なんでもない一幕 画家(自称)
生存報告ついでに、画家さんのなんでもない短い一幕をどうぞ。
「あんたこの間、帰ってから、何をした?」
店に入って出会い頭に、一言。トタロウさんは心底不満そうな顔でこちらをみている。
「急になんですか、何って……あぁ、えーと、絵を描きましたね」
なんの話だろうかと思い返してみるが、心当たりはない。昨日は双子ちゃんのとこに寄った後、普通に帰って絵を描いて過ごした。
「……寄り道したなんてことは?」
ぱちりと瞬き一つ。そうだ、双子ちゃんのとこに寄ったってことは、それはつまり寄り道。
「やー……あはは、今日は、僕、この辺で」
「おい待て!」
どうしてばれたのかと不思議がりつつ、トタロウさんから逃げる。しかし、走ったところで追いつかれてしまう。どうしたものかと思ったら、道角からひょこりと龍様が顔を出した。
「龍様! 匿って」
「なんだ、追いかけっこか。やんちゃだなぁ、愛し子は」
すぐにとぼけるのがこの龍の悪い癖。
どうせ僕のことを見てただろうに。
「龍の神、アンタの愛し子どうかしてるぞ」
すぐに追いついてきたトタロウさんが言葉を投げる。
全く足が速い。
「よく知ってるとも、だから俺の愛し子なんだ。変に心配などしなくていいさ」
「楽観的だな」
「死んだらそこまでの命だっただけのこと」
その一言に、彼は顔を顰めた。知人の彼氏がヤバい男だったとでも言いたげな顔だ。確かに龍様は冷たいが、僕は気にしていない。気にする必要もない。
「龍様は淡白ですよね」
「君も存外、そんな性だろう」
「そう見えます?」
「それはもう、家族に対しては特に明白だ」
「気のせいですよ」
無駄に勘の良い神である。
「それで? どの話がバレたんだい?」
「まるで僕が山のように隠し事をしているような言い振りはやめて下さい。これは……寄り道がバレたんです。昨日の」
複数隠し事をしているのは認めるが、山のようにしているわけではない。龍様はなるほどと頷いて目を瞬かせた。
「あぁ、あの双子か」
「あぁ、じゃない。知ってたなら止めてやれ。犯罪集団の中心付近にいた奴らだぞ」
あいも変わらず心配性な彼。
龍様は呑気に笑った。
「彼らを止めたのも助けたのも愛し子なのにか?」
ちなみに兄の方とは気が合うらしい、と余計なことをぽこぽこ喋る。何を止めたのかは覚えがないが、助けたというのはわかる。匿ったが正しいのかもしれない。
龍様の言葉に彼はジロリとこちらを睨んだ。
何もしてないのに、と僕は降参のポーズとして両手を上げた。
「ちょっと……縁がありまして、あぁ、そんな怒らないで下さいよ。気の良い双子ちゃんですし……何より、見目が良い」
きらりと輝かしい笑顔で開き直る。潔く諦めた方が身のためだと感じたのだ。
「最後のが全てだろう、まぁ、アイツらの顔面が麗しいのはわかる」
トタロウさんは頷いた。彼にも美醜を感じ取る感性はあったらしい。
「いやぁ、瓦礫降る中の彼らの麗しさったら素敵で! 思わず声掛けてしまって」
思わず同意して捲し立てれば、彼が一瞬目を暗く光らせた。矛盾しているが僕はそう感じた。
「……瓦礫、か」
「あ」
そして一言で全てを察した。この話はした覚えがないな、怒られるからと隠していたんだったか。
出歩いた件はバレているが、わざわざ中心地に行った話はしていない。
「愛し子、君結構抜けてるよね」
「間抜けで封印されてた龍様。他人のこと言えるんですか?」
「俺にそんなこと言うの君くらいなモノだよ」
ケラケラ笑われて、毒のある言葉で返す。
そんな会話を聞き、彼は呆れ顔で僕の肩に手を置いた。あぁ、捕まってしまった。
今後、しばらくは過保護に扱われそうだ。
今年も味噌餡が美味しい季節がやってきましたね。
新作も書いてはいるのですが、完結が見えてから投稿し始めるのと、私生活が忙しくなったのもあり、時間がかかっております。
気長にお待ちいただれば幸いです…




