港街アームレスリング
今度は船を探す。海に沢山の船があるが持ち主は売ってはくれない。さっきの話を聞いていたのだ。自分の船が無事に戻ってくるとは思えない。
「どうする。エリカ‥‥‥」
僕はエリカの顔を覗く。そこにあの船長さんが来た。
「よう! しけた面してるじゃないか、船が見つからないってか? まあそうだろうよ。クラ―ケンに沈められた船は多いからな、そりゃあびびるさ‥‥‥どうだ、俺の船をいっちょ買ってくれると嬉しいんだがなあ、ここで新しい船でも作ってもらうかな! モンスター倒したら報奨金も貰えるんだろう?」
日焼けしたその色黒な顔から白い歯が見える程ににっこりと笑顔を見せる。その顔はなんとも頼もしい。
「今直ぐ行く訳じゃないだろう? それまでは漁はするさ。行く時は言ってくれ、用意する」
「わかった。ギルドに連絡して来るわ。情報が入ったら知らせる」
「俺の名前はアランだ、そん時は宜しくな」
「こちらこそ、宜しくアラン。私はエリカ」
「私はアリーナよ」
「僕はミュラー」
僕はミュラーの肩に乗って言う
「ミュラーはテイマーだから、後はフォレストウルフがいるよ」
「へえ! そんな細っこい腕で戦うなんて出来るのか?」
ミュラーもちょっとカチンときたようだ。
「僕とアームレスリングをしよう」
「おいおい大丈夫かい? 骨が折れても知れないぞ」
おお! 珍しいミュラーが怒っている。
と言う事なので、せっかくやるならギャラリーが居た方が盛り上がるとステージを用意した。スライムさんの提案だ。
「大丈夫か? 坊や、アランかげんしてやれよ!」
周りから野次が飛ぶ
「手加減はしなくていいから、本気でやってよ」
ミュラーとアランが腕を組む。アリーナは嬉しそうだ。だってまた、あの勇姿が見れるのだからね。
エリカが審判だ
「用意はいい? では‥‥‥スタート!」
バーーン! とアランの腕が倒れる。
「大丈夫?」
と唖然とするアランに向けて爽やかに微笑むミュラー。‥‥‥街の女性はミュラーにくぎ付けになる。甘い吐息が聞える。
「いや、もう一度だ!」
アランは諦めが悪いのか、何度も挑戦してくる‥‥‥で、ミュラーが勝ってしまう。
アランはしょんぼりとする。そこで今度は大きな体格の男性が挑んでくる。筋肉ムキムキだ。その筋肉を見せるようにポーズをとる。
「今度は俺だ!」
‥‥‥はい!ミュラーの勝ち。スライムが言う
「ここにはミュラーに勝てる相手は居ないな。強いて言えば‥‥‥エリカ位だ」
周りの外野は笑う。
「女に負けるって。そりゃあ、ないだろう?」
あまり笑うのでアリーナが怒る。
「それじゃあ、私に勝ってみなさいよ」
アリーナが声を張り上げて言う。その声に答える声は聞こえて来ない、ただ笑い声だけが聞こえる。
「負けるのが怖いの? エリカは私に勝ったわ。その私に勝てないのなら、その時点でエリカに勝てるなんて思わない事ね」
そこで1人が前に出て言う
「いいじゃないか。泣くなよ? 嬢ちゃん」
その後は‥‥‥‥‥‥沢山の男達をアリーナが泣かせてしまった。
「こんな女がいるなんて‥‥‥」
「ふん! 冒険者舐めないでよね」
アリーナは満足しているようだ。
アランが言う
「こりゃあ、本当にクラ―ケン倒せるんじゃないか?」
その外野の中から誰かが言う。
「剣姫エリカ‥‥‥」
「聞いた事がある、最年少で特級クラスを取ったって言う‥‥‥」
「あんたかい?」
「そうよ」
おおーーっと周りが騒めく。
アームレスリングを気にいったのか、いつの間にかステージの周りには人だかりが出来ていた。野次もなかなか飛んでいる。スライムさんが審判をしている。そこはスライムさん! ズルは見逃さない。
「そこ! 肘が途中浮いてズレていた。はい! 失格」
ほうほう流石です。その内の1人が連勝していた。それに気をよくして
「エリカとか言ったっけ、そこの冒険者。どうだ、俺とやらないか? 負けたら船に乗ってやる」
「乗組員はあなた1人?」
エリカは不満気に言う
「俺が負けたら俺の船の乗組員全員乗ってやる。だが、俺が勝ったら‥‥‥俺の女になれ」
「その勝負受けたわ」
エリカの本気が見れるかな? 僕はワクワクしながら、ミュラーの肩に乗って見物をしていた。でもこの人は普通に負ける事は出来ないだろう‥‥‥。何故なら‥‥‥
 




