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ローレライの涙

 僕はギルドに向かう。その途中でローレライを探す。いない? アランが言うには大きな岩の上に居るって聞いているんだけど‥‥‥結局ギルドまで来た。僕は受付のお姉さんにさっきまでの話をして説明する、糸は自然にほどけるが、先程僕が言った言葉で今なら何でも話すから先に尋問しておいて欲しいと伝えた。


 受付嬢のお姉さんはただのお姉さんじゃない、冒険者を相手にするのだ、ただの優しいお姉さんである訳はない。ギルドの偵察隊、その街を護衛する。冒険者も真っ青になる位のプロの精鋭達なのだ。


 受付嬢になるには、最低クラスでいえばミュラーと同じシルバーを持っていないとなれない憧れの職業だ。ゴールドを持つ受付嬢は多い、だから適格なアドバイスが出来る。ギルドに対しての忠誠心は言うまでもない。まあギルマスに憧れてなる人間がいるって何処かで聞いたなあ。


「それじゃあ! 後は宜しくね」


 と言って僕は川に向かう。ローレライを探す為に。川の途中に大きな岩を見つけた。岸壁に沿うようにせせり立つ岩、ここにローレライがいるはず僕はその頂上に行く。


 ブロンドの髪を貝殻で整えるローレライを見つけた。僕は声をかける

「ローレライ? ニクセンはここにはいないの?」


「あら、シルフィードから声を掛けられるなんて初めてかしら、皆通り過ぎて行くだけなのに、貴方は変わっているのね」


「そうだね、良く言われるよ。それに人間に姿を見せているしね」


「人間に! どうして? 人間達は私達を恐れ嫌っているじゃない、それこそ妖精の存在を知ろうともしない」


「ねえ、ローレライ何があったの? 僕達が出逢った人間の中にも嫌な人間もいたけど殆どは妖精を敬い共に生きて行こうと頑張っていた人間の方が多かったよ」


「‥‥‥ニクセンはそんな事は言ってなかったわ、人間は妖精なんて信じていない勝手な生き物だって言っていた。ニクセンは悪い人間は川で溺れてしまえばいいと」


「ニクセンも元は人間だったからなのか‥‥‥人間が嫌いなんだね‥‥‥」


「僕は人間達が大好きだよ、今一緒に旅をしている。皆良い人間だよ、その人間はヴィヴィアンに育てられた、妖精の事も理解してくれている」


「‥‥‥そんな」


「ニクセンは何処? 人間を陥れるような事は、何とか止めてもらいたいと思っている。だから話しをさせて欲しい」


「ニクセンならあそこよ」

 と崖の上にある木にもたれ昼寝をしていた。


「ニクセン? 話があるんだ。聞いてくれる?」


「やあ! シルフィードか、何だい?」


「人間に危害を与えないで欲しいんだ。貴方のバイオリンの演奏は素晴らしいと聞いた。ローレライの歌声と聞くともっと素晴らしいって妖精達が言っていたよ」


「それは嬉しいね。褒めて貰えるなんて、でも人間は嫌いだ。騙して他人の不幸を喜ぶ」


「そんな人間ばかりじゃない事は貴方だって知っているでしょう? どうしたの? 何かあったの?」

 木にもたれていた身体を起こして座るニクセンを僕は見る。


「騙されてその命まで奪われた者の気持ちは解からないだろう? 大切に思っている者を奪われた‥‥‥人間は愚かだ。この俺もそうだ。人間だった頃の楽しい思い出も今では過去のもので悲しい想い出に変わってしまったよ」

 その寂しそうな顔を見ていたらこっちまで辛くなる、そんな悲しい顔だ。


「俺は‥‥‥ローレライに恋をした。だが、ローレライは人間を惑わす悪い妖精だと言われた。その時は妖精についての知識はなかった。そこで言われたんだ、鉄で作ったアクセサリーを渡せば喜ぶってね」


 鉄は僕達妖精が最も苦手なものじゃないか‥‥‥


「俺は小さなネックレスを持って行った。それを彼女に渡す為に、解るだろう? どうなったか、そう俺は彼女を傷付けてしまった。身体だけではなく心までもね。それから彼女は姿を二度と俺に見せなくなったよ」 

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