浜辺
「? その肩に乗っているのは?」
エリカの肩に乗っている僕を見て言う
「僕風の妖精シルフィーだよ」
「へえ! 妖精かあ、ここの船乗りの連中はセイレンに夢中さ。美しいからなあ」
「そうだね。彼女の歌声も綺麗でしょう?」
「そうなんだ。余所の連中は歌声で惑わすって言うがうちのセイレンは違う。危険を知らせたりしてくれるんだ」
「おまえさん妖精だろう? セイレンに礼を言ってくれないか。うちの船員が溺れかけたのを助けてくれたんだよ」
「うん! 伝えておくよ! 僕も逢ってみたいからね」
「宜しくな!」
「そうだ! 海岸? だっけ? に行くって言っていなかったけ?」
港街の出店を堪能したアリーナが言う。エリカはその男性に聞く
「この辺に浅瀬で波の穏やかな場所ってあるかしら?」
「あるよ! いいデートコースになっている。この道を真っ直ぐ進んで行くと見えてくるはずだよ。子供も遊ぶ位だから安全だと思うが気をつけるに越したことは無い。泳げるかい?」
ミュラーは
「僕は大丈夫だよ、エリカは‥‥‥聞かなくてもいいね。アリーナ。湖と違って波があるから泳ぎにくいから気を付けてね」
「そうなんだあ。腹ごなしに丁度いいわ! 行きましょう」
話をしていたら海岸に着いた。アリーナがまた一段と興奮する。
「わあーーーー! キレイ! 太陽の光を海が反射してキラキラしてるぅーー! あの時見えていた白い波ってこんな風に砂浜? にザーって来るのね! 見て見て海の魚って色がキレイなのね! 色んな色の魚がいる!」
うん! はしゃいでる‥‥‥子供のようだ‥‥‥わからないでもないが‥‥‥まあいいか!
「ミュラー! 泳いでいらっしゃい。いい運動になるわ」
「わかった! 行って来るよ!」
と海を泳いで行った。それを見たスライムは
「流石だ。泳ぎも上手いのか、いいフォームだな」
スライムさん泳ぎ方まで知っているんだ‥‥‥。アリーナはおっかなびっくりでなかなか海に入れないでいた。
「この海って水しょっぱいのね。なんか変な感じ」
と不満を言いながらバシャバシャと砂浜を歩く。以外と気に入っている様子だ。
ミュラーが海から泳いで帰って来てその機嫌はすっかり直り、その後はモンスターが勢ぞろいで浜辺で楽しそうに遊んでいる。アリーナがスライムを海へ投げる‥‥‥
「おい! 投げるなよ!」
海から戻って来たスライムが怒っている。
「だってスライムだから、溺れないでしょう? それに自分だけ濡れないのはずるいわ」
フォレストウルフもずぶ濡れになっているが満更でもない様子、尻尾をぶんぶん振っている。楽しいんだね。良かった良かった。
エリカは砂浜に座って海を眺めている。
「エリカは皆の所に行かないの? 一緒に遊んでくればいいのに、楽しそうだよ」
「そうね、楽しそうよね‥‥‥ちょっと昔を思い出していたの。子供の頃連れて行ってもらったなあって。シルフィーは前世を覚えているのよね。シルフィーの海で遊んだ思い出はどうなのかしら?」
「‥‥‥僕は‥‥‥身体が弱くて直ぐ熱を出す子だったから‥‥‥学校でもプールには入っていないんだ。いつも家族に心配されていたっけ」
「そうだったの‥‥‥ごめんなさい」
「いいんだ、僕が死んだ原因も病気のせいだしね」
「嫌な事を思い出させてしまったわね‥‥‥」
「エリカがそんなに暗くなる事はないんだよ。今は僕だって幸せなんだ」
遠くの海でセイレンが泳いでいるのが見える。
「セイレンがいるよ」
「こんな所からよく見えるわね」
「妖精の目はとてもいいんだ。セイレンは人間にもその姿を見せる珍しい妖精だよ。人魚って言えば分かりやすいかな?」
【セイレン】上半身は美しい女性の姿をその下は魚の姿をしている。人魚伝説のモデル。その歌声は美しく歌で人間を惑わせ遭難させると言われている。だが残忍なだけではない、人間を助けてくれる。その目撃情報は多く今だにその存在を信じている者もいる。




