魔女はドラゴンに弱い
エリカと一緒に街の家を回って行く。僕は姿を消してついて行く。マルコーに見つかる可能性はあるけど話がしたい、これ以上犠牲者を増やさない為に……
「守るよ。人間達を……」
エリカに言う。
「行きましょう! 干し肉は沢山あるから分けてあげるって言えばいい、ダイアウルフはまた来るわ。惜しくはない。雪の中狩りをする方が危険だもの」
エリカは街の中、家を回って猫の事も聞いてくれていた。
「今日は見つから無かったわね……」
宿に帰りながら話す。
「ねえ、弱点とか苦手なものってないの?」
「残念ながら、無いんだ……ただ本当の飼い主は魔女で、猫はその使い魔なんだ。多くはそう伝えられている。……だから本当の事が知りたいと思っているんだ。人間を傷つけるように本当に言われているのか……」
「付き合うわよ、シルフィー真相を突き止めましょう!」
翌日も家を一軒一軒回って行く。やっぱり手掛かりが無しか……そこでブラウニーが僕を呼んでいると仲間のシルフィーから聞いて訪ねてみる。
「飼い猫かどうかわからないけど……この家の人が猫に餌をあげているんだ。その中に黒猫が居る」
「そうなんだ! ありがとう!」
僕は確かめる為に姿を消してその家の近くで待つ。アリーナ達にも話してある。宿からここが見えている。
エリカがその家のドアを叩く
「冒険者のエリカです。ダイアウルフの干し肉が沢山あるのでどうぞ、おすそ分けです」
「貴重な肉じゃないですか。いいのかい?」
「はい、ダイアウルフはまた来ますから。どうぞ受け取って下さい」
「有難いねえ……ちょっと待ってておくれ果樹酒を持っていってくれないかい? 今、持って来るよ」
家の主人は中に入って行く。その間に僕は姿を消して中に入る。家の中に猫が居た。黒猫だ。僕はその猫の傍に行く。
「君はマルコーかい?」
「! シルファーか……何をしに来た。私に用か?」
「マルゴティンキャットから聞いたよ……人間の子供に何をしたの?」
「知りたいかい?」
「予想はついている…‥で……君はそれを本当に良しとしているの?」
「本当はそんな事はしたくないさ! でもね……僕達は魔女の使い魔だ。魔女には逆らえない」
「‥‥‥ねえ妖精の国に行かないかい?」
「魔女におこられる」
「大丈夫さ! オベロンが守ってくれる」
「‥‥‥信じていいのか?」
「やだなあ、風の妖精は嘘はつかないよ! 今から行こう!」
「今から‥‥‥」
「そう! 魔女に知られる前に、今からここを出るんだ! 行こう」
猫は僕の後を付いてくる……良かった……これで何とかなるかな? ドアに来て出ようとした、その時
「何処へ行くんだい?」
家主が猫に言う
「行かせないよ」
道を塞がれた。まずい……いきなりピンチじゃん! そこでドアが開く……? 鍵は? そうか、そのままだったなあ……そこにはエリカの隣にアリーナの姿があった。
「アリーナじゃないか……どうしてここに?」
家主が言う。アリーナの顔が怖い……怒っている?
「魔女! 何故ここに居る! この街に来ないと約束したはずだが……」
「?」
アリーナがブレスレットを外す。ドラゴンのオーラがその場を圧倒する。
「お前は……赤のドラゴン!」
アリーナは両腕を腰に当てている……これ…‥怒っているよね……
「山で約束したはずだが? 何故この街に居る。人間と関わりを持たないと約束したから、お前の街はそのままにしたのに。約束を違えるというのなら……お前の街を焼き払ってやる」
アリーナ‥‥‥怖い‥‥‥。
「約束を破った訳ではない……たまたま、そう! たまたまこの家が空いておって……ほら……雪も降って積もっているじゃないか……冬は寒いからなあ……温かくなったら出ようと思っていたんだよ」
アリーナは無言で魔女を見つめる。魔女はチッと舌打ちをして
「出ていけばいいんだろう! 出てってやるよ! ドラゴンを相手にしたくないわ!」
そそくさと荷物をまとめて出て行く。
「これで大丈夫よ」
と笑顔で言う。……ドラゴンの本気を覗いた気分だ……
 




