クラ―ケン討伐
アランは今の自分の船の傷んでいる箇所を補強していた。エリカ達はクラーケンの目撃情報を聞いて回る。僕は妖精達とクラーケンを探す。妖精達にクラーケンを討伐する為に協力して貰えるようにセイレンとセルキーと一緒に話していく。
その数日後クラーケンの目撃情報が入った。クラーケンに船を沈められた船員がその話をギルドに知らせに来たのだ。その日は海は凪で静かだったと言う。その情報はエリカ達にも伝わっていた。
「どういう事だ」
アランが腕を組んで考える。僕はアランに聞く
「どうしたの? 何か可笑しい所でもあるの?」
「クラーケンは嵐の時にやって来る事が多いんだ。嵐の為に海底に住むクラーケンが海上に現れると、だが今回は海は凪の状態だった。これは、早いとこやっつけないとマズイなあ、魚も食われちまう」
アランは
「クラーケンにも縄張りみたいなのがあるらしいって聞いて事がある」
と何かを思いついたようだ。その顔は自信に満ちていた。
「やってやろうか! 原始的だが、餌を集めて広範囲に流す。これでやつは縄張りに入って来た奴に威嚇をする為に上がってくるはずだ。そこを叩いてくれ。俺達は船をなんとか持ち堪えさせてみせるさ」
その日はやって来た。
エリカは船首部分に立って海を見渡していた。その腰には剣が2本付いている。あの問屋の親父さんが1本くれたそうだ、エリカは今回二刀流で挑むようだ。その視線は海面に向けられている。シルフィーがいつ帰って来てもいいように、すぐ出て行けるように。その後ろ姿は神々しい。船員達もそんなエリカに憧れを抱く者がいても可笑しくはないが‥‥‥なんせあのアームレスリングを見たんだ。尻込みする気持ちはわからないでもない。
僕はセイレンとセルキーと海底にいた。そうクラーケンを探す為だ。見つけたら海上まで押し上げる。これは僕の風の力を水流として渦巻を作ったり竜巻も作れる事が解ったのでこれを使う。
餌のイビルフィッシュは、セイレンが歌声でイビルフィッシュを呼び寄せる、スゴイ‥‥‥歌声で集まって来ている。そこをセルキーの仲間達が捕らえる。網だと食い破ってしまうので、大きな檻を用意して海に沈めそこに追い込む。沢山捕まえた。それを船に乗せた。
海は今日も凪だ。船長のアランから指示が出る。船から大量の『イビルフィッシュ』が海に投げ入れらた。すると大きな気泡がぶくぶくと泡だって来た。静かだった海面はうねり始める船底に大きな影が見える。
それが次第に上がってその姿を現す。沢山の大きな触手がイビルフィッシュを捕らえる。大きな波で船は揺れる。そこへまた大きな影がこちらに向かって来ているのが見える。どうやら今のこの海にはクラーケンが2匹いるようだ。
そこで2匹の縄張り争いが始まる、大きくうねる波に船は木の葉のように浮かんで揺れている。船長のアランは船員に指示を出している。帆を下げ錨を上げる。船首にいるエリカは微動だにしない。じっと海面を見つめる。
海の中で2匹のクラーケンが暴れている。その1匹がこの場を離れる。これからが僕の出番だ! 竜巻を起こし海底へと逃げるクラーケンを海面まで押し上げる! ザバーーーーン! と大きな烏賊のクラーケンが飛び出て来た。
クラーケンは触手を船に絡める。それをエリカとミュラーが素早く切って行く。大きな触手が甲板にボタボタと落ちぐにょぐにょと蠢く。エリカの二刀流は見事だ。大きな触手が切り刻まれていく。エリカとミュラーはそのままクラーケンに飛び乗る。
2人はクラーケンの目を剣で刺して潰す、そしてその大きな身体に何度も切りつけて行く。
「触手の足の中央に口がある。気をつけろ!」
船長のアランが叫ぶ。エリカはにっと笑う。
「ミュラー! この足全部切るわよ。切り刻んであげるわ!」
そこでクラ―ケンは大きな口を開け牙を剥ける。それは最後の抵抗になった。クラーケンは切り刻まれ海に投げ出された、その身体をセルキー達が集めていた。
僕は海から風の力でエリカとミュラーを甲板に乗せた。船員達が2人を囲んだ。
「すげーえよ! あんた達!」
「ああ! いいもん見せてもらったよ!」
船員達は大興奮だ。
そういえばアリーナは? おっ! あの後ろ姿はアリーナだ。
「アリーナ?」
「なーに」
と振り返ったその姿に噴き出す。アリーナは刻まれたクラーケンの足を口に銜えていた。
「これ美味しいわよ!」
良かったね、満足そうに口をもぐもぐさせて満面の笑みを浮かべる。今夜の酒のつまみはクラーケン料理が並ぶだろう。楽しい宴になるなあ。




