セイレン
セイレン‥‥‥逢いに行こうかな、さっきの船乗りの人にも頼まれたし。
「エリカ! 僕、セイレンの所まで行って来るよ」
「解った。皆に言っておく」
僕は海の上を飛ぶ‥‥‥確かこの辺りで姿を見たけど‥‥‥と見渡してみる。大きな岸壁の近くにある岩の上にセイレンが居た。
「セイレン! 初めまして! 僕シルフィー」
「まあ珍しい! 沢山いるシルフィーから挨拶される何て初めてよ」
「僕は変わっているらしい、人間にもこの姿を見せているからね。そうだ! 船乗りさんからお礼を言っておいてくれって頼まれているんだ。溺れかけた船員さんを助けたんでしょう? その人の船長さんかな?」
セイレンはにっこりと微笑み歌を歌い始めた。その澄んだ歌声にしばらくうっとり聴き惚れていた。
歌い終わると
「シルフィー海の中に入ってみる? 海の中から海面を見るのってキレイよ」
「いいの?」
「いいわよ」
セイレンと一緒に海の中に入る。綺麗な海だ透明度が素晴らしくいい。海底から海面を見上げる。魚達はまるで空を飛んでいる様に見える。見上げる海面は太陽の光の屈折でキラキラと波打っている。
この世界は本当に美しい‥‥‥前世とは真逆だ。この世界には科学の代わりに魔法が存在する、それは、自然を守り敬う事で発揮させるものだ。よく出来ているよ、神様。良い世界だ。
僕は暫く海の中をセイレンと泳いだ。セルキーもいるのだとセイレンから聞いた
「セルキーも良く海岸にいるわよ。そのうち逢えるわ」
「うん楽しみにしておくよ。今日はありがとう! またね!」
僕は皆の所に帰る。皆もはしゃぎ疲れた様で木陰を見つけて休んでいた。
「お帰りシルフィーどうだった? セイレン、やっぱり人魚なの?」
エリカは興味深々だ。まあね女の子からすれば‥‥‥そうなるかな?
「うん! とてもキレイだったし、歌声も素晴らしいよ。僕初めて海の中に入ったんだ! 綺麗だったよ!」
「良かったわね。初めての海に皆テンション高いんだもの。ここに来て良かった。後は宿を探さないといけないわ、ミュラー何か渡させていたけど、見せてくれる?」
と渡されたパンフレットに目を通す。
「海が近い方がいいわよね。波の音を聞きながら何て‥‥‥いいわね」
アリーナもそれを見て
「ここがいい!」
と指を指した場所は、先程寄った食堂の上だった。宿もあるんだ、便利だからいいね。皆も同じだったようだ。あそこの料理は美味しかったからね。その気持ちはわかる! 僕も賛成だ!
「決まりね! 行きましょう」
宿屋を目指し港へ戻る。相変わらずいい匂いがしている。まずは宿の空き状況を聞く、空いているのでここで泊まる事を話す。そして、お馴染みスライムさんの人生相談もここでもする事になった。
以外にもスライムさんも有名になっていたので店主からお願いされたのであった。僕はお店に顔を出す事を許して貰った。やったー! どんな楽しい話が聞けるんだろう楽しみだ!
その夜、あの時の船長さんかな? が店に来た。
「船長さん! セイレンに伝えて来たよ!」
「おお悪いなあ、ありがとよ。何か欲しいものがあったら遠慮なく言ってくれ、ここは港街だから色々な荷が船から降ろされる。だから大概なんでも揃う。必要な物があったら言ってくれ!」
「うん! その時は宜しく! 品物は買い取ってくれたりもするの?」
「おお、するぞ。珍しい物でもあるのか?」
「ダイアウルフの毛皮だよ」
「おお! そりゃあ凄いなあ。流石は冒険者ってとこか、いいぜそこにも声を掛けておいてやるから行く時は言ってくれ」
楽しく夜も過ごした。アリーナ達も身体を洗ったら直ぐ寝てしまった。
アリーナが海の塩が身体に付いて気持ち悪いからと言うのでシャワーを借りた。凄い。ここにはシャワーがあるんだ。なんでも魔法使いが魔道具を使って作ってくれたと言っていた。
皆大喜びだったと言っていた。魔石を使用してお湯が出てくるらしい。凄い!
エリカが言うには、前世でいう所の銭湯に近いような物らしい。お風呂かあ、僕は実体が無いので感じないが‥‥‥前世をふと思い出す。忙しい毎日でシャワーで済ませていたっけ。
 




