ゴブリンジェネラルの腹を切り裂き、血が飛び散る。それでもゴブリンジェネラルは本能の赴くままに僕に攻撃をしようと大斧を振り被った。

 しかし、ゴブリンジェネラルの動きにまったく切れも精彩もなく、剣を喉に突き刺して引き裂いた。それでゴブリンジェネラルが大の字に倒れたので、結晶にした。


 強化されていても、ジェネラルなら問題なく倒せる。多分、ゴブリンキングも倒せると思う。ゴブリンキングよりもオークキングのほうが強いのは常識で、そのオークキングを倒している僕なら問題ないだろう。

 ただし、油断はしないように、細心の注意を払っていこうと思う。


 ゴブリンを倒しながら進み、最上階へ到着した。ゴブリンキングは復活していて、まるで僕を待っていたかのように巨大な剣を向けてきた。

 ゴブリンでもオークでもそうだが、上位種になればなるほど体は大きくなる。ゴブリンキングはその背丈と同じくらいの、およそ二五〇センチの大剣を大上段から振り下ろした。

 なんと二〇メートルほど離れているところから、斬撃の攻撃を放ってきた。その斬撃が床を切り裂きながら高速で僕に迫る。

 空間の壁で防御もできたけど、僕は横に飛んでその斬撃を避けた。相手が一体なので『時空操作』をできるだけ使わず、一騎討ちをしようと思ったんだ。


 斬撃を避けられたことが気に入らなかったのか、ゴブリンキングは雄叫びをあげた。

 その声に反応したのか、床からゴブリンナイトとゴブリンメイジが出てきた。


「えぇぇ……眷属を召喚したの? そんなの聞いてないんですけど」


 シーカー協会の資料には、一言もそんなことは書かれていなかった。それどころか、ゴブリンキングは力押し一辺倒の脳筋魔物だとあったから、僕は一騎討ちしようと思ったんだ。なのに、あいつはゴブリンナイトとゴブリンメイジを五体ずつ召喚した。


「そっちがその気なら僕にも考えがあるからね!」


 僕の純粋な心を踏みにじったお前と、まともに戦ってやるもんか!

 ゴブリンキングを空間の壁で隔離。さらに『結晶』でゴブリンナイトとゴブリンメイジを一掃した。それでもゴブリンキングはゴブリンナイトとゴブリンメイジを召喚してくる。再び『結晶』で一掃。また召喚―――。


 結構な時間が経過したと思う。とうとうゴブリンキングは眷属を召喚もしなくなった。弾切れのようだ。

 それにゴブリンキングが苦しそうな表情になってきた。酸欠も加わって意識が朦朧としているんだと思う。『結晶』でゴブリンキングを結晶に変えて僕の完勝。

 そしてゴブリンキングの魔石の横にアイテムが落ちていた……。


「また王冠……」


 なんというか、王冠が続くな。

 前回のサハギン王の王冠は、僕が使った。サハギンは水中戦を得意にしているから、この先にあるだろう水中戦を考えるとメリットがあると思ったんだ。


 覚えた特殊能力は『サハギン王』。僕よりも弱いサハギンを使役できるという特殊能力。

 召喚系特殊能力ではなく、使役(テイム)系特殊能力。だから、そこにサハギンがいないと意味がない。

 でも、僕は『時空操作』でいつでもサハギンがいるダンジョンへ移動ができる。サハギンをテイムして、別のダンジョンに行くこともできるということ。


「でも、ゴブリンじゃぁ……」


 ゴブリンキングを使役できるのならそれなりにメリットはあるけど、サハギン王の王冠で王種は使役できない感じだったので微妙だ。


「とりあえず、ゴブリンキングが眷属を召喚するのはかなり危険だから、シーカー協会に報告しておいたほうがいいね」


 僕は地上に戻ってその足でシーカー協会に向かった。

 その途中、けたたましい何かがぶつかるような音がした。そっちを見ると、自動車が横転していてかなり酷い状態だった。そのそばに止まっているトラックは、ボンネットが派手に凹んでいる。衝突事故のようだ。

 周囲に居る通行人はかなり驚いたのか体が硬直していて、救助どころの話ではない。


 横転している自動車から煙が出てきた。これはマズいと思った僕は、自動車に駆け寄った。

 運転席と後部座席に一人ずつ居て、共に気を失っている。息はしているけど、血が流れている。中の人を助け出そうとしたが、事故の衝撃でドアが変形していてなかなか開かない。


「くっ、このままじゃ」


 こういう時にシーカーの馬鹿力が物を言う! 僕は限界に迫る力でドアを無理やり開けようとした。


「手伝う!」

「お願いします」


 僕くらいの年齢の男性が、一緒にドアを開けようと力を貸してくれた。

 おかげでドアは開いたけど、後部座席に居た少女は酷い怪我だ。血がとめどなく流れ出て、かなり危険な状態だと分かる。


 僕が少女を、手助けしてくれた青年が運転手を助け出した。トラックのほうも誰かが運転手を助け出している。

 僕たちは自動車から距離を取るように、歩道に二人を運んだ。二人ともかなり危険な状態。僕が持っている下級ポーションでは、とても足りないと思った。


「中級ポーションがあればな……」


 手を貸してくれた青年がそう呟くのが聞こえた。


「僕も下級しか……あ!?」

「どうした!?」


 僕は結晶を取り出して、その治癒能力を解放した。少女の傷が塞がっていく。


「それは……」


 青年がそう言いかけて止めた。彼もシーカーだと思うので、そういったことを聞かないのがマナーだと知っているのだろう。


 運転手の男性も結晶で治し、トラックの運転手は軽傷だったけどこっちも結晶で癒した。これで誰も死なずに済む。


 救急車のサイレン音が聞こえてきた。赤信号を徐行しながらこっちへやってきた救急車から救急隊員が下りて来て、三人の状態を確認した。

 さらにパトカーもやってきて、警察官が僕と青年、他の色々な人に話を聞いていた。


 僕は事故の音を聞いたけど、その場面を見たわけではないと警察官に説明。あと、治療に関しては特殊なアイテムを持っていたと説明した。

 最初の身分確認のところで僕がシーカーなのは教えているし、革鎧を着ているのですぐにシーカーだと理解してくれた。

 そのおかげで、警察官はアイテムのことを詳しくは聞かなかった。


「ふー、大変な一日だったな」


 事故に関わったことで、シーカー協会へ入ったのは夜になってからだった。血だらけの僕が入っていくと、職員が駆け寄ってきてどうしたのかと聞いてきた。

 事故に遭遇して血だらけの人を助けたので、自分の血ではないと説明した。


 ゴブリンキングが眷属を召喚したことを報告して、魔石を換金してもらおうとしたら―――。


「これはゴブリンロードの魔石です」

「え?」


 ゴブリンキングだと思っていたのは、ゴブリンロードだったらしい。

 そういえば、ゴブリンキングは槍を持っていたはずだけど、剣を持っていたことを思い出した。ゴブリンロードなんて枇杷島ダンジョンに出ないので、ノーマークだったよ。


 大水支部長がやってきて、もしかしたら僕の前に挑戦したシーカーたちは、ゴブリンロードに倒されてしまったのかもしれないという話になった。

 すぐに行方不明のシーカーが居ないか、確認されることになった。そして、ゴブリンロードからドロップした王冠を鑑定してもらうと、ゴブリンの支配者の証というアイテムだった。


「これはゴブリン種を召喚するアイテムか。カカミ君は珍しいアイテムを回収してくるな」


 大水支部長に半眼で見られてしまったが、それは僕が意図的にしているわけじゃないからね。

 今回得たゴブリンの支配者の証は、サハギン王の王冠と違って装備品だった。ゴブリンを召喚するには、頭にゴブリンの支配者の証を被る必要がある。髑髏のついた王冠なので、趣味が悪く使う気にはなれない僕はオークションに出すことにした。


 

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― 新着の感想 ―
[一言] キングとロードの立ち位置が逆 ロードは領主、その上に王がいるべき
[一言] 枇杷島ダンジョン…お気に入りの風呂屋がダンジョンに飲まれて 魔物が入浴してりなんて想像して(滝汗
[一言] このゴブリン城に居るのは、ゴブリンキングに率いられているゴブリンなのだ。 この一文は前の文と逆接で繋いでほしい
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